大阪府立天王寺高等学校

「天高アカデメイア」宣言   (抜粋) 

大阪府から進学指導特色校に指定され、また文部科学省からスーパー・サイエンス・ハイスクールに選ばれている天王寺高校では、これまで「先端科学ゼミナール」や「集中セミナー」、公開研究授業、ブリティッシュ・カウンシル連携事業、文系高大連携講座など、大学の先生方・留学生・企業研究員の方々による年間30回にも及ぶ講演会が開かれてきました。
 生徒たちは最新の科学技術や研究活動、それぞれの研究者の意欲や使命感に身近に触れることができ、勉学意欲の向上や進路実現にも大きな成果を上げてきたところです。
           (中略)
 これまで受講対象は理数科の生徒と理数分野が中心でしたが、今後は広く普通科・文系志望者にも呼びかけ「アカデメイア」が真にダイナミックな知の殿堂たるべく、「本物に接し、学ぶ」という天高教育のモットーの実践を企図しています。向学心に燃える生徒たちが知的体験を共有できる空間、そして教育目標である「日本や国際社会で活躍するリーダーの育成」に寄与する試み、それが「天高アカデメイア」だと考えています。


 ■第13回 天高アカデメイア
   「開発とは?−スリランカは途上国ではない−」

                      奈良県立大学 講師 ラナシンハ ニルマラ 先生
   

 令和2年1月24日(金)
 参加者は、将来海外で仕事がしたい、環境問題に興味がある、学校プログラムの海外研修に参加したので(するので)英語に触れたい、など様々な思惑をもっていた。最初から最後まですべて英語でレクチャーしていただいたが、質問に対するレスポンスの速さから、ある程度理解していることが感じられた。さすが日ごろから密度の高い英語の授業を受けているだけある。ちなみに最もレスポンスが速かったのは、「水菜のカレー」に対する反応だった。以下、生徒がまとめた100字要約
「スリランカには豊かな自然があり、古代から王朝が続いてきた。昔からの知恵や、環境にやさしい生活のしかたなどが昔から受け継がれており、途上国ではない。変化を見たいなら自分が変化するべきだ。一人にできることは小さなことでも集まれば力になる。」


【生徒感想抜粋
・I love curry. I ate that mornig and lunch.Thank you coming for us. Very interesting talks. Your clear English and jesture made me understand well. I think the problems your country is facing is same as Japan and world. I agree with your idea that Srilanka should make stronger the good point the country has now and past.
・環境問題について耳にする機会が増えてきている中、私たちはもっとグローバルな観点から国、地球を見なければいけない。私たち一人ひとりが責任感をもって、この星の当事者としての自覚を持ち、取り組んでいかなければならないと強く思わされた。


 ■第12回 天高アカデメイア
   「スーパーコンピュータ...何に使う?」

                    神戸大学システム情報学研究科 教授 横川 三津夫 先生
   

 令和元年12月11日(水)
 スーパーコンピュータ「京」の開発に関わられた横川先生をお迎えしました。次のようなお話を伺いました。
「スーパーコンピュータを活用してできること」・・・地震発生時の建物の揺れや避難する人の動きのシミュレーション、雲の動きを計算によって求める天気予報のシミュレーション、心臓の動きと消費エネルギーの関係を解明するシミュレーションなど、実際の分析結果の映像も交えて紹介していただきました。
「コンピュータ(計算機)ができること」・・・様々な物理事象を数理モデルとして”数学のことば”として記述することができるが、これをコンピュータが処理できるように四則演算を中心とした式に変換して”コンピュータのことば”であるプログラム言語としてまとめていくという、コンピュータを用いてシミュレーションを行うプロセスを具体的に解説していただきました。

【生徒感想抜粋】
・スーパーコンピュータがどのように使われているのか今まで知らなかったのですが、天気予報、地震などのシミュレーションや心臓の動きのモデル化など自分たちの生活に身近なところで使われていることがわかりました。「京」から「富岳」になることで計算速度が上がり、より細かく精度を上げたシミュレーションを展開することができることを知りました。
・私は文系で物理や数学についての理解が追いついていないのですが、今、話題になっているスーパーコンピュータについて知りたいと思って講演を聞かせていただきました。並列計算などの実際の仕組みなど、内情を知ることができてとても勉強になりました。
・「京」を見学したときにわかりにくかった「Tofu」(CPUをつなぐシステム)の仕組みなどもしっかり知ることができた。


 ■第11回 天高アカデメイア
   「平均!偏差値!それらの分布から統計解析へ

                        関西学院大学理工学部数理科学 昌子 浩登 先生
   

 令和元年11月19日(火)
 本校では2年生全員が自主的に研究課題を設定し、実験・調査・分析を行うSSH課題研究を行っています。高校の段階で長期間(本校では1年間)の研究を行うこと自体に評価をいただく一方、研究として成り立っていない、とご指摘をいただくこともあります。例えば、コントロールが取れていない、平均値でしか考察ができていないなどです。これは教員側の課題でもあります。今回のアカデメイアでは昌子先生が実際にマウスを用いた研究を例にして、データ分析の手法を学びました。

【生徒感想抜粋】
・数学が将来何につながるのかピンとこないまま学習していたけど、後半に進むにつれて社会につながるものがあるんだなと思いました。社会現象解析のツールとして数学を見てみたいと思いました。
・課題研究で最後にデータをまとめるときに使える統計の技術が増えた。これからの研究に役立てていきたいと思う。
・内容がすごく難しくて、どう使えばいいのかよくわかっていない。しかしアンケートを処理するときに%を出す以外にデータの分析をする方法があることがわかった。



 ■第10回 天高アカデメイア
   「What Can We Learn from Hansen’s Disease Literature by Young Women and Men?

                       大手前大学 准教授 田中キャサリン 先生
   

 令和元年10月29日(火)
 日本文学、人権問題、歴史、ハンセン病…、日本語でも理解することが難しい内容をすべて英語で講義していただいた。もちろん内容を理解することに重きを置けば、日本語でお話してもらうべきだと思うが、わからないストレスを経験し、少しでも理解できたところから後で自分で学習し膨らませていくことができれば、単に知識を得るだけに留まらない学びができると考えた。予想通り、難しくて理解できなかったという感想が多かったが、必死に理解しようと1時間の講義を集中し続けた熱気を感じることができた。また、生徒のコメントを読んで、今回の狙いを達成することができたと感じる。 

【生徒感想抜粋】
・日本語でハンセン病について聞くよりも、英語で教えてもらうことのほうが胸に強く残りました。おそらく自分の国のことを海外の先生のほうが詳しくて、自分のほうが知らないことが多くて、というこの状況が学ぶ意欲をかきたて、理解しやすくなったのだと思います。
・知らない言葉が多くて、理解できたところのほうが少ないかもしれないけど、過去を知るきっかけになりました。まだよくわかっていないところは帰ってから調べようと思うほど、興味を持てたし、学びたいと思った。


 ■第9回 天高アカデメイア
   「リスクとリターンの数理

                    大阪府立大学工学研究科 准教授 數見 哲也 先生
   

 令和元年10月11日(金)
 「分散って何?」と聞いても誰も視線を合わせず、不安な幕開けとなった今回のアカデメイアである。リスクに見合うリターンがないと判断したのだろうか。分散はリスクを表し、期待値はリターンを示すということを卵120個を運ぶことを例にして考えた。このとき半分の確率で失敗し、そのときはかごの中身はすべて割れてしまうものとするという条件がついた。いくつのかごにわけてもリターンは60個のまま変わらないが、かごを増やせば増やすほどリスクは減っていくことがわかった。しかし、実際はかごを増やすほどコストがかかるので、リスクに対してリターンが最大になる値をとる必要がある。今まで学習した分散や二次関数、微分などの知識が一気に結びついた瞬間であった。生徒には将来投資をすべきか?という質問をしたところ、「知識を持った上でどう判断するかだと思う。何も知らないから何もしないのと、知っているから根拠をもって何もしないのは大違いである」というコメントには感銘を受けた。最も印象に残った言葉は、「宝くじは無知への課税である」という言葉だ。確かに期待値は非常に低い。

【生徒感想抜粋】
・既習範囲の数学を前提として進められたので理解しやすかった。タマゴの話でリターンはそのままにリスクを減らせるというのがワクワクした。一応期待値と分散はわかっていたが、投資の計算に実用できるというのは知らなかった。数学が好きだが得意ではないので実生活で使えるほどになりたいと思った。
・数学に対する親近感をもつことができた。資産運用は必ず直面することでそのときに今勉強していればその選択が正しかったか失敗であったかは別問題であるとしても自信をもって選択することができると思った。また根拠をもって選択することでその結果を次の自分に活かすことができるのだと思う。
・株式市場など金融は非常にカオスな場所であり、たとえノーベル経済学者が集まっても難しいものであることがわかった。理論一筋ではいけないと痛感した。「何もしないリスク」という言葉を忘れず、自ら行動していきたい。


 ■第8回 天高アカデメイア
   「はやぶさ2他最新宇宙動向

                      JAXA 研究開発部門  廣瀬 史子 先生
   

 令和元年10月7日(月)
 この講演のサブタイトルには「やってみたいをひたむきに」、とありそのタイトルどおり、廣瀬様が高校時代、大学時代に何を考え、どのように道を切り開いてきたのかをご紹介いただいた。このセクションは急なお願いにも関わらず全て英語でお話いただいた。ご本人は自信がないと謙遜されていたか、とても流暢な英語で生徒たちはどうすれば英語を習得できるのかというところにも興味を持ったようだ。昨年度のはやぶさ2に関する講演のときよりも女子の参加者が多く見られた。彼女たちが今回の講演をロールモデルとし、進むべき道を模索することを願う。


【生徒感想抜粋】
・はやぶさ2などの探査機には二重のトラブルに対応できる能力をつける、など研究者の知識がつまったものだとわかった。まだ見ぬ宇宙でその時々に発生するトラブルに対応し、実行していくことはすごいと思った。
・廣瀬さんの行動力がすごくて到底真似できないと思ったけど、チャレンジしていく姿はがんばって真似してみようと思った。はやぶさ2は成功ばかりだと思っていたけど、実はそうでもなく、急な不具合にもすぐに対応していた。
・英語に苦手意識があり、海外にも興味がないため逃げてばかりだったのかなと思いました。授業でももっと積極的にやっていこうと思います。今、友達と英語でメッセージのやりとりをしているので、それを継続していこうと思います。


 ■第7回 天高アカデメイア
   「エピトランスクリプトミクスと癌治療創薬

                      大阪大学薬学研究科 教授 辻川 和丈 先生
   

令和元年9月11日(水)
 理系生物を選択した生徒はエピジェネティクスについて学習するが、多くの生徒は初めて聞いた内容であった。ヒトゲノム計画によりヒトの遺伝情報が解読されたが、がんの治療法は確立されていない。これはDNAの塩基配列(ジェネティクス)の変異だけでは説明できないということである。ジェネティクスでもエピジェネティクスでも治せないものが、エピトランスクリプトミクスなら治せるかもしれない。この研究が進むことで今はステージ4で余命1年と宣告されるがんが余命を伸ばしたり、完治することが可能になるかもしれない。


【生徒感想抜粋】
・ヒトゲノムプロジェクトからエピトランスクリプトミクス研究、さらに老化についての研究という流れになっていて、1つのことからたくさんの新しい研究が生まれていることがわかった。創薬には、化学・物理・生物が関わり、製薬会社の協力があって薬がつくられているのだと知った。
・ゲノム編集はテレビなどで取り上げられていて知っていたが、エピジェネティクスやエピトランスクリプトミクスはそれとは全く違う、設計図そのものではなく、その後の修飾によってその人の様々な要素が左右されるのだとわかってとても驚いた。


 ■第6回 天高アカデメイア
   「外国語を理解する(とりあえず)2つのコツ

                   大阪教育大学教育学研究科 准教授 橋本 健一 先生
   

令和元年7月9日(火)
 タイトルに関することを英語で50分間、そのまとめとして日本語で10分間のご講義をいただいた。外国語を読むときは、文字→形態→音声→意味の流れを速く認識することが重要である。そのためにはフラッシュカードのトレーニングは文字から音声への変換を速める有効な学習法である。黙読ですら「発音」は重要であるということを強調されていた。2つのカギはあるが、「マジック」はない。習得には長期のトレーニングが欠かせない。

【生徒感想抜粋】
英語での講義の後に日本語の説明を聞くと、自分がいかに大まかな内容しか理解できていなかったかが分かった。コミュニケーションの道具として英語の習得を目指していてスピーキングばかりに気をとられていたが、これからは意味や発音にも重点的に学習していきたい。


 ■第5回 天高アカデメイア
   「宇宙を支配する数式」

                       大阪大学理学研究科 教授 橋本 幸士 先生
   

令和元年6月21日(金)
 宇宙を支配する数式というタイトルであったため、数学や物理に興味を持っている生徒でも理解できるか不安であったようだ。途中、橋本先生が宇宙を支配する数式と呼んでいる「素粒子の標準模型の作用」がスライドいっぱいに映し出されたときは生徒の混乱が伝わってきた。さらにその数式を書いてみよう、そして読み取っていこう、とかなりハードルの高い要求が続いた。生徒は自分の範疇をはるかに越えた問い(時間はなぜ1つなのか、宇宙は1つなのかなど)がでてくるとニヤリとし、わからないことを楽しんでいた。ちなみにこの問いが解ければノーベル賞は確実であるとのことである。

【生徒感想抜粋】
粒子によって引き起こされる事象を1つの式で表せることができることが美しくかっこいいと感じた。物理学を専攻するつもりなので大きな糧になった。

     

 

 ■第4回 天高アカデメイア
   「超重元素ニホニウムの合成」

                    関西大学システム理工学部 教授 和田 隆宏 先生
   

令和元年6月12日(水)
 元素とは何かという説明から新元素の合成までご講義いただいた。新しく見つかった原子の名前の付け方や元素合成の難しさ、困難に当たった際にどうすべきかなど、講演のテーマからよりよい生活を送るための心構えまで広く考えることができた。

【生徒感想抜粋】
研究者にとって最も重要なことは技術や知識よりも目的を見失わず、幾度失敗してもあきらめない粘り強さなのだと思った。


 

 ■第3回 天高アカデメイア
   「ゲノム編集技術を用いて免疫拒絶を受けにくいiPS細胞を作る」

                     京都大学iPS研究所 特定拠点講師 堀田 秋津 先生
   

令和元年5月23日(木)
 ゲノム編集技術により双子の女児が誕生したという話題から生徒にとってこの技術はネガティブな印象だったかもしれない。今回はポジティブな部分をiPS細胞の拒絶反応の回避という面からご講演いただいた。物事を考える際は複眼的にとらえた上で、自身の考えをもって欲しい。

【生徒感想抜粋】
研究者の思考力と発想力、そして何より情熱が伝わってきて刺激を受けた。未解明のことに挑戦する姿勢、意気込みを大事にしたいと思う。



 ■第2回 天高アカデメイア
   「音と音楽の物理と科学

                     大阪府立大学工学研究科 教授 川又 修一 先生
   

令和元年5月10日(金)
 音とは?波とは?から始まり、物理学からピタゴラス音律、純正律、平均律と時代が移り変わっていくときにどのようなことが起こったのかを考察した。「少し前ではスポーツと科学は結びつかなかった。しかし、今ではどうだろうか。今日お話した、音楽と物理のように様々な学問が密接につながっていることを理解し学習に取り組んで欲しい。」というまとめが印象的であった。

【生徒感想抜粋】
今まで物理基礎や音楽で学んできた知識がつながったように感じた。音楽と一見関係のないものでも、関係があることがわかり興味深かった。


 

 ■第1回 天高アカデメイア
   「食べることの哲学」

                                
大阪大学人間科学部 教授 檜垣 立哉 先生


平成31年4月26日(金)
 生物とは何か、命とは何か、生きることとは何か、生物学は突き詰めていくと哲学である。今年度第1回のアカデメイアは食べることと哲学の融合であった。宮沢賢治、ブタのPちゃん、アンパンマンなどの具体的な例から食べることとは何かという問いについて考察した。

【生徒感想抜粋】
生き物をむやみに殺さないという倫理と、生き物を大量に殺す「食べること」の間に大きな矛盾があることに気づき、当たり前と思っていたことも違う切り口から考えることでとても大きな意味をもつ。