第71回入学式式辞

 梅雨に入りました、入学式には桜がつきものですが、今日は紫陽花がきれいに咲いています。

 先ほど、入学を許可された320名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本日、やっと直接祝福できました。これからどうぞよろしくお願い致します。

 本日は、これから3年間、保護者の代表として学校を支えて下さるPTAの役員の方、そして、顧問の先生と共に部活動で皆さんを指導してくださる指導員の皆さんに、来賓としてお越しいただいています。皆さん、いつもありがとうございます。今日からいよいよ、部活動も再開です。学校休業中は、在校生も様々な思いを持って家で過ごしていたと思います。技術はもちろん、精神的にも寄り添っていただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。また、本日は、お越しいただけなかった保護者の皆さま、おめでとうございます。本日正式に入学式を上げることができました。これから3年間、本校の教育活動にご理解とご支援のほど、よろしくお願い致します。式の模様は、後ほどビデオ配信の予定があると聞いていますので、そちらをご覧いただけたらと思います。よろしくお願い致します。

 さて、この新型コロナウイルス感染症について、皆さん、様々な感情が渦巻いていると思います。保護者の方が休業を余儀なくされたり、逆にエッセンシャルな仕事で、危険な環境の中、なかなか家に帰れなかったり、一人ひとり違った環境で、でも同じように厳しい状況で我慢をしておられたと思います。皆さん自身も、不自由を強いられ、夢見ていた高校生活に一向に入れない状況に、苛立ったり苦しんだりされただろうと推察いたします、大変でしたね。でも皆さんは一人ではありません。今日から少しずつ、取り返していきましょう。

 皆さんにお会いしたら、お伝えしたかったことがあります。実は、4月のHPにも書いたのですが、320名の皆さんが受験時に書いた自己申告票についてです。しっかり読みました。中学で頑張ったこと、得たこと、将来の夢、みな一生懸命に書いてくれていました。

 中学で頑張ったこと。数学、英語、生徒会、バスケット、バレーボール、テニス、美術、吹奏楽、卓球、ハンドボール、空手、柔道、剣道、バトントワリング、陸上、水泳、野球、ソフトボール、習字、ダンス、鼓笛隊、体育大会、合唱コンクール等、皆が頑張っている様子が生き生きと書かれていました。いい経験をしています。

 中学で得たもの。努力の大切さ、仲間の大切さ、挑戦すること、思いやること、コミュニケーション、団結すること、皆、成長したんだなと嬉しくなりました。

 将来の夢も書かれていました。救命救急の看護師、こども園の先生、国語の教員、小学校の先生、警察官、助産師、薬剤師、ゲームクリエイター、シューズの開発、ボクシングの世界チャンピオン、政治家、芸能人など。ぜひ夢をつかんでください。勇気が沸きました。

 その夢を実現していただくために、登美丘高校は今年度、学校経営計画を刷新し、育成する生徒像を明文化しました。

「Challenge and Hospitality」

 登美丘高校が育むのは「主体的で挑戦心にあふれ、且つ、思いやり・気配りのできる生徒」です。今に満足するのではなく、上手くいく保証も前例もなく、今の自分の力では届かないかもしれないけれど「挑戦してみたい」という思いを全力で支援し、新たな挑戦をすることで、時には壁にぶつかる辛さや、自分の弱さを感じる経験を通して、誰もが持つ弱さを受けとめ、他者のことを掛け値なく応援できる優しさを育んでいきます。

 その強さと優しさを併せ持つことができれば、皆さんが自己申告で書かれた夢が実現しやすくなると考えています。

 私にも夢があります。 登美高生は「強いから優しい」と世の中から言ってもらえることです。まず「挑戦する強さ」そして、「人を包む優しさ」を持ってくださいね。

 実は今回の休校期間、登美丘高校の教職員も、そして生徒の皆さんも新しいことに挑戦してくれました。まず、オンライン授業。今まで学校に毎日生徒が登校する。語り合う、教室で授業するという当たり前の事ができなくなったので、どうしたらみんなに学習を提供できるか先生たちで話し合いました。緊急事態宣言の一週間後、二人の先生が授業動画を作成されました。それから5月末までの一カ月半で、数えると75本の授業動画が皆さんに提供されました。そしてGoogleClassroom、これも「やりましょう」と決めてから10日間で、957名の生徒全員が、オンラインClassに入ってくれました。今日も、健康状況を送信してくれていますね。今週からはHRclassだけではなく、各科目の授業classも出来上がります。これで皆さんは、担任の先生だけでなく、「この授業がわかりません、テスト範囲はどこですか?」などスマホから自由に様々な先生に質問・やりとりができるようになります。スマホを通じて、クラス・科目の先生と繋がっている。これは今までになかったことです。他にもみなさん、手洗いがしやすくなるように、入試の時にはなかった、水道の蛇口が回転式でなく手首で押して開閉できる形に変わったり、明日からOPENする食堂も、密を避けるために、厨房のアイスコーナーではなくセブンティーンアイスの自販機が入ったり、小さいですが新しい挑戦が次々と起こっています。

 また先輩たちも新入生の皆さんにメッセージを送りたいと考えて、そちらにいらっしゃるアカネさん作成のダンス部員全員参加の「おうちダンス」や、後ろにいてくれている吹奏楽部先輩たちの、あいみょんが感動したというリモート演奏、生徒会執行部が作ってくれた学校説明動画など、計18本の動画が、HP上で披露されました。これは大阪府の他の公立高校でも話題になっています。

「挑戦する強さがあるから、人を包み込む優しさが持てる。」

 コロナは本当にしんどくて今もしんどい、失ったものも果てしなくありますが、これを機に、教職員も生徒も、思いやりのこもった挑戦ができています。得たものもたくさんあると考えています。

 これからも、例えば第二波、そして長い人生のうちには、考えも及ばない困難が、降りかかってくることもあると思います。そんなときでも、ここにいる仲間と共に、Challenge and Hospitalityの精神で乗り越えて参りましょう。

 最後にご来賓の皆さま、今ここにはおられない保護者の皆さま、この3年を過ごすと、いよいよ登美丘高校は、創立100周年を迎えます。今回の困難を乗り越え、共に素晴らしい100周年を迎えられますよう、ご協力をお願い申し上げ、また皆さまのご多幸をお祈りし、式辞といたします。

令和2年6月15日

大阪府立登美丘高等学校長 山本哲哉