本校は大阪府第八中学校として1901年に現在の場所に開校しました。地元よりの強い要望で予定より一年早い開校だったそうです。実に、今年で開校110年目を迎える伝統のある学校です。戦後の学制改革により、新制大阪府立富田林高等学校に変わりましが、脈々と続く歴史の中で、社会の指導的な地位に立つ多くの著名な方々を育て、地域社会だけでなく、国内外にも、高い評価を得る学校として、成長してまいりました。
今、わが国は、未曾有の危機に直面しています。三週間前に突然襲ってきた東日本大震災によって亡くなられた方は日増しに増え、行方不明の方と合わせて、なんと三万人に迫ろうとしています。筆舌に尽くしがたい悲劇です。町ごと波にのまれた地域や、児童がみんな津波にさらわれた小学校もあるそうです。「津波が来るので逃げてください」と叫び続けて、自らは流されてしまった町役場の職員もいます。残された被災者の方々が、我慢強く寒さに絶え、少しでも前を向こうとされている姿に心を打たれない日はありません。
今、私たちに何ができるでしょうか。起こっている事実から目をそらさない事。被災者の痛みや悲しみに心を寄せる事。そしてできることから行動に移す、息の長い支援が必要です。
さらに心を重くするのが、原子力発電所の危機的な状態です。すでに、危険な期間の長さでは、あのチェルノブイリ事故も抜いてしまったそうです。私たちの生活の安全が大事にされていなかったことに不安と憤りを感じながらも、胸を突き刺すのが、この原子力発電を求めたのは、私たち自身の生活スタイルであったのだという事実です。より便利な生活を求めてより大きな電力生産を求めたのは私たち自身です。原子力の恐ろしさは感じながら、知らないふりをしたのは私たちです。
私たちは何としてもこの国を復活させねばなりません。被災地でも高校生ボランティアの元気な声がみんなを励ましています。新しい国作りは。今までと少し違う、消費経済一辺倒ではない、人と人のつながりを大切にした、もう少し知恵のある国や地域社会つくりができないものでしょうか。主役はあなたたちです。幸せとは何か、進歩とは何か、など、より根源的な問題意識を持って、この困難に立ち向かいましょう。
公立高校のすばらしさは、地域社会と強いつながりを持っていること。そして、教育の究極の目標である全人教育、つまり狭い意味での学力だけでなく広く人間性を育てる豊かな学びの環境があることです。
今、社会は、自己表現力、コミュニケーション力、共感力、社会貢献力を備えた人材を待ち望んでいます。富田林高校での高校生活の中で、大いに勉強し、友と語り、泣き、笑ってください。部活や学校行事、クラスつくりを通した仲間たちとのかかわりを通して。それぞれの中に人間としてのほこりと優しさを持った、堂々とした人格を育ててください。富田林高校は君たちとともに堂々たる公立高校として更に成長します。
「春風(はるかぜ)や 闘志いだきて 丘にたつ」
これは明治生まれの俳人、高浜虚子の句です。
皆さんが、富田林高校での生活に、高い志(こころざし)を抱き、良き友、良き師と出会い、生涯忘れることのできない高校生活を過ごしてくれることを、心から期待しています。
大阪府立富田林高等学校 校長 易 寿也 (えき ひさや)
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