第3章 器具の取扱いと基礎実験事例

       4.溶解



実験1 ミョウバンの溶解と析出

(1) 5mm程の大きさのミョウバン結晶を3つ準備し、それぞれを糸で吊せるようにする(図17)。

(2) ミョウバンの飽和溶液 50cm3ずつを、100cm3ビーカー3つにそれぞれ入れる。一つはその

 ままの温度に、もう一つは液温を10℃上げる。残りの一つは液温を10℃下げる。

(3) 糸で結んだ(1)の結晶を(2)の3つのビーカーに一つずつ吊し、結晶の周辺の液のようすを

 観察する。

   

《解説》                              

(1) この実験は、結晶が水溶液に溶けるとき、あるいは水溶液から結晶が析出するとき、結晶

 周辺の水溶液の濃度が部分的に変化するのを、児童・生徒に気付かせるための実験である。

(2) 水溶液に結晶が溶け始めると、結晶周辺の水溶液の濃度(密度)が大きくなり、水溶液は下

 方に向かって流れ始める。

(3) 逆に、水溶液から結晶が析出すると、水溶液の濃度は小さくなり、水溶液は上方に向かっ

 て流れる。

(4) このように、溶液内に生じた不均一な部分に光が当たると、陽炎のような現象(シュリー

 レン現象)が起こり、溶液の動きがよく分かる。



実験2 固体(塩化アンモニウム)の溶解の温度依存性

(1) およそ30gの塩化アンモニウムと、60gの水をビーカーに入れる。

(2) (1)のビーカーを、塩化アンモニウムの固体が完全に溶解するまで加熱する。

(3) 固体が溶解したらガスバーナーの火を消し、試験管(φ=24mm)に八分目ほど入れて自然放

 冷させる。

(4) 水溶液の温度が下がって結晶が析出してくるまで、そのまましばらくよ うすを観察する。

 析出してくる結晶をルーペでも観察する。

(5) 観察し終わったら振動の少ないところに移動させる。そして、水溶液が室温付近まで下が

 った時点で、もう一度観察する。

《解説》

(1) 実験1でのミョウバンと同じように、塩化アンモニウムも溶解度の温度依存性が大きく、

 この目的のためには最適な物質と思われる。

(2) 観察事項としては、上部で析出した結晶が下部に到達するまでに徐々に大きく成長するこ

 とと、水溶液が対流していることとである。

(3) そのまま放置しておくと、液面下に塩化アンモニウムの大きな樹枝状結晶が成長してくる

 のが観察できる。それは、しばらくすると重たくなって底に向かって沈むが、そのうちまた

 成長し始める。

(4) 実験後の水溶液は回収し、再度この実験を行うときの水溶液として専用に保存しておくと

 便利である。または、析出した結晶をろ紙でこして回収し、他の目的に再利用してもよい。

 再結晶しているので純度は高く、理科 教育の実験には十分である。