教職員おススメの一冊

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教頭 梶田 英志:クリスチャン・ジャック著
         『太陽の王ラムセス』

 子供の頃から古代エジプトの世界観が大好きで「ツタンカーメンの謎」等に 心を惹かれワクワクどきどきしていました。 この本に出会ったのは14年ほど前ですが、今でも時々読み返すほどお気に入りの1冊です。

 「太陽の王ラムセス」は古代エジプト第19王朝三代目ファラオである、ラムセス二世の話です。 日本ではツタンカーメンが有名ですが、ラムセスはヨーロッパでは一番有名なファラオだそうです。 この本は、古代エジプトの暮らしや世界観が忠実に著されていて、友情や恋愛、 そして歴史に裏付けられた政治など行ったこともない古代エジプトの風景が浮かんできます。 詳しい歴史知識がなくても十分に楽しめる作品です。 全部で5巻あるのですが、一気に読み終わってしまうくらい本の世界の冒険を続けたくなるような小説です。


教諭 藤下 功一:ティク・ナット・ハン著
         『仏の教え ビーイング・ピース ほほえみが人をいかす』

 著者は1926年生まれのベトナム禅の僧侶です。日本ではあまり知られていませんが、「行動する仏教」をかかげて、難民救済・平和活動に取りくんで来られました。ふだんはベトナム語で「先生」を意味する「タイ」と呼ばれています。その活動は、あのキング牧師にも大きな影響を与え、キング牧師は1967年度のノーベル平和賞に「タイ」を推薦しました。現在は、フランスを中心に活動しておられます。

 この本は、数ある「タイ」の本の中で、唯一文庫化されている本です。内容は難しくありません。優しい言葉で一人ひとりが幸せに生きるために何をすればよいかを説いています。言葉は難しくありませんが、その実践は大変難しいものです。私も、日々の生活の中で、実践できていることはわずかしかありません。しかし、一人でも多くの人がわずかずつでも実践できれば、幸せに近づき、一人ひとりのつながりである世界が平和に近づくと思います。世の中が混迷し不安である今だからこそ、多くの人に読んで欲しい本です。

「永遠とは 今 この瞬間 触れることができるもの宇宙とは
              今 この手のひらが触れるもの」(「タイ」から便りより)


教諭 中島 正家:安部 司著 「食品の裏側」

 あなたが今日、食べた物の中に食品添加物はいったい何種類入っていたでしょうか?
 著者の安部司さんは食品添加物のトップセールスマンでした、食品添加物の神様とまで言われるほど、食品添加物を熟知し、お客さんのニーズにばっちり合った商品を紹介し、業績をのばしていました。しかしある日、自分の娘が食品添加物まみれのミートボールをおいしそうに食べていたことに衝撃を受け、翌日退社。その経験から食品添加物とは何か?どのような付き合い方をしたら良いのか?を広める活動をされるようになりました。

 この本では食品添加物とはいったいどのように使われているのか?どういう効果があるのか?分かりやすく書かれています。今や食品添加物は切っても切れないものになりました。この本を読んで、食品添加物との付き合い方を考えてみませんか?


養護助教諭 高本 幸:坂木 司著 『青空の卵』

 本の帯に「ひきこもり探偵シリーズ」と書かれてあり、少しビックリしてしまう本です。

 主人公は、自称ひきこもりの鳥井と、その鳥井を「理想の友人」だという、優しくて人付き合いの上手な同級生の坂木。坂木は自分の周りで起こる日常の謎を鳥井に話すのですが、鳥井はその謎をあっさりと解いてしまう名探偵なのです。そんな日常の謎を通して、様々な人と出会うことによって成長してゆく2人の姿を描いた、「殺人」の起こらない癒し系ミステリーです。

 『仔羊の巣』と『動物園の鳥』のシリーズ3部作になっていますが、短編小説になっているのでとても読みやすいと思います。最後の『動物園の鳥』では、鳥井がひきこもりになった原因と向き合う姿が描かれているので、ぜひ最後まで読んでほしいと思います。


実習教員 岩田 尚道:山田均(やまだ ひとし)著 『タイ語のかたち』

 日常の生活の中で、ふと目に入る日本語以外の文字を見たときに、「いったい、何て書いてあるんだろう?」「どこの国の文字なんだろう?」といった、ちょっとした好奇心から手にとった本でした。その時に知りたいと思った国の文字が、たまたまタイという国の文字だったので、『タイ語のかたち』という本を選んだのですが、日本の文字とは違う国の文字を専門的というよりも、とっつきやすく身近にあるものから紹介されていて、「なんだ、そういうことが書いてあったのか」と知るのが、とても面白かったです。

 内容としては、タイ料理のお店の看板や料理のメニューを見て、どんな料理なのかを推理してみたり、手書きの文字や数字を読んでみたり、自分の名前をタイの文字を使って書いてみたりなど、日本語でもなく英語でもないタイという国の文字や言葉や文化に触れる事ができる入門書です。


教諭 古川 雄将:『Newton別冊 ブラックホールとタイムトラベル』

 ブラックホールというのは、恒星が朽ち果てた後の姿で、強烈な重力の塊です。1秒で約30万km(地球の赤道七周半ぶん)進む光でさえ引き込まれてしまうので、ブラックホールからは光が反射しません。これがブラックホールの色と名前の由来です。スポンジに鉄球を置くとスポンジがへこむのと同じ様に、強力な重力は空間をねじ曲げます。GPS衛星などの人工衛星やロケットなど宇宙空間を動く物は、空間のゆがみを正確に計算して運用されています。人工衛星の技術の延長線上あるテクノロジーにタイムマシンがあります。

 「空間のゆがみが、時間の長さにどうの様な影響を及ばすのか」や、「タイムマシンの理論」、「恒星の一生とブラックホールの誕生」など、最先端の物理学理論が、美しい図で解りやすく説明されています。Newton別冊シリーズは、眺めているだけで好奇心が刺激されるオススメの本です。


教諭 宮林 大:『おれは非情勤』

 著者の東野圭吾といえばドラマ化された「白夜行」や「探偵ガリレオ」、映画化された「麒麟の翼」などが有名です。ですが、これらは活字が多いので、苦手な人には読みにくいと思います。「おれは非常勤」は東野圭吾が小学生向きに書いた小説なので、比較的読みやすいです。活字を苦手としている人に特におススメです。

 この作品は推理小説なので、漫画の「名探偵コナン」を読むような感覚で読めると思います。また、舞台は小学校、主人公は先生です。先生といえば、どちらかといえば、情熱的なイメージがあるかと思いますが、この主人公はそうではありません。生徒の皆さんは、普段は生徒の立場ですが、この作品を通じて少し先生側の視点を感じてもらえたら良いかなと思います。情熱的ではないけど、人間味あふれる主人公の行動と推理を楽しんでもらえたらと思います。


教諭 島内 健:小山正辰著『空手道の教育力』

 『空手』と聞くと、怖い、痛い、というようなイメージだと思います。確かに、怖い、痛い、というのは全否定はできません。私自身、空手道を35年ほど続けておりますが、それらの感覚は試合の瞬間や稽古の瞬間でおきる一瞬の感覚であり、それ以上に『空手道』から学ぶものが数多くあります。体力や技術はもちろん、心も同時に鍛えられます。この心を鍛えることによって、人間力も鍛えられ「生きる力」に繋がっていると思います。

 この小山先生の著書では、『空手道』を活かし若者の人間力の向上に大いに参考になる一冊です。この混沌とした現代社会の中で『空手道』を通して、空手を使う使わないではなく、いつ何時起こるかもしれない予測不能の事態に、備えておく姿勢を持てることができるようにし、自分の心と体を守り、他者を尊重する。という武道教育を説いています。また、空手技術の基本もわかりやすく解説されてます。教育関係者の方は是非ご一読ください。


教諭 田中 恵:『枕草子』

 『枕草子』といえば「何かやったことある」くらいの印象で、内容を覚えている人は「春はあけぼの」「かわいいもの」「気に入らないもの」など、自分の感じたことが好き勝手に書いてある文章、と思っている人が多いかと思います。日本の随筆の元祖で、今でいうとブログみたいに、感想や思い出話などが色々書いてあるのですが、書かれたのは千年も前。言葉は古いし、文章を書いた人がどんな人だったか、現代語訳しながら想像するのは難しいことだと思います。そこで私がおススメしたいのは、2013年に出版された、冲方 丁(うぶかた とう)の『はなとゆめ』です。

 この作品は『枕草子』を書いた清少納言の視点で書かれた話で、「枕草子」には書かれていない、清少納言の人生や内面が描かれていて、清少納言が「尊敬する人のために『枕草子』を書く人」として表現されています。ただ感じたことを書いただけ、と思っていた人には新鮮だと思いますし、古文の時代の人も生きていたんだな、と感じられるきっかけになるのではないかと思います。


教諭 片桐:森川幸人著『ヌカカの結婚』

私がおススメする1冊は、森川幸人著『ヌカカの結婚』です。この本は、結婚にまつわる13の物語から構成される「絵本」です。一見しあわせそうな絵本に見えますが、中にはグリム童話さながらの奇想天外な物語が満載!不思議なお話ばかりですが、実はすべての物語は実在する昆虫の生態を基に作られたものなのです。物語を通して世にも不思議な昆虫の生態に迫ってみませんか?

試し読みがこちら(http://www.1101.com/morikawa/nukaka/01.html【ほぼ日刊イトイ新聞】サイト内)でできます。


教諭 仲尾 久美:灰谷健次郎著『兎の眼』

《本文より引用》"小谷先生はアリに巣作りをさせるためには、観察ビンのまわりに黒い布をまいておくとよいという説明をしていた。なにげなく前の子どものビンをとって話をはじめて数分たったとき、とつぜん鉄三が立ちあがった。そして、あっというまに猟犬のように小谷先生にとびかかった。…(中略)…そのつぎにおそわれたのは文治だった。文治がひめいをあげたとき、かれの顔は血だらけになっていた。"《引用終わり》

 1年4組担任の小谷先生は、医者のひとり娘で大学卒業後すぐに結婚し、その10日後に新任教師として工業地帯にある姫松小学校に赴任した。鉄三に困惑しながらも、「ああいう子にこそタカラモノはいっぱいつまっているものだ」という“教員ヤクザ”こと足立先生の言葉の意味を考え始める小谷先生…。

 いろんなことを考えさせられる一冊です。


教諭 三村 勇貴:星新一著『ボッコちゃん』

 私は高校生の頃、約一時間ほどかけて電車で通学していました。今とは異なり、携帯電話もなく、電車の中で過ごす時間はとてものんびりしたものでした。月曜日はジャンプを、水曜日はサンデーとマガジンを読むのに忙しいのですが、火、木、金、土曜日(土曜日は半日授業でした。)が暇で仕方がありません。

 そこで、図書館で借りた本を読むことにしました。いろいろ読みましたが、その中でも好きだったのは星新一が書いた本です。星新一はショートショートと呼ばれる、短い小説を数多く書いています。オチがあり、おもしろおかしく、気軽に読める小説がたくさんあります。本が嫌いな人や、暇な時間を持て余している人に特におすすめします。


教頭 松島 愼一:北杜夫著『どくとるマンボウ航海記』

 私が高校1年生の時、現国の先生は授業の初めに本の紹介を短時間ですが、よくしてくれました。私は読書があまり好きではありませんでしたが、その先生のおかげで読書をするようになりました。ある時は、夢中になり徹夜をしたこともありました。その中で夜桜の皆さんにお勧めなのは、北杜夫著の「どくとるマンボウ航海記」です。

 どくとるマンボウこと北杜夫氏が水産庁の漁業調査船に船医として乗り込み、アジア・ヨーロッパの諸都市を寄港地として訪れた経験を書いた航海記です。医者として船に乗ったのに、病気や怪我の人がでないかとドキドキしたとか、 いろんな国の港での出会いや出来事がユーモアたっぷりに書かれていて、楽しく読めました。ぜひ皆さんも読んでみてください。


准校長 大崎 年章:志賀直哉著『城崎にて』

 私のお勧めの一冊は、志賀直哉著『城崎にて』です。

 志賀直哉は「小説の神様」として芥川龍之介や夏目漱石にも絶賛された作家である。私は高校時代に国語の教科書でこの作品と出合い、他の作品にも没頭したものである。正に心境小説の極致でもある。

 『城崎にて』は父親との確執から精神的に追い詰められた志賀が電車にはねられ、但馬の城崎温泉に後養生に訪れた時の話である。宿泊先の旅館(三木屋)での蜂の死骸に死への静かさを感じ、川で首に串が刺さってもがき回る鼠の生への執着を恐ろしく思う。また、いもりを驚かすつもりで投げた石が偶然に当たっていもりを殺してしまう。一旦死に直面した後の直哉の心は、これらの事象を通し、生と死は両極にあるのではなく、それほどの差が感じられない透徹した心境になるのである。

 なお、私は三木屋も訪ねたが、志賀が使った書斎は焼失し無いとのこと。奈良では志賀直哉の旧居「高畑サロン」が見学できる。