1時間の授業では把握することの難しい子どもの変容を見取る方策の研究記録です。
道徳ノート、道徳ファイルなどを活用しながら長期的なスパンで見取る方法を研究しました。
その活用例やそこから見えてきた効果の一部を以下に紹介します。
道徳ノートの活用
 道徳ノートを作り、授業で考えたことや振り返りを蓄積していく。
☆活用例やその効果
同一のノートに記録していくことで、子どもの変容を見ることができた。
記述させることで、児童の価値理解を可視化できた。
児童の良い点を見つけ、伝えることが、個々の自尊感情の向上に役立った。
保護者からのコメント欄を設け、家庭との連携を図った。
授業での学びを家庭学習として道徳ノートにまとめさせ、価値理解を深めた。
家の人と一緒に考える中で、経験を交えた道徳的価値の深まりが見られるようになった。
ノートにキーワードを残せば、学んだことを生活の中で生かす意識が生まれた。
道徳ファイルの活用
 道徳の時間に用いたワークシートなどを、ファイリングして蓄積していく。
☆活用例やその効果
道徳ファイルにためていくことで、児童がどの時間に深く考えることができたか、またどのように成長したかを見取ることができた。
回を重ねるごとに、書く量が増えるとともに、実生活と結びつけて考えられる児童が増えたことを確認できた。
学年末に、ワークシートを読み返し、自己評価シートに記入しながら、自己の成長に気付かせた。
道徳ファイルにためていくことで、児童が振り返りの際に自分の心の変容について書くことができた。
道徳ファイルに蓄積することで、「考えなさい」と言わなくても、それを見るだけで自分の感想や教師の感想を読み返し、何度も考える時間を持つことができた。
道徳ファイルに貼るたびに、ワークシートをめくりながら、「こんなん書いててんなあ」「前よりかけるようになった」など成長を感じる有効な手だてとなるとともに、教師は成長の様子を見取ることができた。
子どものワークシートを、自分、他者、価値という観点で色分けしながら点検していくことで、どの教員も一貫性のある視点で子どもの感想を見取ることができた。
教師が、児童の成長や授業の中に既習の内容を生かせていたかなどを把握することができた。また、長期的な成長の様子を客観的に見ることができた。
ファイルを3年間持ち上がり、「同じ価値項目で考えたことがどう変化したのか」を振り返れるようにした。
ワークシートの記述で特にみんなに伝えたい内容のものを通信や学年掲示板等に掲載し、教師からの感想も書くようにしたら、ワークシートの書き方や授業への取組姿勢に変化が見られた。
ファイリングすることで、以前のワークシートを見た児童が自分の考えを思い出すきっかけとなり、自分たちの生活を振り返るよいアイテムとなった。
毎時間ワークシートを活用し回数を重ねることで、はじめは一言しか書くことができなかった子どもも自分の考えを書くことができるようになった。また、ワークシートをファイリングすることで、授業の積み重ねが目に見えて分かり、子どもたち自身が自分の考えに気づくことができた。さらに、ワークシートに考えを記入させることで、発言だけでは見落としてしまいそうな子どもの本音を感じることができた。
授業の終末に必ず「ふりかえり」を記録し、道徳ファイルに貼っていった。これにより、次のワークシートに貼る際に自分の考え方や感じ方、心の変化について思い起こすことができた。
指導者による観察
 道徳の時間の発言や日々の子どもの様子を指導者が観察し記録していく。
☆活用例やその効果
発表やワークシートの評価だけでは、話すことや書くことの得意不得意が関わってきたり、授業中の発言と実際の行動が伴わなかったりする。そこで、友達との日々のかかわり方を中心に記録をとるようにした。今回は授業実践の内容項目である「友情・信頼」に注目して記録をとった。ただ、他の道徳教育の内容項目についても全て記録をとるのは難しいと思う。
その他の取組
☆活用例やその効果
【学期の終わりに授業アンケートを行う】
 印象に残った授業について、なぜそれが心に残ったかや、生活で役立ったことや、自分が変わったなあと思ったことを書く。
【6月と1月に道徳アンケートを実施し、比較検討】
 道徳の内容項目に通ずる道徳アンケートを2回実施し、比較検討して子どもの成長を把握した。「自分にはよいところがあると思いますか」や「ものごとに主体的に取り組んでいますか」などの項目で、向上が見られた。
【道徳的価値を系統的に学ぶ工夫をしその変容を見る】
 前回の学びを発展させ、価値が深まる場面が多かった。
【チャレンジノートを活用する】
 道徳だけでなく、総合的な学習の時間や特別活動での取組の感想なども記録。教師はコメントを返していく。年度末に1年間の学びを振り返り自己評価する取り組みなどの活用する。
【ミニノートを活用する】
 道徳の振り返りに限らず、担任との交流や日々の活動、学校行事の振り返りにも活用できるB6サイズのノートを用い、日付を入れて時系列で記入し、把握できるようにした。時系列で振り返ることも出来るし、道徳の授業だけに限らず、他の生活場面での実践力も見取ることができた。
【ホワイトボードやワークシートの活用】
 小学校1年生は書くことが難しいことがあり、話し合いの場では、ワークシートの吹き出しやホワイトボードを活用し、思ったことをメモ書きすることから始めた。ホワイトボードに書いたメモや文を元に繰り返し発表や意見交換をすることで、安心して自分の気持ちを発表することができるようになった。
【学年教師によるローテーション道徳】
 学年でローテーション授業をすることで、普段担任の授業では見えない顔や意見が見られた。授業の様子は担任に報告し、それぞれクラスの通信等で報告した。これにより、毎回やりっぱなしだった教材を、深め、共有することができた。
【各学年からの道徳通信の発行】
 年に一度、各学年より道徳の授業の内容を家庭に知らせた。それにより、道徳の授業によって変化した子どもの様子を、保護者からも聞くことができた。
【板書写真(デジタルカメラ)の活用】
 価値を深める話し合いができたかどうか、毎時間授業後にデジタルカメラで撮影し、授業の振り返りをした。
留意すべきこと
授業で考えを深めているが、書くことが苦手で表現できない子もいるので、授業での発言や普段の生活の様子なども含めて教師が把握する必要がある。
家庭学習の活用は、効果があるが、十分な振り返りができない場合も出てしまった。
自己紹介を活用するときは、自己の成長に否定的な生徒への活用には課題があった。
授業で取り上げる内容項目が変わっていくので、変容をとらえることが難しかった。