厳しい冬も峠を越えたのか、雨は降るものの春の訪れが感じられる今日のこの佳き日に、大阪府立東百舌鳥高等学校 第三十二回卒業証書授与式を挙行できますことは誠に喜ばしいことと存じます。 (中略)
さて、只今、卒業証書を授与しました三十二期生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは今日の式典を一つの節目として新しい世界へと前進していきます。その出発にあたり五つの文字を君たちに贈りたいと思います。
それは「仁義礼智信」という五文字からなる言葉です。人間の持つべき基本的な徳目・・心のあり様・・を重要なものから順に五つ並べた表現です。
「仁」というのは人偏に数字の二と書きます。人が二人、つまり 人間は一人ではない、他の人と一緒に生きねばならないということを表した文字です。他の人と共に生きるために必要なのは「お互いに相手を思いやること」です。だから仁という文字は「慈しみ、思いやりの心」という意味です。
「義」は正義の義という文字ですが正義という熟語から想像できるように「正しい行い」という意味です。
「礼」は礼儀の礼という文字です。この文字はもともとは「心の中が外に表れた形」という意味です。「礼」という号令は「心で思っていることを身体で表現しなさい」という命令で、その時に頭を下げるのは「心の中で感謝しているもしくは相手を敬っています」ということを示しているのです。つまり礼とは「心の思いを外に出して表現すること」そこから進んで「謙虚に人を敬うこと」という意味になります。
次に「智」、智恵の智です。知るという文字と違い「さとし」と読む「智」で、「優れた知力とか考える力」という意味です。
最後に「信」。人を信じるというふうに使いますが、この字は人偏に言うという字を書きます。人と言うが並んでいる、つまりその人とその人の言うことが同じであるということで、言行一致、嘘をつかないという意味の文字です。
繰り返しますと一番大切なのが「仁、思いやりの心」、次に「義、正しい行い」、次に「礼、謙虚に人を敬う」、四番目に「智、考える力」、最後に「信、嘘をつかない」です。
人生を歩む中で一つだけ守らなければならないことがあるとしたらそれは仁「思いやりの心」を忘れないこと、もし二つ守らなければならないことがあるとすれば「思いやりの心」と義「正しい行いをすること、言い換えると正しくないことをしない」です。三つならそれに礼「謙虚にふるまうこと」を加えるという風に続いていきます。
この考えは今から二千年以上も前から説かれていますが、私は今でも通用する考えだと思っています。五つとも実践するのは実際なかなか難しいことですが、何かの折々に「仁義礼智信」という言葉を思い出して日常の自分の心のあり方や生活を振り返ってみてください。
ところで、本校の校訓の「自他敬愛」ということばを知っていますね。正門を入ってすぐの石碑にも大きく刻まれています。このことばは「自分を大切にするとともに他の人を敬い愛する」という意味です。このことばと先ほど一番に守るべきものとして上げた徳目である「仁」いうことばは殆ど同じ意味です。「人間は一人では生きていけない、お互いを思いやる心が大切である」ということを両方とも表しています。
これから先、いろいろな困難やトラブルに出会うかもしれませんが、少なくとも「相手を思いやる心」を持っていれば必ず解決するというか乗り越えることができると思います。
「自他敬愛」ということばを校訓としてもつ、我が東百舌鳥高等学校に在籍した者として卒業後も「人を思いやる仁の心を忘れない」「他の人と支えあって生きる」という姿勢に思いを致して生きて行ってくれることを願っています。
(後略) |