一学期終業式(式辞)

式辞のテーマは、「その瞬間からのベスト」です。

令和2年一学期終業式 式辞
6月からの学校再開、15日の入学式
過去に例がないことが続いていますが、8月7日の終業式も初めてではないかと思っています。
学校は始まりましたが、今また第二波が来て、昨日現在で府立学校でも15校で罹患者が確認されている状態で、緊張の日が続いています。

その中でみんな、本当に明るく頑張ってくれていて、その姿に勇気をもらっています。ありがとうございます。
今日は、ちょっと昔話にお付き合い下さい。
 今からちょうど30年前、1990年 平成2年。私は、リクルートという会社で新卒採用の営業をしていました。個人としては29歳、前年に長女が誕生、家内のお腹に長男が入っている年恰好。1990年はバブルの絶頂、会社の目標はうなぎのぼり、一方で教科書にも載ってるリクルート事件の真っ最中で仕事は大逆風。今で言うと「モリカケ問題」のような採り上げ方をされているときでした。「モリカケ」でも近畿財務局の赤木さんという方が自殺されましたがリクルート事件でも竹下首相秘書官の青木さんという方が自殺して、連日ニュースの最初に出ており、会社は大きくうめいているときでした。そんな中で、1000人からいる営業マンの中で、当時13都銀と言われた都市銀行の一つ、埼玉銀行を担当することになったんです。他の12都銀は、広報企画部という大手企業専門の部署が担当、僕は埼玉の支社の人間で、警察で言うと警視庁に対する所轄みたいな部署からの担当で、「そんなやつに都市銀行の担当ができるのか」という雰囲気の中での仕事でした。半沢直樹の原作は「俺たちバブル入行組」ですから、都市銀行という半沢直樹だらけの業界の会社を担当することになって、緊張していました。
 営業は苦戦しました。今までそんな大手を担当したことがなかったので、提案の仕方が全然違っていて。試行錯誤した挙句に、当時の埼玉銀行のイメージキャラクターは緒形拳と鷲尾いさ子という人がいて、彼らの対談企画を前面に押し出したプレをして、半年かけて、やっとこさ企画が通って、11月の3連休明けに契約書を交わすことで合意、1200万でした。嬉しいというより心の底からほっとしたのを覚えています。しかし、本当なのですが、「やります」と人事の方が電話で言ってくれたその金曜日の夕方、ニュースで埼玉銀行と協和銀行の合併が報じられました。当然銀行は大騒動になって全く会えなくなって、受注は吹っ飛びました。すごく苦労したので、その瞬間、信じられなくてそれは悔しかったです。後に人事の担当も「全く知らなくてすみませんでした」とのことでしたが、合併劇というのは人事でも直前まで知らないんだと知りました。 「やられたら、やり返す」のはテレビですが、共和埼玉銀行は、その後、あさひ銀行、りそな銀行と合併に合併を繰り返していってやり返すどころではありませんでした。
 この思い出、思い出としては苦いのですが、その後は、「計画に絶対はない」という事を身を持って知って行動することができるようになったので、時間はかかりましたが結果としては「良い経験」になりました。
 振り返って大切と思ったのは「結果はどうなるかわからないものだけどどうなろうと、準備にベストを尽くすことと、ご破算になるようなことがあっても、その瞬間からのベストをまた追及するしかない事」です。その後も30年の人生の中で、いきなり計画がご破算になることも数多くありましたが、自分にとってのおまじないの言葉「その瞬間からのベスト」は口癖になっています。
人は2種類あります。困難に当たった時、「萎える人」と「燃える人」です。どうせなら困難になればなるほど「燃える人」でいた方がいいです。
 コロナの時代、今みんなが頑張っていることも、最後に何が起こるかわかりません。誰かが、「クラブの目標を今年は優勝としましたが、挑戦さえできなかった」と書いていました。今も、そしてこれからもそういう事が当たり前のように起こると思います。昨日の吹奏楽部もそうでしたし、週末は、女子バスケットボール部が引退のかかった大会に出場すると聞いています。また、ハイブリッド学校祭に向けて、一生懸命準備をしてくれている仲間がいます。だけど学校祭ができるという保証は実はありません。さらにさらに、自分の人生を決める受験。努力に努力を重ねて受験に挑まれるでしょうが、本当に受けられるかどうかだって、実はわかりません。
 だけど大切なのは、「当たり前でないことが、起こるかもしれない」という事を知っておく事、と、それでもなお「できると信じて全力を尽くして準備をする」ということです。さらに、自分の身が崩れるような出来事がもし起こったとしても、「その瞬間からのベスト」をまた進んでいくことです。それをできる人は、長い目で見ると、必ず事態は好転していきます。間違いありません。
長々と昔話をしてしまいました。
本当は伝えたいことは3点ありました。
一つは、どこで感染するかわからないので、自分の身はしっかり守る。3密を避ける。うがいと手洗いをしっかりする。マスクをつける。
ということ。
二つ目はどこでどう感染するかわからないので罹患者を責めないということです。
そして今の話です。部活・学校祭・受験、どんでんがえしで台無しになる可能性もありますが、それでもなお全力で挑んでほしいし、台無しになってもなお、前を向いてベストを探ってほしいということです。
できたら微笑んで。
「強いから優しい」、登美高生でいて欲しいと思います。
では、今年は本当に短い夏休みです。少しでも身体を休めてお盆明け、またお話できることを祈っています。
良い夏休みをお過ごしください。
山本哲哉