第3章 器具の取扱いと基礎実験事例

      1.加熱



1−1.加熱する器具の取り扱い

A.ガスバーナー(図4)

   

(1) 点火の順序

 下のネジ(図4の[ア])でガスの量、上のネジ(図4の[イ])で空気の量を調節する。

@[ア]と[イ]のネジが閉じられていることを確認してから、元栓を開ける。

Aネジ[ア]を緩めてガスを出し、上からのぞき込まないように注意して点火する。炎の大きさ

 はネジ[ア]で調節する。

Bネジ[ア]を押さえてネジ[イ]だけを回す。空気の量を、多すぎたり少なすぎたりしないよう

 に調節し、青い色の炎にして使用する。

C消火のときは、上と逆の順に操作する。

(2) 古くなったゴム管は使わない。劣化して破れやすくなっており、ガス漏れの原因になる。

(3) 空気が入りすぎると、ガスが円筒内部で燃焼し、円筒部分が熱くなることがある。そのと

 きは火を消して冷ましてから、点火し直す。

(4) 使用が終わればすぐに火を消す。火をつけっぱなしにしていると、衣服を焦がしたり、火

 傷したりする事故につながる。

B.アルコールランプ(図5)

  

(1) 燃料には、燃料用アルコール、またはメタノールを用いる。エタノールでもよいが、高

 価である。

(2) 点火の際は、まわりに可燃物がないことを確認しておく。

(3) ランプ容器にヒビが入っているものや傷がついているものは使わない。

(4) ランプ中のアルコールの量は八分目にし、半分以下になると補充する。アルコールの量

 が少ないと、その蒸気に引火して爆発することがある。(空気中にメタノールが 7〜36%

 存在すると、爆発する)

(5) 芯の長さは、炎口から 5〜10mmにする。長くする必要がなく、また、長すぎると芯その

 ものが燃えてしまう。

(6) アルコールの補充や芯の調整は、火を完全に消してから行う。

(7) 点火後は、ランプを傾けたり、持ち運んだりしない。

(8) ランプからランプへ火を移さない。

(9) 使用中は、濡れ雑巾を用意しておくとよい。

(10)消火するときは、吹き消したりしないで、蓋をかぶせて消す。

(11)長期間使わないときは、アルコールを、ランプから密栓できるびんに移して保管するのが

 よい。

(12)トーチ型アルコールランプは燃料がこぼれにくく、破損しにくいが、点火に少し時間がか

 かり、炎が穴の方向に出る。


C.電気による加熱器具

(1) 電気こんろ、ホットプレートなどがよく用いられる。

(2) 炎が出ないので安全だが、温度調節は難しい。



1-2 加熱される器具の取扱

A.試験管
(1) 液体、および液体と固体の混合物の加熱(図6)

  

・試験管ばさみを用いるか、スタンドでしっかり固定して使う。

・中に入れる液量は、試験管の1/4〜1/5が適当である。

・試験管の口を人に向けたり、栓をしたまま加熱しない。

・試験管内での反応のようすを観察するとき以外は、沸騰石を入れること。

・沸騰するまでは液面に近い部分を加熱し、沸騰し始めてから底に近い部分を加熱する。

 このようにすると、突沸による溶液の吹き出しが起こりにくい。

(2) 固体の加熱(図6)

・中に入れる固体は、底から1/4〜1/5のところまで広げておく。

・試験管がほぼ水平になるように、スタンドにしっかりと取り付ける。その際、水が生成する

 反応の場合には、底をやや高くしてから固定する。

B.ビーカー、フラスコ

・中に入れる液量は、半分ぐらいが適当である。

・三脚上に金網を置き、その上にのせる。丸底フラスコや平底フラスコの場合はスタンドで

 固定する。

・金網は、セラミックつき金網、ステンレス製金網などがよい。アスベスト(石綿)つき金網は

 使わない。金網の代わりに鉄板でもよい。

・可燃性の液体は、直火で加熱しない。水浴器などを使って湯せんし、引火しないように注意

 する(図7)。

   

* 加熱実験事例1 実験 水が沸騰するとき発生する気体とその体積(図8)

   

(1) 100cm3丸底フラスコに、約 50cm3の水と2〜3個の沸騰石を入れ、ガラス管つきゴム栓を

 取り付けてスタンドで固定する。

(2) 水槽に水を入れ、水を満たしたメスシリンダー(200cm3)を、逆さに立てる。

(3) ガラス管の先をメスシリンダーの中に入れ、フラスコを加熱する。

(4) 沸騰が始まったら、メスシリンダーに入ってくる気体のようすを観察する。

(5) ガラス管から出てくる気体がほとんど水に溶け、メスシリンダーに貯らないようになった

 ら、集まっている気体の体積を測る。

(6) 観察・測定したのち、ガラス管の先を水に浸した状態のままで、ガスバーナーの火を消す。

 どのような変化が起こるかを観察する。

 《注意》 1.必ず、傷やひびが入っていない丸底フラスコを使うこと。

      2.丸底フラスコをスタンドでしっかり固定しておくこと。

* 加熱実験事例2 実験 100℃以上の水蒸気をつくる

(1) 三角フラスコに適量の水を入れ、沸騰石を2〜3個入れてから、パイレックスのガラス管つ

 きゴム栓をする(図9)。

    

(2) ガスバーナーで加熱沸騰させる。沸騰のようすを観察し、ガラス管の先から出る蒸気の温

 度を測る。

(3) もう一つのガスバーナー(魚尾形火口をつけるとよい)で、ガラス管を幅広く加熱すると

 よい。そして、再び蒸気の温度を測る。このときの温度測定には、熱電対温度計または100

 ℃以上の測定が可能な温度計を用いる。

(4) 温度計の代わりに、マッチ棒(頭薬部を下にして)や紙などを加熱した蒸気に当ててみる

 と、点火したり、焦げたりする。

(5) パイレックス製のガラス管の代わりに、金属管(シンチュウ製や銅製のもの)を用いても

 よい。

《注意》 発生する高温の水蒸気で火傷をしないように注意すること。

《参考》 魚尾火口:ガスの炎を幅広い炎にするため、ガスバーナーの火口につける器具。

     魚の尾ひれのような形をしている。

     熱電対温度計:水銀温度計で測れない高温度の測定器具に、熱電対温度計がある。

     異なった金属の両端を接合して回路を作り、その接合部分を異なる温度に保つと、

     起電力が生じる。この起電力を生じさせるための一対の金属を熱電対といい、ミ

     リボルト計などを用いて温度を測定する。例としては、アルメルクロメル熱電対

     があり、主に 300〜1200℃の温度測定に用いられる。