NHK「ノーナレ」-画面の向こうから

 昨日(6月24日)のブログで、日本人の公徳心の芽生えから育ちを山崎氏の寄稿文を紹介することで、皆さんに「公」の大切さを書きました。その晩、寝る前にNHKにチャンネルを切り替えた時、あるベトナム人女性の悲痛な訴えの映像が、目に飛び込んできました。ティエンさんです。その番組は、NHKの「ノーナレ」という番組で、一切ナレーションが無く、淡々と映像をあるがままに放映していました。

 ベトナムのハノイの空港から技能実習生として日本に旅経つ若者。顔は不安と期待と、そして「日本に行ける」嬉しさに溢れています。家族や友人との別れに涙もありますが、笑顔がとても印象的です。ティエンさんもそんなベトナム人の一人。日本に裁縫の技術を学び、ゆくゆくはベトナムに返り、製縫の会社を設立したいと夢見る女性です。日本に来るために、75万円の資金が必要です。彼女の実家は農家。年収20万しかありません。彼女を日本に行かせるために、年収の3倍以上の借金をしました。しかし、年老いた両親にとっては、それが今後の生活の希望なのです。

 ティエンさんは、言います。「日本は、いいところ、人権が守られる国」。しかし、実際に日本で働いた工場は、裁縫を学べるどころか、朝から晩までひたすらタオルを裁縫する会社です。月間の超過勤務180時間。過労死基準の2倍を超えています。凄まじい労働環境です。何か言おうものなら、社長が「ベトナムに帰すぞ!」と脅します。

 ティエンさんたちは、この劣悪な環境から逃げるために、SNSで「助けてほしい」と訴えます。NHKが動き、行政機関が動く中で、彼女たちは佐賀県のシェルターに避難します。そこでの生活で安定を得たティエンさんたちは、やっと安心して生活ができるようになります。

 番組はまだまだ続きました。社長はNHKのインタビューに応じようとしません。

 番組を最後まで見て、想った事。

「アジアからの技能実習生をこのようにしか遇せない日本(日本人)は、いつか大きなしっぺ返しがくる」

という事です。日本の生産人口は、どんどん減少の一途をたどります。選択する道は、二つ。経済活動を縮小するか、海外からの労働力に頼るか、しかないのです。そして、前者を選ぶ道はほとんど考えられません。日本の生き残る道は、後者しかないと考えています。さらに言えば、アジアからの技能実習生を労働力としてだけ見るのではなく、同じ日本で生活する生活者として見る視点が必要だと思います。もう、日本はアジアの国の人々と、この日本で共生していくしかないのです。それが、日本の取るべき道だと思います。私は、今宮高校の学校経営計画のめざす学校像で次のように書きました。

未来予測が困難な後期近代社会を生き抜くために、グローバルな視点で自らの周囲「50cm」で変革を起こす力を育成する。そのために新たな価値を創造する力、社会を生き抜く人間力、ダイバーシティを担う社会的包容力を養い、社会をリードする人材を輩出する学校をめざす。

ここで使われている「ダイバーシティを担う社会的包容力を養い」という言葉の向こうには、「アジアの人々をはじめ、多種多様な人々と共生」という思いがあります。今宮高校を卒業する生徒には、この「ノーナレ」に登場した社長のような人間には絶対になってほしくないと強く願います。

 コンビニに行けば、アジアから来た多くの人々が働いています。もう、すでにダイバーシティは始まっているのです。彼、彼女たちとどのように共にこの社会を創っていけば良いか、真剣に考える時だと思います。高校時代に多くの人々と出会い、考える場が必要です。

 私は、前任校で別府にある立命館アジア太平洋大学(APU)で学ぶ留学生との交流をメインにした修学旅行を提案しました。前任校では、今年その修学旅行が実施されます。修学旅行は「学びの場」です。学校が企画する限り、「私」の旅行であってはならないと思います。今宮の野外スクーリング(修学旅行)も、「学びの場」となってほしいと思っています。