10月25日(土)、大阪府教育委員会・大阪工業大学主催の「高校生のための建築視察研修ツアー」が開催されました。このツアー実施の目的は、大学の建築系の学部・学科への進学や建築業界への就職をめざす高校生を対象に、それらの企業のオフィス・展示会を訪問し、その職場環境を体感するとともに、それらの企業が近代大阪の建築やまちづくりにどのように貢献してきたかについて知見を広めることにあります。
多くの府立高校から合計25名の生徒が参加しました。本校からは最多の8名が参加することもあり、私も一緒に同行させてもらいました。
今回のツアーを企画いただいた大阪工業大学工学部建築学科の岡山教授には、私が大阪府教育庁高等学校課で勤めていた当時、大阪工業大学副学長として、「科学の甲子園」や「大阪サイエンスデイ」をはじめ、多くのイベントで連携協力いただきました。校長になってからも、本校と大阪工業大学との連携協定締結にご尽力いただくとともに、本校主催の探究学習情報交換会にも来校いただきました。そのような繋がりもあり、参加させてもらいました。
午前9:00に大阪工業大学梅田キャンパスに集合した後、岡山教授から、このツアーを企画した趣旨などについて話しがありました。「皆さんは大学でどの分野を学ぼうか考えていると思いますが、その先のことをしっかりと考えてほしい。離職率は高く、高校生の時に、興味ある分野のイベントに参加し考えてほしいと思っていました。」、「25日(土)、26日(日)には、大阪市内の近代・現代建築やそれに関わってきた企業のオフィスを開放し、特別に展示会を開催する『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2025』、通称『イケフェス大阪2025』が開催されています。そこで、高校生にも建築の面白さを伝えたいと考え、大阪のまちづくりに貢献している竹中工務店、日建設計、安井建築設計事務所に協力してもらい、今回の研修ツアーを実施することにしました。」といった内容でした。
そうした話しを踏まえ、9:15から約1時間、岡山教授による「近代大阪のまちづくりと建築」と題した講義において、建築をとおした大阪の歴史について教えていただきました。1~2階の木造建築が中心であった江戸時代から明治期へ、そして大阪市が大大阪時代(大正期から昭和初期)と呼ばれていた時代への移り変わりについて話しがありました。1920年代から1930年代にかけて大阪市は人口・面積・工業出荷額において国内第一位であり、当時の東京市を凌ぐ世界有数の大都市へと成長していたとのことです。
その当時の中央公会堂や大阪市役所などの建物、また当時の総合大阪都市計画における地下鉄工事や御堂筋建設などのまちづくりの話しはとても興味深かったです。大阪市における南北に走る「筋」と東西に走る「通り」について、「筋」のほうが広いのは後から広げやすかったからという話しも印象に残っています。その代表が「御堂筋」でしょう。
講義の後半には、この後訪れる竹中工務店、日建設計、安井建築設計事務所、それぞれの歩みと貢献について話しがありました。私にとってはとても面白い話しでした。今回土曜日に自ら希望し、大阪市内までやってきた生徒たちは、これらの話しをどのように感じているのだろうかと思いつつ、私は一番後ろの席で聞いていました。
岡山教授からは最後に、「今回は大阪市の建築をとおした歴史について話しをしましたが、本日の話しをきっかけに皆さんの住んでいる地域のまちづくりにも興味を持ってもらいたい。」という話しがありました。また、「長く建築に携わっているが、常に新しい建築工法や建築素材など新たなものが出てくるため、飽きることはない。」とおっしゃっていました。建築やまちづくりにとても熱心なのはそういう要因もあるのだろうと聞いていて感じました。

講義が終わり、全員が一緒にOsaka Metroに乗り、本町駅へ、そしてまずは御堂ビルにある竹中工務店大阪本店を訪れました。そこでは特別に、岡山教授の知り合い二人の方に一緒に回っていただき、オフィスについての説明をしていただきました。最も印象に残ったのは、速やかに移動し、直接顔をあわせて打ち合わせなどができるよう設置されたオフィス中央に位置する階段です。なだらかでとても歩きやすい階段に感動しました。これならば、階段での移動も楽しめそうだなと思いました。
その他にも、広々とした空間の中に、簡単な打ち合わせに便利なファミレスシート、チームで作業を行うことができるプロジェクトテーブル、振り向くだけで会議ができるマネージャーデスク、仕事にあわせて選べる個別のワークスペースなどが配置されており、新しい働き方のアイデアがたくさん詰まった魅力いっぱいのオフィスでした。図書館も素晴らしい空間でした。このような環境で働くことができれば、労働意欲も高まり、生産性も向上するだろうなと実感しました。私は本校にもこのような職場環境がほしいなと思いながら見学していました。おそらく生徒たちはこんなところで働きたいなと感じながら見学していただろうと思います。
オフィスを案内してもらった後は、「イケフェス大阪2025」の展示会場を自由に見学させてもらいました。あっという間に時間が過ぎてしまい、もう少し竹中工務店に留まりたいなと感じたぐらいでした。案内いただいたお二人の方に感謝申し上げます。
その後はいったん解散し昼食の時間をとって、次の日建設計に行きました。日建設計でも「イケフェス大阪2025」の展示会場を見学させてもらいました。創業125年を迎え、この間の代表する大阪と東京の建築の設計図が公開されていました。岡山教授からは、日建設計は技術力が高く、東京スカイツリーや東京タワー、神戸ポートタワーなどのタワーを多く設計しているという話しがありました。他にも大阪・関西万博のパビリオンや1970年万博の設計図など、誰もが知っている有名な建築物の設計図が数多く展示されていました。
また、今年、日本建築学会賞(作品)を受賞した「高槻城公園芸術文化劇場」の設計を担当した方に、急遽、説明いただくことができました。27,000個の木キューブが音を拡散させるというデジタルとアナログを融合させた素晴らしい劇場であることがよく分かりました。私は、昨年11月に本校演劇部の公演が行われた「枚方市総合文化芸術センター」に行った時のホールの素晴らしさに驚いたことを思い出していました。



日建設計の見学を終え、30分ほど歩いて、安井建築設計事務所を訪れました。そこでも、「イケフェス大阪2025」の展示会場を見学させてもらいました。テーマはアートと建築がつながる特別展示「アート⇔建築 あ!つながってるかも」でした。数多くの建築物の写真とアート作品が横に並べられていました。また、入ったところのスペースでは、1枚の紙で建築をつくる「折り紙建築」ワークショップなども行われていました。
午前9時から午後4時までの時間でしたが、あっという間に時間が過ぎたように感じました。それだけ、様々なことを学び、感じた、充実した時間であったのだろうと思います。
最後になりますが、移動中に私から岡山教授に質問したことがありますので、共有させてもらいます。私自身、高校生の時に建築家をめざそうと考えていた時期があり、聞きたかった質問、「自分には建築の世界で生きていくだけの才能・能力があるのか。」です。普通科の高等学校では「建築」について学ぶこともなく、大学の建築学部に入ってもついていけるのだろうか、その道で活躍できるのだろうかと悩んでいたからです。
岡山教授からは、岸和田高校の生徒のように「基礎的な学力」、そして何よりも「学ぼうとする意欲」があれば、才能・能力の有無よりも、「建築に対する興味・関心や熱意」があるかが重要であるといった話しをしてもらいました。
この話しは「建築」以外のことにも同じことが言えると思います。それだけに、午前中の講義でもあったとおり、自分自身がどのようなことに興味・関心を持っているのか、大学の学部・学科だけではなく、そのもっと先のことをしっかりと考えてほしいと思っています。
なお、翌日の26日(日)には、ルポンドシエルビル(大林組旧大阪本店)、大阪ガス実験集合住宅(NEXT21)、芝川ビル、船場ビルディング、東畑建築事務所、大阪市中央公会堂などを見学するエクスカーション(小旅行・視察旅行)を実施していただきました。
本校からは研修ツアーに参加した8名のうち3名が連日参加しました。私も参加したかったのですが、26日(日)は午後から学校説明会が入っていたため、残念ながら参加できませんでした。翌日27日(月)に登校してきた参加生徒の一人に感想を聞いたところ、想像どおり、「とても楽しかった」と言っていました。
岡山教授には2日間にわたり、大変お世話になりました。参加した生徒たちにとって、貴重な体験をすることができ、また、先のことを考えるきっかけになったと思います。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。