「カシミール3D」による地形・地質画像

 


 「カシミール3D」(3次元地図作成ソフト)を用いた地形教材は、既に「大阪の自然災害と環境」(落合他、2000)の中で提示されている(例えば)。その後も、野外研修で用いる地形鳥瞰図を作るのに大いに役立っている。図1に、北海道南部の火山有珠山a,樽前山駒ヶ岳a,)、東北の火山(磐梯山−吾妻山−蔵王)、隠岐島前霧島火山などの日本各地の火山地質巡検の折に作成した画像の例を示す。なお、これらは、数値地図50mメッシュ標高データから作成したものだが、特定の火山についてのより精細な「数値地図10メッシュ(火山標高)」(国土地理院)をカシミールで読み込むための「火山標高プラグイン」も用意されている。

「カシミール」は日々改良・多機能化が進んでおり、また最近では、本ソフトの著者である杉本智彦氏によってマニュアル本がいくつか出版されている(例えば、『カシミール3D入門』、2002)。地形や地質の教材として役立つ新しい機能として、「等高線・白地図表示プラグイン」や「テクスチャマッピング」がある。後者は、標高データと、地図画像や地質図、衛星画像等の任意の画像(BMPファイル)とを重ね合わせる機能で(図2)、地形と地質を立体的に捉えることができるなど、たいへん有用である。以下にこれらの活用例を示す

 図3は、「等高線・白地図表示プラグイン」を用いて、大阪市内の1m等高線図を描いたものである。地形図から市街地の等高線を読みとることは極めて困難だが、このソフトでは簡単に描ける。地球温暖化に伴う海進(0m,2m,3m,10m)と災害の恐れを一枚の絵に如実に示してくれる。図4(a)は大和川の周辺の1m等高線図と河川勾配を示したものである。隆起する生駒山地に抗して、侵食し横断して流れる大和川の微細な河川勾配がよく分かる。

数値地質図として、20万分の1地質図幅集(数値地質図G-3、地質調査総合センター)の「京都及大阪」及び「和歌山」の地質図を、50メッシュ標高データと重ね合わせていろいろな立体地質図を作成した。図5は大阪を大阪湾から北東方向へ鳥瞰した立体地質図である。図6(a)は六甲山地。逆断層を境に花こう岩が階段状に隆起して山地を造っている。図7は生駒山地。図8は和泉山脈。和泉山脈の幾重もの山なみの連なりは、地質や岩質の違い、そして断層が、その原因であることが理解できる(図9)。

 これらの立体地質図は、実際の野外観察の事実と合わせると、一層理解が深まる。例えば、図10aは生駒山地北部の交野断層付近の立体地質図であり、断層を境にして手前の大阪層群の地層の向こうに花こう岩がのし上がり生駒山地をつくっているのがわかる。この実際の露頭が枚方市津田で観察できる(図10b)。生の自然を目の前にすると、地質立体画像がよりリアルなものとして浮かび上がる。図11には衛星画像の立体図を示す。

数値地図をさらに高度に活用するソフトとして、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)がある。これは、地理的な位置や空間に関する、自然、社会、経済などの情報をコンピュータに蓄積し、検索、集計、処理、分析、表示をすることができる地理情報に関する統合的なシステムである。GISをうまく活用することによって、私たちの自然環境を正確に把握したり、また、例えば道路やガス、水道などの社会生活基盤を適切に管理して、生活環境を快適なものにすることができる。教育の場でも環境教育や防災教育で有効である。例として、GISソフト(ここで使用したのはArcView)を用いて作成した生駒山地の急傾斜分布図を示す(図12a)。   (落合清茂)

 

引用・参考文献

落合清茂・佐藤昇 他(2000)『教育資料 大阪の自然災害と環境(CD-ROM付)』 大阪府教育センター.

 杉本智彦(2002)『カシミール3D入門』 実業之日本社。