2学期終業式式辞(要旨)

今日、2学期の終業の日を迎えました。始業式で、長い2学期を乗り切るために、スモールステップでの短期目標の設定と自分に合った取り組みの工夫をしてほしいと話しましたが、振り返ってみてどうだったでしょうか。12月という1年の締めくくりの時期でもあり、この1年を総括し、良かった点や悪かった点を明らかにし、新たな年に繋げてください。

社会全体での出来事で、この1年を振り返ると、令和への改元や台風19号での記録的な大雨による被害、そして「ONE TEAM」が流行語にもなったラグビーワールドカップ日本大会での日本チームの活躍など、様々なことが思い出されます。

そのなかで、特に興味をひかれたのは、旭化成の企業研究者である吉野彰さんのノーベル化学賞の受賞です。スマートホンや電気自動車などに活用されるリチュウムイオン2次電池の研究開発の功績は、その市場規模が4兆円を超えることからも、功績の大きさを実感します。そして、吉野さんが発信されているメッセージが、実社会での成果を伴う企業研究家だけに、われわれにも大いに参考になることがあります。

吉野さんは、成功の背景として、「柔軟性と粘り強さ」をあげ、「頭の柔らかさとその逆の執着性は、対立ではなく、どちらも重要でバランスが求められる」という。私たちは、ついどちらかに偏りがちになるのではないでしょうか。

また、研究活動には大きく分けると「3つの壁」があり、「壁」に突き当たっても深刻にならず、ポジティブ(前向きに)に捉える、「脳天気な考え」が必要といわれました。また、この「壁」については、ビジネス用語になぞらえて「悪魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という3つの段階的な壁があるといいます。一つめは、対岸まで泳ぎ切れずに脱落する、つまり研究段階で終わってしまう壁。二つめは、次々と問題が立ちはだかり、事業化の前に脱落する壁。三つめは、ようやく事業化にこぎつけたものの、市場で見向きもされない壁があると説明される。

そして、この壁に対する対処の仕方として、基礎研究段階の壁は「無駄なことを沢山しないと新しいことは生まれない。」とすべての活動を肯定的にとらえる。事業化段階への壁は「この段階では、課題解決の道筋が見えるまでは、むやみに積極的に動かない。また、まわりの力を借りることも大事」とし、効率的に対処することをとく。最後の市場に見向きもされない壁が一番しんどかったといい(リチュウムイオン電池もこの段階で5年を要した)、マッチングや時期を待つことも必要と述べられています。

こうしたアプローチは、学校での学習や部活動などでも大いに参考になります。例えば、学習や文化スポーツ活動の成果が出ず、壁にぶち当たった場合、いまどのような状況(段階)にあり、どこにどんな原因があるかを客観的に分析し、その課題に応じた解決策を取っているかです。そして、何より「壁」を自己の成長に必ず必要なことと捉えているかどうかです。

1年の締めくくりのこの時期に、吉野さんの三つの壁へのアプローチを参考に、自分のそれぞれの取組みを振り返ってみて、新しい年にどう取り組むかを見直してみてください。

これから、年末年始と慌ただしい時期をむかえますが、健康、安全には十分注意して、冬休みを過ごしてもらいたいと思います。