第4章 試薬の保管・管理・廃棄 

    3.廃棄処理について



3-1 実験室の廃棄物

(1) 実験を行うと種々の廃棄物が出てくるが、次のように大きく区分できる。

 ・試薬類による実験廃液

 ・ガラス、金属片、プラスチック、紙などの一般廃棄物

 ・燃焼ガス、悪臭ガスなどのガス体

(2) 一般廃棄物は、普通のごみと同じように処理し、ガス体も小・中学校で扱う程度の少量で

 あれば、換気をよくして逃がせばよい。

(3) 実験廃液については、環境保全、公害防止の観点からも、「毒物および劇物取締法」や

 「消防法」により、その廃棄についての一定の基準が示され、次のように厳しく規制されて

 いる。

@ 不用となった廃液は、中和、加水分解、酸化、還元などの化学的な処理、または希釈など

 により毒物・劇物でないものにすること

A 重金属イオンは沈殿物として回収すること

B 可燃性の物質は保健衛生上危害の生ずることのない場所で少量ずつ燃 焼させること

(4) 学校で扱われる実験廃液は、産業廃棄物に比べて量は非常に少ない。しかし、環境教育の

 観点からも、自分一人ぐらいはということのないように実験室内で一定の基準のもとに処理

 するように心がけるべきである。



3-2 廃液回収の一般的注意

(1) 廃液は、できるだけ種類ごとに、別々の容器に回収すること。後の処理再利用、処理業者

 への引渡しなどで便利である。小・中学校では、次の種類に分類して回収するとよい。

 @酸  Aアルカリ(塩基)  B重金属イオン  C一般有機化合物

(2) 廃液回収の容器は、破損や腐食に耐えられる材質のもの(肉厚の大きめのポリエチレン容

 器が適当)で、容器に廃液の名称を分かりやすく表示すること。

(3) 実験器具内の廃液、沈殿物は、残らず回収すること。

(4) 廃液回収容器は、薬品室などの安全な場所に保管すること。



3-3 具体的な廃液の処理

(1) 酸・アルカリ(塩基)廃液

@ 酸、アルカリの水溶液がかなりの量溜まれば、相互に混ぜて、pHがほぼ7になるように

 中和した後、多量の水とともに流す。

A 水酸化カルシウムや水酸化バリウムのように、硫酸と反応して水に溶けない硫酸塩が生成

 したときは、上澄み液だけを捨て、沈殿物は一般廃棄物として処理をする。

(2) 重金属イオン廃液

@ 小・中学校で扱う重金属イオンとしては、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe3+,

 Fe2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銀イオン(Ag+)、鉛イオン(Pb2+)などが主なも

 のである。

A 水に不溶の沈殿物にする方法として、水酸化物共沈法、硫化物共沈法アルカリ炭酸塩法な

 どが知られている。

B 具体的には、廃液を大きなポリバケツに入れ、アルカリ廃液を加えてアルカリ性にして、

 ほとんどの重金属イオンを水酸化物として沈殿させる。

C アルカリが強い場合、亜鉛イオンや鉛イオンのように再び溶けるものもあるが、炭酸ナト

 リウムやドライアイスを加えて放置すれば、炭酸塩として沈殿する。

D 処理後の上澄み液は、透明になれば多量の水で希釈して捨てる。

E 沈殿物は、乾燥させてから空びんなどに保管する。最終的には、セメントで固めるか、処

 理業者に処理を委託する。

(3) 一般有機化合物

@ 小・中学校で取り扱う有機化合物としては、メタノール、エタノール酢酸、ベンゼン、ナ

 フタレン、パラジクロロベンゼンなどがある。

A 広い場所で、紙屑などと一緒に、少量ずつ燃焼させるとよい。

(4) その他の廃棄物

@ 小・中学校ではあまり扱われることはないが、水銀および水銀化合物は「毒物」であるの

 で、別途回収しておく。例えば、水銀温度計が壊れたときは、床にこぼれた水銀をできるだ

 け多く回収する。ほうき、スポイト、銅−水銀アマルガムなどを利用する。

A 寒剤などで大量の食塩水を扱ったときは、大きなポリバケツに回収して日の当たる窓際に

 放置しておけば、時間はかかるが、水が蒸発して結晶が得られる。再度、寒剤に利用できる。

B カリミョウバンや硫酸銅のような、結晶作りによく使われる溶液は、別に専用の容器を用

 意して、再利用するように心がける。結晶作りのたびに、試薬びんから薬品を出しているよ

 うでは、無駄が多い。