PISAショックの再来か?!-読解力15位に転落

 12月4日の各紙朝刊は、一斉に2018年のPISA(国際学習到達度調査)の結果をトップで報じました。「『読解力』急落15位」(読売)、「日本読解力15位に急落」(毎日)、「15歳ネット情報精査が弱点」「日本、『読解力』続落15位」(朝日)です。また、教育界に激震が走るのでしょうか?2003年のPISAショック「ゆとり教育批判」のように。

 日本の若者の読解力に危機感を持たれていることは、今に始まったことではありません。AI(人工知能)の研究の第一人者の新井紀子博士は、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の本の中で、若者の読解力の欠如への危機感を述べています。とうとう、博士の危機感がPISAの調査結果でも証明されてしまったのです。若者の読解力の低下の原因に挙げられているのが、LINEなどのSNSによる短文のやり取りの日常化、新聞や小説・新書などの長文を読まない、などが挙げられています。しかし、この現象というのは何も若者に限ったことではなく、大人にも当てはまります。電車の中での風景を思い出してください。本を読んでいたり、新聞を読んでいたりする人は、圧倒的に少数派です。スマホを覗き見る人が大多数です。スマホでニュースを読んでいるならまだしも、見えてくるスマホの画面は、ゲーム、ゲーム、ゲーム、ゲーム、・・・・・・、ゲームのオンパレードです。15歳の読解力を調査するなら、大人の読解力の調査もしてほしいと思います。

 今の高校の学習指導要領は、現在進められている高大接続改革で唱えられている「学力の3要素」(①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③学びに向かう社会性・人間力等)に基づいたものではありません。「生きる力」はずっと学習指導要領で言われ続け、小・中の学校改革・授業改革はずいぶんと進みましたが、高校での改革はこの高大接続改革・新学習指導要領で展開されることになります。特に「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」まで言及し、「主体的・対話的で深い学び」は授業改革の目玉です。読解力という問題に引き寄せて言うと、特に「深い学び」が重要視されるでしょう。京都大学の松下佳代教授は、その著「ディープ・アクティブラーニング」の中で「深い学び」の重要性を強調されています。教授によると「深い学び」と「浅い学び」の違いは、次の表のようになります。

アプローチの仕方 実際の学び
深い学び 概念を自分で理解すること

概念を既有の知識や経験に関連付ける

共通するパターンや根底にある原理を探す

証拠をチェックし、結論と関連付ける

論理と議論を、周到かつ批判的に吟味する

必要なら暗記学習を用いる

浅い学び 授業で求められることをこなすこと

授業を、互いに無関係な知識の断片としてとらえる

事実をひたすら暗記する、決まった手続きをひたすら繰り返す

目的のストラテジーも検討することなく勉強する

今宮高校の皆さんの授業の受け方は、どんな受け方になっていますか?一度、自己点検しましょう。

 さて、今宮高校でどこまで読解力が育てられているのか?今宮高校は、総合学科で多くの学校設定科目が開設されています。この学校設定科目の中で「私達が立っている場所」という国語の授業があります。名前からは、どんな授業が行われているのか想像が難しいですが、私も2回ほど授業を見学させてもらいました。その授業では、生徒がグループで文献のある部分を担当し、事前に何が書かれているのかを調べ、分析し、授業担当の小山先生と打ち合わせをし、OKをもらうまで検討を繰り返します。そして、授業でその担当部分の読解を発表するのです。小山先生からは容赦のない質問が浴びせられます。それに、生徒は必死で応えていきます。その答えた内容が不十分なら次回までに再検討を求められるという授業です。まるで、大学のゼミですね。当然、生徒からも質問が出てきます。双方向の授業が実践されています。大学進学をめざす生徒たちからは、人気の授業の一つです。

 「私達が立っている場所」という授業を紹介しましたが、すべての授業がこのような授業ではありません。昔ながらの「トーク&チョーク」の授業をやられている先生もあります。しかし、この秋校長として授業見学を行うと、先生方の意識の中に「主体的・対話的で深い学び」を何らかの形で取り入れようという意欲が見えます。また、総合学科には、普通科にはない「産業社会と人間」から「課題研究」まで続く「探究的な学びの場」があります。まだまだ改善しなければならない部分もあると思いますが、総合学科には読解力を鍛える「主体的・対話的で深い学び」の場が多く用意されているのは確かです。

 私は、学力の3要素は、21世紀を生きる若者に必須の要素だと考えています。今回のPISAの結果の上位には、アジアの国々も多数入っています。中国は、数学的リテラシー・科学的リテラシー・読解力の3分野ですべてトップの成績を取っています。アジアの若者と共に人生を歩んでいく日本の若者の将来を考え、微力ながらも今宮高校総合学科は、日本の若者にこれからの時代を生き抜く力を育てるために尽力したいと思います。