平成17年度
大阪府立生野高等聾学校
第2回学校協議会

出席者

PTA会長(座長)、委員6名、校長、教頭、

協議会記録(概要)

  1. 学校教育自己診断結果について
  2. 校長

    生徒用の調査結果からご報告します。すべて平成14年度と平成17年度を比べてお話しします。

    Q1の『本校に入学して良かったと思いますか』という質問に対し「とてもよかった」「よかった」という回答が増えています。

    Q2の『本校に入学してよかったと思える点は何ですか』という質問については「いい友人ができた」が倍以上になっています。

    Q3の『本校に入学を決めた理由は何ですか』という質問については「友人と一緒だから」が増えています。このことを踏まえ、学科決定などについて、入学前の教育相談での支援が一層必要だと考えています。

    次に保護者用の調査結果について報告します。

    Q4の学校は保護者の意見や要望をよく聞いていると思いますか』という質問に対して、「よく聞いている」「まあまあ聞いている」の割合が少し増えています。

    Q5の『あなたが学校に対して要望や意見をもっとも伝えやすい方法はどれですか』という質問では、「学期末の保護者懇談」「PTAの会合」が増えていますが、「クラス担任との日々の連絡」が減っており、きめこまかな教員の対応が求められていると感じています。

    Q6の『学校は生徒のことについて、保護者の悩みや相談に適切に応じてくれていると思いますか』という質問については、「適切に応じてくれている」が少し減っています。逆に「まあまあ応じてくれている」が増えていますが、もっと工夫が必要と感じています。

    次に教員用の調査結果を報告します。

    Q7『校長は自らの教育理念や学校経営についての考えを明らかにし、教職員と協力して教育を進めていますか』という質問では、「よく進めている」「まあまあ進めている」が多くなっています。

    それに対して、Q8『学校経営に教職員の意見が反映されていますか』という質問では「あまり反映されていない」が平成14年度調査よりも倍になっています。

    またQ9の『諸会議の結果が教育活動や学校運営にいかされていますか』という質問では「まあまあ生かされている」が倍になっています。これらの結果は検討が必要だと考えています。

    次に平成17年度結果をもとに生徒・保護者の意識の相違についてお話します。

    Q10の『本校に入学を決めた理由は何ですか』という質問では、保護者は「聾教育の専門の学校だから」「卒業後の進路を考えて」が多いのに対し、生徒の回答には項目による偏りがあまり見られませんでした。

    次に教員と保護者の意識の相違について報告します。

    Q11の『生活指導について学校は家庭への連絡や意思疎通をきめ細かく行っていると思いますか』という質問では教員の回答に比べて「よくやっている」「まあまあやっている」と感じている保護者は少ないようです。

    Q12『本校の進路指導に一番求められるものは何でしょうか』という質問では保護者が「各学科でさらに専門的職業能力の力・学力をつける」が多いのに対し、教員は「欠席・遅刻を減らし生活習慣の確立をめざす」が多くなっています。

    次は教員と生徒の意識の相違です。

    Q13『部活動に積極的に取り組んでいますか』という質問で生徒は「たいへん積極的に取り組んでいる」が多いのですが教員の方は低いです。生徒の気持ちに応える必要があると感じています。

    最後に生徒と保護者の意識の相違を見ます。

    Q14『家族で話をする時、中心となるコミュニケーション手段は何ですか』で、保護者は「口話」「キュードスピーチ」の割合が高くなっています。

    なお、これらのデータをさらに検討し、冊子にしたいと考えていますし、新校づくりにも役立てていきたいと思っています。

  3. 府立だいせん高等聾学校(仮称)について
  4. 校長

    新校の名称が「だいせん高等聾学校(仮称)」に決定いたしました。現在は校章について検討しており、次は校歌の募集に入る予定です。

    だいせん高等聾学校(仮称)の概要について、教頭から説明

  5. 学校マニフェストの達成状況等について
  6. 校長

    学校マニフェストの達成状況についてご報告します。

    『1 生徒の遅刻回数を50%以上削減します』ですが、10月末現在、13.2%しか減っておりません。前回も厳しくご指摘を受け、生活指導部を中心に一生懸命取り組んでいますが、学校だけの努力では乗り越えられない面があり、近々保護者の皆様に出席状況を示した文書を郵送させていただいて、認識を新たにしていただきたいと考えています。

    このままでいきますと、『2 留年者0名をめざします』『3 退学者0名をめざします』も達成できない状況になるのではないかと危惧しています。

    『4 生徒全員に2種類以上の資格取得をめざします』では、現在39名即ち65%の生徒が達成しています。

    『5 専攻科においては定期試験において資料持込可の試験を全教科で実施します』は、暗記偏重の試験勉強ではなく、考える習慣をつけてほしいとの思いから設定いたしました。ほぼ70%のクラスで実施されています。100%ではありませんが、教材を工夫して取り組んでいます。

    『6 生徒の進路希望を100%実現します』ですが、現在本科3年生では4年制大学希望者6名のうち1名が合格し、また短期大学には1名の希望者が合格しています。専攻科希望生は7名いますが、これから努力するところです。就職には5名が希望していますが、まだ内定をいただいておりません。これからの指導が大切になります。専攻科2年生では4年制大学希望者1名が合格しています。就職希望者は7名のうち、3名が内定しています。今後、それぞれの生徒に対してできるだけの支援をしていきたいと思います。

    『7 生徒全員に職場見学か職場実習を実施します』は100%達成しました。

    『8 企業を100社以上訪問、新校をPRし求人を依頼します』ですが、新しいパンフレットを作成しましたので、それを活用して求人活動を行っていきたいと思います。『9 大学や専門学校を20校以上訪問し進学の道を拡大します』は、現在のところ、12校に訪問しています。

    『10 聴覚障害のある生徒が在籍する高等学校全校を訪問し新校をPRします』では、まず府下の300をこえる学校に郵送で調査をしました。回答率は74%でして、その結果99校に229名の聴覚障害のある生徒が学んでいることがわかりました。現在、それらの学校に訪問依頼の文書を発送したところです。その結果をうけて、日程を調整し、教育相談と新校のPRを兼ねて訪問したいと思います。

    授業評価についてですが、教員の指導力の向上と、評価育成システムに基づいた評価の給与への反映を見据えて取り組んでいます。資料にありますように「授業評価希望表」「授業評価表」「事後アンケート」に分けています。現在のところ26名の教員について授業評価を行いました。先日の全日聾研では動画による発表も多く、それをうけて授業分析をビデオで行うという取り組みを行った教員もいます。教員にさらなる実践力をつけてほしいというのが、私の願いです。

  7. 意見交換
  8. 委員1

    自己診断の結果からみると、生徒は家でほとんど学習していないようですが、宿題は出していますか。

    委員2

    生徒の実態もそれぞれに違い、全体として家庭での学習習慣の定着が十分でない面はあります。各種検定など、身近な目標をたててがんばるという取り組みは定着してきています。

    委員1

    社会人になれば、自主的に力量を高める必要が出てきます。何らかの形でそうした習慣を身につけてくれればと思います。

    委員3

    保護者としては耳が痛いところです。個人差がかなりあると思いますが、習慣づいていない生徒は、社会人になる時に大変苦労すると思います。基本的な生活 習慣は小さいときから覚えさせていかないといけないと実感しています。

    委員1

    勉強が苦手な生徒は、「しなさい」というほど勉強が嫌いになると思います。興味あることを家庭での課題として行うことも考えていいと思います。

    校長

    毎月、生徒の興味あるテーマでコンクールをするというアイデアもあり、いろいろな生徒が活躍できる場面を作るのも大切ですので、実現できたらと思っています。

    委員1

    運動の好きな生徒は家でジョギングをするのも学習のひとつだと、そう考えてみてもいいかもしれませんね。

    委員4

    キュードスピーチを使われている家庭も多いようですが、友人同士での使用状況はどうですか。

    委員3

    キュードスピーチを知らない生徒も多いので、生徒同士では手話が多くなっていると思います。生徒は柔軟ですので手話にスムーズに移行できるのですが、保護者の方がなかなか切り替えが難しい場合もあるようです。

    委員5

    進路指導についての保護者と教員の意識の差が興味深いですね。会社で社員を教育している立場からいいますと、生活習慣の確立を重視した方が、スムーズに職場に適応できると思います。きちんと出社してくれないことには指導もできません。マナーやルールを守るという、社会生活の基本をしっかり身につけていただく方がよいと思います。 家族の方が甘やかされると、結果的に本人のためにならないことも多いと思います。

    委員3

    本人が自立の時期を迎えており、今までのように親が言うとおりに行動したくないという気持ちを持ちながら、一方で進路など、自分で決めていかねばならないことへの葛藤があるようです。親のほうもそれをうけてうるさく言わないようになってしまいますし、自覚を高めてやる指導はどうすればよいのかと悩んでいるところです。

    委員5

    私の会社の事例では、とにかく寝る時刻を早くすることによって、遅刻の習慣を克服した社員がおります。それは生活全体を見直すことにつながってくると思います。

    委員6

    小学校では遅刻は少ないですね。地域全体の協力が大きな力になっており、「こども見守隊」の活動などによって、子どもたちを支えてくださっているおかげだと思っています。

    委員3

    遅刻の習慣は社会人になると改善されていくものでしょうか。

    委員5

    変わってくると思います。会社での仕事の分担やそれに対する責任がわかってくることが大切で、それを指導するとずいぶん変わります。

    今年、職場実習を受け入れましたが、卒業生の社員をアドバイザーとして担当につけました。彼らが後輩に対してもっとも指導した点がマナー、あいさつです。彼らも入社当初はできていなかったわけですが、後輩の様子を見ることで、逆に自分たちの成長も感じ取れたようです。そういう意味では、入社後、ずいぶん変わってくれると思いますね。

    委員3

    子どもたちは、学校に対しては甘えがあるんですかね。少しくらいの逸脱は許されると思っているのかもしれないですね。

    委員5

    それと、学校は勉強しなくてもその結果責任は自分ひとりが負えばいいわけで、逆にほっといてくれ、という気持ちになりがちかもしれませんね。今週、わが社の朝礼で、この学校の卒業生である社員がスピーチをやってくれました。そのなかで「5年間で3回も仕事内容が変わり、最初はいやだと感じたが、会社が忙しいときにはみんなの応援ができるように、仕事をいろいろと覚えていくことは大切だと感じるようになった」と話してくれました。私も大変うれしかったのですが、このように、仕事をすることは自分の役割を果たすということと同時に、他人のために何かをして、その結果喜んでもらえるという、その体験が大きいのだと思います。そのあたりが、学校とは違うのかなと思いますね。

    委員7

    ろう者の場合、特に先輩後輩のつながりが大切だと思います。多少きびしいことであっても、コミュニケーションをとるなかで、社会人にとって大切なことを伝えてもらうことはとても必要なことだと思います。

    委員3

    卒業生の体験を聞く会はどの程度生徒の胸に届いているのでしょうか?

    委員2

    先輩が職場で経験していることを直接話してくれるので、よく聞いていると思います。こまかい質問も出ますし、生徒の態度は真剣ですね。

    先ほどの話に続けて言いますと、学校に対してはやはり甘えがあると思います。甘えや反発心など思春期特有の心の葛藤を抱えていると思いますし、そのために本来の力を出し切れていない生徒が多いと思います。学校と家庭が連携し、授業・クラブなどを充実させるなかでそれぞれが自分の力を出し切ってくれれば、進路希望も今よりずっと実現しやすくなると思いますし、職業人としても立派にやっていけると思います。校長先生を先頭にいろいろな改革を行ってきていますが、そこが家庭・学校の大きな課題だと思います。中学部までは見えなかったものが自立の過程で見えてくるからこそ、かえって反発や甘えが出てくるのだと思います。この自己診断結果をよく分析して、対処していくことが大切だと思います。マナーについては、生徒と教員があまりに近すぎる点は、確かに問題だと思います。

    委員1

    それは同感です。学校でも家庭でも、上下関係がなくなり過ぎているように思います。

    委員5

    そこは教えていくことで定着すると思います。

    委員2

    職場で社会人としての意識に切り替えられるというのは、そこで働く生きがいをもてるからだと思います。一人前の存在として扱ってもらい、相応の責任を持たされることはやはり大きなことですし、そのような中で、社会人としての切り替えができていくのだと思います。学校でも、そのあたりをなんとか工夫して、将来を見通した取り組みをやっていかなければと思っています。

    委員1

    会社にはそれぞれの分担があり、誰かが抜けるとほかの人がピンチヒッターをしなければなりません。学校でも何かを共同でやるような取り組みを1時限目に持ってくるなどすれば、時間を守るように生徒同士で意識するようになるのではないでしょうか。

    委員4

    アルバイトも、社会性を身につけるという意味ではよい面もあると思います。

    校長

    一部の生徒は必要上アルバイトを行っていますが、やはりきちんと社会性を身につけていますね。

    委員4

    思春期特有の難しい面は受け止めつつも、いけないことはいけないと毅然と言い続けることが大切だと思います。後々になってその経験が生きてくると思います。

    委員5

    得意なことをほめることも大事だと思います。社員の指導において、私もつねづね意識しています。本来の仕事以外でもいろいろな力を持った社員がおり、そのような面を引き出して評価してやると、仕事への積極性も出てくるようになります。いろいろな切り口でほめられるということは、会社においても非常に大切ですね。

    委員3

    自分の存在価値を自覚できるというのが、もっとも大切な部分なんでしょうね。

    校長

    本日は、貴重なご意見をありがとうございました。


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Last update: 2005/09/01 14:39:42