平成30年度 SGH事業報告書
巻頭言より
いまここに SGH 事業を終えるにあたり、万感の思いがある。平成 28 年 9 月の中間評価で、全国 56 校中、特段に厳しい評価を受けた 2 校のうち 1 校が本校だったからである。
【評価】
「このままでは研究開発のねらいを達成することは難しいと思われるので、助言等に留意し、当初計画の変更等の対応が必要と判断される。」
【講評】
○大学と連携して取り組んでいる生徒の伸長に係る研究成果の検証に関して,調査に基づく分析が不十分であり,今後,これらの分析や生徒の感じた問題点等に基づくカリキュラムの質を高めるような改善が必要である。
○それぞれの取組の連携が不十分で,全体として評価の方法が確立していないため,どのような成果があったのか見えず,工夫が望まれる。
○数々の活動を実施しているように見られるが,構想調書に書かれている課題研究(4つのアプローチ)が実施されていないようである。構想内容や当初計画と実施内容に関する確認,また生徒の意識調査についてアンケート調査等で分析する等,取組全体の改善が必要である。
厳しい評価に呼応するように予算が大幅に削減され、選択と集中が迫られる中、我々自身が、まさに「課題研究」に取り組んだ 2 年半であった。
課題研究は、教育学的には探究的な学習に位置づけられる。探究的な学習では、【課題の設定】➡【情報の収集】➡ 【整理・分析】➡【まとめ・表現】という4つのプロセスがスパイラル状に繰り返され深まっていかねばならない。また、与えられるのではなく、自ら課題を設定するという点が大きな特徴でもある。我々は、評価の講評を踏まえながら、次の4点を実践課題に据えて、具体的な実践とリフレクションを真摯に繰り返してきた。
- 課題1 事業全体の枠組を分かりやすく示し、各取組の概要、意義とそれら相互の関連を明らかにすること。
- 課題2 評価の枠組を明示し、その上で、アンケート調査や生徒の振り返りを有効に活用して検証すること。
- 課題3 各取組においては、「何をしたか」、そして、「その結果どうなったか」を丁寧に記述しておくこと。
- 課題4 【まとめ・表現】のプロセスを充実させるため、生徒が発表する機会、第三者に評価される機会を増やすこと。
やってみて分かったことは、「やってみな、分からんやん!」ということである。口であれこれ言ったところで、何事もやってみないと分からない、やってみて初めて分かることがたくさんある、ということである。 例えば、今年度の中間発表会でのこと。「しっかり質問しよう!」をテーマにすると、質疑応答がエラいことになった。指導助言の先生方と生徒が入り乱れて、質疑が引きも切らず、そのせいで予定が1時間もオーバーした。運営側としては大失敗、しかし、指導助言の先生方からは、「発表もそれなりによくなったが、それ以上に、質疑応答の内容がすばらしかった、大学レベル」と褒めていただけた。北野生の面目躍如である。
また、今年は2年生の発表の場にできるだけ1年生を参加させた。すると、「学内留学」や「高校生公開討論会」に参加した 1 年生の主体性とパフォーマンスが向上した。1、2 年生の切磋琢磨。部活では当たり前だが、探究活動でも実証できた。
この報告書は、上記4つの課題に、この間、本校がどのように取り組んできたかが分かるように編集した。必然的に大ボリュ ームになったが、本校の SGH 事業の、いわば、ポートフォリオとしてお読みいただき、助言等いただけたら幸いである。中間評価を 5 段階で示すと「2」。これが、「3.5」にはなったのでは、というくらいの自負はある。
課題研究の真髄は、【まとめ・表現】のプロセスに至ることで、また、新たな課題が生まれてくることである。SGH 事業で得た知見を活かし、新たに生まれてきた課題と正対して、来るべき、Society5.0 で活躍できる人材の育成に、今後とも取り組んで参りたい。
大阪府立北野高等学校
校 長 恩知 忠司