総合学科23期生新制高校73期生卒業式

 本日3月2日、あいにくの雨模様でしたが、本校体育館にて総合学科23期生の卒業式が挙行され、234名が社会に巣立っていきました。新型コロナウイルス拡大防止の観点から、来賓の方々のご出席をお断りし、校長の式辞、PTA会長の祝辞も書面での披露となりましたが、卒業生たちは、元気に式を終え、今宮生としての最後の務めを立派に終えました。

 以下、書面での私の式辞を掲載します。

卒業していくあなた達へ

 今宮高等学校 校長 上野 佳哉

 総合学科23期生の皆さん、卒業おめでとございます。昨年から世界中に蔓延している新型コロナウイルスの影響で、卒業式もできる限り短縮して行う事を余儀なくされ、私が卒業していくあなたたちに贈る式辞もメッセージという形で、昨年度に引き続き文書で配布することにしました。参列していただいた保護者の皆様にも、このような形での卒業式にご理解をいただければ幸いです。

 さて、みなさんもご存じのように、新型コロナウイルスの蔓延は、私達の日常を大きく変えました。今まで当たり前であったことが当たり前でなくなり、新たな日常を余儀なくされています。ワクチン接種も2月末から開始されることとなっていますが、「with corona」の生活は、まだしばらく続くでしょう。「with corona」、そして「post-corona」の時代を生きていくあなた達に、私の思いを伝えることで贐の言葉としたいと思います。

 先ほど、新型コロナウイルスの影響で、私達の日常が大きく変容したと述べました。このウイルスの影響で、私達はもともとこの社会に潜んでいた様々な問題について気付かされました。そして、このウイルスのために、その問題を加速度的に解決しなければならない事態に直面したのです。

 まず、国内の問題に目を向けてみましょう。最初に大きく変化したのは働き方です。リモートワークの普及です。満員電車に乗ってわざわざ会社に行かなくても仕事ができる事を多くの人が経験しました。このことは、東京を中心とする大都市への人口集中問題に解決の糸口を示唆しました。企業によっては、本社を地方に移転させる会社も現れています。それは、一極集中の問題の解決と共に、地方の過疎化問題の解決にも貢献することになるでしょう。

 次に、私達が直面したのは、行政のICT化の遅れです。ヨーロッパでは、ワンストップで迅速に手続きできるにも関わらず、日本では10万円の給付金の支給がどれだけ滞ったか。正直、「昭和」を連想させるような行政の古めかしい体質に驚かされたのではないでしょうか。

 そして、私達が直接体験したのが、学校、それも公立学校のICT化の遅れです。昨年の6月15日に学校が再開されるまで、学校は休業を余儀なくされました。本校でも「学びを止めてはいけない」とできる事は最大限取り組んだつもりです。それでも多くの生徒の皆さんに不自由をさせてしまいました。今まで公立学校のICT化が進んでいないことは、何回も取り上げられてきましたが、その解決は遅々として進みませんでした。このウイルスの蔓延で学校が止まって初めてこの問題が世間から注目されたのです。

 最後に、医療の問題です。日本の病床は、1000人当たりの病床が13.7床と、世界一位です。これだけの病床を有しながら、医療崩壊が叫ばれる日本の医療行政の構造的問題が焦点化しています。

 世界に目を向けてみれば、アメリカ第一を掲げたトランプ大統領の時代は終わりました。しかし、「トランプ現象」はまだまだ続くでしょう。この現象の背景には、行き過ぎたグローバル化により、富が一極に集中し、欧米の中産階級を直撃しその没落を招いた事にあると言われています。1990年代から2000年代にかけて推進されてきたグローバル化とは何だったのか、その質が問われることになるでしょう。

 また、中国の強権的政治、そして覇権的体質は、すぐ隣の国に住む私達の生活に直接影響をもたらします。この難しい隣国とどのように付き合っていくか、私達一人一人が考えなくてはならない課題です。

 このような事態に直面している私達。2020年からの数年間は「with corona」の時代として、確実に世界史に記録されます。そして、おそらく「あの時が、歴史の転換点だったよね」と言われる数年間になると思います。そんな時代に生きている私達。今、身の回りで起こっていることは、卒業していくあなた達のこれからの人生に大きな影響をもたらすと思います。平成の時代を生きてきたあなた達が描いていた人生のイメージが、令和の時代にはまるで違った様相を呈するかもしれません。そのとき、考えてほしいことがあります。出来うるならば、私達が直面しているこの困難な状況を少しでも解決する方向で、人生を送ってほしい。そう、私は願っています。

 皆さん、「ノブレス・オブリージュ」という言葉を知っていますか?フランス語で直訳すると、「高貴さは強制する」という意味で、一般的に財産、権力、社会的地位の保持には義務が伴うことを意味します。つまり、社会的に地位のある人は、社会に貢献すべきであるという考え方です。ヨーロッパに古くからある考え方で、第一・第二次世界大戦の時には、この考えに則り多くの貴族が率先して戦地に赴いたと聞いています。私は、この「ノブレス・オブリージュ」という言葉を、現代風に「能力のあるものは、その能力を社会の発展のために使うべき」と理解しています。今宮高校を卒業するみなさんは、戦前からある伝統校の卒業生です。社会にとって有為な人材です。是非、その資質と能力を社会の発展のために使ってほしいと思います。

 どのようなことが社会の発展に寄与するのか?それは人それぞれが考え、判断し、実行することでしょう。ただ、社会の発展に関して大きな指針があります。それが、2015年に国連加盟国すべての国で合意したSDGs(持続可能な開発目標)です。このSDGsが合意した根幹には、次のことがあります。

今、人類は地球の1.67個分の資源を使って生活している!

という事です。今のような生活を続けていけば、やがて地球の資源は枯渇するという事は、小学生でも分かるでしょう。地球資源の枯渇は、あなた達が生きているうちに起こると予想されています。SDGsは、環境・社会・経済という大きな3つの分野で持続可能性を追求するために、17の目標と169のターゲットを設定しました。そしてそのターゲットを2030年に達成することを目標にしています。SDGsには、協働、多様性、人権、平和、環境保護、健康、貧困撲滅、・・・など様々な要素が含まれています。私は、SDGsはここ数年間世界に表出した「自国第一主義」「覇権主事」の対極にある、私達が進む道標を示していると思っています。

 このSDGsも、新型コロナウイルスの影響でその達成が困難ではないかと言われています。なぜなら、医療格差、経済格差がより拡大し貧困が増加傾向にあるからなのです。

「with corona」「post-corona」の時代をどのように生きていくか、その一人一人の生き方によって、今まさに私達が生きている歴史の転換点の方向性が決まるように思います。私は、あなた達にノブレス・オブリージュの精神を身に纏い、SDGsを道標にした人生を、それぞれの進む道で歩んでほしいと思っています。

みなさんの今後の人生に栄光の輝きあれ!