キク科 Asteraceae
双子葉植物の進化の極致にあり、小さな花が集まって頭状の花序をつくる、タンポポの花は実は小さな花の集合体である。花の下方の総苞(そうほう)と呼ばれる緑色の葉の集合体を指先に力を入れてもむと、多数の小花がこぼれ落ちることが分かる。1個の花(=小花)は花弁の先端が5つに裂ける筒状花(とうじょうか)と、5又は3つに裂ける舌状花(ぜつじょうか)がある。キクイモの花の周辺部にあって、目立った黄色の花弁をもつのが舌状花で、筒状花はその中央部に黒褐色の部分を形成している。5本の雄しべは互いに合生して1本の雌しべを囲む、子房は1室。がく片の位置に冠毛があるものが多い。レタス、サラダナ、シュンギク、ゴボウ、フキ、ヨモギ、ヨメナなどは食用にされる。ステビアからは甘味料を抽出し、カミツレは薬草(カモミール)として使う。除虫菊からは殺虫剤を取り、ヨモギの葉裏の毛からはモグサを取る。
ノゲシ属 Sonchus
ハルノノゲシ Sonchus oleraceus
道ばたや畑の雑草として普通にある越年草で、茎は高さ50〜100cm。草体をちぎると茎や葉から白い汁がでる。種名のoleraceusは乳の意味のラテン語に由来する。茎と葉は食用にできるそうだ。春だけでなく、夏でも、秋でも花を咲かす、この花は秋の撮影。名前にだまされてはいけない植物である。

オニタビラコ属 Youngia
オニタビラコ Yongia japonica
畑や道ばたに多い1年草又は越年草で、茎は直立し高さ20〜100cm、葉の多くは茎の下部に集中してつくのでロゼットから茎が1本だけ直立したように見える。種名 japonica は「日本の」という意味である。春に多く開花するが、草体は年中枯死せず、冬でも日だまりで開花することがある。やや日陰の湿った環境に多いように思う。

ヤクシソウ Yongia denticulata
陽当たりのよい山地に多い越年草、花期は8月〜11月で晩秋にはこの黄色い花が目立つ。撮影は11月、でっぷりした蜂が花を替えては蜜か花粉かを探しているようであった。この時期には貴重な蜜や花粉の供給源なのだろう。

ニガナ属 Ixeris
オオヂシバリ Ixeris debilis
田の畦道に普通な多年草で茎は地を這う、と原色日本植物図鑑に記載がある。しかしこの10年近くこの植物に出会っていない。人里の水田をくまなく探しても見つからない。山あいの水田の畦道を探してみる必要がありそうだ。開花は4〜5月だった。

アキノノゲシ属 Lactuca
アキノノゲシ Lactuca indica
山野に多く生える大型の1年〜越年草、と原色日本植物図鑑に記載がある。現在では人里のアスファルト舗装道路の脇でも見られる。茎の高さは1.5mにもなる。葉の形態が独特なのと、伸長成長中には葉が垂直方向に向いていることで、他種から容易に区別できる。

コウゾリナ属 Picris
コウゾリナ Picris hieracioides subsp. japonica
山野の道ばたにふつうな越年草で、草体全体に褐色又は赤褐色の剛毛がある、茎は高さ30〜80cm。淀川堤防で見つけ、5月に咲いた。10月まで開花するらしいが、淀川堤防は6月に一度刈り入れが入るため、10月の花を見たことはない。学名からは、これがPicris hieracioidesという種の日本で見られる亜種であることが分かる。

タンポポ属 Taraxacum
シロバナタンポポ Taraxacum albidum
道ばたや人家の近くにある多年草。花が終わると茎は一度横に倒れ、実が熟す頃には再び直立する。頭花は直径3.5〜4.5cmで1月から5月に開く、雨の日や夜は閉じる。

カンサイタンポポ Taraxacum japonicum
道ばたにごく普通な多年草。頭花は直径2〜3cmで2月から5月に開く、アスファルト舗装の近くにはあまり見られない。淀川の堤防や農道脇に、他の野草と混在する。

セイヨウタンポポ Taraxacum officinale
ヨーロッパ原産の帰化植物で、人里に多い。単独でアスファルトの割れ目に棲息することが多い。3倍体で、単為生殖する。近年この種と在来のタンポポの間に雑種が生じていることがアイソザイムの分析で分かってきた。雑種はセイヨウタンポポに似る。

アザミ属 Cirsium
ノアザミ Cirsium japonicum
春の山野に最も普通な多年草で、茎は高さ50〜100cm。葉の上面と下面の脈上に毛があり、鋭い刺針を帯びるので、素手でつかむと怪我をする。ロゼットのときも、この形質から見分けがつく。頭花は5月から8月頃枝先に直立してつく、総苞は幅2cm内外。

ツワブキ属 Farfugium
ツワブキ Farfugium japonicum
海岸付近に多い丈夫な多年草で、観賞用に多くの品種がある。葉柄を食用にすることができる。葉は根生し、長い柄があって腎臓型である。10〜12月頃高さ30〜70cmの太い花茎を出して直径4〜6cmの頭花をつける。

ベニバナボロギク属 Crassocephalum
ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
アフリカ原産の1年草、茎は上部でよく分枝し高さ30〜70cmになる。「野に咲く花」によると花期は8月〜10月であるが、この写真は11月中旬に撮影した。10月下旬にやっと花芽が形成されかけた状態であった。

コゴメギク属 Galinsoga
ハキダメギク Galinsoga ciliata
東京世田谷のはきだめで発見され、牧野富太郎が命名したという熱帯アメリカ原産の1年草。茎は2分枝を繰り返し、高さ15〜60cmになる。花期は6月〜11月、頭花は直径約5mmで、まわりに白色の舌状花がふつう5個ならび、内側に黄色の筒状花が多数つく。

キオン属 Senecio
ノボロギク Senecio vulgaris
ヨーロッパ原産の越年草で、明治の初め頃より渡来し帰化した。道ばたや畑にふつうに見られる。茎はやわらかく高さ20〜40cm、頭花は春から夏にかけて開くが、往々にして年中開花する。

タカサブロウ属 Eclipta
アメリカタカサブロウ Eclipta alba
水田や湿地に生える1年草で、茎は高さ10〜60cmになる。茎と葉には剛毛があり、著しくざらつく。頭花は7月〜9月ごろ開く、舌状花は白色で2列、筒状花は淡緑色で共に結実する。熱帯から侵入した雑草で、種子は水に流れて広く分布するようである。

ヨモギ属 Artemisia
ヨモギ Artemisia princeps
山野に最もふつうな多年草、茎は高さ50〜100cmで多く分枝し、葉の下面には灰白色のくも毛がある。頭花は9月〜10月ごろはなはだ多くつき、総苞は長楕円形つりがね型で長さ2.5〜3.5mm、幅1.5mm。春先の若葉は餅に入れて食用とする、葉の裏の毛からはモグサを作る。夏場の葉を収穫して干してから煎じて、ヨモギローションを作る。メントールとアルコールを適量に加えると、アトピー性皮膚炎に効果がある。

ノコギリソウ属 Achillea
アソノコギリソウ Achillea alpina var. brevidens
山地の草原に生える多年草で、茎は高さ40〜70cmになる。花期は7月〜9月、「山に咲く花」によると分布域は九州とあるが、形態からは本種と考えられる。写真は高槻市の山あいで撮影した。

センダングサ属 Bidens
アメリカセンダングサ Bidens frondosa
水田の畦道や湿地に多い1年草、茎は高さ20〜150cmで分枝し無毛、葉は通常3〜5裂する。頭花は8月〜10月頃に開き、舌状花はない。果実(そう果)は長さ7〜11mmで平たくて2本の平行突起を片側に向ける、縁と肋の上に逆向刺があるので衣服によく付着する。

コセンダングサBidens pilosa
原産地が不明だが、世界の熱帯から暖帯に広く分布する。牧野富太郎によると、明治時代には近畿地方にかなり広まっていた。茎は高さ50〜110cmで、葉は下部では対生し上部では互生する。中部の葉は3全裂もしくは羽状に全裂する。上部の枝先に9月〜11月頃筒状花のみからなる頭花をつける。果実(そう果)は線形で衣服によく付着する。

ハハコグサ属 Gnaphalium
ハハコグサGnaphalium affine
道ばたや畑、家の近くにごく普通な越年草。茎は高さ15〜40cm、頭花は4〜6月頃に開き、総苞は球鐘形で長さ約3mm。雌花は糸状、両性花は筒状でともに結実する。春の七草のひとつで若菜は食用で、餅に入れることもある。

チチコグサGnaphalium japonicum
山野や家の近くにふつうな多年草で、地上を横に這う茎を出して繁殖する。花茎は数本直立し、枝を出すことなく高さ8〜25cmとなり、頂に5〜10月ごろ頭状に密集した頭花をつける。総苞は鐘形で長さ5mm、幅4〜5mmある。

タチチチコグサGnaphalium pensylvanicum
アメリカ大陸原産の1〜2年草、熱帯を中心に広がり日本でも暖地の都会の荒れ地や道ばたなどに帰化している。茎の高さは15〜35cmになり、下部で枝を分け葉を多数つける。茎の上半部の葉の付け根に小さな頭花を多数穂状につける。

ムカシヨモギ属 Erigeron
ヘラバヒメジョオン Erigeron strigosus
北アメリカ原産の1〜2年草で大正時代に渡来した。肥沃な場所よりもやせて乾いた土地を好む。茎に白い髄があること、花もヒメジョオンに似るが葉がへら形なのでこの名がある。「野に咲く花」によると花期は7〜10月だが、観察していると5〜7月であるようだ。ヒメジョオンとは、この花期の違いや頭花が地面と平行な平面で開花することから、区別できる。

ハルジョオン Erigeron philadelphicus
北アメリカ原産の多年草で、大正年間に園芸品種として渡来し各地で野生化した。茎は中空で高さ30〜100cmになり、全体に軟毛がある。頭花は直径が20〜25mmで多数の糸状をした舌状花をもつ。花期は5〜7月と「野に咲く花」にあるが、観察していると3〜5月に開花するようだ。

ヒメジョオン Erigeron annuus
道ばたに多い北アメリカ原産の帰化植物で越年生。茎は高さ30〜100cmで粗毛がある、葉は膜質で菱面に毛がある。「日本植物図鑑」によると花期は6〜10月であるが、観察していると8〜12月に開花するようだ。染色体数が2n=27で単為生殖するということは、結実して綿毛をつけた種子を生じないことから理解できる。

アレチノギク Erigeron bonariensis
道ばたに生える1〜越年生の帰化植物で、明治の中頃に渡来し一時は非常にはびこった後、近年減少している。茎は高さ30〜50cmで主幹の成長が止り、枝が伸びるので、又状のシルエットを示す。全体に灰白色の毛が多く、下部の葉はよく縁が波打つ。上部の葉は線形で、頭花は4〜5月頃につく。ムカシヨモギ属にあっては、小柄でなかなか愛らしい植物である。。
ヒメムカシヨモギ Erigeron canadensis
道ばたや荒れ地にふつうな1〜越年草。茎は直立し高さ50〜150cmで粗毛がある。8〜10月ごろ円錐形の花序を作り多数のはなはだ小さな直径3mmの頭花をつける。舌状花は小型であるが、やや目立つ。北アメリカ原産で明治の初期に渡来した。

オオアレチノギクErigeron canadensis
道ばたや荒れ地に多い多年草、茎は直立し高さ100〜150cmで短毛がある。8〜10月ごろヒメムカシヨモギによく似た円錐花序を作って多数の頭花をつける。総苞は大きく長さ4mm、幅3mm内外あってしもぶくれとなり、雌花は筒状である。おそらくブラジル原産で日本へは南アジア入ったと考えられる、比較的新しい帰化植物。

シオン属 Aster
ホウキギクAster subulatus
やや湿った道ばたや荒れ地に生える越年草、茎は高さ1m内外になる。葉は細くて光沢があり、8〜10月頃直径10mmに満たない小型の頭花をつける。北アメリカ原産で、明治の末頃より渡来した帰化植物。総苞は長さ6〜7mm、幅2〜3mm。

ヨメナ属 Kalimeris
ユウガギク Kalimeris pinnatifida
山地に生える多年草で地下茎をもつ、茎は高さ40〜150cm、葉は薄く3〜4対に浅く切れ込む。頭花は7〜10月頃に開き直径は25mm。

ヨメナ Kalimeris yomena
山野に最も普通な多年草で地下茎をもつ。茎は高さ60〜120cmで上部は分枝し、葉の上面はやや光沢がある。頭花は7〜10月頃開き直径30mm内外。

アキノキリンソウ属 Solidago
セイタカアワダチソウ Solidago altissima
北アメリカ原産の帰化植物で土手や荒れ地に群落を形成する。草体全体に短毛があってざらつく、頭花は10〜11月頃茎頂に円錐花序をつくって多数生じる。根から他の植物の発芽を阻止する阻害物質を出す、このような現象をアレロパシーと呼ぶ。植物間の直接競争の手段である。

ヒヨドリバナ属 Eupatrium
ヒヨドリバナ Eupatrium chinense
山地に生える多年草で、茎は高さ1〜2mに達する。葉はうすく、短い柄があって長さ10〜18cm、頭花は8〜10月頃ややまばらにつく。

ブタクサ属 Ambrosia
ブタクサAmbrosia artemisiifolia
北アメリカ原産の帰化植物、1年生で道ばたにごくふつうと「日本植物図鑑」にある。しかし、淀川河川敷で大きな群落を見かけるが、道ばたにはあまり見かけない。茎は高さ30〜100cm、上部は多く分枝して毛がある。葉は羽状に2〜3回中裂する。頭花は8〜9月に開き花粉を飛ばす風媒花であり、花粉症の原因となる。

オナモミ属 Xanthium
オオオナモミXanthium canadense
北アメリカ原産の帰化植物で道ばたや荒れ地にふつう、そう果はつぼ状の総苞に包まれて長さ2mm内外のかぎ状のトゲをもつ。このまま物に付着して落ちる。いがぐり状の「ひっつきむし」と言ったら、たいがい分かるだろう。

ヒマワリ属 Helianthus
キクイモ Helianthus tuberosus
北アメリカ原産の帰化植物で幕末に渡来した、花期は9〜10月で結実することはまれ。頭花の周辺にあって、黄色の大きな花弁をもつ舌状花と、中心部にある
筒状花がはっきり区別できる。個々の小花が大きいので、キク科植物の花の構造を知るための材料として好適。地中に大きな塊茎をつくり、フルクトースの重合体であるイヌリンを含む。
