平成29年度 「桃陰文化フォーラム」
第36回 「桃陰文化フォーラム」 報告

 夢の見つけ方・叶え方・諦め方 〜全力疾走でワクワクの先へ〜

                                                              生山 裕人 氏

 6月3日土曜日。本校56期生の生山裕人(いくやま ひろと)氏をお招きし、桃陰文化フォーラムを開催しました。
 氏は、近畿大学文芸学部に進学後、ほどなくして休学し香川オリーブガイナーズ(野球独立リーグの四国アイランドリーク)に入団。2008年には千葉ロッテマリーンズに育成ドラフトで指名され4年間在籍したのち、ウェディングプランナーに転身、という異色すぎる経歴の持ち主です。どんなお話が伺えるのか、わくわくして講演に臨みました。

 この日は土曜日ということもあって、生徒100名、保護者と一般の方100名、総勢200名が集まりました。氏は、やんちゃな高校時代から野球にのめり込んだ大学時代、プロ選手になってから、と、簡単にご自身の経歴を話された後、質問に答えながら深い経験と思いを柔らかい口調で語られました。

 四国アイランドリーグのテストに合格し、香川オリーブガイナーズへの入団が決まった時は「万歳!」と、飛び上がって喜んだ。しかし張り切りすぎたため、開幕前の試合で肘を痛めてしまう。それ以後は「クビになりたくない」の一心でとにかく目立つ事を心掛けた。足が速かったから、それをアピールしようと、内野ゴロを打つ。ヒットやフライでは駄目。攻守交替のときには、ベンチから守備のレフトまで全力疾走する。ガムシャラにやってる姿はきっと観客に見てもらえるはず、という思いでやってるうちに、プロ野球のスカウトの目に留った。そうして千葉ロッテに指名される。

−−− スカウトの心を動かせたから、プロになれたんです。就職したら、上司の心を動かさないと出世できないです。

 人に喜んでもらうのが好きなのでウェディングプランナーに転職したが、その時まず考えたのが、どうすればお客に「生山さんにお願いしたい」と言わせるか。その答えが蝶ネクタイだった。毎日蝶ネクタイで出勤した。服装が乱れていると上司は顔をしかめている、という噂を聞くと、経営陣に自分の思いを直訴し、OKしてもらった。しばらくすると、お客からの指名が増え、蝶ネクタイをしてくるお客まで現れた。2年続けると取引先にもアピールするようになった。

−−− 全力疾走も蝶ネクタイも誰でもできる事なんです。でも誰もしない。誰もできるが誰もしないことを継続すると、それが武器になる。

 プロ選手になるのが夢だったのではない。いろんな職につき30歳になったとき、本当にやりたい好きなことが見つからずヤバイ!と思った。だから本気でやりたいことを探した。行動をおこすこと、人に会うことが大事だと思って動いた。人に喜んでもらうのが好きで、ワクワクさせたいから、それを探した。

−−− 保護者の方にお願いです。お子さんに選択肢を与えてあげて下さい。本気で探して見つけた好きなことには圧倒的なエネルギーがあります。好きな事なら、とことんやって駄目でも諦められる。

 筑波大陸上部でオリンピック選手まで育てた先生に、「選手に、自信もって行けと言われるのですか」と聞いたことがある。「自信もて、なんて言わない。・・・私は、勇気もって行け!と言う」とおっしゃった。勇気もって、はいい言葉だなと思う。

−−− 勇気を奮いおこすには準備と覚悟が必要です。だから勇気の数だけ成長できる。挑戦しなくても成功する人はいる。でも自分がこれだと決めて挑戦した結果手にする成功が大事なんです。


 高校生から「影響を受けた人はいますか。」との質問に、生山氏は元ジャイアンツの鈴木尚広選手を挙げ、一流と超一流の違いを説明されました。

−−− 一流の人は負けず嫌い、超一流の人は理想の自分になるために努力する。

 鈴木選手は、氏にとって雲の上の人でしたが、あるとき羽田空港で出会い、勇気を振り絞って教えを乞うた結果、自主トレを一緒にしてもらえるまでになったそうです。また、大阪の公立高校に配布された雑誌『高校生活』に氏の記事が載ったことがありました。それを読んだ若者から「万年補欠選手だった私は、あの記事を読んで発奮し、実業団チームのレギュラーになれました。」と声をかけられたそうです。「これって凄いですよね。ホント嬉しいです!」少し高いトーンで興奮気味に話され、今は四国アイランドリーグのOB会をつくろうとしている、来月は舞台に出るつもり、と話されました。氏はこれからも人をワクワクさせることを続けていかれると思います。



平成28年度 「桃陰文化フォーラム」
第35回 「桃陰文化フォーラム」 報告

 11月12日(土)午前10時から本校多目的ホールにて、松原友先生、佐野まり子先生をお迎えし第35回桃陰文化フォーラム「ドイツ歌曲の世界〜シューベルトを中心に〜」と題するリサイタルが開かれました。
 例年、秋は芸術・芸能関係の催しですが、今回は5年ぶりのクラシック、それも第一線で活躍されているテノール歌手の松原先生、ピアノ伴奏に佐野先生をお迎えしての演奏会ということで期待はいやが上にも高まりましたが、期待以上のすばらしい演奏会になりました。
 コンサートはシューベルトの「音楽に寄せて」で始まり、時に松原先生の軽妙なお話を交えながら『冬の旅』の「からす」までの8曲で休憩になり、その後『白鳥の歌』の「愛の使い」で再開、アンコールも含め全14曲を堪能しました。ドイツ語による歌唱でしたが日本語歌詞もつけてくださっていたのでより歌の世界に近づける感がしました。展開される歌曲の中に、北方の国ドイツの深い精神性、シューベルトの優しく繊細な人柄とそれに裏打ちされた芸術性を感じ取ることができた気がしました。
 また、佐野先生の一音一音が粒だったきらびやかな音色、しっかり歌によりそった演奏にも魅了されたことです。
終演後、生徒たちから松原先生に活発な質問が寄せられ、それに丁寧に答えて下さるところに先生のお人柄と音楽にかける情熱を感じました。
 出席者は生徒・保護者・卒業生等約160名、日常なかなか味わえない芳醇な時間を過ごすことができたと思います。あらためてお二人の先生に感謝とお礼を申し述べるとともに、ご紹介の労を取ってくださった音楽科の密山先生にもお礼を申し上げます。また、会場準備や片付けなど、協力してくれた生徒の皆さん、係の先生方、どうもありがとうございました。

第34回 「桃陰文化フォーラム」 報告

 梅雨に入って間もない6月11日(土)、木田章義先生をお迎えして、桃陰文化フォーラムを開催いたしました。「日本語とはどんな言語か~その歴史と背景」と題するご講演に、在校生、保護者、先生と同期の卒業生の方々80名が熱心に拝聴いたしました。先生は本校20期の卒業生で、京都大学・大学院で国語国文学を専攻された後、平成26年に京都大学を退官されるまで、研究一筋に歩んでこられました。ここ3年ほどは、本校生も京大見学会の折にお世話になっております。

 先生が国語学に進まれたのは、高校2年時に桃陰会館で折口信夫と出会ったのがきっかけです。それまでは陸上部で長距離走を頑張っておられたのですが、文芸部に「潜り込んで」同人雑誌に歌を載せたり、「ふらっと」旅行に出かけたりするようになり、おかげで成績は急降下、ようやく2年生の正月から勉強を始めて、効果が現れたのは3年生秋になってからでした。「京大には最低点で合格したんです。」とおっしゃる先生は、受験は基礎力があれば大丈夫、あとは集中力と整理力で力を高めていくことが必要だと強調されます。これには聴衆一同、食い入るように聞き入っていました。
 「外来語の中でも欧米語をそのままカタカナ表記で使うのは、欧米語はかっこいいと考えているから。」このように私たちの気持ちをズバリ言い当てられると、先生はグイグイ講演に引き込んでいかれました。
 日ごろ何気なく使っている言葉も、気をつけて見ると歴史や文化を反映しているのがわかります。漢字の読み方一つ取り上げても面白い歴史がわかります。遣唐使が持ち帰った漢音は、奈良時代以降の実務官僚には必須の標準語になり、一般の人々にも奨励されましたが、仏僧はもっと古い時代に入っていた呉音に慣れていたため漢音には改めませんでした。しかし江戸、明治とだんだん仏教の政治力・影響力が弱くなるにしたがい、呉音で読む事が減っていったのです。また「肌寒い」「心苦しい」のように日本語に複合語が多いのは、感覚に応じた造語ができるからですが、現代は残念ながら新しい複合語が生まれていません。私たちの表現力や感覚が弱くなっているからでしょう。辛うじて「あかん+くない→あかんくない」があるくらいでしょうか。この他、ら抜き言葉や「〜になります」「させていただきます」のように、現在その使用に賛否が分かれている言葉も取り上げ、社会状況や意識の変化を読み解かれました。
 最後に日本語起源論にも触れられました。日本語の起源と聞いてすぐに思い出すのが、大野晋のタミル語起源論です。この学説は各界から批判され、以後、日本語起源研究はタブーになりました。しかし木田先生は大いに関心を持っていらっしゃったため密かに研究を続け、退官時にその成果を発表されたのです。−これまで長い間、日本語はアルタイ系言語と考えられてきた、確かにその言語群には日本語文法に近いものが多い、しかし言語学では単語の近さの方が重要である、日本語単語に近いものを持ているのはタミル語である−。先生は、タミル語の単語を例示しながら、この学説を裏付けるためには遺伝学からの研究も必要であるとの認識を示されました。
 まだまだもっと、というところで終了時刻になってしまいました。この後の質問にも丁寧にお答えいただき、日本語に改めて深い関心を持つことができました。木田先生、どうもありがとうございました。

【アンケート(一部抜粋)】

生徒:
●外来語が私たちの生活の中に浸透している理由がなんとなく分かった気がする。古代の日本人の造語力に脱帽せざるを得ない。また尊敬語と受身表現との関係から、時代の価値観によって言語が変化することがはっきりと理解できた。やはり複数の面からアプローチすることによって一つのことが手にとるように分かる。
●とても興味深かったです。私は、古典や言語が好きで、将来深く勉強してみたいと思ってます。日本語の表現の変化や、漢語・和語についてのお話では、普段何気なく使っている言葉が、形をもったものとして現れたような気がして、はっとしました。日本語を、他の言語と比較して研究するのか…!と、少し意外な感じがしました。歴史や遺伝子など他の学問から見ていく、というのもとてもおもしろいと思いました。
●「あかんくない」という話で、親にキモチワルイから使うのをやめろと怒られたのですが、形容詞化していってるという話を聞いて納得しました。それがいちばんおもしろかったです!
●「日本語の表現の変化」のお話が非常におもしろかったです。「させていただきます」の不自然さは今まで気付かなかったけれど、なるほどと思いました。ありがとうございました。国語はあまり好きな方ではないのですが、先生の言語学の話は分かりやすく、興味深かったです。日本語の歴史を少し調べてみようと思います。
●何となく、日常生活で使い分けていた漢字の読み方が、音読み訓読みくらいなら知っていましたが、「呉音」「漢音」「唐音」など、分けられていると知り驚きました。現在、言葉は小説などで、やはり若者向けにでしょうか、易しい言葉遣い、読みやすさを重要視しているように感じます。言葉の変遷もおもしろいですが、これから日本語はどうなっていくのだろうかと一抹の不安を覚えました。日本語についての興味深いお話をたくさん聞くことができて、とても楽しかったです。ありがとうございました。
●面白かった。僕たちが日常で何気なく使っている日本語は改めて考えてみると、とても複雑であることが分かる。日本語がタミル語とよく似ていることに驚いた。漢字の発音も起源で分けると、三種類あることを知って、言語学は奥が深いと思った。

保護者:
●日本語の表現の変化には、日常生活の中で思いあたるふしがあり興味深かったです。言葉の由来のお話も詳しく聴きたかったです。専門的なお話、生き方のご意見を聴くことができ、大変勉強になりました。ありがとうございました。
●大変興味深く最後まで聞かせていただきました。日本語についてのご研究の内容も大変おもしろかったのですが、先生のご経験に基づいた生き方と言いますか、先生はこのご研究をつらぬいてきた人生の流れのお話がすばらしいと思いました。今、1年生に在学している子どもにもぜひ聞かせたいお話でした。機会があればよろしくお願いします。(続編ぜひ開催してください。ありがとうございました。)
●学生の頃、国語苦手と思ってましたが、日本語ってすごい!!私ってすごい!!と思いました。日本人とタミル人の関係もっと知りたいと思いました。学生の頃、言語や文法について悩み勉強したことを思い出しました。先生のわかりやすく楽しいお話を聞かせていただきとても勉強になりました。ありがとうございました。
 ・在校時のこぼれ話をしていただき、とても面白く、勇気付けられました。
 ・資料をもとに丁寧に教えていただき、大変わかりやすく感じました。
 ・帰宅後、部活動で参加できなかった息子と子供を見てもらっている夫にも今日聞いた内容を伝えたいと思います。ありがとうございました。
●日本は複雑な言語生活であると思いました。とても興味深い言語についての専門的なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。目指す生き方をもつとその方向に行くというお話も大変すばらしいと思いました。「ら抜き言葉」のところも大変役に立ちました。(最初疑問に思っていたところがあったのですが、解決できました。)

卒業生:
●日本語についてここまでの歴史と生い立ちを考えた事がなかったです。文化の強さや、語の力で採用されて定着してゆくということもわかりました。今後も変化してゆくとすると年をとっても社会との交流を深めておく必要があると感じました。本日はありがとうございました。

一般・その他 3名
●天高の生徒たちはほぼほとんどの子たちも大学受験をすることは当たり前になっていると思います。それゆえに、受験勉強をすることに疑問をもたない、もっても「そういうもの」とわりきっている子が多くなりがちだと思います。それを考えると冒頭のお話はとても価値あるものでした。
●若い人の研究する心をはげますようなお話、どうもありがとうございました。


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