三年生のみなさんは、いよいよ高校を出て、社会に出ていく自分について、具体的に考えるときが来ましたね。就職する人だけではありません。進学を考えている人も同じように「社会」に出ていくという意識を持つ必要があります。
具体的に言いましょう。 一つはここでのあなたの選択は、もはや大人としての選択とみなされる―その意識を持て、ということです。
このゲートを越えていくためには、社会的に決められているルールに則った行動をとらなければなりません。出願の条件、必要な書類、書式、締め切りなど、すべて文字通りそのルールを守らなければいけません。誰かがやってくれるのではないですよ。あなたが自分でやるしかない。ギリギリで提出した書類に不備がありました――はい、そこでゲームオーバー。試験に遅刻しました、不正行為をしました――大人としてのあなたの責任が問われます。
もう一つ。この選択はあなたがこの「社会」で生きていくための大きな方向性を決める選択だということ――その意識があるかということ。
じつは「社会」の側でもあなたを待っています。職場も、学校も、あなたに向かって扉を開いています。あなたは「社会」にとって必要な人間なのです。一方、あなたにも志があるでしょう。しかし、そのときその志と思っているものが、目先の欲望によって浅薄に色づいているだけのものであるなら、「社会」はあなたをその程度の存在としてしか見てくれないでしょう。
「社会」にも志があるのです。「社会」の志とあなたの志が幸福な出会いを果たすことができるように、あなたの志と実力を高めていてくことが、高校生活の課題です。
「社会」の志って? あなたはもしかしたら、大人も偏差値がどうとか、どれだけ儲かるかとか、そんな価値観で生きてるんじゃないか、と思っているのではありませんか。いいえ、それは間違いです。
ここから先、新たに学び始め、新たに働き始めればわかると思いますが、どの学びもどの働きも、自分がその中で生きている「この世界をほんとうによくしていこう」という志に支えられています。
これまで学んだことも、今学んでいることも、これから学ぶことも、すべてがつながっていることに気づいていくことでしょう。また、どんな働きも、その一つ一つの働きが「社会」にとって大きな意味があり、どれ一つ欠けても世界は成り立たないことに気づくでしょう。例えば、今日のあなたの食事が満たされるために、どれだけの生産やそれを支える知識や人間や、それらを包み込む健全な環境が必要だったか、少し想像してごらんなさい。
私たちは、自然と人と社会と、すべてがつながった連鎖の中でようやく生きています。志とはその生をより幸福なものにしようとする意志のことです。働くことの本当の意味とは、自分と周りの人を幸福にするための営みです。
あなたのすべての学びと選択が、その幸福への志に結実するように、この本は編まれています。具体的なことは、この本を参照し、また先生に尋ね、進路指導室を気軽に訪れて、確実な歩みを進めていってくださいね。金剛高校の教職員、全員で応援しています。