第3章 器具の取扱いと基礎実験事例

       6.気体の発生


6-1 気体発生装置の種類

(1) フラスコを使った気体発生器

@ 図22のように、三角フラスコ(または丸底フラスコ)を使って気体を発生させる。

A この場合、安定をよくしてフラスコが倒れないように気をつける。

B 液体試薬は、固体試薬がつかる程度に入れるようにする。

C 活栓付きロートを使用している場合で、気体の発生を一時中止するときは、まず活栓を開

 き、次にゴム管をピンチコックなどでつまむ。

  

(2) 試験管を使った気体発生器(図22)

@ 小規模の場合は、試験管を使って気体を発生させることができる。

A この場合は、気体の発生を途中で止められないのが欠点である。

(3) ふたまた試験管による気体発生器(図22)

@ 試薬が少量の場合に適している。

A ふたまた試験管の2本の足のうち、くびれのある方に固体試薬を入れひっかけて固体が落

 ちないようにして使う。液体試薬は、くびれのない方に入れる。

B 左右に傾けて試薬を混合し、気体を発生させる。

C 発生を中止するときは、試験管を傾けて液体と固体を分離する。



6-2 気体の捕集方法

(1) 下方置換法(図23)

  

@ 二酸化炭素、塩化水素など、水によく溶けて空気より重い気体を集めるときに行う。

A 集気びんの口を上にしておくと、空気は軽いのでびんから逃げやすくなる。

(2) 上方置換法(図24)

  

@ アンモニアのような、水によく溶けて空気より軽い気体を集めるときに行う。

A 集気びんを逆に立てるので、軽い気体は上にあがり、重い空気が集気びんの口から逃げや

 すくなる。

B 気体を集めた集気びんは、蓋を下にして逆にしておく。

(3) 水上置換法(図25)

  

@ 酸素、水素、二酸化炭素(下方置換法でもよい)など、水に溶けにくい気体を集めるとき

 に行う。

A 水槽に水を入れ、水を満たした集気びんを逆さに立てる。この中へ、気体を導いてためる。

B この方法は空気が混じりにくく、気体がたまっていくようすがよくわかるのが利点である。

C アンモニアや塩化水素などは、水によく溶けるので、この方法は不適当である。



6-3 気体発生に関する実験上の注意事項

(1) 水素などの可燃性気体の爆発事故防止について

@ 爆発事故の多くは、空気との混合気体が引火爆発する場合である。気体発生器から最初に

 出てくる気体には空気が残っており、これに引火した場合に爆発を起こす。したがって、気

 体の組成が下記に示す爆発範囲を越えるまで、流出してくる気体を捨てる必要がある。純粋

 な気体を得るには、気体の種類などにより異なるが、発生器の容積の2倍以上捨てなければ

 ならない。
    

   可燃性気体の爆発範囲(空気中の体積百分率(%))  
水素    4.0〜57 メタノール 7.3〜36 一酸化炭素 12.5〜74
メタン   5.3〜14.0 エタノール 4.3〜19 アンモニア  16〜25
プロパン 2.4〜9.5 エ−テル  1.9〜48 ベンゼン   1.4〜7.1


A 点火法による確認方法(図26)

  

  発生した水素を試験管にとって点火する。試験管中の水素が爆発範囲内の組成であれば爆

 発が起こる。純粋な水素であれば、管口でポッと軽く点火して燃え、後は試験管内に燃え広

 がるが爆発しない。

(2) 酸素発生での注意事項

@ 過酸化水素水(H2O2水)は、冷暗所(冷蔵庫がよい)に保管する。

A 高濃度の過酸化水素水をうすめるときは、できるだけ純水を用いて、手や顔にかからない

 ように注意する。

B 30%過酸化水素水をうすめた水溶液は、分解しやすいので、実験をする直前に調製する。

 数ヶ月も同じ濃度で保存できると考えてはいけない。

(3) その他の注意事項

@ 発生する気体が有毒である(アンモニア、塩化水素など)場合は、必要最小限の量だけとる

 ようにするとともに、室内の換気には十分に注意する。また、発生器の吹き出し口に顔を近

 づけないようにする。

A 発生器のゴム管などが折れ曲がったり、ねじれて気体の発生をさまたげたりすると、ゴム

 栓が飛んだり、容器が破裂するなどの危険があるので、十分に注意する。

B 可燃性気体を発生させるときは、引火爆発の危険を避けるために、発生器にバーナーやア

 ルコールランプの火を近づけないようにする。



6-4 気体の乾燥

(1) 小・中学校で行う理科実験では、不純物を取り除く必要はほとんどないもし純粋な気体が

 必要なときは、試薬の純度が高いものを選び、含まれてくる水蒸気は乾燥剤に通せばよい。

(2) 乾燥剤は、気体の種類に注意して選ぶこと。乾燥剤なら何でもよいというわけではない。

 次の乾燥剤が適している。

  ◆水素、酸素、二酸化炭素無水塩化カルシウム、シリカゲルなど

  ◆塩化水素無水塩化カルシウムなど

  ◆アンモニアソーダ石灰、生石灰など

(3) 気体乾燥(洗浄)の方法

 アンモニアや塩化水素の気体を発生させるときは、図27のように、濃アンモニア水や濃塩酸

に沸騰石を入れて加熱してもよい。ただし、三角フラスコの口には乾燥剤を付けておくこと。

  



6-5 その他

(1) 気体発生装置を組まなくても、酸素、窒素、二酸化炭素などの気体は、市販の小型軽量ボ

 ンベ(スプレー式軽量ボンベ)を利用できる。ただし、気体の発生は、化学反応させて気体

 を得ることに意義がある。小学校で、はじめからボンベを使うのはよくない。

(2) 酸素や水素を多量に早く集めるには、酸水素発生用電解装置を自作するとよい。電極表面

 積を大きくすると、たやすく得られる。

(3) 簡単に水素を得る方法として、水素ペレットというものが市販されている。マグネシウム

 に少量の重金属化合物(銅イオンなどの化合物)をペレット状にしたもので、食塩水の中へ投

 入するだけで水素が得られる。