原索動物門

尾索動物と頭索動物をまとめた一群であり、現在では脊索動物門としてまとめるのが普通である。しかし日本では脊索動物という分類群を認めず、原索動物門と脊椎動物門を並立させる見解がまだ根強い。多くの高等学校の生物教科書では、原索動物門が採用されている。これらは脊椎骨をもたず、脊索、背部神経管、鰓裂、囲鰓腔、および内柱(繊毛の溝で粘液を分泌する)をもつ。エラでろ過したエサを粘液で捉えて食べる動物群である。

尾索動物亜門

尾索動物は終生あるいは幼生期に限って尾部に脊索をもつが脊椎骨は形成されず、表皮が分泌する独特の組織である被嚢(ひのう)に体が常に包まれる.ホヤ綱、オタマボヤ綱、タリア綱の3綱からなる。ホヤ綱では浮遊する微小なオタマジャクシ型幼生期にだけ尾部に脊索をもつが、海底に固着・変態するときにこれを失う。他の2綱は終生浮遊生活をおくり、オタマボヤ綱では脊索を一生もち続ける。タリア綱では脊索は現れるとしても幼生期に限られる。



Class Ascidiacea ホヤ綱

ワモンクラベラ
透明な青い体に白い輪が特徴的なホヤで、サンゴ礁域でよく見られる。ホヤは外観がカイメンに似ることがあるが、入水管と出水管の2つの開口部を持つこと。筋肉を持つので、刺激を与えると収縮することで区別できる。慶良間諸島・座間味島で撮影。


カラスボヤ
赤い肉団子のような物体の上面に入水管と出水管の2つが開口している。この中にエラがありプランクトンをろ過して食べる。これは温帯域のホヤで、舞鶴市田井で撮影。


ミナミクロボヤ
黄褐色の肉団子のような物体の上面に入水管と出水管の2つが開口している。これはサンゴ礁域のホヤで、渡嘉敷島で撮影。


チャツボボヤ
ホヤの個体が集合して群体を形成したもの、白っぽい袋の上面に見える大きな開口部は共同の排水溝である。側面の小さな穴がホヤ個虫の入水孔である。サンゴ礁域に普通の種、慶良間諸島・座間味島で撮影。


イタボヤ
これも群体性のホヤである、平らな石の表面を厚さ数mmの群体が平板状におおっている。大きな開口部は共同の排水溝である。その周囲の小さな穴がホヤ個虫の入水孔である。温帯域の潮間帯に普通の種、みさき町長崎海岸で撮影。





Class Thaliacea タリア綱

サルパ
東京都三宅島での撮影。半透明なゼリー状の物体の中に赤っぽい部分が点在している。ホヤの群体が多数つながって、浮遊しているものである。



頭策動物亜門

体長数cm、細長く左右相称で左右に扁平で両端の尖った魚形。頭部は分化せず眼をもたない、正中にある背鰭・尾鰭・腹鰭はひと続きとなる、対鰭は見られない。体側背半部に‘く’の字形の筋節が体節的に多数並ぶのがクチクラ化して透明となった表皮をとおして見える。脊椎骨を形成せず脊索を終生、体の全長にわたってもつ。脊索の背方にそって中空の神経管があるが、前端部はやや拡大するにすぎない。口は体前端腹面に開き、消化管は腹方を直走して尾鰭の付け根にある肛門で直接外界に開く。咽頭は側壁に多数の鰓裂そして腹正中に内柱を備え、かご状に発達して鰓嚢となり,餌である微小プランクトンなどのろ過装置となるほか、血管が分布してガス交換にも働く。ナメクジウオ型循環系とよばれる不完全な閉鎖血管系をもち、心臓はないが一部の血管壁が脈動する。呼吸色素なし。老廃物は特異な形状をした有管細胞によって囲鰓腔に排出する。浮遊幼生は表皮に生える繊毛により摂餌して成長するが、口や鰓裂は当初著しく左右不相称に形成される。すべて海産で全世界の温暖な浅海底の砂中に生息、現生約35種。



Class Leptocardia ナメクジウオ綱

ナメクジウオ
淡路島沿岸で神戸大学臨海実験所の実習船でドレッジを投下して採集した個体、バットの中での撮影。体調7cmでじっとしているが、衝撃を与えると小魚のように跳ねる。中胚葉から分化した脊索が、脊椎骨に置き換わらずに一生残る。脊椎動物の起源となった生物に近縁であると考えられる。目はなく、口から吸い込んだ海水を鰓でろ過してプランクトンを食べる。