平成10年度、「大阪と科学教育」  

簡単な再生紙づくり

−ペットボトルとビー玉などを利用する方法−

津田佐惠子(豊中市立原田小学校),伊丹芳徳,利安義雄


1.はじめに
 子どもたちは実験やものづくり教材に大変興味を示し,意欲的に授業に取り組む1).ここでは、ものづくり教材として「再生紙づくり」を取り上げ,小学校低学年を対象とした同教材の開発とその実践例を報告する.環境教育でのリサイクル教材の一つとして,牛乳パックを原料とした再生紙づくりがよく紹介されている2).しかし牛乳パックを用いる従来の方法では,パック紙表面のプラスチック膜の除去に手間がかかること,ミキサーが必要なことなど,低学年の教材として利用しにくい内容が伴った.また,身のまわりには牛乳パック以外にも不用になった紙類が多くあり,むしろ,これらを利用する再生紙づくり教材が,リサイクルなどの環境教育の実を上げるものになるだろう.そこで,身のまわりにある,不用になった紙を原料として,薬品類や熱源や電気機器を用いず,もっと簡単に安全に子どもたちが楽しく再生紙づくりを体験できるような教材を開発した.また,生活科の授業で作った再生紙を国語や図画工作で使う授業計画を立て,実践した.


2.実験
(1)再生紙づくり
 再生紙原料として,不用になったプリント用紙(市販の再生中質紙)を用いた.原料比較のため牛乳パック,トイレットペーパーも使った.プリント用紙は粉砕時間を短縮するため,あらかじめシュレッダーで幅2mm,長さ20mmに細断して用いた.この細断紙約5gを500mlペットボトルに入れ,紙を効率よく粉砕するため,ビー玉約125g(約20個分)(あるいは観賞魚水槽用小石や小鉄球を同重量分.以下,これらを「粉砕剤」と呼ぶ)を入れ,水約200ml(牛乳びんを計量器として利用)を加えた.約20分間激しく振った後,内容物を紙すき用容器に移し,「粉砕剤」を除き,必要に応じてPVA糊や色素を添加した.紙すき操作は参考文献2)に沿って,水を紙すき用木枠が浸るまで加え,よく撹拌して行った.むらのないようにすき上げた紙は下敷き(プラスチック
板)に載せ,紙すき用金網の上から乾いた雑巾を押し当てて水気を取った後,一昼夜自然乾燥した.

(2)再生紙の紙質の比較実験
 得られた再生紙について,原料紙の種類,粉砕方法,PVA糊などの添加剤の有無別に,紙強度,紙繊維の状態,水性サインペンのにじみ方,紙の色合い,手ざわりなどを比較した.紙強度は幅0.5cm,長さ3cmの短冊状に切った再生紙を,200g用バネばかりで破断するまで静かに引っ張り,破断した時の値(3回測定の平均値)で表した.にじみ方はサインペンを3秒間押し当て,色の広がりを測った.


3.結果
(1)紙質の比較
 3種類の原料紙から得られた,PVA糊などの添加剤を入れていない再生紙の紙質を表1に示す.本方法による再生紙の紙強度は牛乳パックをミキサーで粉砕して作った再生紙に比べて若干低目で,にじみ易いなどの性質があることが分かった.



(2)添加剤の効果
 PVA糊を内容物(紙+水)の5重量%添加した再生紙の紙強度は,3種類の原料紙でいずれも200g以上となり,紙質もほぼ同等となった.プリント用紙からの再生紙はくすんだ色だが,白色水性絵具5gを水1.5に溶かした着色水を用いた紙すきで,牛乳パックの再生紙と同等の色合いになった.


4.授業展開例
第2学年生活科で,以下のように行った.
(1)単元名 身近な紙を使って紙すきを楽しもう.
(2)単元目標 身のまわりの道具を利用して,不用になった紙から再生紙を作り,楽しく使う.
(3)指導案



(4)子どもたちの様子
 子どもたちはお互いに実験条件についてアイデアを出し合い,相談しながら自主的に決めて行った.子どもたちは持参した道具で喜々として再生紙づくりに取り組み,葉書などに利用することで,リサイクルなどを体験を通して考えることができた.






5.まとめ
 不用になったプリント紙を原料に,ペットボトルとビー玉などを利用して作った再生紙の紙質は,従来からの牛乳パックを用いた再生紙2)とほぼ同等であった.本教材を生活科で取り上げ,子どもたちに紙のリサイクルを楽しく体験させた.また,作った再生紙を他教科でも使うことで,子どもたちの創造性や学習意欲を引き出すことができた.

引用文献
(1)大阪府教育センター,理科は好き?-理科の学習に関する実態調査と展開事例-,大阪府教育センター(1996).
(2)左巻健男編,理科おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル,東京書籍(1995),p178-181.