第2章 水溶液の調製   


 6.濃度の表し方と、いくつかの試薬の調製





 6-1 濃度の表し方


 (1) 質量パーセント濃度〔%〕


                      溶質の質量〔g〕
   質量パーセント濃度〔%〕=−−−−−−−−−−−−−−−−×100
                  溶液(溶媒+溶質)の質量〔g〕

 (例)10%食塩水をつくる。 

    食塩(溶質)10g に、水(溶媒)90g の割合で溶かした溶液。食塩10gを水100gに溶か

    した溶液(9.1%になる)との違いに注意すること。

(2) モル濃度(mol/dm3)

@ 溶液 1 dm3(1000cm3)中に溶けている溶質の物質量(mol)で表す。

A  1 molとは、質量数12の炭素原子(12C) 0.012kg中に含まれる原子の数(アボガドロ数

 という)と同じ数の単位粒子からなる物質の量をいう。

B つまり、アボガドロ数(6.02×1023)と同数の粒子の集団が 1 molである。

C 現在の原子量の決め方では、その物質の式量に g単位をつけた質量がその物質 1 mol

 の質量になる。

 (例) 1 mol/dm3の食塩水をつくる。   

  NaClの式量(原子量の和)= 23.0 + 35.5 = 58.5 であるから、NaCl 1 molの質量は、

  58.5 gとなる。

  したがって、58.5g の食塩に、水を加えて、全体の体積を 1dm3にすると、1 mol/dm3

  の食塩水ができる。 

  《注意》 水を 1 dm3 加えるのではない。

(3) 規定度(N、ノルマル)

@ 主に、酸とアルカリの濃度を示すのに使われているが、学習指導要領では、この濃度表示

 を扱わないようになっている。

A 1規定の溶液とは、水素イオン(H+)または水酸化物イオン(OH-)1molを供給し得る

 だけの物質量が、溶液 1000cm3中にあるときの濃度のことである。

 (例)1規定の硫酸(1N−H2SO4)

  硫酸 1 molは水素イオン 2 molを供給し得るから、1規定の硫酸とは1000cm3の溶液中に

  硫酸 0.5 mol(49g)を含む溶液のことである。



6-2 溶液の調製例1

(1) 水和水(結晶水)をもつ固体試薬を用いて、質量パーセント濃度がP%の水溶液を、100 g

  つくる。 

 秤量する量:W〔g〕   溶質となる量:P〔g〕  水和水を含む式量:m1  

 水和水を除いた式量:m0 とすると
       m0               m1   
  P=W×−−−〔g〕であるから、 W=P×−−−〔g〕 となる。
       m1                m0

  したがって、水和水を持つ物質W〔g〕を秤量して容器に入れ、それに(100−W)〔g〕の水

 を加えると、P%の水溶液 100g が得られる。

 ◆例 10.0%硫酸銅を100gつくる。◆

  結晶硫酸銅の化学式:CuSO45H2O  秤量する量:W〔g〕 溶質となる量:10.0〔g〕 

  水和水を含む式量:250  水和水を除いた式量:160となるから

          160          250
   10.0=W×−−−〔g〕、W=10.0×−−−=15.6〔g〕となる。
          250          160

   したがって、結晶硫酸銅 15.6gを秤量して容器に入れ、それに(100−15.6)= 84.4〔g〕

  の水を加えると、10.0%の硫酸銅水溶液が100 g 得られる。



溶液の調製例2

(2) 質量パーセント濃度がP%の水溶液を水でうすめ、濃度Q%の水溶液を100gだけつくる。

@ 水溶液を何倍にうすめるか(R=P÷Q)を求める。

A 濃度P%の水溶液を、 100÷R〔g〕だけ取る。B Aを、水でうすめて 100 g にする。

 ◆例 濃度35%の水溶液を水でうすめて、濃度10%の水溶液を、100 gつくる。◆

@ 水溶液を何倍にうすめるか。R=35÷10=3.5〔倍〕にうすめられる。

A 濃度35%の水溶液を、100÷3.5= 28.6〔g〕だけ取る。

B Aを水でうすめ、100 g にする。 

 《参考》 もし、はじめの水溶液の濃度がうすくて、比重が1に近ければ、量の単位は、

      質量でなく、体積で考えてもよい。



溶液の調製例3

(3) モル濃度が M〔mol/dm3〕の水溶液を V〔cm3〕つくる。

             V
@ 水溶液V〔cm3〕は −−−〔dm3〕であり、それに溶けている溶質
             1000
         M×V  
  の物質量は、−−−−−〔mol〕である。 
         1000

A 溶質の式量をmとすると、溶質 1〔mol〕あたりの質量がm〔g〕であ
              m×M×V
  るから、秤量する量は、−−−−−−−〔g〕となる。
               1000

            m×M×V
B したがって、溶質 −−−−−−−〔g〕を秤量して容器に入れ、
              1000  
  水を加えて水溶液全体をV〔cm3〕にすると、M〔mol/dm3〕の水溶液が得られる。

 ◆例 0.5 mol/dm3の硫酸銅水溶液を、200 cm3つくる。◆

           M×V   0.5×200
@ 溶質の物質量は、−−−−−=−−−−−=0.1〔mol〕である。
           1000     1000
A 結晶硫酸銅は、CuSO45H2O=250 であるから、秤量する量は、250 × 0.1 = 25〔g〕

 となる。

B したがって、結晶硫酸銅 25 g を秤量して容器に入れ、水を加えて水溶液全体を 200

 cm3にすると、0.5 mol/dm3 の水溶液ができる。

 《参考》 モル濃度の場合は、水和水があるかないかは気にしなくてよい。



溶液の調製例4

(4) モル濃度が P〔mol/dm3〕の水溶液を、水でうすめてQ〔mol/dm3〕の水溶液をX〔cm3〕

 だけつくる。

@ 水溶液を何倍にうすめるか(R=P÷Q)を求める。

A 濃度P〔mol/dm3〕の水溶液を、X÷R〔cm3〕だけ取る。

B Aに水を加えて水溶液全体をX〔cm3〕にすると、Q〔mol/dm3〕の水溶液が得られる。

 ◆例 モル濃度 12 mol/dm3 の水溶液を、水でうすめて、3 mol/dm3 の水溶液 300 cm3

    をつくる。◆

@ 水溶液を、R=12÷3= 4〔倍〕にうすめる。

A 濃度 12 mol/dm3 の水溶液を、300÷4= 75〔cm3〕だけ取る。

B Aに、水を加えて水溶液全体を 300 cm3 にすると、3 mol/dm3の水溶液ができる。