第69回 卒業証書授与式 式辞

令和3年3月1日 卒業証書授与式が挙行されました。

困難な1年を乗り越えた69期生さん、よく頑張りました。お幸せに!

【令和2年度 卒業証書授与式 式辞】

 昨年はうるう年だったので、2月が29日までありました。一年前の2月29日の本日、当時の首相が、全国すべての学校休業を宣言しました。皆さんの大切な高校生活の、中でもきわめて重要な3年生の1年間の苦難の始まりでした。語りつくせないほど、様々なことがありました。だけど、どんな年でも春は来ます。本日、めでたく卒業の日を迎えることができました。おめでとうございます。思いを胸に、式辞を読ませていただきます。

【式辞】

 本日ここに、大阪府立登美丘高等学校 第69回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、保護者の皆様にはお忙しい中、ご出席を賜り、誠にありがとうございます。ここにめでたく、お子様が栄えある卒業をお迎えになりましたこと、心よりお祝い申し上げます。この栄誉は、保護者の皆様が、お子様を励まし、温かく育んでこられた賜物であり、ご覧のとおり、お子様は大変頼もしい若者に成長しました。この間に寄せられました本校へのご支援に対しまして、また、このたび卒業記念品として大型冷風扇を寄贈していただき、重ねてお礼を申し上げます。熱中症の予防として、安心安全な高校生活が送れるよう大切に使わせていただきます。ありがとうございました。

 さて、ただ今卒業証書を授与しました317名の卒業生のみなさん、改めておめでとうございます。冒頭に話しましたように、苦難の一年でした。3月から学校休業が始まり、4月には一度目の緊急事態宣言の発出、ステイホームの3か月を過ごし、学校がフルで再開されたのは実に6月中旬でした。集大成の時期の部活動は中止、大会出場はもちろん、引退試合もできない。さらに連絡の仕方に難航して、一体自分は3年何組、クラスメイトは誰なのかもわからない時期もありました。世間では9月卒業論が巻き起こり、不安でいっぱいだったことと思います。

 授業が再開されてからも、夏休みはたった一週間、土曜授業も8回もあり、そしてコロナ陽性者が確認されると学校は3日間の休業をするというルールのもと、4度、突然の学校休業を経験しました。

 誠にもって、「散々な一年間」といえる年だったかもしれません。だけど、反面、良いことや大きく成長を感じることのできた一年でもあったと思っています。学校休業中には、まだ見ぬ新入生に向けて、例えば生徒会執行部、学校生活や校舎、食堂の説明動画を作成してくれたり、例えば部活動、学校とリンクを張った公式ツイッターで新入生勧誘動画を次々とオープンしてくれたり、ダンス部はおうちダンスの動画披露で日本中を元気づけたり、吹奏楽部のリモート演奏では、あいみょんさんが感謝とともにリツイートしてくれて一晩で7万回も再生されたりしました。学校再開後は、ハイブリッド学校祭や、部活動の大会、自主公演や引退公演など、昨年までなら、計画された行事や活動は、あって当たり前、その上でどのように力を尽くすかを考えるのが、「頑張る」ということでしたが、この1年は、まず実施できるかどうかを考え抜く、そして計画しても、その前日まで、本当に開催できるのかがわからない中、それでもなお、準備に全力を尽くし、さらにその上でやり抜くという経験をしました。これは、身体的にも、特に精神的にも大変なことではあったのですが、ここに挑戦し、やり切れたことが、実は人生を切り開くためには欠かせない力の鍛錬になったと思っています。本当によく、頑張りました。

 計画的偶発性理論と言われるものがあります。「個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定される」という理論で、私自身の半生がそうなので、大好きな理論です。20年前に提唱された理論ですが、まさに今年にぴったりだと思っています。読みますね。

「未来に何が起こるのか予想することは難しくなっています。社会や企業の状況は、個人の意思でコントロールできるものではありません。キャリアに関しても、外的な要因で計画したとおりにいかないことも珍しくないでしょう。そのような時代背景で、『何をしたいか』という目的意識に固執すると、目の前に訪れた想定外のチャンスを見逃しかねません。計画的偶発性理論では、成功するキャリアを築くために、偶発の出来事が起こるのを待つのではなく、みずから引き起こすべく行動することがポイントとなります。 具体的には以下の5つの行動特性を持つ人にチャンスが訪れやすいと考えられています」というものです。

チャンスを引き寄せる5つの行動特性をお伝えします。今年度、皆さんの周りに起こったこと、自身が挑戦したことを思いだしながら聴いてください。

その1好奇心・新しいことに興味を持ち続けること

その2持続性・失敗してもあきらめずに努力すること

その3楽観性・何事もポジティブに考えること

その4柔軟性・こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとること

その5冒険心・結果がわからなくても挑戦すること

どうでしょうか。正解がわからないとき、自分ではコントロールができない事柄があったとき、「好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心」 大切だと思いませんか。

 これが、コロナという、とんでもない歴史を生き抜いた皆さんが身に着けた力です。

これが、一年間伝え続けた、「登美高生は、強いから優しい」という力です。

 しんどい一年間でしたが、それを乗り越えた皆さん、この時代に高校3年生だったこと、いくつもの正解のない挑戦を続けたことを誇ってください。皆さんは、強くなりました。

 保護者の皆さま、たくましく成長されたお子様の姿に、皆さまの胸にも熱き思いがあふれていらっしゃることと存じます。69期生は、これから大人の世界、厳しい世界に旅立ちますが、この一年を経験したお子様は、これからも訪れるだろう人生の試練にも、果敢に立ち向かってくれると信じています。卒業生の皆さんのご活躍、ご多幸を祈ります。

 最後に、2年後、2023年に本校は創立百周年を迎えます。『強いから優しい』皆さんとどこかでお会いできること、活躍を耳にすることを楽しみにして。卒業式の式辞といたします。頑張ってください。

令和3年3月1日 

大阪府立登美丘高等学校 

校長 山本哲哉