中間考査最終日の10月15日(水)午後1時から岸高ホールにおいて、今年度第1回めとなる「運動部員研修」を実施しました。
本校では、運動部員を対象とした研修を年2回、実施しています。昨年度は、10月に味の素株式会社の方による「身体づくりのための栄養の摂り方を学ぶ」と題した講義・実技を、また2月にはパーソナルトレーナーでB-LEAD代表の藤元さまによる「けがの予防、パフォーマンスを向上するための方法を学ぶ」と題した講義・実技を実施しました。
今回は本校数学科の教員であった寺田眞治先生にお越しいただき、「折れない心をつくるメンタルの鍛え方~無意識の壁を乗り越える方法~」をテーマに、簡単に実践できるワークショップなども交えながら講義を行っていただきました。寺田さまは現在、カウンセリングサービス「terraplus」の代表であり、学校現場などにおけるメンタルトレーニングの実践のほか、私立の中学校・高等学校や小学校でスクールカウンセラーなどもされています。
当日の講義の内容については、運動部員のみならず、これから大学受験するすべての生徒にとって、とても大切な話しであったと思いますので、私の感想や考え方なども加えながら、いくつか紹介させていただきます。
まずは、コップに半分の水が入ったイラストを示し、「あなたはこのイラストを見て、『コップに水が半分もある』or『コップに水が半分しかない』のどちらだと考えますか。」という問いから始まりました。「リフレーミング」に関する一つの例です。
リフレーミングとは、物事の枠組み(フレーム)を変え、異なる視点から捉え直す心理学用語です。ネガティブな事柄をポジティブなものとして捉えたり、思い込みや固定観念を別の視点から見直したりすることで、新しい見方を得る思考法です。
同じ物事でも「捉え方」を変えることで、モチベーションの向上、自信がつく、苦手意識の軽減、人間関係の改善、課題解決能力の向上などの効果が期待できると言われています。
私も自分勝手にならない程度に、自分に都合よく物事を捉えるようにしていることがあります。物事を常に前向きに捉え、プラスの方向に考える思考法である「ポジティブシンキング」などと同様に大切なことではないかと思っています。
その後、メンタルトレーニングについて話しがありました。メンタルトレーニングとは「目標達成に向けてメンタルを強化する心の筋トレのようなもの」であり、「自分で自分をコントロールする力」をつけていくトレーニングだと定義されました。
そして、メンタルトレーニングで身に付くものとして、「本番の緊張をコントロールできる」、「自信をもってチャレンジできる」、「ミスしてもすぐ切り替えられる」、「同じようなミスを繰り返さなくなる」、「集中力をコントロールできる」、「イライラや落ち込みから早く抜け出せる」が提示されました。確かに、これらのことが実現できれば、常に安定したパフォーマンスを発揮できるだろうと思います。
メンタルトレーニングとしては、毎日の仕事や生活の中で意識(集中できる習慣、ポジティブな考え方、不安や邪念に負けない)することが大切であるということです。具体的な例として、試合直前や緊張を感じた時には、「プレッシャーを感じた時に、その感情を認める」、「緊張=集中力の高まりと捉え直す」、「最高のプレーを想像する」などを実践するよう伝えられました。
続いて、目標を妨げる無意識のクセ「メンタルブロック」について、次の5つの代表的な内容が紹介されました。どれもありそうで、納得できるものばかりです。
①プライドの高さ:人によく思われたい、完璧でありたい、失敗したくない、恥をかきたくないなど
②変化への恐怖:変化に対する抵抗感や不安感が出て、行動や変化を避けてしまう
③自信のなさ:自分に自信が持てず、「自分にはどうせできない、無理」だと考え、行動できない
④マイナスの設定:「ここでは勝てない」、「あの人とは住んでいる世界が違う」など、無意識に決めつけている
⑤他人からの刷り込み:よく言われたネガティブな言葉、マイナスな価値観が刷り込まれ、成長や行動ができない
次に、目標設定の方法について、目標をより具体的で達成可能なものにするためのフレームワークとして「SMARTゴール」が紹介されました。5つの要素【S(Specific):具体的、M(Measurable):測定可能、A(Achievable):達成可能、R(Relevant):関連性がある、T(Time-bound):期限がある】の頭文字を取ったものです。
このSMARTゴールについて、受験勉強の場合の具体的な目標例が示されました。生徒の皆さんには、長期間の大きなゴール(目的)に向かって、短期間で設定した目標達成のために、日々、努力を積み重ねてもらいたいです。
その後、「実力発揮と心理状態」として、とても大切だと考える話しがありました。緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎてもパフォーマンスは低下するという内容です。緊張や興奮が高すぎると力みや焦り、注意散漫となる一方、低すぎるとぼーっとしたり、集中できなくなったりするという話しです。これも十分に納得できる話しだと思います。
特に、緊張や興奮が力みや焦りにつながり、日頃の実力を発揮できなかったという経験は数多くあるのではないかと思います。したがって、いかに緊張や興奮を自分でコントロールできるようにするかが重要だということです。
まずは自分がどうして緊張するのか?原因を知ることからスタートし、そのことへの対策を取ることが求められるという話しがありました。そのうえで、緊張を誘発する原因として、「プライド型」、「コンプレックス型」、「トラウマ型」、「準備不足型」、「未知の経験型」などがあると紹介されました。どうしても緊張してしまうという皆さんは、おそらくいずれかの型にあてはまっているのではないかと思います。
その後には、メンタルトレーニングとして、感情をコントロールするためのトレーニング、意図的に副交感神経を優位にさせるトレーニング(呼吸法、ルーティン、イメージトレーニング)、身体に影響を与えるポジティブな言葉(大丈夫、何とかなるなど)、集中力を高めるトレーニングなどの話しやワークショップが行われました。
そして最後に、「規則正しい生活」の重要性について話しをしていただきました。話しを聞かせていただき、とても理論的かつ実践的な内容であり、生徒たちにとってはとても有益な話しであったと感じました。今回の話しの内容を常に意識しながら、高校生活を送ってもらいたいものです。寺田さま、お忙しい中、お越しいただき、ありがとうございました。感謝申し上げます。
最初にも書いたとおり、今回は運動部員研修として実施しましたが、すべての生徒にとって様々な場面で役立てることができる内容だったと思います。メンタルを鍛え、折れない心をつくることにより、「チャンスに強い」、「本番に強い」と言われるようになってもらいたいと思います。昨夜のクライマックスシリーズで、期待どおり、サヨナラホームランを打ってくれた阪神の森下選手のように・・・。