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9月入学・始業は大いに賛成、でも今の学びを止めてはいけない!

 4月29日のニュースで突然のように「9月入学」の話題が湧いてきました。これだけ学校が休業になると、この「9月入学」という話も現実味を帯びてきます。私立高校は、多くの学校でオンライン授業を実施していますが、公立高校では果たしてどれだけの学校が実施できているでしょう。公私の格差が広がっているのは事実です。この危機感から、前のブログにも書いたように本校でも「Zoomによるオンライン授業」を準備しているのです。しかし、どこまで私立高校に追いつけるか・・・。

 さらに、「9月入学」の実施の理由に「グローバルスタンダード」に合わせるということも挙げられています。確かにそうなのです。世界の教育現場は9月はじまりなのです。もともと、この話は10年前に東大が9月入学を検討したずっと以前、中曽根内閣の臨時教育審議会(臨教審)で「教育の国際化」というテーマで論じられている「新しくて古い問題」なのです。小池都知事が「私はもともと9月入学論者の一人」というのも、このような議論の過程があったからなのですが、そうすると疑問が湧くのが、「なぜ、実施できなかったのか?」という問題です。その理由は「9月入学は、日本の社会システムそのものを変えてしまうから」なのです。それだけに、日本社会全体の合意が求められます。私は、「あなたはどっちの意見か?」と尋ねられたならば、「大いに賛成!」と言いたい。しかし、実現するとなると相当大きく、高いハードルが待ち受けているのも事実です。 

 予想した通り、昨日開かれた全国知事会のテレビ会議では、賛否両論が出ました。賛成の意見には、上記の理由のほかに、「この混乱の時期だからこそ、『9月入学』という前向きな改革が実施できる」という意見があります。確かにそうです。大きく世の中が変わるときには、大きな外圧が必要なのです。歴史的にも日本は外圧によって大きく社会を変えてきました。江戸幕末の黒船もそうですし、太平洋戦争の敗北もそうです。そして、今「新型コロナウィルス」という未経験の外圧が襲ってきているのです。「この機会だからこそ!」という意見には、十分説得力もあるし、理解もできます。

 反対意見には、どんな意見があるのでしょう。「混乱に乗じて・・・」という意見もあります。私が最も納得した意見は、「今、社会のシステムを変えることにマンパワーを投じていいのだろうか?今すべきは、新型コロナウィルス封じ込めに投じることではないか」という意見です。この意見も正論です。日本の社会システムを根底から変えていく「9月入学」が、果たしてわずか4か月ほどの議論でまとまるのだろうかと思います。正論と正論がぶつかり合う議論は、何が正解かという答えは簡単には出てきません。もっとも正解に近いであろう「最適解」しか出てこないのです。この問題に短期的な解答を得ようと思えば、相当強力な政治的リーダーシップが求められますし、そうでないならば、ボトムアップの議論が必要です。その場合は、相当長期間の時間が必要でしょう。

 私は、「本来9月入学を導入するなら、最低でも2年間かけて論点を整理し、そのシミュレーションを行い、問題点を洗い出す中で制度設計すべき」と考えています。今、「9月入学」を実施に向けて動き出せば、拙速という批判は当然出てくると思います。この問題は、相当大きなハードルが待ち構えていると思ってください。

 結論を言います。この「9月入学」という問題の決着には、先が見えません。世の中の趨勢がどうなるか、経済界などがどのように動くか、まだまだ不確定要素が多すぎます。だから、生徒の皆さん、「9月入学になるから今は安心」とは思わないでください。まだまだ正規の授業には不十分ですが、スタディサプリを活用した学習を続けてください。私達教職員も、スタディサプリを補完するオンライン授業の準備を進めていきます。今、必要なことは、先行きを楽観視せず、やれることは何でもやる、という姿勢だと思います。決して今の学びは無駄になりません!