大阪府立天王寺高等学校

「天高アカデメイア」宣言   (抜粋) 

大阪府から進学指導特色校に指定され、また文部科学省からスーパー・サイエンス・ハイスクールに選ばれている天王寺高校では、これまで「先端科学ゼミナール」や「集中セミナー」、公開研究授業、ブリティッシュ・カウンシル連携事業、文系高大連携講座など、大学の先生方・留学生・企業研究員の方々による年間30回にも及ぶ講演会が開かれてきました。
 生徒たちは最新の科学技術や研究活動、それぞれの研究者の意欲や使命感に身近に触れることができ、勉学意欲の向上や進路実現にも大きな成果を上げてきたところです。
           (中略)
 これまで受講対象は理数科の生徒と理数分野が中心でしたが、今後は広く普通科・文系志望者にも呼びかけ「アカデメイア」が真にダイナミックな知の殿堂たるべく、「本物に接し、学ぶ」という天高教育のモットーの実践を企図しています。向学心に燃える生徒たちが知的体験を共有できる空間、そして教育目標である「日本や国際社会で活躍するリーダーの育成」に寄与する試み、それが「天高アカデメイア」だと考えています。

 ■第13回 天高アカデメイア
   「
発音のコツ こうすれば英語らしく聞こえる」

                                    大阪教育大学准教授 箱崎 雄子 先生


 タイトルに釣られて参加した生徒も多かったようだ。楽して物事を取得することは無理なことはわかっているはずなのに藁にもすがる思いで参加したのだろう。感想を見ていると、「英語が苦手」「発音に自信がない」といったコメントが並んだ。講演を聞いていて「楽して」は無理でも「楽しんで」学習することは可能であると感じた。生徒が日頃の授業で能動的に取り組むヒントを与えていただいた。きっかけを与えられた天高生は非常に強い力を発揮する。

【生徒感想】
・英語は好きだけど、話すのは苦手です。授業で話すたびに嫌気がさしていました。でも今日で話すことに対する不安が減りました。授業で強調する部分を説明しているときも「発音ができないのに、リズムを学んでも意味がない」と思っていました。でもリズムの重要性を知り、授業に対する意欲も増しました。
・講演中の例文を読むときに、私は区切れが多くあることに気づきました。そのため、音のつながり、内容で大切な語に重点をおいていこうと思いました。
・英語は日本語と違って意識すべきリズムがあり、それをするだけで一気に英語らしく聞こえたことに驚いた。音読が最も大事とのことだったので、これからは授業中の音読も強調とリズムを意識して回数を多くこなしていこうと思った。


 ■第12回 天高アカデメイア
   「
国語誕生物語 国語科の成立と国語力の意味」

                                      大阪府立大学教授 山東 功 先生


 国語という教科への疑問から始まり、国語と日本語の違い、教育の近代化と国語科の成立、最後に国語を学ぶ意味についてご講演いただいた。小学校から国語という教科は身近にあるが、「なぜ必要なのか」「国語と日本語はどう違うのか」という問いから出発し、途中本校旧校歌である「黄塵はるか」についてのお話もあり、新たな気づきが多いお話であった。

【生徒感想】
・国語は苦手な教科の1つだ。だからその国語が学ばれている意味を知るために参加した。今回の講演で学ぶ理由と養っている力を知ることができ、国語への学習意欲が湧き、見方が変わった。
・将来外国で日本語教師をやりたいので今回得た知識を活用したい。
・なぜ国語を学ぶのかに対して、賢くなるためであるという先生と同じ意見を持った。自分の無知を知り、それを知るためのinputとoutputの材料が必要だと思った。
・授業ではあまり考えずに見ていた文学も、考え続け深く考えることが大切だと思った。


 ■第11回 天高アカデメイア
   「
サイバーセキュリティ問題の考え方」

                               防衛大学校 情報工学科教授 中村 康弘 先生


 男子18名、女子11名の29名が参加。主に1年生の参加であった。「サイバーセキュリティ問題」という身近でない事柄について具体的事例やマンガ、映画などを挙げながら説明を受け、理解が進んだようである。ネット環境での情報管理が難しい現代にあって、その道に職を求める生徒ではなくとも、知っておくべき事柄をたくさん知れたようである。

【生徒感想】
・国家や民間などで細かく分けて教えていただけたので分かり易く、身近な例も教えてくださったので良かったです。
・スマホやパソコンがサイバーセキュリティによって守られていることを知った。親から情報の取扱には注意するように言われていたが、その怖さをあまり意識してこなかった。今日の講演は良いきっかけになった。


 ■第10回 天高アカデメイア
   「
データに基づいた薬の開発」

         東京大学医学部附属病院 臨床研究支援センター 特任助教  川原 拓也 先生(天高61期)


 平成30年12月14日(金)
 「薬の開発に関わる人にはどのような人がいるか?」という問いから多面的に製薬について考えることができた。データサイエンス、ビッグデータといった言葉は聞いたことがあるが、詳しくはわからなかった内容を具体例からわかりやすくご説明いただいた。課題研究を行う2年生だけでなく、翌年実施する1年生にとっても深い学びになる機会だった。

【生徒感想】
・統計学を学ぶことで満たされていない消費者のニーズを満たすことにつながると感じた。医学部でなくても医学に関わる道があることを知った。進路選択についてもう一度考えようと思った。
・ビッグデータについて多くのデータを分析するイメージしか持っていなかったが、データサイエンスの3要素や具体的に薬を開発する段階で、統計学を用いることを聞いて、ビッグデータの扱いを少しつかんだように思う。
・文系選択なので特に関係ないかと思っていたが、予想以上に関係があると感じた。統計学はこれから絶対に必要になると思ったので、視野に入れてみようと思う。


 ■第9回 天高アカデメイア
   「
高校生に伝えたいがん・出産・遺伝子について  〜分子生物学の観点から〜」

                              大阪大学蛋白質研究所    篠原 彰 先生


 平成30年11月21日(木)
 講義の大半は英語であったが、専門用語集を準備していただいたり、1年生にも理解できる内容で進めていただいたので理解しやすかったように思う。文系、理系の枠組みにとらわれず、人として生きていく上で必要な知識、考え方を分子生物学の観点から教えていただいた。

【生徒感想】
・難しい単語を複数の言い回しで繰り返しているところなど、伝わる英語の使い方がわかった。今後のサイエンスイングリッシュの参考にしたい。
・普段の授業での知識を利用できた。「染色体は23組46本」という知識をもっていても、「どれはどのような影響を与えるか?」という疑問に答えられないまま、生物学を教科としてしか見ていなかったと感じた。



 ■第8回 天高アカデメイア
   「金属資源の世界 
〜日本近海での海底金属資源の探査・開発〜

         独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 金属資源開発本部 特別参与
                            プロジェクトリーダー 辻本 崇史 先生(天高24期)


 平成30年11月12日(火)
 我が国が世界に誇る高度な製造業(自動車、各種機器等)には、電気電導性に優れた銅や、高機能に必要な各種のレアメタル(ニッケル、レアアース、リチウム等)が多量に必要ですが、これら資源の全ては海外金属鉱山からの輸入に依存しており、日本政府として、これら資源の我が国への安定供給は、最重要課題の一つです。一方、中国等の経済発展により、これら金属資源の世界需要は増加の一途で、世界に偏在するこれら資源の安定的な確保に向け、世界では国レベル、企業レベルで様々な競争的活動が展開されています。
 金属資源の生産のない(金属鉱山のない)日本では、金属資源の話は実感として理解が難しい世界の話ですが、我々の豊かな生活は、諸外国の大地に恵まれたこれら資源が我が国の産業界に安定的に供給されているからです。
 本講話では、この「金属資源の世界」とはどういう世界で、そして我が国の政府、関係の企業は、これら資源の安定供給に向け、どの様な努力をしているのか、さらに未来に向け、世界も注目する、政府が取り組んでいる日本近海での海底金属資源の探査・開発を巡る最近の成果についてご紹介します。

参加生徒60名 教員6名。生徒からは、たくさんの質問が出ましたが時間の関係で打ち切らなければならに程でした。講演後、実際の鉱物標本を見せていただきました。めったに見られない貴重なもので、生徒たちも教員も興味津津で写真を撮っていました。


 ■第7回 天高アカデメイア
   「細胞や高分子を捕らえて操作! ナノ世界の工具 光ピンセット 


                         大阪市立大学大学院理学研究科教授 坪井 泰之 先生


平成30年10月30日(火)
 今年度のノーベル物理学賞の内容に関係するタイムリーな内容を大阪市立大学の坪井先生にご講演いただいた。物理、化学の内容だけでなく、生物、地学、数学など多岐に渡る内容を挙げ、横断的にご自身の研究内容をご紹介された。高校のカリキュラム上は分かれているものでも突き詰めていくと融合するのだという好例であった。

【生徒感想】
・質量がないはずの光子がエネルギーを持つという理由も、運動量という概念のおかげで理解することができた。今後この技術は医療に役立つと考えられる。がん細胞だけ破壊したり、血管の血栓だけを破壊したり、物理の分野でありながら生物にも応用できるこの技術は人類の発展に大きく影響すると考える。
・将来の進路について明確な目標がないので、とても参考になった。光ピンセットの可能性をもっと広げ、幅広い分野に生かすことで、他にどのようなことができるか、じっくり考えてみようと思う。
・今までは光の性質は授業で習うもので、単元ごとに1つの面でしかみたことがなかったが、それらをつなげることで新しい面が見えた。


 ■第6回 天高アカデメイア
   「薬学と社会貢献 


                        岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授 檜垣 和孝 先生


平成30年10月23日(火)
 4年制と6年制の違いなど学部の紹介に加え、新薬開発の現場とその過程、薬品の候補が正式に薬品として認定される確率、開発費など、薬品開発の現状を詳しくお話しいただいた。生徒は薬学部とその先について、かなり実感をもてた様である。思わぬところから新薬の候補が見つかること、臨床の過程で行われていることなど、細かにご説明いただいた。アカデミックな内容を含むとともに大学への意識も強く持たせることのできた講演であった。

【生徒感想】
1年
・新薬について興味があったが、具体的な将来設計などについても聴け、大変よかった。
2年
・入学後初の薬学系アカデメイアで、大いに参考になった。来て良かった。
・細かい内容や具体例を示しながら薬学の道筋を示してくださったのでとても良かった。
・薬学について深く話していただき、より薬学の道に興味がもてた。

3年
・入学時から薬剤師を目指していたが、今回の講演を聴けたことでより想いが強くなった。病院薬剤師として患者さんという弱い立場の方々とコミュニケーションをとり、考え、努力して「医療」をしていく人間になりたい。


 ■第5回 天高アカデメイア
   「人の一生を最後から考えてみませんか。それが皆の幸せに繋がります。 


       大阪大学大学院医学系研究科 社会医学講座(法医学)教授 松本 博志 先生(高32期)

  「小児外科と国際貢献」

     大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座(小児形成外科学)教授 奥山 宏臣 先生



 平成30年9月14日(金)
 統計データを多く用い、死因から社会や世界の情勢を知る、あるいは小児外科の世界的な現状を知るという内容で、法医学、小児外科学など馴染みのない分野に触れ、生徒の世界も拡がったようでした。


【生徒感想】
・小児外科を目指しているので、小児科についての話は大きな学びになった。
・人の死を見つめ、分析し、人の生につなげていく視点はとても大切だと思った。
・大切なことは疑問を持ち続けることだと思った。
・国境なき医師団に入って国際貢献をするのが夢。またお話を伺いたい。


 ■第4回 天高アカデメイア
   「はやぶさ2による小惑星探査と宇宙衝突実験 


                                    神戸大学 荒川 政彦  先生


 平成30年9月5日(水)
 小惑星に含まれる鉱物などを調査することで、太陽系誕生の過程(失われた鎖)を知ることができると考えられる。「はやぶさ2」が到達したりゅうぐうは有機物や水を含んでいると考えられ、ここからのサンプル回収が期待されている。しかし表層は熱変性で本来の組成ではないため、内部からのサンプル採取のためには秒速2秒の速さで銅球を発射し、人工クレーターをつくる必要がある。今回はこの人工クレーター作成について詳しくご講義いただいた。なぜ銅でなくてはいけないのか、クレーターを作る際「はやぶさ2」はどこに避難するのか、クレーターが出来る際の砂の巻き上がり方で何がわかるか、など思考力が鍛えられる問いがいくつもあった。

   

【生徒感想】
・質問をするために話をよく聞いていたつもりだったが、あまり疑問が思いつかなかった。そして他人が質問したときに、確かになぜなのだろうと思うことがあった。今後、話を聞いて何か疑問を持てるようにしたい。
・限られた予算の中で、検証や実験を繰り返して精度を高めている。機体に用いられる素材も宇宙空間の影響を考慮し、また地球に持ち帰った後の都合も考えて選ぶ必要がある。しかしこのような国家レベルのプロジェクトでもぶっつけ本番ということに驚いた。
・自分の知らない分野の宇宙がまだまだあると感じた。宇宙と生物が結び付けられるような進路に進みたい。


 ■第3回 天高アカデメイア
   「カジノ誘致の是非 


                                神戸大学名誉教授 西澤 信善  先生


 西澤先生はカジノ誘致に対して否定的であるが、あえて「カジノ誘致の是非」というタイトルでご講演いただいた。ちょうど当日6月19日はカジノ法案が衆院を通過した日でタイムリーな内容となった。実施前は何となく賛成・反対というスタンスの生徒が多いように見受けられたが、講演後の質疑応答ではクリティカルな質問が相次いだ。講演を通して深く考察することができたようだ。

【生徒感想】
・もともとはカジノ誘致に賛成であったが、少し考えが変った。買い物等にお金を使ってもらったほうがより地域振興につながるので、カジノを除くものを誘致するわけにはいかないのか。カジノがあればIRに行く目的がカジノだけになるのは目に見えている。
・報道を見ているとカジノが悪いものではないように思え、報道の力は強いと感じた。賛成派と否定派の意見を聞いてもう一度IRについて考えようと思う。
・これからはいろいろなニュースに対してもあらゆる方向から批判的に考えを持てるようにしていきたい。
・ギャンブルは個人の趣向に基づいてあくまで個人の責任でするものであるが、周りに迷惑をかけているケースが多すぎるように思う。世論調査で反対が多数をしめているのに次々と法案が可決されている状況をみると、間接民主の課題を感じた。
・カジノによる損失は直視できたが、推進に対する意見が変ることはなかった。かなり興味深い内容なので推進派の専門家の意見も聞いてみたい。


 

 ■第2回 天高アカデメイア
   世界最古の企業 金剛組
    「金剛組の始まりと歴史、宮大工の技術と伝統について 



 6月13日(水)15:50〜
 今から1400年以上前、日本に仏教が伝えられたばかりのころ、社寺建築の技術を伝えるため、遠く百済から宮大工が呼び寄せられました。彼は聖徳太子より、日本仏法最初の官寺「四天王寺」建立を命じられ、見事その務めを果たしました。これが、「金剛組」の始まりです。
 そして、金剛組は今では全国各地の神社仏閣を手掛けており、宮大工の技術と伝統を連綿と受け継いでいます。
世界最古の企業として、1400年の長きに亘り歩んできた歴史と宮大工の技術を紹介していただきました。
宮大工の棟梁の話を直接お聞きすることができ、また大工道具や組木の模型などを持ってきていただき、大変に貴重な経験をすることができました。

   
   

 

 ■第1回 天高アカデメイア
   「動物たちの心を通してヒトを知る」
 

                                
京都大学高等研究院 山本 真也  先生


 平成30年5月29日(水)、京都大学高等研究院の山本真也先生に「動物たちの心を通してヒトを知る」という演題でご講義いただきました。
 山本先生は、進化の隣人であるチンパンジーとボノボ、ヒト社会の隣人とも言えるイヌとウマを主な対象に、課題研究とフィールドワークの両方を通して知性の進化の謎に取り組んでおられます。究極の研究テーマは「人間とは何か」を知ることだそうです。学問分野でいうと生物学と心理学を組み合わた比較認知科学という分野です。講義では、動物たちのさまざまな動画とともに、動物たちの知られざる世界、それを垣間見る研究の面白さを教えていただきました。


【生徒感想】
・高校生ができないようなスケールの大きい研究の内容と結果、それに関することを講演していただいて、意識が高まった。私も授業で実験を行って結果を考察することがあるので、レベルの高い手本を拝見できてありがたいと思った。
・(ヒトと類人猿の間には)文化と協力で違いがあると信じていたので今回の講演の内容には驚きがあった。特にチンパンジーも文化があるという説明ではとても納得させられた。将来研究職に就くつもりはないが、少しだけ選択として残しておくのも悪くないと思った。
・ヒトとチンパンジーの共通点を挙げていくなかで、反対にチンパンジーについて知ることから人間とはどういうものかということを考えさせられた。私の考えとしては、自発的に手助けをする積極性、そして教育することなどが鍵となり、そこに違いがあると思った。
・ヒトとチンパンジーの違いの部分で、ヒトは母親が積極的に子に教えるのに対し、チンパンジーは自発的には教えない。見て学ぶ学習というところが印象に残っておもしろかった。
・疑問、仮定、実験の流れがきれいで筋が通っていたので、これからの課題研究にいかしていきたいと思った。また、1つの結果が得られても他の方向から再び実験を行うといった、追い求めていく姿勢が大切だと感じた。