7月19日読売新聞「地球を読む」

 学校には朝日新聞と毎日新聞が届きますので、私は読売新聞を買うことにしています。できる限り3社の新聞を読むことにしています。3社の中で、読売新聞の日曜日版に掲載される「地球を読む」は、国内、海外を問わず一線の政治家や研究者が、その時その時に合ったテーマについて自説を述べていますので、いつも興味深く読んでいます。

 今回、7月19日の「地球を読む」は、慶応大学教授の細谷雄一氏。細谷氏は、国際政治学が専門。時々月刊誌にも論文を投稿されているので、「今回のテーマは?」と興味深く読んでいると、なんと現在大きな問題になっているコロナ禍の問題と宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」の話。ご存じのように「風の谷のナウシカ」は、高度産業文明が崩壊した1000年後が舞台。汚染された地球に腐海があり、その腐海では、人間には猛毒の瘴気が噴き出しているという話です。人間が腐海を焼き払おうとすると、腐海に住む蟲たちが襲い掛かってきます。ナウシカは、腐海との共存をめざすという話です。そこで、細谷氏も今回のコロナの問題を自然とのバランスの不均衡によって発生したのではないかという意見の下に、子どもの頃にみた「風の谷のナウシカ」の映像と重なると言っています。自然とのバランスが崩れるとき、今回のような「反撃」をくらってしまう。そして、人間社会でもバランスが崩れたときに戦争が勃発するという国際政治家らしい視点で意見を述べておられました。

 ところで、この自然とのバランス。とても難しくて困難な課題です。宮崎駿氏は、「風の谷のナウシカ」の13年後に「もののけ姫」を作成しました。この映画も人間社会と自然との関係をテーマにした映画です。自然の中で育った「サン」と人間社会で育った「アシタカ」。ともに命を懸けて森を守った後に、二人は別々に世界で生きていきます。この二人の最後のセリフは、とても意味深いセリフです。

サン:「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない」

アシタカ:「それでもいい。サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いに行くよ、  ヤックルに乗って」

 二人は、自然界と人間社会で別々に生きていこうとします。アシタカの「共に生きよう」という言葉、でも「どうやって?」という答えは見つかっていません。それは、私たちに投げかけられた問いではないかと私は思っています。自然との共生をめざした「ナウシカ」から13年。自然との共生は、そんな簡単な問題ではない、人間が考えに考え、苦しみぬいた後に見つける答えなんだと問題提起したのが「もののけ姫」だと私は思っています。今回の新型コロナ問題。「With CORONA」は、言葉では簡単に表現できても、実行するのは容易くないと思っています。まだまだ人間は、考え抜かなければならないのでしょう。