和の食卓


第1章 「私なぜこれを選んだか」
 私は課題研究のテーマを‘和の食卓’でやっていこうと思いました。
このテー マを決定するまでにとても時間がかかってしまったので、資料を集めたりすることもできなくて、他の人よりスタートが遅れてしまったと思います。でも私はその時間を損したとか、無駄になったとは思っていません。なぜなら、テーマを決めるまでに先生のアドバイスを受けたり、百貨店の家具や食器の売り場でパンフレットを貰って参考にしたりして、「自分は何をしたいのか」などの迷っていた気持ちを整理することが十分できたので、それはそれで良かったと思っているからです。
 私はテーマを決めるために、自分が作りたいと思う物を紙に書き出していき、 それに関係することで何を調べられるのか、どんなことにこだわることができるのかを書いていきました。それを全部考えた上で、和食器を作ることに決めました。理由は、昔から食器を見たりするのが大好きで、工芸の授業で作った食器が家で活用されたりすることがすごいうれしいからです。そして洋食器ではなく和食器を選んだのは、もともと日本的で落ち着ける感じのものが大好きだったからです。またいろいろな形の食器で食卓を飾りたいと思った理由は、物を作ることは自分の考え方や感性などを表現して他の人に伝える手段だと思うからです。食器一つ一つには作った人の気持ちが込められていて、それが食器の良さになるのだと思います。そして、いろいろな食器をコーディネートして、テーブルセッティングをすることでも感性を表現することができると思います。その時々の気分でポイントの食器をひとつ変えるだけで全体の雰囲気が違ったものになりますし、そうすることで毎日の食事が楽しく思えたり、落ち着いたくつろいだものになったりすると思います。食事は生活の中で大切な部分なので、そのための場所は良い雰囲気であってほしいと思いますし、そうなるためにはテーブルセッティングがとても重要なものになるとも思います。もちろん人それぞれ感性が違うので、みんなが共感し合えるものはなかなかできないとは思います。それでも作品を通して自分の気持ちを他の人に伝えることはできます。だから自分で作った私らしい食器で、他の人が見ても私の気持ちが表現されている作品だと思ってもらえるような工夫のあるテーブルセッティングを作り出したいと思いました。

これが‘和の食卓’というテーマを決めた理由です。


第2章 「私の考え」

§1 資 料 収 集
 私は“和の食卓”というテーマを決めてから、和食器に関係するパンフレットや本を出来る限り見て資料を集めるようにしました。そうしていると自然と家にある食器も注意して見るようになりました。そしてその中で気に入った食器の形や柄、色使いなどをチェックしていくようにしました。また陶芸の本から装飾技法を調べていき、それを参考にして陶芸のどういった技法を使いたいか、また使うことができるのかを考えていきました。
 私が一番初めにやりたいと思ったものは“練り込み”という技法でした。練り込みは成形前に、二種類似上の異なった色の粘土を練り合わせて、互いの粘土の焼成による発色の相違を装飾とする方法で、練り込みによる模様には縞、市松をはじめ木理文、鶉文、墨流し文などがあります。異なった色土を作るのには繰り込み用顔料がよく使われます。顔料には粉末のものと液体のものがありますが、私は今回、粉末の練り込み顔料のピンクを使用してマーブル模様の器を作りたいと思いました。他にも櫛目や釘彫り、面取り、透し彫り、印花・押印、陰刻・沈彫、指押しなど素地が半乾燥の時に柄を彫り込んだりするものや化粧土を使った刷毛目、白い素地に有色の化粧土を塗り、よく乾いてから釘彫りしたり、カンナで化粧土を掻き落とす掻き落とし、印花をした上に施す象験、泥漿をスポイトなどにいれて模様を描くいっちんなどがあります。これらは素焼前に施す装飾技法です。身近なものを利用していくと、もっといろいろなおもしろい柄ができると 思います。次に素焼後に施す装飾技法を紹介したいと思います。私が素焼後の器に施す装飾技法は絵付です。絵付には下絵付と上絵付があり、下絵付は素炊きした吸水性の強い素地に絵付を施します。上絵付は素焼きをし、釉薬をかけて本焼が終了した器に絵付を施し、もう一度六〇〇〜八〇〇℃の窯で焼き付けます。上絵付は低火度の彩料なので色数も多く、下絵付よりも鮮明に発色します。私は下絵付は青色を上絵付は赤色を使用することにしました。
 また釉薬のかけ方もいろいろあって工夫すればそれで装飾を施すことも出来ます。例えば、同種の釉薬や異なった釉薬を二度、三度施す二重がけや作品の半分か一部に異なった色の釉薬を施すかけ分けなどがあります。また霧吹きなどでまばらに吹きかけることもできますし、釉薬を施す部分と何もかけない焼締の部分を作ることもできます。焼締は釉薬をかけずに、ただ堅く焼き締めただけのやきものです。綺麗ではないのですが、個性が強く、存在感があり、素朴であたたかい感じに心引かれる器です。

§2 デザイン
 私は頭の中で“和の食卓”のイメージが徐々に出来てきたので、それぞれの食器のデザインを考えていくことにました。まず食器の種類を書き出していき、どの食器を幾つ作るかを考えました。さらに大きさはどのくらいにするか、形は円型か角型か変形したものか、何色でどんな装飾技法を使用するかを自分が使うならこういう食器が欲しいという観点で考えていきました。また食器は一つ一つ気に入った個性溢れるものを選びたいと思いますが、今回の私の研究は最終的に制作した食器を用いて食卓をコーディネートするというものなので全体のバラジスも大切です。だからデザインした食器は他のどんな食器と合わせるといいのかも考え、そのことを念頭におきながら別の食器のデザインを考えていきました。組み合わせを考えていくのはとても難しいことですが、パンフレットなどを参考にして一つ一つの食器に幾つかの組み合わせパターンを考えるようにしました。例えば焼締は、個性が強く存在感のあるやきものですから、全体に重い印象にならないように気をつけて、染付や粉引、赤絵などの質感や色合いの異なったものと組み合わせることができます。私は、コーディネートの基本は白っぽいものと黒っぽいもの、無地のものと柄のあるものなどをうまく組み合わせて単調にならないように気をつけることだと思います。


第3章 「作品制作」
1.ご飯茶碗
 ご飯茶碗は毎日使うものなので、自分の使いやすい大きさや形を意識して制作したいと思っています。これは他の食器と合わせやすいものを2つ作る予定にしています。年中同じものを使うのもいいとは思うのですが、幾つか持っていると季節や気分によって使い分けてもらうことができると思います。
 1つはどんな食器とも相性がいいと思う下絵付を施します。もう1つは練り込み顔料を使って、薄ピンク色のものを作ろうと考えています。これは食卓にかわいらしさを出したいと思うときや、季節だと春に使って欲しい器です。

2.湯呑み茶碗
 湯呑み茶碗も2つ作ります。1つは円柱の形のデザインで、素焼まで進んでいます。釉薬はあめ釉をかける予定です。もう1つは下絵付を施します。

3. 箸置
 箸置は食卓を楽しくしてくれるアイテムだと思います。だから、その時々によって使い分けられるようにいろんなものを作りたいと思っています。材料や技法には特にこだわらずに、器作りで余った土などを利用して自分の感じたことなどを形に表していきたいと思います。

4.大皿
 尺皿ともいい、一尺(直径30センチ前後)の大きさの皿です。いくつかのお惣菜をバランスよく盛ったり、余白を生かして中央にこんもりと盛り付けたりできます。この皿は練り込み顔料を使って、マーブル模様のものにします。成形が終わり、マーブル模様がどんなふうになるのかは仕上がりまではよく分からないのですが、うまく出来上がることを期待して楽しみにしています。

5.中血
 中皿は直径15センチから21センチの日常よく使われる大きさの皿です。メインのお惣菜を一人前盛るのに適しています。
 これは2種類作る予定です。1つは白の素地に上絵付を施します。もう1つは繰り込み顔料を混ぜたピンク色の素地に上給付を施そうと考えています。

6.小皿
 小皿は直径10センチ前後のお皿で、大きく盛ったお惣菜の取り皿として、またお醤油を注いだり薬味を入れたり、和菓子の銘々皿として重宝します。
 下絵付を用いて絵柄の違うものを5枚ほど制作する予定です。

7.角皿
 これは渋さを感じるものを作りたくてデザインしました。一辺約11センチの正方形の角皿です。成形の後、一切削らずに半乾きの素地の上に黒化粧土をハケ又は筆でのせて素焼に入れました。その後に軽くヤスリをかけ、化粧土をまばらに削り落としてから、長石釉をかけて仕上げました。削りをしていないので、成形したときの指の跡などが残っていて、手作りの感じがあって暖かみを感じさせる角皿だと思います。

8.変形皿
 これは茄子の形をデザインしたもので、下絵付を施します。ある日、なんとなく思いついたデザインなので、自分でもどうしてこのお皿を作ろうと思ったのか分からないけど、食卓に1つあるとおもしろいかなと思います。
 私はお刺身や天ぶらなどのおかずを盛り付けたいと思うお皿です。

9.大鉢
 たっぶりした感じで普段のお惣菜でも豪華に見えます。盛り付けは中央に小高く置き、余白を十分に残すようにします。
 大鉢は釉薬をかけずに焼締にします。縁の高さは揃えずに、少し形の歪んだものにしようと思っています。

10.小鉢
 皿より深みのある器を鉢といいます。小鉢の深さは、皿が少しカーブしているくらいの浅いものから、ある程度の深さのあるものまであります。深めのものは、汁気の多いお惣菜の取り皿として、浅めの小鉢には、一人前のあえ物、酢の物、お浸しなどを盛り付けます。お皿より小鉢に盛るほうが、料理が映えます。今回は五角形のものをデザインしました。装飾技法として面取りを施すつもりです。

11.珈琲碗
 洋食器なら珈琲碗は全部同じもので揃えることが普通ですが、私はみんなが同じものを使う必要はないと思いますし、かえってみんなが違う珈琲碗を使うほうが賑やかで楽しいと思います。また、厚手のものや薄手のもの、形がおもしろい個性的なものや使いやすいものなど、いろんな種敷のものを揃えておくと気分によって使い分けられるので楽しいと思います。
 珈琲碗の一つは角柱のものをデザインしました。湯飲み茶碗や珈琲碗は円形のものが多いので、新鮮な感じがして自分でも気に入っているデザインです。たっぶり入れられるように高さを長めにしました。底は高台ではなく、面取りを施そうと考えています。釉薬は全体に長石釉を、縁と取っ手の部分はあめ釉かけようと思っています。セットでコースターも制作する予定です。これも正方形で、あめ釉をかけます。できれば真ん中のへこみの部分にガラスを入れたいと考えています。
 他にも幾つかデザインを考えていますが、まだどれを作るかは決めていません。できれば、あと2種類くらい制作したいと思っています。


第4章 「取り組みの中で」

§1 工夫
 私は今回の研究に滋賀県信楽の土を使用しています。土自体の焼き上がりは少し黄味がかった白なので白土といいます。有色の釉薬をかける場合は特に気にしないのですが、絵付は素地が白いほど絵柄がきれいに映えます。私は素地の仕上がりを白くしたいと思い、絵付を施す食器にのみ半磁土を混ぜ込む(信楽土:半磁土=6:4)ことにしました。
 私は食器の成形方法を二つ使っています。一つは土の魂を手回しロクロにのせて真中を親指で押し付けて穴を空け、両手で回転させながら成形していく方法です。もう一つはタタラ造りという方法で、土を板状にし、厚紙で作った型紙に合わせて土を切り、成形します。幾つかのパーツを張り合わせるときには泥漿を塗って接着します。大皿・中皿・小皿・変形皿・小鉢はタタラ造りで成形します。

§2 失敗
 私は作品を作り始めてから失敗ばかりしています。初めの失敗は繰り込み顔料を混ぜて作ったピンクの色土で試作した中皿です。成形して、半乾燥状態にして削りをしようと思っていたのですが、よい状態を保てるように直せていなかったらしく、一週間後に見たときには完全に乾燥してしまっていました。そのときは「なんで・・・」と思ったりして、結構ショックでした。でもよく考えるとそうなってしまったのは作品の管理を責任をもってしていなかった自分の不注意なので、今はそうなったのも仕方がなかったかなと思っています。
 次に作った角皿は失敗ではないかもしれないけど、自分が思うには全然うまくいっていないと思います。作ってるときは削りもしなくていいと思っていたんですが、素焼きの終わった角皿を見てよく考えると、小皿にするつもりだったのに中途半端な大きさに作ってしまっていたし、分厚くて重かったのになんで削らな かったのかとか思ってしまいます。
 私は6月に入ってから作品を作り始めたので、時間がなくて、それでも「何か作品を仕上げておかないと・・・」という思いがあって、早くしようと急ぎ過ぎてしまい、中途半端なものを作ってしまったと思います。もっと一つ一つの作品にしっかり時間をかけて仕上がりの早さより、仕上がりの良さにこだわればよかったと思います。

§3 学んだこと
 作品制作をしていると先生がいろんなことを教えてくれます。例えば陶芸の技法や成形するときの注意点や作品に施す工夫方法など、今まで私が知らなかったことをいろいろ話してくれてとても勉強になります。
 その中で一番私の印象に残っている話があります。それはデザインした食器を実際に作ってみて使いにくく思ったときにどうするかという話でした。使いにくいからといって、すぐに使いやすさを優先したデザインを考える人もいるかもしれませんが、先生は簡単に諦めないで、その食器のどの部分にどんな工夫をしたら使いやすくなるのかをまず考えるそうです。私はその話を聞いたとき、すごく前向きの考え方だと思いました。また、自分のデザインをとても大切に考えていて、自信をもっているのだとも思いました。この話は、私もそういう考え方ができるくらい自信のもてるデザインの作品を制作したいという目標をもつきっかけになりました。


第5章 「これまでの成果」
 これまでの研究をふり返ると、自分がこの課題研究をどれだけあまく考えていたのかということを嫌なくらい感じます。始めの頃、私は作りたいもののことばかり考えていて、それを作ることの大変さや、時間の問題などのことをあまり考えませんでした。陶芸はほとんどの作業が学校でしかできないので、夏休み中は作業を進めることができませんでした。それでもその時の私は、二学期に頑張れば大丈夫だろうと軽く考えていました。しかし、実際に二学期になると進路のことで落ち着かなかったり、その後も文化祭の準備で忙しかったりして、なかなか課題研究だけに集中することができませんでした。文化祭が終わって、残りの時間を考えてみると、余裕があるとはとてもいえない大変な状態になっていました。
 制作する予定の食器をすべて作ることができないかもしれないと真剣に考えてしまったほどでした。今は少し制現に目処がついてきましたが、それでも授業時間だけでは足りないので、少しでも放課後残れるときはできるだけ残って作業を進めるようにしています。追い詰められる前にちゃんとした計画を立てて、研究を進めていればこういった状態にはならなかったのにと思います。これまでの私はとても反省することばかりです。


第6章 「これから」
 最近、私は家の食事であることに気づきました。それは毎日使われる食器がほとんど決まったものだということです。中に入っているおかずだけが変わっていて食器はいっも同じものが使われています。だから私の家の食器棚には沢山の使われない食器が眠っています。今まで何か料理を盛られて食事に使われたところを一度も見たことがない食器があったりもします。そういった家は結構あると思いますし、普段使う物にはあまりこだわらない人って結構多いと思います。でも私はよく使うものだからこそこだわってほしいと考えます。食器は使うために買った物なのに、ずっと食器棚で眠っているなんて、すごいもったいないことでだとと思うし、使わないのはその食器を作った人に失礼だと私は思います。私は食器の楽しみはそれを実際に使うことだと思っています。使い方は人によって様々だけど、使うことで愛着を感じるようになったりして、使っていなかったころより良く見えてくると思います。また料理自身も盛り方によって見た感じが全然変わるので、いろんな食器に盛って試していったりすると食器を選ぶことがすごく楽しいものになってくると思います。食器は使ってこそ価値があるものだからいっぱい使って欲しいし、みんなに使いたいと思ってらえる食器を作っていきたいと 思います。
 私の作品のほとんどはまだ完全に仕上がっていません。これから制作するものもありますし、制作途中で乾燥させているものや素焼の状態のものもあります。これらの作品を1月の発表大会の日までに完成できるよう、しっかりとした予定を立てて、これからどんどん作品を仕上げていきたいと思います。
 私が今回の研究を進めていく上で一番大切にしたことは、私らしさが表現された食器を作るということでした。この思いは研究を始めたときからずっと変わってはいませんし、これから制作する食器も私らしさが溢れるような作品にしたいと思っています。
 大好きな陶芸をすることが高校で最後になるかもしれないのはとても残念に思うけど、私はこの研究を進めていくうちに自分がすごく成長できたと思っています。課題研究は普通の高校ではできないことを経験できる貴重な機会だし、私にとってもプラスになることがたくさんありました。辛いこともあったけど、陶芸をすることの楽しさや、作品が少しずつでき上がっていくときの喜びはそれを超えるものとなっています。課題研究は私の中でとても大きな位置を占めている大切な経験だと感じていますし、いつまでも大切にしていきたい思い出です。


≪付録≫

 *成形

・粘土の塊による成形
 粘土を慢頭状の塊にして手ロクロにのせて真中を親指で押し付けて穴を開け、両手で回転させながら成形する方法で、茶椀を作る場合に多く用いられます。粘土を両手で締めるようにして高さを出していくことがコツです。

・粘土夕タラ造りによる成形
 粘土を帯状または板状にしたものをタタラといいます。またタタラをヘゴ土ともいい、帯状また板状の粘土から成形する方法をタタラ造りといいます。四方形の箱などの角物や陶板などの成形に適した方法です。タタラの造り方は、粘土を手で叩きながら板状に平たく延ばし、ヘラで必要な形に切って造る方法と、同一の厚さのものを多数つくる時には、粘土の両側に同じ厚みの木片を重ねて置き、それを定規として針金で粘土の先から手前に引き切る方法があります。この定規の木片をタタラ板といいます。タタラ造りは大きさ、厚さを決めて一気に造るようにします。一種の曲輪造りによる方法で桶形のものも作れますが、土練りを完全にして可塑性を強くしておかないと割れやひびが出ます。割れやひびの表面はこしげ板でコーチングするとよく、合わせ目 はドベ(泥漿)を塗って接着します。


 *乾燥
 成形した作品は、必ず陰干しにして風が当たらない場所で乾燥させます。粘土には35%もの水分が含まれていますので、特に厚手のものはゆっくりと時間をかけて乾燥させなければなりません。乾燥が不十分だと、焼成時に水分が熱のために膨張して亀裂が入ったり割れたりします。また一方からの風にも注意し、均一に乾燥することが大切です。


 *素焼
 素焼は700〜800℃の温度で焼成します。松原高校の窯では780℃で素焼きをしていま
す。これは素地を丈夫にするためと、釉薬を施すのを容易にするために吸水性を増すための工程
です。素焼の注意点は、まず作品を窯詰めする前に充分乾燥させることです。次に窯詰めは欠け
たりしないように注意しながら重ねます。薄手の物や小物は重さがかからないように工夫します
。素焼きのときは窯いっぱいに詰められますが、熱が平均に満遍なく行き渡るように窯詰めし、
素焼焼成は徐々に温度をあげて焚き上げる事が大切です。素焼温度は高すぎると吸水性がなくな
り施釉しにくくなり、600℃以下だと焼締めが充分でなく施釉中に壊れる事があります。焚き
上げた後は焚口や蓋を密閉して、自然に平均に冷えるようにします。急に冷めた空気を入れると
「冷え割れ」になることがあります。大きい皿は特に注意が必要です。


*施釉

・浸しがけ
 釉薬の槽中に作品を突っ込んで一定の時間を測定し引き上げる方法です。覆す時間の長短で釉薬の厚みが変わります。この方法は高台のつかみやすいものでないと難しく少しコツが必要ですが、熟練すると平均にムラなく施釉出来るので広く用いられています。

・吹きがけ
 スプレーガンを使ってコンプレッサーで吹きつける方法です。形の大きいものや吸水性のないものの時に釉薬をやや薄めに溶いて吹きつけます。吹きつけは左右上下均一になるよう心掛けます。


*本焼
 本焼の焼成温度は1000℃を越える高温です。松原高校の窯では1230℃で本焼しています。この高温の窯の中でいろいろの色に発色するわけですが、それは釉薬の中に含まれる金属の変化によって生ずるものです。しかも同じ釉薬であっても、窯焚きの時の酸素供給の仕方で全然違った色に変化します。


*装飾技法

・練り込み
 鉄分の多い土と白土、または白土と白土に紅柄(酸化鉄)の粉末を混ぜた土を用意して練り込みますが、繰り込みの仕方で様々な模様が得られます。例えば二種類の色の粘土をタタラに切って交互に重ね合わせて、その接着面に垂直に切れば縞模様のタタラが得られます。収縮率が同一の粘土を用いないとひび割れになったりするので注意します。また同一の粘土に酸化金属の粉末を混ぜて色土を作る方法があり、それは陶土に顔料(絵の具)を混ぜて色土を作り、その色土で作品を作ることで、なるべく白い粘土100に対し、繰り込み顔料5〜10%をよく混ぜ合わせて色土を作ります。釉薬は透明性のものを薄く施した方が練り込みの効果がよくでます。

・櫛目
 櫛目は櫛を用いて成形直後に施す場合と、半乾きの時に施す場合があります。粘土が柔らかい時に施すと変形しやすいですが、深い生き生きした櫛目が得られます。櫛はつげ製のものがよく、櫛日の荒さは好みで工夫します。

・釘彫り
 釘彫りは、櫛目と同様に素地がやわらかいうちに施します。釘先と頭の部分を自由に使って彫ります。三寸から五寸釘ぐらいが使いやすく、櫛やヘラを併用すると変化に富んだものになります。釘は力強いですが、ときには下品になるので注意して使います。灰釉、飴釉、緑釉、を施すと彫った部分に釉がたまってより効果的です。黒釉や失透釉のときは深く刻むようにします。

・面取り
 面取りも素地が軟らかいときに施します。針金や鉄ベラで上部から一気に切り落とすようにして施します。成形のとき面取りする分だけ厚めに成形しておきます。面取りは面取りした面の形や量がポイントです。面取りは作ってみて気持ちのよい技法です。

・透し彫り
 透し彫りの素地は厚めに成形しないと焼成の時にくるいができます。素地が生乾きのときに槍ベラや彫刻刃で模様を彫り抜きますが、模様の中心に穴をあけておくと彫りやすく、模様の内外が同じ大きさになるように、刃は直角に切り込むようにして、釉薬も厚目に施すと切り口が鮮やかな効果となります。浮彫りと透し彫りを併用すると、より重厚な装飾性が得られます。透し彫りは、筆筒などの文房具、菓子鉢、花器に多く施されます。

・印花・押印
 生乾きのときに施します。木印、素焼印、石膏印をやわらかい素地に押して文様とする方法です。木印の場合は、朴や黄楊が多く用いられ、素焼印、石膏印も自分で考案した文様を彫りつけて用いると楽しいものが出来ます。印を押すときに印の方に片栗粉をふっておくと土ばなれがよく、印花・押印も粕薬が印の部分にたまり美しい効果が得られます。

・陰刻・沈彫
 素地が生乾きのときに彫りたい模様を釘で線ぽりして、カンナ、槍ベラ、彫刻刀などを使用して浮彫又としたりする技法で、大胆な彫り方が効果的です。

・指押し
 ただ指先で粘土を押して模様をつける素朴な技法ですが、やきものらしい力強さや暖かみがでて、時により何よりも効果のある紋様となります。

・刷毛目
 稲の穂をたばねた刷毛で化粧土の跡を残しそれを装飾とする方法です。

・掻落とし
 掻落としの手法は、白い素地には鉄分の多い泥漿を有色の素地には白泥を化粧塗りしてほどよく乾いたら、釘彫りしたり、カンナで化粧土を掻落として文様とする方法です。

・象嵌
 象嵌は、印花や刻文をつけた上に白泥(または素地の色とは異なった泥漿)を塗り、少し乾燥させてからカンナで白泥を削り取ると、印花や刻文の部分に自泥が残り文様が現れるという装飾法です。象蕨で注意する点は素地の土と象供する土の収縮率を同一にすることで、極端に差があると象嵌文様の境目にひびができ たり、はがれたりします。

・いっちん
 化粧泥を吸入したゴム製のスポイトなどで、模様を描きます。盛り上がった線が特徴です。鉄分の多い素地の上に白い泥漿で描いたり、反対に白い素地の上に鉄分の多い泥漿で黒い線棟様を描いたりします。

・下絵付
 素焼した吸水性の強い素地の上に書くので、筆が吸われて措きにくい。主な彩料には呉須と酸化鉄(紅柄)があり、前者を染付、後者を鉄絵といいます。染付は酸化ゴハルトを含む呉須で描いたものです。不純物の混じった天然の山県須の中には面白い発色効果のでるものがあり。呉須は茶の煮出し汁で溶くと、タンニンの作用でのびもつきも良く、描きやすくなります。呉須は粒子が細かければ細かいほど発色がよく、充分にすってから用います。釉薬は灰粕系の透明軸を少し厚めに施します。染付の焼成は還元炊成です。
 鉄絵は黒色または褐色の発色です。これも純粋の酸化鉄よりも、天然の鬼板のようなものの方が味わいが出ます。

・上絵付
 本焼が終了した釉薬の上に描いて、上絵付用の錦窯でもう一度600〜800℃の窯で焼き付けます。低火度の彩料であるだけに色数も多く鮮明に発色しますが、食器のようなものの見込みへの使用は避けます。これらの絵付には普通の墨や食紅を用いるのが安全です。筆は犬の毛が含みが良く、濃淡は彩料の濃度のはか、運筆の速度で加減します。

・二重がけ
 同種の釉薬や異なった釉薬を二度、三度施して装飾とする方法です。

・かけ分け
 作品の半分に、または一部に異なった色の軸薬を施し片身替わりにする方法です。


<<参考資料)>>

*楽焼の技法  大樋年朗 著
*人気の和食器と器づかい  主婦の友社

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