東大入学式、上野千鶴子さんの祝辞

この春、東京大学の入学式で、上野千鶴子さんの祝辞が話題になっています。URLを示すので、ぜひ読んでほしいと思います。

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

 上野千鶴子さんは、日本でのジェンダー研究の第一人者です。私も学生のころから、そのお名前だけは知っていました。上野千鶴子さんは、この東大の入学式での祝辞で、東京医科大学の不正入試や東大の学生や院生が起こしたレイプ事件について触れています。その上で、

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

と、自分の能力を世のために使うことを語られました。私は、この考えはとても大事だと思っています。これは、古代ローマ帝国の時代から続く「ノブレス・オブリージュ」の精神に通じる考え方だと思っています。つまり、「能力や地位、権力を持っている者は、その力を社会のために使うべきだ」という考え方です。今でもイタリアの街道には、女王の名を持つ『アッピア街道』があります。この街道は、当時監察官であったアッピウスが私費を投じて建設したものです。

 上野千鶴子さんは、女性の地位向上のために、様々な障壁を乗り越えて研究を続けてこられました。今宮高校は、女子生徒の割合が男子生徒よりかなり多い学校です。是非、女子生徒の皆さん、この上野千鶴子さんの祝辞を読んでみてください。そして、男子生徒も読むべきだと思います。これから訪れるであろう、ダイバーシティでの生き方を示してくれているメッセージだと思います。

 最後に、「あー、この方も同じようなことを考えているのだ!」と感心し、感動した箇所を引用します。

あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。ようこそ、東京大学へ。