卒業式式辞

 本日、ここに大阪府立高槻南高等学校第三十回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、大阪府教育長 竹内脩様、大阪府議会議員 竹本寿雄様、吉田利幸様、宮原威様、大阪府教育委員会高校改革課参事 荒井大作様、首席指導主事 植野克美様、上甲俊清会長を初めとするPTA役員の皆様、友田尋子会長を初めとする同窓会役員及び同窓会員の皆様、地元の高槻市立中学校・小学校・幼稚園の校園長様及び教職員の皆様、姉妹校であるトゥーンバ高等学校のズィルム校長先生とクリステンセン先生、大阪府立槻の木高等学校長様及び同校PTA会長様、本校の学校三師の先生方、歴代の校長先生及び旧教職員の皆様など、多数のご来賓のご臨席を賜りました。卒業生の前途をご祝福いただきますことに、高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 保護者の皆様方、まことにおめでとうございます。ただいまご覧いただきましたように、大阪府立高槻南高等学校第三十期生、二百三十名に卒業証書を授与いたしました。お子さま方が、ここにめでたく卒業を迎えられましたことに対し、心からお祝い申し上げます。
 この三十期生は、本校が再編整備の対象校と決定された後に、本校を選択し、進学してきた生徒です。本校への進学を決意されるには、様々のご心配もあったのではないかと推察いたします。三年前のPTA総会では、本校の教育環境へのご懸念を表明された保護者の方もありました。そうしたご懸念に対し、「高槻南に進学してよかった」「高槻南を卒業できてよかった」と言っていただけるよう、大阪府教育委員会のご支援もいただきつつ、本校の教職員一同、精一杯の努力をさせていただきました。また、本年は、本校最後の年だと言うことで、例年にない多くの大規模な学校行事を実施いたしました。保護者の皆様におかれましては、そのいずれにも積極的にご支援いただき、ご参加もいただきました。これは、保護者の皆様の、生徒に寂しい思いをさせたくない、生徒を励ましたいとする暖かい気持ちのあらわれであったと思います。、学校行事のみならず、本日も校舎に掲示しております大横断幕による生徒の激励や朝のおはよう運動などアイデア一杯のご支援もいただきました。そうして今日のこの日を迎えることができたと考えております。PTA役員の皆様を初め、保護者の皆様から賜った数多くのご支援・ご協力に、厚く御礼申し上げます。
 さて、卒業生の皆さん、あらためて卒業おめでとうございます。この三年間を振り返ってみると、あなた方は後輩がいない学年であり、寂しい思いをしたことも多々あったと思います。しかし、一方、その危機感からか、学校生活のすべての局面において、よく頑張りました。その最もたるものは本年度の体育祭や文化祭であったと思います。あなた方が「高南魂」として示した頑張りは、三学年揃っていた時にも勝るとも劣らないものでした。また、この学年は三年間を通じて、遅刻の大変少ない学年でした。学校行事のみならず学業の面においても、学校生活における望ましい基本的姿勢がよく維持されていたと思います。本日のこの喜びは、あなた方一人ひとりの努力の結果であります。さらに、先ほどお話ししたことでわかっていただけたと思いますが、あなた方の周りの人々の支えがあって実現できた喜びでもあるということです。そのことに思い至ったときに、この喜びが個人のものだけにとどまらない大きな価値を持つものであることがわかると思います。あなた方は、今日大きな値打ちを持つ仕事をひとつ成し遂げたのです。そして今日を一つの区切りとして、明日から人生の新たな舞台に立ち向かうこととなります。
 新たに旅立つ皆さんの今後に対し、次の言葉を贈りたいと思います。「強い意志と弱い意志の相違は知的なものであって、それはどれほど粘り強く十分に結果を考え抜くかという点にある」という言葉です。もともとは教育学者のデューイの言葉ですが、この言葉を借りて、私の思いをお話したいと思います。現代は日にちの変化の大きな社会です。少子高齢化や高度情報化、地球規模の環境問題など課題が山積し、その変化のスピードは大変なものです。さらに今あげたような地球規模の大きな課題に対してはある程度共通認識ができているとしても、それへの対応仕方は人それぞれです。人はそれぞれにさまざまな価値観を持ち、それぞれの主張することが異なり、人の採る行動も多様であるというのが現代社会です。この社会の中で、個人は強い意志を持たなければ自己の存在すらがあやふやなものとなってしまいます。強い意志は単なる願望やこうなったらよいなという思いだけでは実現しません。自らの意思を形あるもの、具体的なものとして示さなければならないのです。つまり、意志を示すというのは、自分の考えを具体的な形あるものにまとめ上げ、実現する手段を考えると言うことです。それが実際に実現するかどうかは別問題です。
 抽象的な話になったので、ひとつ具体的な例を示してみましょう。大阪の生んだ世界的建築家に安藤忠雄という人がいます。この人の作品については、一度お話ししたことがありますが、独学で建築を学び、東京大学教授を経て、現在は東京大学の特別栄誉教授になっている方です。最近では淀川から土佐堀川までの沿岸七キロに桜の通り抜けを実現する市民運動を呼びかけています。この安藤さんの建築には、絶えず自然に親しむこと、自然環境との調和という考えが貫かれています。世に出ることとなった代表作品は住吉の長屋という小さな個人住宅ですが、狭い敷地の中に中庭を作り、トイレに行くのに一度室内から外に出なければならないというものでした。小市民的感覚ではなかなか住みづらいものでしょうが、自然を感じながら生活するというコンセプトが強烈に貫かれています。また、市民のための自然環境を残す都市作りという観点から、中之島一体の建築物の地下埋没化計画を示していたこともあります。建物をすべて地下に移して、地上を公園にしようと提案したものです。もちろん、これは実現していませんが、実現するか否かは別として、熟慮した考えの上で得た結論を示したものだといえます。こうして得た結論や考えは、いずれ形を変えて別の機会に実現することとなります。大阪府の施設である「近つ飛鳥博物館」やスイレンの池の地下に寺院の本堂を造った「水御堂」などはその例でしょう。粘り強く十分に考えて結論を得る、この考えることが知的作業であり、考えを重ねれば重ねるほど、強い意志となるのだと思います。
終わりにあたり、もう一つ言葉を紹介します。私は先日、姉妹校提携終了のお礼にオーストラリアのトゥーンバ高校へ参りました。その際、同校に掲げられていたスクール・ビジョンに大変感心いたしました。それは、「クリエイティブ・オポチュニティズ、ビルディング・ロフティ・フューチャーズ」という言葉でした。「クリエイティブ・オポチュニティズ、ビルディング・ロフティ・フューチャーズ」、「自ら機会を作り出し、高い価値のある未来を築きあげよう」とでもなるのでしょうか。人生に対する積極的姿勢を示す良い言葉だなと思いましたので、皆さんにも紹介する次第です。
卒業生の皆さんが、健康にも留意されつつ、今後の人生を積極的にかつ粘り強く考える強い意志で自分の目標・夢を作りだし、いつの日かそれを実現されることを願っています。
以上を持ちまして、式辞といたします。  

平成一七年三月一日

                              大阪府立高槻南高等学校長 中村清一

引継式式辞

 大阪府立高槻南高等学校が、本年三月末日をもって、その伝統を大阪府立槻の木高等学校に引き継ぐにあたって、学校を代表してご挨拶申し上げます。
 はじめに、本日の引継式にご臨席いただきました大阪府教育長 竹内脩様をはじめご来賓の皆様方、これまで本校の教育の推進に長年にわたりご尽力・ご支援をいただきましたすべての関係者の皆様方に、あらためて感謝申し上げます。
 本校は、地元の強い要望と大きな期待を集めて、昭和四八年に第七七番目の府立高等学校として、この地高槻市芝生町に開校されました。初代校長 高橋龍夫先生により「豊かな人間性を身につけた明朗な人格を養う」との教育目標及び「自主性を尊重し、健全な判断力と実践力を養う。個性の伸張と創造的精神を養う。教師と生徒との心のふれあいを深め、信頼と敬愛の人間関係を深くする」との教育方針が示されました。開校当初からこの教育目標・教育方針の下、学校づくりに熱意あふれる教職員と希望に燃えた生徒との間で活発な教育活動が展開されました。さらに創立十年頃には、「自由の雰囲気の中で学習活動に精魂を」傾けることや、「教科指導に重点をおいた生徒指導」が標榜されるようになり、最近では学校の特色として「学力の充実」、「国際理解教育」、「開かれた学校」に重点がおかれました。
 学習活動とともに、広い校地を生かした部活動も盛んでした。運動系・文化系ともに二十近くの部が活発に活動し、なかでも運動部活動では開校後数年で陸上競技部やサッカー部が全国大会に出場いたしました。これ以後、ソフトテニス部、軟式野球部、硬式テニス部が全国大会出場を果たし、バレーボール部やバトミントン部は近畿大会出場、ラグビー部は十人制大会での大阪府優勝などの実績が生まれました。文化系部活動では生物部や書道部が全国規模の研究会や発表会の大阪府代表となりました。このほか、運動系・文化系を問わず数多くの部が府内のさまざまな大会や発表会で優秀な成果を上げており、部活動は学習と両立していました。
 さらに、本校の大きな特色に創立二十周年を記念して結ばれたオーストラリアのクインズランド州立トゥーンバ高等学校との姉妹校提携があります。隔年毎に相互に短期留学生を派遣する国際交流は、府立高等学校全体の国際理解教育の先駆けとなりました。
 一方、時代の変化と共に学校教育は曲がり角を迎え、生徒一人ひとりの個性を尊重し、今まで以上に多様な学習ニーズに応える学校が必要となりました。このような教育を巡る現代的な諸課題に対応するために、従前の教育システムを改革し、学校教育の再構築や総合的な教育力の再構築を図ることが求められるようになったのです。この流れの中で、本校も平成十三年に「 全日制府立高等学校特色づくり・再編整備第一期実施計画第三年次実施対象校」に指定され、府立島上高等学校とともに統合整備されることとなりました。この発表は本校関係者に大きな衝撃を与え、本校が本校関係者のみならず地元の人々から如何に思いを寄せられているかをあらためて認識させられることとなりました。
 本日、この引継式にご列席いただいた槻の木高校の教職員の皆様、在校生の皆様、本校の後継校として設置された槻の木高校は、新たな時代の要請に積極的に対応しようとする学校で、教育内容の一層の充実が期待されています。その際、母胎となった高槻南高校一万三千八百二十名の卒業生とすべての関係者の熱い思いをお酌み取りいただいて、本校の積み重ねてきた教育実践と伝統の上に新たな学校作りを行っていただきたいと思います。私たちも槻の木高校発展のために、できるかぎりの力を尽くしたいと考えています。
 最後になりましたが、高槻南高校の三十二年間に寄せられました皆様の温かいご支援に感謝し、引き継ぎにあたっての言葉とさせていただきます。  

平成一七年三月一日

                             大阪府立高槻南高等学校長 中村清一

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