イネ科Poaceae

風媒花であるので、花被片2は退化して小さく鱗皮(りんぴ)として子房の脇に残る、雄しべ6〜3(通常3個)、雌しべ1,花柱は2本で、柱頭(ちゅうとう)はよく枝分れしたブラシ状、子房(しぼう)1室ある。1個の花は外頴(がいえい)と内頴(ないえい)と呼ばれる、2枚の鱗片(りんぺん)=小型の葉に包まれる。これを小花(しょうか)と呼び、小花の集団を小穂(しょうすい)と呼ぶ。小穂の一番下には、花を包まない鱗片が2個ある。これらは小穂全体を包むこともあり、苞穎(ほうえい)と呼ばれる。

葉身は線形、葉は2列に並び、下部は茎を取り巻いて葉鞘(ようしょう)となる。茎はふつう中空で、葉鞘は茎に巻き付くだけで完全な筒状にはならない。単子葉植物で風媒(ふうばい)花として最も進化した科で人類の重要な食料である穀物はイネ科植物の種子である。例:オオムギ、コムギ、イネ、マカラスムギ、キビ、ヒエ、トウモロコシなど。製糖の原料となるサトウキビもイネ科植物。牧草としても重要である。牧草や、砂防のための緑化植物としても重要である。野外で花の咲いている植物を採集すると、生徒はイネ科の穂を取って来ない。カラスムギの小花を分解して、雄しべ3本とブラシ状に先端が二叉分岐した雌しべを見せると、これが花だとやっと理解してくれる。

スズメノチャヒキ属 Bromus

イヌムギ Bromus catharticus

いたる所の道ばたにふつうな1年草又は越年(えつねん)草、茎は太く、高さ70〜120cmになる。葉に毛がまばらにある。花期は6〜7月南アメリカ原産で、明治年間に日本に帰化した、牧草によい。




ドクムギ属 Lolium

ホソムギ Lolium perenne

越年草又はやや多年草の傾向がある。茎も葉も細いので、この和名がついたのだろう。細い茎がそう生し(=叢生、束になって生える)、高さは30〜60cm。葉は幅2〜5mmである。ヨーロッパ原産の帰化植物である。黄色い葯が頴の外側に出ているのが見える、穂の出ている草体を切り取って屋内に置くと、葯を外に出すことが多い。




ウシノケグサ属 Festuca

オニウシノケグサ Festuca elatior var arundinacea

牧草とヨーロッパから輸入されたヒロハウシノケグサ Festuca elatior の変種である。北半球の温帯全般に伝播している。


カモガヤ属 Dactykis

カモガヤ Dactylis glomerata

ユーラシア原産、はじめ牧草として紹介され日本と北米に帰化した。道ばたや小川のふちに生え、その花粉は激しいアレルギー反応を引き起こす。



イチゴツナギ属 Poa

スズメノカタビラ Poa annua

いたる所に生える柔らかい1年草又は越年草。茎はそう生し高さ5〜25cm、葉はややまばらで、幅1〜3mmの線形、花は年中咲く。汎世界的な雑草で、ユーラシア大陸の原産である。


オオイチゴツナギ Poa nipponica

1年生でやや太く、茎は高さ30〜50cm、葉は幅3〜7mmで先は急に短く尖る。スズメノカタビラとミゾイチゴツナギの雑種の可能性が示唆されている。




コバンソウ属Briza

ヒメコバンソウ Briza minor

道ばたや野原にふつうな1年草、茎は高さ10〜40cmで、葉は幅2〜5mmで少数つく。花期は5〜6月、大型で散開した花序をつける。




スズメガヤ属 Eragostis

カゼクサEragostis ferruginnea

道ばたや、堤防にふつうな多年草。茎はそう生して大きな株をつくる。茎は太く高さ30〜80cm、葉はおおむね根生で(茎からはでない)、幅2〜6mmで長い線形。花期は8〜10月。近縁のシナダレスズメガヤは砂防や緑化のために輸入された。


ニワホコリEragostis multicaulis

いたる所の道ばたに生える1年草。茎は繊細で基部は斜め上に伸びて節で曲がる、高さは7〜25cm。葉は幅1〜3mmで狭線形、花期は8〜10月。アジアの原産であるが、ヨーロッパとアメリカに帰化し現在は全世界にふつうの雑草となった。




オヒシバ属 Eleusine

オヒシバEleusine indica

いたる所の道ばたに生える1年草、そう生して大きな株をつくる。茎は多少扁平で、高さ30〜60cm。葉は主として根生、扁平で二つ折れとなり、幅5〜7mm。花期は8〜10月、全世界の暖地に分布する。




カズノコグサ属 Beckmannia

カズノコグサ Beckmannia syzigachne

湿地や田の畦に普通な1〜2年草、鮮緑色で柔らかく、高さ30〜90cm、花期は5〜7月頃。




ネズミノオ属 Sporobolus

ネズミノオSporobolus indicus

日当たりの良い原野や道ばたに普通な多年草、そう生して株をつくる。葉は根生、長線形で硬く幅 2〜5cm. 茎は立って、花序を含めて高さは40〜80cm、草体は平滑で無毛、花期は9〜11月。




ヨシ属 Phragmites

ヨシPhragmites australis

水湿地に群生する多年草、地下走出枝は長く横に伸びる。茎は直立して高さ1〜3m、葉は長い線形で、幅2〜4cm、花期は8〜10月。円錐花序は大型で長さ40cmに達する。




マコモ属 Zizania

マコモ Zizania latifolia

大型の沼生多年草で、群落をつくる。地下茎は太く横に這う。葉は長さ40〜90cm、幅1〜3cm。茎は高さ1〜2mで太く、無毛、花期は8〜10月。北アメリカのZ. aquaticaは1年草でインディアンライスと呼ばれ、種子を食用にする。




カラスムギ属 Avena

カラスムギ Avena fatua

畑に普通に生える1年又は越年草、茎はそう生、又は単出し、高さ50〜90cm。葉は少数で、幅7〜13mm。花期は6〜7月、ややまばらに花序をつける。マカラスムギAvena sativaはエンバクとも呼ばれ、その種子はオートミールの原料になる。これはカラスムギから栽培したものであるという。小花が大きくて分解しやすいので、イネ科植物の花の構造はこのカラスムギで学ぶとよい。




カニツリグサ属 Trisetum

カニツリグサ Trisetum bifidum

いたる所の道ばたや草原に普通に生える、ややまばらにそう生する多年草。葉は線形で扁平、幅3〜5mm、茎は細く高さ40〜70cm。花期は5〜6月、花序はやや密な円錐状で、上部は下方に傾く。




ヒエガエリ属 Polypogon

ヒエガエリ Polypogon fugax

日当たりのよい原野の湿地に生える越年草。北海道を除く日本各地に分布。




シバ属 Zoisia

シバ Zoisia japonica

日当たりのよい山野、道ばたにふつうな多年草。茎は長くはった地上走出枝の節から立つ。花期は5〜6月、花序は見かけ上は単穂状。




ヒエ属 Echinochloa

イヌビエEchinochloa crus-galli

きわめてふつうに雑草として生える1年草、茎はそう生し、高さ1〜1.5m、葉は長い線形で幅0.7〜2cm、 花期は8〜10月。このイヌビエを栽培したのが五穀のひとつ、ヒエであったとする説がある。山間部でイネが栽培できなかった地域では、イネの代替種としてヒエを栽培したという。




エノコログサ属 Setaria

キンエノコロSetaria glauca

畑や道ばたにふつうな1年草、茎は高さ50〜90cm、節で曲がった基部からは直立し、あまり枝分れしない。葉は少数で長い線形、幅5〜8mm、花期は8〜10月。


コツブキンエノコロSetaria glauca var. pallide-fusca

キンエノコロの変種であることが学名から分かる、倍数体と考えられている。茎は細く、高さ15〜30cmで、基部は横に這い、枝分れする。剛毛はやや紫褐色が強い傾向がある。


エノコログサSetaria viridis var. minor

いたる所に生える1年草で、畑の跡に特に多い。茎は細く、接地して分枝した基部から立ち上がり、高さ50〜80cm。葉は短い線形で幅5〜13mm。花期は8〜11月、花序は円柱状で直立し、先端部は多少点頭(下に曲がる)。五穀のひとつ、アワはこのエノコログサ属の植物で、このエノコログサを栽培したものであったと考えられている。




チカラシバ属 Pennnisetum

チカラシバ Pennnisetum alopecuroides

陽当たりのよい畑や道ばたにふつうな多年草、密にそう生して大きな株になる。茎は多数そう生し、分枝せずに長さ30〜80cm、葉は幅5〜8cm。茎の頂に1個の花序をつける、花期は8〜11月。適当な杭の無い場所では、農耕用の牛をチカラシバの株にくくりつけておく習慣が昔はあったようだ。




スズメノヒエ属 Paspalum

シマスズメノヒエ Paspalum dilatatum

そう生して株をつくる、茎は高さ80〜150cm、基部は短く斜めに立ち上がり、上部は直立する。葉は線形で、幅5〜12mm。南アメリカ原産の帰化植物。




メヒシバ属 Digitaria

メヒシバ Digitaria ciiaris

道ばたにきわめてふつうな1年草、茎の基部は横に這うか、斜めに立ち上がり、枝分れする。上部は立って高さ30〜90cmに達する。葉は線形で幅5〜15mm、花期は7〜11月。外見からは食用になるとは思えないが、中尾佐助の「農耕と栽培植物の起源」によると、このメヒシバが食用に栽培されている地域があるという。




チガヤ属 Imperata

チガヤ Imperata cylindrica

原野や堤防に普通な多年草、地下茎は細く長く横に這う。チガヤの若い花序は子どものおやつであった、ツバナと言って甘みがある。




ススキ属 Miscanthus

オギ Miscanthus sacchariflorus

沼や沢に生える大型の多年草、地下茎は長く地中を這い、茎は地下茎の節から単生する(1本づつ出る)、高さ1〜2.5m。葉の幅は1〜3cm、長さ20〜40cmになる大きな散房花序をつけ、花期は9〜10月。




メリケンカルカヤ属 Andropogon

メリケンカルカヤ Andropogon virginivum

陽当たりのよい草原に生える、茎はややまばらにそう生し、高さ50〜90cm。中央上部は枝分れして、葉腋に花序を出す。葉は2列に並び、挟線形で幅約5mm、花期は9〜10月。




オガルカヤ属 Cymbopogon

オガルカヤ Cymbopogon tortilis

原野に生える多年草、茎は短い地下茎からそう生し、やや細く、高さ60〜100cm。葉は挟線形で幅3〜5mm外へゆるく曲がり、縁は外側へかるく巻く、花期は8〜11月。




アブラススキ属 Eccoilopus

アブラススキ Eccoilopus cotulifer

山野に生える背の高い多年草、ややそう生し、茎は分枝せずに高さ90 〜120cmになる。葉は長い線形で、幅1〜1.5cm。花期は9〜10月、花序は円錐状で長さ20〜30cm、上部は少し点頭し、ややまばらに枝のまわりに輪生する。




モロコシ属 Sorghum

セイバンモロコシ Sorghum halepense

茎は粗大で長い、地下茎から直立して高さ60〜150cmに達する、下方ではまばらに分枝する。葉は広線形で幅1〜2cm。長さ20〜50cmになる大きな円錐花序を1個つける、アフリカ原産の帰化植物。




ジュズダマ属 Coix

ジュズダマ Coix lacryma-jobi

1年生又は多年生の大きな草本、茎はそう生して高さ80〜100cm、下部で分枝し太い。花序は多数、茎の上部の葉腋に側生し、密に分枝する。花は単生で、雌花は壺型(つぼがた)の苞鞘(ほうしょう)の中にあり、雄花は壺型の苞鞘から出る短い柄の先の房となる。熱帯アジア原産で、栽培された植物が野生化した。ハトムギはこの種の変種であり、飼料用・薬用として栽培される。