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第1章 はじめに
「ブラックバスと琵琶湖」私が、こんなカチカチなテーマを選んだのには、幾つかの理由があった。
一つ目には、私自身、生物がとても好きだったから。松原高校に入って、課題研究の事を聞いた時から、絶対生き物に関わるテーマにしたいと思っていたから。といっても,まさか自分が魚のことを調べる事になろうとは,思ってもみなかったが。
二つ目に、進み続ける地球の環境破壊。温暖化や森林伐採,増え続ける公害問題。人間によって壊されてきた自然を何とかすることは出来ないのか,考えてみたかった。けれど,地球規模だと余りにもスケールが大きすぎて、とても一年で研究することなんて出来ないし,調べるといっても,本に頼るしかない。私は,自分の目で見て確かめたいと思っていた。そんな時、毎年夏になると、琵琶湖の水位が大きくマイナスになって、取水制限が行なわれている事を思い出した。琵琶湖なら,学校から遠いとはいえ,夏休みを使えば見に行く事も出来る。それに琵琶湖は滋賀,大阪,兵庫など多くの地域に貴重な水を供給している。琵琶湖がなければ、私達の生活はどんなに変わっていただろう。これで,琵琶湖をテーマにする事に決めた。でも,生物が絡まない,どうしよう。そんな時,かなり前のテレビ番組で,琵琶湖に繁殖するブラックバスについての議論をしていたのを思い出した。
バスが増える事によって,琵琶湖の生態系が破壊されていると騒がれていた。何故?興味深そう,調べてみたい。そう思った。
では,どうやって調べるか。私は,琵琶湖が滋賀県にあるということしか知らなかった。まず,琵琶湖の基本的な知識を取り入れなければ,と思った。図書館で「琵琶湖」と「バス」を検索すると,15冊くらい該当した。本で資料を集めるのは当然だけど,それだけでは全然面白くない。今流行りのインターネットも使ってみようと決めた。それに,直接琵琶湖に行って,実態調査をせねば!!と思った。先生のアイデアで、役所の人や,漁師さんに話を聞いて,生の声を取り入れようと思う。また,反対意見として,バス釣り愛好家(バスが増えるのに賛成の人達)にも話を聞いて,総合的に判断しないと不公平だと思った。その上で,決着がつくか分からないけど,琵琶湖とバスの将来について,自分達が出来ることを考えていけたらいいなと思う。
第2章 私の考え
私は、琵琶湖が抱える問題点を調べるにあたって、主要な論題は外来魚問題だけど、もう一つ琵琶湖の水質の悪化という点も考えておこうと思った。悪化した原因は恐らく人間の環境破壊だろうと思う。それによっておこる影響やとってきた対策などを調べようと思う。
そして、本題であるブラックバスやブルーギルなどの外来魚問題について、それらの魚は、どういう経路で琵琶湖に入ってきたのか、その生態や、なぜ日本で繁殖する事が出来たのか、またなぜこんなに問題視されているのか、そして今行なわれている対策について、調べたり話を聞いたりしてまとめようと思った。それで、滋賀県庁の農政水産部水産課と守山漁協に話を聞く事が出来、その際、自分自身は外来魚についてどんな意見を持っているのか聞かせて下さいと言われた。
個人の意見として、私は外来魚駆除派と反駆除派のどっちにつくかと言われたら、駆除派に付く。なぜかと言うと、バス釣りは子どもの楽しめる場だとか、ストレス発散だとか、趣味だからなどの理由を並べても、所詮レジャーにすぎない。けれど、駆除派の漁師さん達にとってみたら、漁は遊びでも趣味でもなく、仕事であって、魚が捕れなくなるというのは、失業するという事と同じだと思う。生活のためと自分の楽しみのためという理由で、駆除する・しないを考えた時、自分は漁師さん側につくと思う。
第3章 取り組み開始
*琵琶湖について*
琵琶湖は日本最大の湖であり、琵琶湖大橋を境に、南湖(なんこ)と北湖(ほっこ)に分けられる。南湖は琵琶湖総面積の1/11で水量は約2億t。南湖の水は近畿地方の住民、約1400万人の水の供給源となっている。水深は平均して3〜4mしかない。北湖は南湖の11倍の面積を持ち、水量は約320億t。最高で104m、平均で47mの水深がある。
*琵琶湖の水質悪化の一因*
琵琶湖では(特に南湖)護岸工事が進んでヨシ原が消え、湖周道路の建設によって、内湖と呼ばれる、川が琵琶湖に注ぐまでに幾つもある沼や池や水溜り等が埋め立てられた。ヨシ原や内湖は琵琶湖にゴミが入るのを防ぐ役割を果たしていた。それが失われたため、自浄作用がなくなり、水質悪化の原因となっている。
*湖の汚染の循環*
家庭雑排水・工場排水・農業排水等に多く含まれるチッソやリンといった有機物を栄養分にして植物プランクトンが増殖する。植物プランクトンの死骸は沈殿して湖底を汚し、死んだ植物プランクトンは多くの酸素を消費する。水深の浅い所では温度が高く深い所では低くなり、比重の差によって湖水が分かれ、水が混ざりにくくなる。お風呂の湯を置いておくと、上が熱く下が冷たくなるように。湖面では光合成によって、酸素が作られるが、湖底では、光合成が起こらず、比重の違いにより酸素の多い水が混ざらず、また、有機物が分解される過程で酸素が消費されるので、酸素量は減るのみとなる。湖底が無酸素状態になると、リンや鉄、マンガンといった植物プランクトンを増やす有機物が水中に溶け出してくる。こうして、植物プランクトンが大量発生するとますます湖底が汚れる。こうした状態が今も着々と進み、危機的状況に追い込まれているが、表面的には綺麗に見えるためまだ大丈夫、汚れてはいないという考えが蔓延し、対策が遅れがちになっている。
*自然の持つ自浄作用*
<水草>
水草地帯は高い浄化能力を持つ働きがあるので、水の汚れやすい所に発達する。琵琶湖に生えるイネ科のヨシは、水質悪化の原因となるリンやチッソを栄養分として吸収し、1本で約2tの水を浄化するとも言われている。ヨシなどの抽水植物が湖辺に密生していると、湖外から有機物などが入ってきても茎や葉がフィルターの働きをして沖に流出しないようにしている。またゴミなどもここで食い止めている。そして、溜まった有機物を分解してきれいにしている。水中には茎や葉につく付着生物が圧倒的に多く、水中に浸かっている茎の表面積は水深1mの所で湖底面積の2〜3倍になり、有機物はここにつく微生物によって活発に分解される。
有機物が分解される時酸素が消費され、無酸素状態に陥るという問題にどう対処しているのか。1.ヨシは傾斜が緩やかな所に生えていて水深が浅く、空気中の酸素が水の中に溶けこみやすい。2.水深が浅いのでヨシの茎につく付着藻類や水草自身によって光合成が行なわれる。
有機物が分解されると栄養塩が溶け出し植物プランクトンが増え水質が悪化するという点に関しても、付着藻類や沈水植物が栄養塩を吸収するので増殖が抑えられる。
しかし、琵琶湖の沿岸整備などによって、1953年には260ヘクタールあったヨシ原は1991年には138fに減少してしまっている。そのため、滋賀県では1994年に琵琶湖とその周辺のヨシ繁殖地を守るため【ヨシ群落の保全に関する条例】を施行し、植栽を進めている。
ブラックバスとは!?
ブラックバス(オオクチバス・コクチバス・スポテットバス)
1925年に赤松鉄馬氏がアメリカから輸入し,87匹芦ノ湖に放流したのが始まり。急速に広がり始めてから30年足らずで,全国至る所に密放流され,今では,淡水生態系の最上位に君臨している。
オオクチバス
- 比較的水温が高く,流れのない水域を好む。
- 主に水深の浅い岸辺の水草帯に潜み、その周辺で捕食する。
- 適応能力が極めて高く、淡水〜塩水が混じった汽水でも生きられる。
- 攻撃的で動きが素早く、小魚から昆虫まで動く小動物なら何でも食べる。大型魚ほど魚類を捕食する傾向がある。
- 成長は琵琶湖では1年で27cm,2年で38cm,3年で47cmで、20〜25cmで成熟し,水温16〜20℃になる4〜7月に産卵(二千から二万粒)
- 産卵後オスは巣に留まり,卵や稚魚を守る。(←次世代への生存率も高い)
コクチバス
- 入手経路は不明
- オオクチバスとは縦横の縞模様の違いで判別できる。
- 一般的にオオクチより成長は劣るが生態的には特に変わらない。
- 冷水域や流れのある場所に生息し、岩場を好む。(←寒い所でも生き られるので日本の内水面はブラックバスに完全制覇されつつある。)
ブルーギル
- 体長10〜15cm
- 体側にある暗色横帯は体調により濃淡に差がでる。
- 著しい偏りのある雑食性。水草,他魚種の卵,ヒメタニシなど多様である。
- 好奇心が強く,異質なものに惹かれる傾向があり,様々な釣り餌に掛かる。
- 体が扁平。
- 背・腹・尻鰭の棘が強くて鋭い。
- 琵琶湖には1965年頃から入ってきた。
*聞き取り*
滋賀県農政水産部水産課・岡村さん
Q.バスやブルーギルが琵琶湖に入ってきた時期は?
| オオクチバス |
1925年に芦ノ湖に食用として持ち込まれる |
| 1974年に彦根(北湖)で見つかる |
| 1979年に南湖でも見つかる |
| ブルーギル |
1960年に皇太子によって持ち帰られる |
| 1965〜1975にかけて見つかり出した |
| 1993年から異常増殖している |
| (淡水真珠の貝の養殖に試験的に水産試験場にいた時もあったがそこから出ていったということはない。完全に囲まれた場所で飼育されていたため) |
Q.外来魚が入ってきた経路は?
- 日本へは食用目的で放流された
- 洪水などで流されて入ってくる事もある
- 釣具店や釣り人が自分の利益のために密放流を行なっている
Q.なぜ琵琶湖で繁殖できたのか
- 天敵がいなかったから(強いて言えば人間くらい)
- 繁殖力が強い。(普通の魚は孵化して1割くらいしか成魚にならないのに対し、バス・ギルは半数以上が成魚に成長できる。)
- 環境への適応力が強い
- 食べられる物なら何でも食べる(ある湖では水面近くを飛んでいる昆虫さえも食べるという報告がある)
- 琵琶湖のバスはコイやフナ,モロコ,ヨシノボリ,エビ等を食べている。
- ギルは卵,稚魚,死魚,エビなどをよく食べる。
- 水が少々汚れていても生きていける
Q.外来魚が増える事によって生物界に与える影響は?
<食害>
稚魚の頃から猛烈な食欲をしめし、2,3cmになると捕食しはじめる。そのため成長速度も他の魚と比べてかなり速い。
食害による水産被害
特に南湖では、漁をしてもとれる魚のほとんどが外来魚である。
[外来魚の琵琶湖に占める割合参照]
固有種の減少
生息域が重なっている魚種(湖岸)が特に被害を受ける。
捕食圧が高すぎるので生態系のバランスが崩れる。
他にも外来魚はたくさんいる。(ニジマス・ライギョその他)けれど、バス・ギルは食害が余りにひどいので駆除せざるをえない。もしも、バス・ギルが他の魚をそんなに食べない種類の魚だったらここまで騒ぎ立てることはなかったかもしれない。←他にも外来魚がいるのだからバスやギルを駆除する必要などないという理由は通用しない。
山梨県河口湖について
- この湖は、ワカサギ釣りで有名な湖だったが、外来魚が入ってきて魚がとれなくなったため、ブラックバスを漁業権魚種として認定し、遊漁料を集めるようになってから収入がものすごく増え、経済が潤うようになった。
Q.琵琶湖はそうしないのか、なぜか。
経済的な問題ではなく、県民の財産である固有種や生態系を守っていくという方向で、遊漁料を集めてバス釣りを公認するようなことはしない。食害を減らす・財産を守る目的で駆除という形をとっている。
Q.駆除対策が始まったのはいつ?
外来魚が見つかり、騒がれ出したのがS50年代(1975〜)で対策が始まったのがS59年(1984)から。
- 対策が始まって最初の内は全然捕獲されなかった。(何十t単位)それが、H11で134t、H12で188tと年々駆除率が増えてきている。
- 事業費は3〜4千万円位で予算も上がってきている。
- 国が行なっている外来魚対策の方針は、駆除と共生(すみわけ)というもので、外来魚と在来魚の生息域を完全に分けてしまえば問題ないという考え。
- 県では共生は視野に入れず断固駆除の方針をとっている。
Q.回収方法は?
1kg150円で漁協から買い上げ、琵琶湖沿岸の各漁協をトラックで回収してまわる。集まった魚は京都に持ち込んで飼料になっている。京都には魚市場などででた魚のあらなどを処理する施設があり、そこで有料で処分されている。
稚魚を捕獲することも行なわれている。これは、漁師さんを1日幾ら、で県が雇うという形で行なわれている。必要経費を県が持って、捕獲してもらう。
Q.利活用とはどんなこと?
飼料化・肥料化する研究、試みがなされており、食品化の研究もしている。
2,3の漁協では自分の漁協でとれた魚の一部を漁の時のえさに使ったり、肥料にしたりしている。(そのうちの一つが守山漁協で肥料にしている)
Q.外来魚の琵琶湖に占める割合は?
正確には分からない。場所によっても異なるので。北湖にはそんなにいないけれど、南湖にはうじゃうじゃといる。参考程度に、南湖で漁をすると、とれた魚の8〜9割が外来魚という結果。
また、琵琶湖の1年の漁獲高は約2400t。それに対して、H12の外来魚漁獲高は約200t。単純に計算すると魚12匹に対して外来魚が1匹いるという割合になる。
Q.バス釣りに来られるのは賛成?反対?
賛成でも反対でもないが,マナーは守って欲しい。釣り糸を捨てたり、糸が切れたまま放置して帰ったり…。
Q.キャッチ&リリースについてどう思われますか?
釣られて戻されて、生き延びた魚が、また他の魚をたべて食害を繰り返すということなので、絶対にやめてほしい。
岡村さんの意見 魚が迷惑するというかかわいそう。反射的に飛びついて釣り上げられたと思ったらまた戻されて…を死ぬまで繰り返さないといけないから。
魚だって,犬や猫と同じ、命を持った生き物であって、命の重さは変わらないはず。犬や猫が傷つけられたと聞くとたいがいの人はかわいそうにと思うはず。けれど、魚釣りはどうか。それは楽しみ、レジャーとしてとらえられている。個人的には、釣りも虐待と一緒だと思う。だから、せめて、釣った魚は責任を持って食べてしまわないといけないと思う。キャッチ&リリースは本当に虐待じゃあないのかなと思う。けれど、魚は水面下にいて直接触れ合ったりする事がないから、認識が薄いんだろうと思う。
守山漁協・戸田さん
琵琶湖の漁師さん達の願いは琵琶湖の魚が円滑に流通すること。
ブラックバスを資源として利用したくはない。水産試験場では外来魚をおいしく食べられる方法を研究したりして利活用を目的としている。けれど、漁師としては絶滅を目的としているので、水産試験場とは少し意見が異なる。
「外来魚っておいしいらしいよ?」→「どこにいてるの?」→「琵琶湖にいてる」→「釣りにいこう」→結果的にバスが増える事になる。
琵琶湖が直面している危機を見て欲しい。いくら訴えても、水面下で起こっている事だから、わかってもらいにくい。水質が悪化しているという問題にはすぐに動いて、間違いを正す事が出来るように、水については皆,私の水,皆の水と認識できるけれど、魚は漁師のものと錯覚しがち。漁師vsバス業界の問題ではなく、県民,国民vsバス業界にならないといけない。
肥料化について、外来魚は、琵琶湖の魚という財産を食べ、駆除のため県の税金を食べ、その体が京都に運ばれているということに疑問を持った。まさに食い逃げではないか!と。でも、肥料化してそれを売ったりというのは、利活用と同じことになるからしていない。
バスやギルの魚自体に全く罪はない。けれど、日本の湖にいる限り、他の魚をどんどん食べるので、駆除せざるをえない。
6〜7月の産卵,孵化時期に稚魚すくいを行なっている。ギルは薄青白く、バスは緑がかって見えるので、他の魚と見分けがつく。ただ、大きな群れで泳いでいるので網ですくっても,全て駆除できるわけではない。今考えられている駆除の方法としては音波やフェロモンなどで誘致して、一網打尽にするというのもある。
バス釣りをする人達には、別に悪い事をしているという意識はない。そこにいる魚を釣って返した。どこが悪いの?自然に優しい事と思っている。けれど、キャッチ&リリースで魚に優しく自然に優しくというイメージはどこから来たのか。それは、ブラックバスを商品にしているメーカーや業界で、バス釣りはスポーツだとか、親子のコミュニケーションの場だとか綺麗事を言っている。
それと同じくキャッチ&リリースのイメージの裏には、釣って持ち帰られたら、またそこに放流しないといけないという思いがある。それで、例えば親子で釣りに来たとして、コミュニケーションをとる時、魚を釣って、逃がして、魚に優しくしてやれという業界の受け売りの説明ではなくて、この魚は、卵や子どもを一生懸命に育てる魚で、もともと日本にいた魚じゃなくて、人の手で勝手に連れて来られたんだよ。日本の魚をたくさん食べてしまうから、本当は日本にいたらいけない魚なんだという所までちゃんと説明してあげて欲しい。
釣り大会の開催などによって、駆除に参加する事により、漁業関係者だけでなく一般の人にも、意識を高めていって欲しい。マスコミに訴えるということも出来る。すでに今でも、駆除大会の様子が、地元のテレビ局で放映されるようになっている。
第4章 取り組みの中で
私は,外来魚問題についてブラックバスは悪者で,日本の湖にいてはいけない、と思っていたし、また、漁師さん達は外来魚が増えて困っているんだろうなあとか思っていた。それに、外来魚が増えたから琵琶湖の魚が激減しているのだと考えていた。けれど、今挙げた点はどれも少しずつ違っていた。聞き取りにいったり、何冊かの本を調べていくうちに、そうしたことが分かってきた。
バスが日本の湖にいてはいけないのは事実だけど、本当の悪者は自分達の利益だけを考えて放流禁止場所に密放流している人間達で、バスの強い環境適応力や食欲が災いしてしまったんだということで、バスに直接責任があるわけじゃないということがわかったし、困らされている漁師さん自身がバスのことを、「健気で,良い親で,顔をみてもかわいいもんや。たまたま日本に連れて来られて駆除されてしまう可哀相な魚」と言えることに驚いた。それで、漁師さんはバスという魚自身を決して嫌いな訳じゃないということが発見出来た。
また、漁師さんが大変という考えも変えさせられた。漁師にとってのバス問題という他人事な考えを多くの人がしている限り問題は解決されにくい。そうじゃなくて、自分達のバス問題としてとらえなければいけない、と言われてその通りだなと思った。
魚の減少について、外来魚が増えるのと同時期に在来種が減少していったという本もあれば、外来魚が増えるより前から魚種は減っていたと書いている本もあって混乱してしまった。これについてはいろんな考えがあるようだけど、水質悪化や環境の悪化によって、在来種が住みにくい環境になりつつあったことは事実であるということが分かった。しかし、バスやギルが猛烈な食欲を持ち他の魚を食べていることもまた事実である。それで、双方の要因が重なって激減に結びついたのだと思う。
研究する際の工夫というか目玉はやはり現地での聞き取りだったと思う。実際に琵琶湖を見て、バスやギルが泳いでいるのを見て、バスの天ぷらも食べてみて、漁師さん、バス釣りに来ていた人、両方の生の声を聞く事が出来て、とても新鮮だった。あとはネットから得た情報がとても役立ったと思う。
困ったことは特にないけれど、書きたい事が多すぎて削るのに困ったことと、このバス問題は複雑なので、人によって意見が違っていて、得た情報や知識が正反対のものがあったり、そんな時にどうしても自分の考えと近い方の考えを優先してしまいそうになって平衡のとれた見方をするのが少し難しく感じた。
第5章 これから
私は、半年間課題研究で外来魚について調べて来て、最後に、3年生にアンケートをとってみた。その中で、外来魚が増えることによって問題があるか、またどんな事が問題かと質問した。すると、10人中8人が問題があると答え、その中で半数以上の人が、魚が減る、生態系のバランスが崩れることが問題だと答えていて、結構皆今日本が置かれている湖の状態について知っているんだということが判った。けれど、これからどうしていったらいいかという問いには「駆除すべきだ」「数を制限したならいてもいい」「自分には無関係」など、色々意見が分かれた。
確かに、外来魚のこれからを考えるのは難しい。けれど、今のまま放置して、なすがままにしておいたら、本当に日本の魚は消えてしまうと私は思う。「別に日本の魚を守る必要はないと思う」「外来魚を持ち込んだのは人間なのに今さら駆除しようとするのは勝手なのでは?」という意見もあった。確かにそうかもしれない。結局日本の魚を減らしてしまった原因は人間にあるのだと思う。環境を人間の都合にあわせて開発し、在来魚のすみかを奪ったのも人間だし、自分たちの楽しみのために外来魚を持ち込んで食害をもたらしているのも人間だ。けれど、自分たちがしてきたことの誤りに気づいたときに、今さらどうしようもないからとあきらめてしまうのは簡単だけど、人間のせいで危機に瀕している在来魚を何とかして守ろうとする事は当然のことだと思う。私は、何も手を打たないで自然に任せるというきれいごとを並べてあきらめてしまう事の方が勝手で、無責任だと思う。
これからどうしていったらいいのかということについては、残念ながら、画期的なアイデアは思い浮かばなかった。だけど、自分の周りの人の意識を変えて、キャッチ&リリースをなくしていくことが、私に出来ることかなと思う。夏、琵琶湖でバス釣りをしている人と話をしていた時、中年のおじさんが近づいてきた。それで、釣り人がバスを釣り上げてそれを湖に戻したとき、おじさんが「優しいなあ」といった。私はその時それは違うっていいたかったけど言えなくて後悔した。けれど、いろんな事を知った今ならいえると思う。キャッチ&リリースは、戻された魚自体、釣られた時の傷が原因で死ぬことが結構多いし、生き延びたとしてもまた他の魚を食べるので、魚にも環境にも優しくないということ、自分が逃がしたその魚によって、また環境が破壊されるという悪循環が繰り返されていること、だからせめて釣ったのなら、責任を持って処分したり食べたりして欲しい、それが環境に対して、また自分が奪った命に対しての本当の意味での優しさであり、責任じゃないのかなと説明できると思う。そうやって、自分の家族や友達に話をして、自分は釣りをしないから直接関係ないと思う人が大多数でも、その人たちがまた周りの人に話をしていけば、いつか必ず、釣りをする人の耳にも届くと思う。そしてその人が、キャッチ&リリースをやめよう、と考えが変わったら、そしてそういう意見が浸透していったらこのテーマを調べたかいがあったなと思う。
あと、とても個人的な意見だけど、私はバスやギルが食べられるということを知ってもらうために、もっと、外来魚を料理する店や、宣伝の量を増やしたらいいと思う。外来魚はまともに食べられる魚なんだということが判ったら、少なくとも、バスは食べられない魚だからという理由で湖に戻していた人は持ち帰って食べるようになると思うからだ。これは、漁師さんたちの願いとは異なっている。もしかしたら、外来魚を商品化することと同じなのかもしれない。確かに、そうする事でさらにバス釣りに人気が出て、またバスが密放流されることになったら…と思う部分もある。けれど、少なくともキャッチ&イートという方向に釣りの流れが変わっていけば、外来魚の減少に役立つんじゃないかなと思う。でも、これも急場しのぎで決して根本的な解決法ではないと思う。
この問題を調べてきて、すごく複雑だった。例えば、同じ駆除するという目標を持っていても、駆除のためにどんな方法をとるかが立場によって違っているので、すごく難しいと思う。食品化するなどの利活用によって駆除しようとする水産試験場、それは結果的に外来魚をさらに増やすことになるという漁師さんなどの立場があって、結局すべての人が満足できる解決策はなかなか見つからないのが現実だと思った。でも、見通しは厳しいけれど、あきらめてしまって、外来魚が増えても構わないとか、琵琶湖をバス釣りの池にしてしまおうという方針にだけは決してなって欲しくない。
やっぱり琵琶湖には、たくさんの種類の魚や生き物がいる、いろんな顔を持つ湖であって欲しい、バスとギルだけの、人間にだけ都合がいい釣り堀みたいな湖になって欲しくないというのが、最終的に私がたどり着いた琵琶湖に求める姿だった。
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