本日、大阪府立住吉高等学校は第66回入学式を挙行することになりました。ご多用のところ、ご来賓としてご臨席賜りました大阪府教育委員会ご代表をはじめ、平素よりご支援を賜ります地元中学校のご代表、本校のPTA、後援会、同窓会のご代表の皆様に、厚くお礼を申し上げます。
今、ようやく桜の花も咲きそろい、生きとし生けるものすべてが躍動を始める春がやってまいりました。しかしながら、先月の11日、東日本巨大地震と、それに続く津波は、我が国史上例をみない震災となりました。例年、春は希望に満ちた季節と言われますが、多くの人たちが尊い命を亡くされ、何万人もの人たちが必死の思いで生きておられる今、我が国は決して希望を捨てない、日本に住むすべての人々が希望を持ち、新たな社会を築こうという春になりました。
ただ今、国際文化科160名、総合科学科120名、計280名の入学を許可いたしました。保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
本校は時代の要請に応えるべく、グローバル社会で活躍できる人材育成と、科学技術立国の我が国に不可欠である有用な人材育成をめざして平成17年に「国際・科学高校」として改編されました。平成19年度より、文部科学省からスーパー・サイエンス・ハイスクールの指定を受け、最先端の科学教育を実践する学校として今年で5年目を迎えます。また平成20年度からは、ユネスコ憲章の理念を実践すべく、平和的な国際交流活動を行うユネスコ・スクールの指定を受けています。さらには、本年度、大阪府教育委員会から「使える英語」教育のいっそうの強化をめざして、イングリッシュ・フロンティア・ハイスクールの最も高いレベルを目標とするG3校の指定を受けました。伝統ある住吉高校は、これまでの高い水準の教科指導を維持しつつ、紹介した3つの指定にふさわしい豊富な教育活動を展開し、実践してまいります。
保護者の皆様の期待に応えられるよう、豊かな人間性を育て、内面的成長を育むとともに、現在の日本が置かれた困難な時代に、高い志をもち、社会のリーダーとなる人材に育つよう、これからの3年間、全教職員は保護者の皆様との連携を深めながら、生徒の成長を共に支え、責任をもって教え導きたいと存じます。
さて、本校第66期生として入学された280名の皆さん、住吉高校へのご入学を心からお祝い申し上げます。教職員並びに在校生は皆さん方をおおいに歓迎致します。皆さんは、高い倍率の選抜を突破し、見事、住吉高校に合格されました。これからは住高生として胸を張って高校生活を踏み出して頂きたいと思います。皆さんのこれまでの15年間の人生は、比較的順調に過ごしてきたかもしれません。素晴らしいことです。しかし、それは自分自身の力だけで達成できたとは言えないと思います。ご家族・保護者の皆さんや中学校の先生方から温かく見守られ、支えていただき、皆さんの才能を引き伸ばしてこられた結果だと思います。
そして、今日、住吉高校に入学した日、皆さん方は真に自立すべき時を迎えました。皆さんにとって住吉高校での学校生活は変化の始まりです。これからの3年間、本校で可能な限り多くの経験を積み上げてほしいと思います。本校では、1年生全員での実験合宿・英語合宿のほか、つくば研修やオーストラリア語学研修、さらに韓国・台湾の姉妹校との国際交流など、他校では考えられない多くの活動を行っています。また、普段の授業でも、SSH指定校、ユネスコ指定校として、最先端分野で活躍する先生方、特に住吉高校の先輩を中心に講演を聞く機会や直接指導を頂ける機会がたくさんあります。昨年度は東京大学、大阪大学、国立天文台等の本校OBの先生、さらに世界を舞台に活躍されている先輩に指導を頂きました。一昨年はテレビや新聞でも紹介されましたが、ノーベル化学賞を受賞された下村博士がアメリカから母校である住吉高校にお越しいただき、お話しを頂きました。
このように、他校では経験できない、ほんものの学びが住吉高校には数多くあります。しかし、このようなすばらしい経験を自分の学びや成長につなげられるか、それとも単に楽しい学校行事として高校時代の思い出にとどまるか、それは皆さん方次第です。
先日、今年の卒業生と会って、たいへん嬉しい話を聞かしてもらいました。卒業生のほぼ全員が住吉高校の3年間を満足し、入学して良かったと答えてくれています。しかし、もっと嬉しいことは、「住吉高校での3年間で、自分の将来や自分の人生について目標が見つけられたことが良かった。」と話してくれたことです。現に、今年卒業した63期生は、震災の翌日からボランティアとしての募金を始めたという報告を受けました。今では、あちらこちらで募金活動が行われていますが、高校生として真っ先に、住高生が立ち上がり、他校の生徒や大学生にも積極的に働きかけたというのです。日に日に活動に参加する63期生が増え、阿倍野や難波で募金活動を続け、多額の浄財を集め日本赤十字に送ったということです。これが、住高生なのです。
人は、いろいろな場面で困難なこと、いわゆる「逆境」と言える場面に出会います。この逆境は、それぞれの人に対して、その成長のために必要な試練を与えていると考えられなくもありません。今、日本は大震災により戦後最大の「逆境」に立ち向かっています。この逆境を乗り越えるためには、これからの社会で活躍する有能な人材が必要です。住吉高校で学ぶ皆さんは、まさにこれからの社会を担う有能な人材でなければなりません。そのためには、3年後の卒業に向けて、今から2つの意識をもってください。まず1つ目は、1年生の今からしっかり勉強し、学ぶこと。社会に通用して有能な力を発揮するためには、高いレベルの知識と技術が求められます。入学した皆さんの多くは国公立大学への進学を希望していることと思います。高いレベルの教育を受けるためには、それなりの努力は不可欠です。幸い、本校は、皆さんが自ら学ぶという環境が整っています。本校の自習室は、質と量で府立高校では屈指の環境を整備しています。これらを大いに利用してください。
そして、もう一つ、本校には充実したたくさんの行事があります。様々な研修や合宿、国際交流に積極的に参加することは、皆さんにとってかけがえのない経験となるにちがいありません。また、本校にはたくさんの留学生が世界から来られます。今回のイングリッシュフロンティアハイスクールの指定でも、いろいろな場面で英語を用いる機会が増えることでしょう。皆さんの積極的な意識と姿勢は、皆さん方の自信につながるだけでなく、大きな糧となることでしょう。
江戸時代の末期、混乱する幕末に大きな影響を与えた吉田松蔭という思想家が現れました。彼は、「順境なる者は怠りやすく、逆境なる者は励みやすし、怠ればすなわち失い、励めばすなわち得るは、これ人の常なり。」と言っています。「人間は、順調で恵まれているときはともすれば努力を怠り、恵まれていないときは逆境に打ち勝つために努力する。努力しなければ失うものも大きく、励んで努力をすれば得るものも大きい。」というのです。人間は、苦しいとき、逆境のときこそチャンスが巡り、努力する時だということを示唆しています。今、まさに日本は逆境の時代だと言えるでしょう。これからの社会で活躍する皆さんが、住吉高校で最高・最大の励みをしてくれることを期待して、入学式の式辞といたします。
平成23年4月8日 大阪府立住吉高等学校長 紺野 昇