昨日7月10日(金)3限授業を終えた後、昼休みと移動時間をはさみ、13:30から南海浪切ホール大ホールにおいて、「芸術鑑賞会」を開催しました。今年度は、劇団わらび座によるミュージカル「イーハトーブシアター『真昼の星めぐり』」を鑑賞しました。途中10分間の休憩をはさみ、全体で100分の舞台でした。例年は2学期が始まり8月下旬に実施していますが、今年度は劇団わらび座との日程調整により、この時期での実施となりました。
あらすじは、幼なじみであり現在は同じ高校に通う、常に1番をめざして頑張ろうとする「あおい」と、グループの中でからかわれながらも自分の本音を言わない「めぐる」の2人の前に、ある日、おしゃべりで大きなドラネコが現れ、不思議なワンダーランド「イーハトーブ」へいざないます。2人は「失くしてしまった大切なもの?」を探すため、その「イーハトーブ」へ旅することになります。
この「イーハトーブ」とは、花巻市出身の宮沢賢治が、岩手の美しい風景や自然をモチーフに名付けた造語とのことです。様々な色の光を発するボールや、照明を駆使した光の美しさ、舞台と客席が一体となったデジタルアートによって、宮沢賢治が描く美しい世界観が表現されていました。チラシには、「劇場が宮沢賢治の魔法にかかる」というフレーズがありましたが、まさしく会場全体が「童話の世界」となっていました。
演者が自由に客席の間を駆け回り、観客である生徒たちを巻き込みます。実際に、複数の生徒たちが声をかけられ、舞台に上がり、一緒に踊る場面などもありました。一体感を生み出すため、前のほうに座る生徒たちには光るボールが配られていました。すごい演出だなと感じました。
舞台では、「やまなし」、「虔十公園林」、「どんぐりと山猫」、「鹿踊りのはじまり」、「なめとこ山の熊」など、宮沢賢治の作品をベースとしたシーンが繰り広げられました。それらのシーンにあわせて舞台設定が次々に変化していくことにも感心させられました。どれも自然の美しさが感じられるセットばかりでした。
それらの中で登場する「川底に生きるカニの兄弟」、「黙々と杉の世話をする青年」、「裁判で争うどんぐり達」、「まるで山の神のような鹿達」など、どれも個性的なキャラクターばかりであり、また、それぞれの衣装も独創的で印象に残るものでした。そして、ミュージカルとしての音楽・歌唱・ダンスなどはもちろん、その演技力も素晴らしいと感じました。
休憩までの前半は、ストーリーよりも、これらの芸術性の高さに圧倒されたという印象で終わりました。休憩の際、ある生徒に感想を聞いたところ、「すごいな」と返ってきたのがその証しだと思います。そのような不思議(?)な世界が強調された中で前半を終えたことによって、後半ではどうなるのだろうかという期待がより高まったかもしれません。
そして後半に入り、「あおい」と「めぐる」の2人がそれぞれの場面で出会った動物や人々の生き様などに触れながら、自分自身を見つめ直し、徐々に変化していく姿を見て取ることができました。終わりのほうでは2人が忘れていた、幼稚園の先生が言っていた「なりたいものになれる」という言葉も思い出しました。「失くしてしまった大切なもの」を、そして、これからどう生きていけばよいのかを見つけ出すことができました。
生徒の皆さんはどのようなことを感じながら観ていましたか?おそらく全員が実感したであろう「舞台芸術」としての素晴らしさは置いておき、皆さんはどのシーン、どのようなセリフが印象に残っていますか?これからの皆さんの生活(人生)に対して、何かよい影響を与えそうな予感はありますか?
同じ体験をしても、一人ひとり受け止め方は異なると思います。どれだけ自分事として没入できたかによっても異なります。また、これまでの経験やそれぞれの価値観によっても、受け止め方が異なるのは当然です。
ただ、なめとこ山の熊が言った「大切なものを見失うな」という言葉は誰にも共通するメッセージではないかと思います。もちろん、一人ひとり「大切なもの」は異なるのでしょうが、少なくとも、自分自身の「存在価値」は見失わないようにしてもらいたいと願っています。
このことは、「真昼でも星は光っている」という言葉でも表現されています。昼間は見えませんが、星はいつも輝き続けています。しんどいことや苦しいことがあった場合には見失いがちですが、皆さんにはぜひとも強い心を持って光り輝き続けてもらいたいと願っています。また、自分自身と同様に、他者の「存在価値」も尊重してもらいたいです。決して無視したり、否定したりすることのないようにしてもらいたいです。
今回、私自身が印象に残った言葉は数多くあります。2人が思い出した幼稚園の先生が言っていた言葉、荒れ地に杉苗を植え育てた青年の言葉、熊が言った言葉、どんぐりの裁判における言葉などでしょうか。物事の考え方をはじめ、「生きる道」としての「人生」について、改めて考えさせられる機会になりました。これらの言葉について私が感じたことについては、1学期の終業式で伝えさせてもらおうかなと考えています。
皆さんも今回のミュージカルを観て、感じたことや考えたことなどを振り返ってみるとよいと思います。そのうえで、「あなたは自分の大切なものを見失っていませんか?」、「あなたの大切なものとは何ですか?」という質問に対する答えを考えてみてください。
最後になりましたが、今回、ミュージカル「イーハトーブシアター『真昼の星めぐり』」をご公演いただいた劇団わらび座の皆さまに感謝申し上げます。素晴らしい舞台でした。どうもありがとうございました。