(卒業証書授与式 式辞)

 本日、大阪府立鳥飼高等学校の卒業証書授与式を挙行するにあたり、大阪府教育委員会 教育長 綛山哲男様をはじめ、たくさんのご来賓各位のご臨席を賜りましたことを、心よりお礼申し上げます。
 また、ご参列いただきました多数の卒業生の保護者の皆様、慶びと感慨はひとしおのものと拝察いたします。心よりお慶び申し上げます。
 さて、卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。先ほどの卒業証書授与は、皆さんが 本校にとって最後の卒業生であることもあり、非常に感慨深いものでした。
 多くの仲間が 途中で学校を去っていってしまいましたが、皆さんは、卒業しようという気持ちを前面に出して、よく頑張ってくれたと思っています。
 学校としても、最後の卒業生となる皆さんが、有意義な学校生活を 明るく送ることができるよう、また、落ち着いた環境の中で しっかりと自分の進路を考え、自信をもって 卒業後の第一歩を踏み出せるよう、一丸となって取り組んできました。
 先生方は、みなさんとの面談を通して 進路に対する意識を より確かなものにし、時には相談にのり、時には厳しい指導をしてきました。それに皆さんは しっかりと応え、結果を出してくれました。
 学校行事については、よい思い出がつくれるように、特に最後の一年間は、修学旅行に始まり、体育祭、文化祭、遠足と、皆さんの意見も取り入れながら 思い出深いものになるように、努めました。そして、皆さんもしっかりと取り組んでくれました。
 修学旅行中に特に感心したことがあります。それは先生方の指示がなくても、誰からともなく、それも全員が自主的に食後の食器をかたづけていたことです。皆さんの成長を感じました。
 自分のことしか考えられない、身勝手な人が増えてきたといわれるこの世の中で、社会人として大切なマナーをつけてくれていると実感したものでした。
 文化祭でのステージ発表も忘れることはできません。リハーサルのときも 少しでもよい発表になるようにと練習を繰り返したため、時間がどんどん遅れていってしまいましたが、文句も言わず、しっかりと取り組んでいましたし、本番では、堂々とした発表をしてくれました。展示作品も力作ぞろいで、いずれもすばらしいものでした。
 みんなで盛り上げようという気持ちが伝わり、皆さんと一緒に行事づくりに取り組んできた私たち教職員にとっても よい思い出となりました。私たちの心が一つになれていると実感しました。
 私も皆さんに、卒業後しっかりとした人生を歩んでほしいとの思いから、10月以降、皆さん一人ひとりと面談を重ねてきました。この3年間で、皆さんがどのように成長したのかを知りたいと思いましたし、しっかりとした卒業後の目標を持っているかも知りたいと思いました。
 また、学校生活を 最後まで意味あるものにしてほしいとの願いもありました。そして、特に、就職試験に合格した人には、期待されることの喜びと期待に対する責任を自覚してほしいと思いました。面談の中で、皆さんが夢をもって 来るべき新しい生活に臨もうとしていることを感じ取ることができ、皆さんの成長を実感することができました。
 そのような皆さんに最も望むことは、今皆さんが持っている夢の実現に向けて、あきらめずに努力し続けてほしいということです。継続することは、楽なことではありませんが、しっかりとした目標を持っていれば、苦しさ、しんどさも軽減できるはずです。
 特に、心にとどめておいてほしいことは、頑張っていれば、必ず誰かが応援してくれるということです。物事に対して真剣に取り組んでいる姿勢には、人の心を打つパワーがあります。懸命に努力する姿をみると 人は応援しなくてはならないと思うものです。もちろん私たちも応援します。応援は素直に受け入れてよいのです。そして、同時に 応援したり支えてくれたりしてくれる周りの人に感謝する心も決して忘れないでください。また、逆に 皆さんが、頑張っている友人をしっかりと応援できる人に成長してくれることを望みます。
 ニューヨークヤンキーズの松井(まつい)秀喜(ひでき)選手の好きな言葉にこんなものがあります。
 「こころが変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば運命が変わる。」
 松井選手は、この言葉を胸に秘め、練習に励み、トッププレイヤーとして活躍できるようになりました。
 「このようになりたい」と思い 心に誓う何かが見つかれば、それに向かって行動が起こります。その行動が当たり前のこととして習慣となるまで頑張って、はじめて人は変わることができます。
 必ず夢が実現できるという保障はありませんが、何かに没頭した先には、一つの答が待っています。誰にも負けない知識なのか、技術なのか、それともとんでもない集中力なのか、継続する力なのかはわかりませんが、一つのことに熱くなれる人は強いと思います。運命を変えることができると思います。
 現在、百年に一度という、金融危機の嵐が世界中を吹き荒れています。生きていくには厳しい時代だけれども、これがいつまでも続くものではないことを信じて、お互い頑張っていきましょう。
 鳥飼高校は、この3月末をもって閉校となりますが、皆さんと私たちは、この鳥飼高校で過ごした3年間を共有した仲間です。鳥飼高校はなくなっても、心のどこかでつながっています。苦しいときには、相談に来てください。みなさんがたくましく生きていくことを期待しています。
 また、皆さんが過ごしたこの鳥飼高校が 一人ひとりの心の中で生き続け、みなさんの将来が明るいものであることを信じて式辞とします。


(閉校式 式辞)

 この閉校式を迎えるにあたり、本校に対する熱(あつ)い思いや期待が記されている本校の創立10周年記念誌、20周年記念誌を、あらためて読み直しました。
 地元の人たちの新校設立への熱い期待。設立当初、校舎やグラウンドの工事が続く中、不便を感じながらも 自分たちの学校づくりに希望をいだいていた 当時の教職員や生徒の皆さんの熱い思い。そして、それを充実・発展させようと努めてこられた教職員のみなさんや生徒の皆さんの熱気。そういうものをあらためて感じ取ることができました。
 初代校長の塚本誠治先生が創立10周年記念誌に記した文章に、このようなものがあります。
 「私が鳥飼高校の設立の準備を命ぜられた日、これから山積みする問題の困難さを予想しつつ、ただ一人で建設の現地へ参りました。淀川の畦の少しばかり整地された校地とおぼしき場所にぽつんと佇み、これからの鳥飼高校の行く末をあれこれと考え、創設に伴う処々の困難の予測と学校の将来像に思いをいたしつつ、しばらく思索のときを過ごしたものでした。・・・。家風のない家庭と同じく、校風のない学校は単なる校舎、生徒の入れ物と言っても過言ではありません。また、その学校の目指す目標があまりにも彼岸の理想では、ただの床の間の飾り物に終わってしまいます。時代を越えてしっかりと腰の据わった目標を掲げ、そしてどっしりと地域に根ざした学校、これこそが鳥飼高校の目指す進路であろうと思います。」
 このような言葉が記されていました。
 「ひいでた知性と豊かな情操をそなえ、常に自己を研磨する人間の育成」を教育目標とし、「自主・自律・研鑽」を校訓として、基礎固めをされた塚本先生の意志を、それに続く歴代の校長先生を先頭に教職員のみなさんと生徒のみなさんが一丸となって、発展させて参りました。
 最盛期には、三学年あわせて一七〇〇人を越える生徒のみなさんがこの学校でいっせいに勉強に励み、汗を流して部活動に取り組んだ。そのような時期もありました。
 本校の玄関横の陳列ケースには、文科系クラブ、体育系クラブの栄光の軌跡である賞状や盾が飾られています。十周年記念にあわせてつくられた校歌を彫った作品も飾られています。熱い思いをもって勉学に部活動に励んでいた当時の様子が眼に浮かびます。
 本日、閉校式を迎えるにあたり、摂津市長、森山一正様、摂津市教育委員会教育長、和島剛様をはじめ、地元中学校、自治会の方々など多数の方々がご臨席くださいました。それは、この鳥飼高校が地元とのつながりを大切にし、これまで地域の要望に応えようと取り組んできたことを認めてくださったあらわれであろうと思います。ほんとうにありがとうございました。
 また、本日、これだけたくさんの歴代のPTAの役員の方々や同窓生、旧職員の方々がご臨席くださったのも、皆さんが 熱い思いをもって学校づくりに励んでくださり、それをよい思い出とし、この鳥飼高校を愛してくださってきた証拠であろうと思います。ありがとうございました。
 鳥飼高校の29年にわたる歴史は閉じますが、鳥飼高校の教育は、鳥飼高校をつくってきた私たちの思いとともに北摂つばさ高校に引き継がれ、いっそう発展していくものと思っています。そして、ともに汗をながし、かたい絆で結ばれた本日出席してくださった方々をはじめ多くの方々の一人ひとりの心の中に、鳥飼高校は永遠に生き続けてまいります。
 最後に、あらためまして、永きにわたり、本校を支えていただいたすべての皆様に感謝の念を捧げます。ほんとうにありがとうございました。これをもって式辞といたします。

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