新入生の集いー新しい総合学科のスタート!

 6月15日、今日から府立高校は平常授業の始まりです。1限目、25期生の新入生の集いが開催されました。やっと、この日が来たという感じです。私から入学許可・新入生への言葉を述べました。最後に掲載しているので読んでください。

 集いの後、第1回の学年集会が引き続き行われました。新しく設置された共生推進教室に入学した2名の生徒の自己紹介、そして難聴生徒の紹介です。式辞の中でも述べましたが、25期生には様々な背景を持っている生徒が入学しています。そのそれぞれのアイデンティティを認める多様性のある集団になってほしいと思います。今日は、今宮高校の新しい総合学科がスタートした記念すべき日です。

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第75回入学の集い

 ただ今、入学を許可いたしました、総合学科二五期生・二百四〇名、そして共生推進教室2名の新入生のみなさん、入学おめでとう。みなさんの入学を心から歓迎いたします。

 昨年度3月より、新型コロナウイルスの影響で、日本全国の多くの学校が休業しました。春の選抜甲子園も中止となり、全国的に多大な影響をもたらしています。大阪府においても5月31日までの学校休業の延長という事態になりました。6月1日より分散登校が始まり、本日やっと平常の授業が実施されることとなりました。素直に喜び合いたいと思います。このように学校が再開されるのも、最前線で戦ってくれている医療従事者の皆さま、社会のインフラを止めないために活躍していただいている多くの皆様のおかげです。心から感謝したいと思います。今後第二波、第三波が襲ってくると言われており、予断を許さない状況が続くと思いますが、必ずこの事態を克服できる、克服するんだという決意をもって、行動しましょう。

 さて、今宮高校で新たな高校生活を始めるあなた達に、知っておいてほしいことについて話をしたいと思います。

 第一に、皆さんもご存じのようにあなたたちから本校の総合学科のシステムが大きく変わります。そのコンセプトは、

「学ばなければならないことをしっかり学ぶ」

というものです。今宮高校が総合学科に改編されてからすでに四半世紀が経ちました。この間、世界の情勢、日本の状況は大きく変化しました。令和の時代を歩むあなたたちの未来は、「何が起こるかわからない」と言われている時代です。そのような時代を生きていく上で必要なことは、今まで人類が積み上げてきた叡智をまずはしっかりと身につけることです。その基礎となるのが、高校での学習であると思ってください。「あれかこれか」を選択している余裕はありません。「あれもこれも」と貪欲に学んでください。

 第二に、学びの質の問題です。小学校・中学校では、基礎的な知識を学ぶことが重視されます。あなたたちは、高校受験を突破するために必要な知識を必死に頭に入れ、理解してきたと思います。今、必要とされている学びは、必要な知識・技能を習得した上で、その知識・技能を活用し、創造的な新たな価値を生み出す学びです。今、日本の若者の読解力はどんどん低下し、世界の若者との差が益々開いています。教科書に書いてある内容さえ、十分に理解できないと言われています。私は、あなたたちには意味を十分に理解できずに断片的な知識を頭に入れるような学びはしてほしくありません。「深い学び」をしてほしいと思います。「深い学び」とは、一つ一つの知識の意味するところを十分に理解すること、そしてその分野の学習を終えても永続的に理解をすることです。一つ、例をあげましょう。国語の授業では高校2年生で、夏目漱石の「こころ」を、高校3年生では森鴎外の「舞姫」を学びます。どちらも恋愛がテーマになっています。しかし、そこに描かれている登場人物の苦悩には、「近代的自我の確立とその動揺」という明治の時代の大きなテーマが反映されているのです。深く学ばなければ二つの小説とも、単なる恋愛小説に終わってしまうでしょう。それでは、夏目漱石も森鴎外もなぜこのような小説を世に送り出したかを理解できません。是非、今宮高校では「深い学び」をしてほしいと思います。

 第三に、今年度より本校に共生推進教室が設置されます。「共に学び共に育つ」という理念のもと、2名の知的障がいがある仲間と共に高校生活を送ることになります。あなたたちの中には、小学校・中学校の時に様々な障がいがある友達と一緒に学んできた人が、少なからずいると思います。共に学んできた仲間であるにも関わらず、いざ高校進学の時には入試という壁が立ちはだかります。一方、社会には、様々な人たちが生活しています。障がいがある人はもちろんのこと、様々なルーツを持つ人たちもたくさん暮らしています。特に今後日本で働く外国人の人たちは、どんどん増えていくでしょう。日本は、どんどん多様性豊かな国になっていくと思います。そんな時代を生きるあなたたちにとって、知的障がいがある仲間と共に過ごす今宮高校での生活は、とてつもなく大きな財産を得ることになると思います。多様性を認め、まさに共に学び、共に育ってほしいと思います。

以上が、私があなた達に求める高校での学びです。

最後に、本日入学した25期生242名が、互いに切磋琢磨し、互いに鍛え合って、大きく成長する集団となる事を願って、私の新入生への言葉といたします。

令和2年6月15日

大阪府立今宮高等学校  校長 上野 佳哉