かずの学びについて


数の概念
 「数の概念」は、算数の学習を行っていく上での土台となる部分です。 この「数の概念」の未獲得およびつまずきは、算数における四則計算等の数の操作の学びに大きく影響すると考えられます。

「数唱」:1から順番に数を唱えることができる
「計数」:数と具体物を一対一対応させながら数えることができる
「概括」:全体を一つにまとめて考えることができる
「抽出」:たくさんある物の中から一定数を取り出すことができる。

 算数学習開始時、これらの4つの操作を通して10以上の数の概念が形成されていることが望ましいと考えられています。

 また、数の概念の形成の土台となっている力として、「未測量の概念」の獲得、「集合づくり」「一対一対応」の操作が考えられています。

「未測量の概念」:「大きい―小さい」「多い―少ない」「長い―短い」「重い―軽い」のように数を用いず言語を用いた感覚的な比較で量を表す
「集合づくり」:同じ要素をもつものを一つのグループにまとめる
「一対一対応」:例えば「一人に一本ずつ飲み物を配る」というような対応

 幼児期の子どもたちは、これらの概念・操作を、生活の中の様々な場面(たとえば「おやつの時間に、多い方、大きい方のお皿を選ぶ」や「絵本は絵本の場所に片付けるや「友だちに一枚ずつ画用紙を配る」など)を通して、より多く経験することで獲得していきます。

 さらに「未測量の概念」の獲得、「集合づくり」「一対一対応」の力を土台として、「系列化の思考」「保存の概念」を獲得し始めたときに、数の概念はしっかりと確立し、計算という数の操作段階に入ることができるようになると考えられています。

     「系列化の思考」:一つの要素に着目し、それを基準にして系統立てた順序に物事を整理していくこと。例えば、背の高い順に並ぶ(身長という要素に着目)、年齢の順番に並ぶ(年齢という要素に着目)など。 時間概念を獲得する土台とも言われている。また順序数を理解するためのレディネスとも考えられている。
     「保存の概念」:「物の数量はその形が変わったとしても、同じままである」という考え。
 
  たしざん
 「たしざん」ができるためには数の合成・分解について理解する必要があります。 合成・分解を理解した後、和が10までのたしざんに取り組みます。 ○や線を書いて、それを数えて答えを出す「数えたし」をする段階の児童生徒たちに、有効な教材を集めました。 合成・分解について学ぶ中で、数を量でとらえる練習を十分にすることが必要となります。
 和が10までのたしざんを学習し、次にくり上がりのたしざんに進む段階においては、「あといくつで10になるか?」という10の補数の理解が必要です。 和がちょうど10になるたしざんの学習を行うことも有効です。
 10の補数を理解することで、1の位で10のまとまりを作り、10の位にくり上がるという、くり上がりの仕組みがわかるようになります。
 ここでは、「合成・分解」「和が10までのたしざん」「10の補数の理解」の3つに分けて、教材を集めました。
 
お金
 「お金」は、生活必需品であり、数を学ぶための最も身近な教材でもあります。 お金の学習の中には、一対一対応、弁別、たしざん、ひきざん、かけざん、わりざん等算数に関わるたくさんの学習要素が含まれています。 また、10のまとまりや100のまとまりがイメージしやすいというメリットもあります。 数字の計算には苦手意識があっても、お金の計算はやる気が出るという児童生徒も多く、興味関心を引き出しやすい教材です。
 ここでは、「お金の種類」「お金の計算」「買い物学習」の大きく3つの項目にわけていますが、児童生徒の実態に合わせて取り組んでいただければと思います。 お金の種類や計算が難しくても、買い物学習でのやり取りや活動を通して、楽しみながら「お金」に親しんでいくことも、大切な学習です。細かい計算ができなくても、今自分が持っているお金で買えるかどうかがわかれば、買い物はできます。 児童生徒たちの「できる」から、学びを広げていってください。
 
図形
 図形領域におけるつまずきには、空間での位置関係を把握する「視覚認知能力」が大きく関係し、また「空間操作能力」等を考慮しながら、個に応じた指導の工夫をすることが必要です。 認知の要素として、“視空間”“抽象・イメージ”“空間操作”“語彙”“記憶”があげられます。 子どもの課題は多様であり、認知力の程度によって、図形の学習定着にも困難さがおきます。 ここでは、視空間認知能力を育む学習の“位置関係”“図形の種類”、空間操作のなかでも“図形を描く・作る”の3つの分類で紹介します。
 
時計
 「時刻と時間」は日常生活の中でとても多く活用されています。 しかし、「時間」は視覚的に見えるものではなく、イメージが持ちにくいため、児童生徒が学習していく上でつまずきやすい単元となっているのではないでしょうか。
 「時計を読む」では、特にアナログ時計の針の動きによって「時間の流れ」が視覚的に捉えやすくなり、また、針の位置や角度によって「時間の量が」が感覚的にイメージしやすくなります。
 「時間の概念を身につける」においては、「1日は24時間」「1時間は60分」のように10進法ではないため、児童生徒たちにとってはつまずきやすいポイントの1つとなっています。 また、「午前」と「午後」の12時間制と24時間制など複雑なルールがあり、「時間の概念」を児童生徒たちが身につけることは容易ではありません。 そのため、アナログ時計を用いて、日常生活の中で周囲の大人が言葉かけを行い、定着させていく必要があります。
「時間の計算」では、「○分前(△分後)は何時何分でしょう?」など実践的な課題に取り組むことにより、日常生活の中で「時刻と時間」と活用していく力を身につけることができます。
 ここでは、「時計に親しむ」「時計を読む」「時間の計算」の3つの項目にわけて、教材を紹介します。また、「時間の概念を身につける」については、3つの項目全てに関わっています。