いじめは、その子どもの将来にわたって内面を深く傷つけるものであり、子どもの健全な成長に影響を及ぼす、まさに人権に関わる重大な問題である。全教職員が、いじめはもちろん、いじめをはやし立てたり、傍観したりする行為も絶対に許さない姿勢で、どんな些細なことでも必ず親身になって相談に応じることが大切である。そのことが、いじめ事象の発生・深刻化を防ぎ、いじめを許さない生徒の意識を育成することになる。
そのためには、学校として教育活動の全てにおいて生命や人権を大切にする精神を貫くことや、教職員自身が、生徒を一人ひとり多様な個性を持つかけがえのない存在として尊重し、生徒の人格のすこやかな発達を支援するという生徒観、指導観に立ち指導を徹底することが重要となる。
本校では、めざす学校像として「生徒が安全で安心して高校生活を送れるよう、それぞれの思いや環境・状況の違いを理解し、自他の生命や権利を大切にする意識の醸成に努める」こととしており、そのために人権教育に重点をおいて取り組んでいる。いじめは重大な人権侵害事象であるという認識のもとに、ここに学校いじめ防止基本方針を定める。
「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。具体的ないじめの態様は,以下のようなものがある。
組織を置くことで、いじめについては、特定の教職員で問題を抱え込まず学校が組織的に対応することにより、複数の目による状況の見立てが可能となります。また、スクールカウンセラー等の活用により、より実効的ないじめの問題の解決を図る。
「いじめ防止・対策委員会」
教頭、首席、生徒指導主事、保健主事、各学年主任、養護教諭、教育相談係人権教育推進委員長、特別支援教育コーディネータ、自立支援教育コーディネータ、必要に応じて当該担任等
○いじめの未然防止のため、いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりを行う役割
○いじめの早期発見のため、いじめの相談・通報を受け付ける窓口としての役割
○いじめの早期発見・事案対処のため、いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などに係る情報の収集と記録、共有を行う役割
○いじめに係る情報(いじめが疑われる情報や児童生徒間の人間関係に関する悩みを含む。)があった時には緊急会議を開催するなど情報の迅速な共有、及び関係児童生徒に対するアンケート調査、聴き取り調査等により事実関係の把握といじめであるか否かの判断を行う役割
○いじめの被害児童生徒に対する支援・加害児童生徒に対する指導の体制・対応方針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施する役割
○学校いじめ防止基本方針に基づく取組の実施や具体的な年間計画の作成・実行・検証・修正を行う役割
○学校いじめ防止基本方針における年間計画に基づき、いじめの防止等に係る校内研修を企画し、計画的に実施する役割
○学校いじめ防止基本方針が当該学校の実情に即して適切に機能しているかについての点検を行い、学校いじめ防止基本方針の見直しを行う役割(PDCA サイクルの実行を含む。)
(3)の役割をはたすため、本委員会の中に「いじめ防止小委員会」を置き、定期的に 会議を行うもととし、構成員は、教頭、首席、生徒指導主事、各学年主任とする。
本基本方針に沿って、以下のとおり実施する。
1年 | 2年 | 3年 | 学校全体 | |
4月 | 学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者への周知 高校生活支援カードによって把握された生徒状況の集約 個人面談 |
学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者へ周知 人権HR(いじめを考える) 個人面談 |
学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者へ周知 人権HR(いじめを考える) 個人面談 |
第1回 いじめ防止・対策委員会(年間計画の確認、問題行動調査結果を共有) 「学校いじめ防止基本方針」のHP更新 |
5月 | 宿泊研修 | 校外学習 | 校外学習 | PTA総会で「学校いじめ防止基本方針」の趣旨説明 |
6月 | 体育祭 保護者懇談週間(家庭での様子の把握) いじめ等アンケート実施 |
体育祭 保護者懇談週間(家庭での様子の把握) いじめ等アンケート実施 |
体育祭 保護者懇談週間(家庭での様子の把握) いじめ等アンケート実施 |
教職員間による公開授業週間(わかる授業づくりの推進) |
7月 | 第2回委員会(いじめ等アンケートの確認・進捗確認) | |||
8月 | ||||
9月 | 文化祭 いじめ等アンケート実施 |
文化祭 いじめ等アンケート実施 |
文化祭 いじめ等アンケート実施 |
教育相談週間 第3回委員会(いじめ等アンケートの確認・進捗確認) |
10月 | 修学旅行(社会性の育成) | 第4回委員会(状況報告と取組検証) | ||
11月 | 保護者懇談週間(家庭での様子の把握) 職業体験 プロに聞く(社会性の育成) |
保護者懇談週間(家庭での様子の把握) 職業体験 TryOut(社会性の育成) |
保護者懇談週間(家庭での様子の把握) | 地域清掃(自己有用感の育成) |
12月 | ||||
1月 | いじめ等アンケート実施 | いじめ等アンケート実施 | HR(卒業後へ向けて) | 第5回委員会(いじめ等アンケートの確認・進捗確認) |
2月 | ||||
3月 | 第6回委員会(年間の取組みの検証) |
いじめ防止等の取組の実施状況を学校評価の評価項目に位置付けるとともに、いじめ防止・対策委員会を、(年度当初、各学期の終わりに)年4回、開催し、取組が計画どおりに進んでいるか、いじめの対処がうまくいかなかったケースの検証、必要に応じた学校基本方針や計画の見直しなどを行う。
いじめの未然防止にあたっては、教育・学習の場である学校・学級自体が、人権尊重が徹底し、人権尊重の精神がみなぎっている環境であることが求められる。そのことを基盤として、人権に関する知的理解及び人権感覚を育む学習活動を各教科、(道徳)、特別活動、総合的な探究の時間のそれぞれの特質に応じ、総合的に推進する必要がある。特に、生徒が、他者の痛みや感情を共感的に受容するための想像力や感受性を身につけ、対等で豊かな人間関係を築くための具体的なプログラムを作成する必要がある。そして、その取組みの中で、当事者同士の信頼ある人間関係づくりや人権を尊重した集団としての質を高めていくことが必要である。
(1) 平素からいじめについての共通理解を図るため、教職員に対して、すべての子どもたちが加害者にも被害者にもなり得るものと認識し、また、鋭い人権感覚と、子どもたちの立場に立つ姿勢を養う。生徒に対しては、「いじめは絶対に許されない」という雰囲気を学校全体で醸成するため、適切な時期にいじめ未然防止の観点からの人権教育の実施を、すべての生徒を対象に行う。
(2) いじめに向かわない態度・能力を育成するために、自他の存在を認め合い、尊重し合える態度を養うことや、生徒が円滑に他者とコミュニケーションを図る能力を育てることが必要である。そのために、各教科において、わかる授業づくりの推進や、すべての生徒が参加・活躍できる授業の工夫、また、HRや総合的な探究の時間を利用し、お互いを大切にする心を涵養するためや、コミュニケーションのスキルアップのための活動を行う。
(3)いじめが生まれる背景を踏まえ、指導上の注意としては、子どもたち一人ひとりが居場所として安心感のもてる集団づくりを心がける。分かりやすい授業づくりを進めるために、公開授業を積極的に行い、教科の観点のみならず、生徒指導の観点からも授業を見学ことにより教科の枠を越えて、互いに研鑽することができる。生徒一人ひとりが活躍できる集団づくりを進めるために、授業はもちろんであるが、授業以外の教育活動を活用し、すべての子たちが、それぞれの集団の一員として自信や自覚を育む。ストレスに適切に対処できる力を育むために、年間に数回の社会体験や生活体験の機会を設け、社会性を育成していく。いじめを助長するような教職員の不適切な認識や言動等、指導の在り方に注意を払うため、計画的に職員人権研修の機会を設ける。
(4) 自己有用感や自己肯定感を育む取組みとして、地域の清掃活動等、地域活動に参加することや、中高連携、小高連携等、異種校間の交流を行う。
(5) 生徒が自らいじめについて学び、取り組む方法として、生徒会活動や、クラス討議の議題に「いじめ」を取りあげる機会を設けたり、外部講師を招いての学習を行う。
いじめの特性として、いじめにあっている生徒がいじめを認めることを恥ずかしいと考えたり、いじめの拡大を恐れるあまり訴えることができないことが多い。また、自分の思いをうまく伝えたり、訴えることが難しいなどの状況にある生徒が、いじめにあっている場合は、隠匿性が高くなり、いじめが長期化、深刻化することがある。それゆえ、教職員には、何気ない言動の中に心の訴えを感じ取る鋭い感性、隠れているいじめの構図に気づく深い洞察力、よりよい集団にしていこうとする熱い行動力が求められている。授業等における出欠確認の際の様子や、学級日誌等の記述、保健室での様子など、普段の学校生活における、生徒が示す小さな変化や危険信号を見逃さないことが重要である。また、保護者と連絡を密にし、家庭における様子の変化についても把握することも大切である。また、職員会議や学年会等において、生徒の情報交換を行い、情報を共有することも重要である。
(1) 実態把握の方法として、学期ごとや、行事後など、定期的にアンケートを実施し、設問も具体的な表現にするなど工夫をする。また、教育相談としても、アンケート実施時期に合わせるなど定期的に個人面談等を行う。日常の観察として、子どもたちが安心してサインを出せるような信頼関係を普段から築くとともに、遅刻の増加等、そのサインを見逃さないようにする。
(2) 保護者と連携して生徒を見守るため、より多くの大人が子どもの悩みや相談を受けとめることができるよう、PTAや後援会、地域コミュニティーとの連携促進や、学校協議会など、学校と地域、家庭が組織的、有機的に連携・協働する体制を構築する。
(3) 生徒、その保護者、教職員が、抵抗なくいじめに関して相談できる体制として、教職員が普段から生徒やその保護者との信頼関係をつくることはもちろんであるが、相談箱を設けたり、電話相談等、校外の相談手段の周知を徹底する。
(4) 年度当初に、生徒、保護者に対しHRや集会等において、プリント等で、また、HP等も利用し、相談体制を広く周知する。生徒面談、保護者懇談、学校アンケート、学校協議会等により、適切に機能しているかなど、定期的に体制を点検する。
(5) 教育相談等で得た生徒の個人情報については、その対外的な取扱いについて、「いじめ防止対策推進法 第 28 条第 2 項、第 3 項」に基づき、適切に対応するものとする。
いじめにあった生徒のケアが最も重要であるのは当然であるが、いじめ行為に及んだ生徒の原因・背景を把握し指導に当たることが、再発防止に大切なことである。近年の事象を見るとき、いじめた生徒自身が深刻な課題を有している場合が多く、相手の痛みを感じたり、行為の悪質さを自覚することが困難な状況にある場合がある。よって、いじめた当事者が自分の行為の重大さを認識し、心から悔い、相手に謝罪する気持ちに至るような継続的な指導が必要である。いじめを受けた当事者は、仲間からの励ましや教職員や保護者等の支援、そして何より相手の自己変革する姿に、人間的信頼回復のきっかけをつかむことができると考える。そのような、事象に関係した生徒同士が、豊かな人間関係の再構築をする営みを通じて、事象の教訓化を行い教育課題へと高めることが大切である。具体的な生徒や保護者への対応については、(別添)「5つのレベルに応じた問題行動への対応チャート」を参考にして、外部機関とも連携する。
(1) いじめの疑いがある場合、ささいな兆候であっても、いじめの疑いがある行為には、早い段階から的確に関わる。遊びや悪ふざけなど、いじめと疑われる行為を発見した場合、その場でその行為を止めたり、生徒や保護者から「いじめではないか」との相談や訴えがあった場合には、真摯に傾聴する。その際、いじめられた生徒やいじめを知らせてきた生徒の安全を確保するよう配慮する。
(2) 教職員は一人で抱え込まず、速やかに学年主任や分掌長等に報告し、いじめの防止等の対策のための組織(いじめ防止・対策委員会)と情報を共有する。その後は、当該組織が中心となって、速やかに関係生徒から事情を聴き取るなどして、いじめの事実の有無の確認を行う。
(3) 事実確認の結果、いじめが認知された場合、管理職が教育委員会に報告し、相談する。
(4) 被害・加害の保護者への連絡については、家庭訪問等により直接会って、より丁寧に行う。
(5) いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものと認められるときは、いじめられている生徒を徹底して守り通すという観点から、所轄警察署と相談し、対応方針を検討する。なお、生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求める。
(1) いじめられた生徒が落ち着いて教育を受けられる環境を確保し、いじめられた生徒に寄り添い支える体制を作る。その際、いじめられた生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、いじめ防止・対策委員会が中心となって対応する。状況に応じて、スクールカウンセラーの協力を得て対応を行う。
(1) 速やかにいじめを止めさせた上で、いじめたとされる生徒からも事実関係の聴取を行う。いじめに関わったとされる生徒からの聴取にあたっては、個別に行うなどの配慮をする。
(2) 事実関係を聴取した後は、迅速にいじめた生徒の保護者と連携し、協力を求めるとともに、継続的な助言を行う。
(3) いじめた生徒への指導に当たっては、家庭訪問や別室指導等個別に指導する機会を設け、いじめは人格を傷つけ、生命、身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ、自らの行為の責任を自覚させる。なお、いじめた生徒が抱える問題など、いじめの背景にも目を向け、当該生徒の安心・安全、健全な人格の発達に配慮する。その指導にあたり、学校は、複数の教職員が連携し、必要に応じてスクールカウンセラーの協力を得て、組織的に、いじめをやめさせ、その再発を防止する措置をとる。
(1) いじめを見ていたり、同調していたりした生徒に対しても、自分の問題として捉えさせる。そのため、まず、いじめに関わった生徒に対しては、正確に事実を確認するとともに、いじめを受けた者の立場になって、そのつらさや悔しさについて考えさせ、相手の心の悩みへの共感性を育てることを通じて、行動の変容につなげる。また、同調していたりはやし立てたりしていた「観衆」、見て見ぬふりをしていた「傍観者」として行動していた生徒に対しても、そうした行為がいじめを受けている生徒にとっては、いじめによる苦痛だけでなく、孤独感・孤立感を強める存在であることを理解させるようにする。「観衆」や「傍観者」の生徒は、いつ自分が被害を受けるかもしれないという不安を持っていることが考えられることから、すべての教職員が「いじめは絶対に許さない」「いじめを見聞きしたら、必ず先生に知らせることがいじめをなくすことにつながる」ということを生徒に徹底して伝える。
(2) いじめが認知された際、被害・加害の生徒たちだけの問題とせず、学校の課題として解決を図る。全ての生徒が、互いを尊重し、認め合う集団づくりを進めるため、担任が中心となって生徒一人ひとりの大切さを自覚して学級経営するとともに、す9べての教職員が支援し、生徒が他者と関わる中で、自らのよさを発揮しながら学校生活を安心してすごせるよう努める。そのため、認知されたいじめ事象について地域や家庭等の背景を理解し、学校における人権教育の課題とつなげることにより教訓化するとともに、いじめに関わった生徒の指導を通して、その背景や課題を分析し、これまでの生徒への対応のあり方を見直す。その上で、人権尊重の観点に立ち、授業や学級活動を活用し、生徒のエンパワメントを図る。その際、スクールカウンセラーとも連携する。体育祭や文化祭、校外学習等は生徒が、人間関係づくりを学ぶ絶好の機会ととらえ、生徒が、意見が異なる他者とも良好な人間関係を作っていくことができるよう適切に支援する。
(1) ネット上の不適切な書き込み等があった場合、まず学校として、問題の箇所を確認し、その箇所を印刷・保存するとともに、いじめ防止・対策委員会において対応を協議し、関係生徒からの聞き取り等の調査、生徒が被害にあった場合のケア等必要な措置を講ずる。
(2) 書き込みへの対応については、削除要請等、被害にあった生徒の意向を尊重するとともに、当該生徒・保護者の精神的ケアに努める。また、書き込みの削除や書き込んだ者への対応については、必要に応じて、大阪法務局人権擁護部や所轄警察署等、外部機関と連携して対応する。
(3) また、情報モラル教育を進めるため、教科「情報」において、「情報の受け手」として必要な基本的技能の学習や「情報の発信者」として必要な知識・能力を学習する機会を設ける。
いじめが「解消している」状態については、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。
(1) いじめに係る行為が止んでいること
被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為が止んでいる状態が相当の期間継続していること。(相当の期間:少なくとも3か月を目安)
(2) 被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと
被害児童生徒本人及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。また、上記のいじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎず、「解消している」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性が十分にあり得ることを踏まえ、教職員は、当該いじめの被害児童生徒及び加害児童生徒については、日常的に注意深く観察を行います。