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学校長式辞


平成29年度 2学期始業式


 肌を突き刺すような真夏の激しい日差しから、朝晩少しずつ涼しさを感じるようになってきました。
 平成29年度2学期始業式を迎えるにあたり一言挨拶を述べます。
 まずは、本日大きな事故もなく、皆さんが元気に日焼けした顔で再びこの場に戻ってくれたことを喜びたいと思います。命どぅ宝(命こそ宝)という言葉が沖縄にありますが、一人ひとりが健康でいることに感謝し、一日一日大事に生きてください。
  さて、去る7月20日、私は、藤井聡太棋士や野球のイチロー選手、また大学時代の私自身の英語学習法について触れ、何事も継続こそが大事であり、何かを習得し、力を伸ばすための唯一の方法であることを示しました。そして、みなさんもこの夏季休暇の間、何か一つのことに継続して取り組んでみませんかとお話ししました。今日は、私がこの夏にしたこと感じたことをお伝えします。
 私がこの夏に継続しておこなったことは、映画鑑賞です。人生半ばを過ぎ、さまざまな労苦を経た今、これまで観たことのない映画や、繰り返し観てきた映画を鑑賞してみれば、何か新たな発見があるのではないかと思ったからです。今日はその中から一つの作品についてお話します。
  作品名は「たそがれ清兵衛」、原作は藤沢周平さんで、映画の主役は真田弘之さんと宮沢りえさんです。舞台は、幕末の海坂藩(東北地方の小さな藩)で、主人公の井口清兵衛は、その藩の貧しい平侍です。彼は、剣の達人でもあったのですが、結核になった妻を貧しさゆえに十分な治療もしてやることができずに若くして亡くしてから、武術の鍛錬もやめ、老いた母親の世話と残された幼い二人の娘の成長を見守りながらひっそり暮らしていました。毎日お城に上がっては事務仕事にいそしみ、たそがれ時になると付き合いも一切せず一目散に帰宅し、日のあるうちは畑を耕し、暗くなってからは竹細工の虫かごを作る内職仕事に精をだすという生活をしていました。つけられたあだ名は「たそがれ清兵衛」。そのような彼はある日突然お城に呼び出され、派閥争いに負けたある武士を主君の命により明日のたそがれ時までに殺すよう命じられました。何の恨みもない立派な人を討たなければならない。断れば自分が切腹しなければならない。武士の理不尽さと貧しい下級武士の切なさを描いた名作です。大好きな作品であり、これまでに少なくとも10回は観てきましたが、今回私の心に残った場面は、これまであまり印象に残らなかったシーンでした。それは、内職仕事で竹の虫かごを作る清兵衛の横で、お寺の師匠から学問を習い始めたばかりの長女が、「論語」を何度も何度も音読するシーンでした。
 その場面で、「お寺のお師匠さんがこれからは、おなごも学問せねばなんねぇっておっしゃるだが、なあおっどう、針仕事習って上手になれば着物や浴衣が縫えるようになるだろ?でも学問したらいったい何の役に立つのだろう?」娘は、唐突に清兵衛に質問するのです。いったい清兵衛はなんと答えるだろう?私は息をのみ、彼のせりふを待ちました。少し考えてから清兵衛は次のように答えました。
 「確かに、学問は針仕事のように何かが目に見えてできるようになるということはないが、自分の頭でものを考えることができるようになる。そうすれば、この先世の中がどう変わっても、考える力を持っていさえすれば、なんとか生きていける。これは男もおなごも同じだ。」と答えました。幕末の空気が日本中に広がり始め、この先国はどうなっていくのだろう?そのような時代でもあり、清兵衛はこれからの時代に長く生きていくであろう娘に対し、学問することの意味と、女性にも等しく学問が必要であることを簡潔に説明しました。納得したのであろう娘は、また論語の音読を再開するというシーンでした。
 私も、これまで勉強する意味を次のように話してきました。「勉強することによって、自分の頭で考え、判断し、生きていくための力がつく。だから勉強しなければならないのだ」と。藤沢周平さんの考えは私と同じだと、私はこの時感じました。
  もう一つこの映画で紹介しておきたいことがあります。この作品のテーマ曲は、井上陽水さんの「決められたリズム」という曲で、彼の作品の中で、私が最も好きな曲です。学生時代、毎朝同じ時間に起こされ、決められた服を着さされ、決められた道で学校に通う日々。ふざけ合い、叱られ、立たされ、笑われ、一人取り残された日。許され、ほめられ、愛され、選ばれ、白いラブレターを渡された日。そして、紙を配られ、試され、ピアノに合わせて歌わされた日々。そのような、誰もが経験してきた学生時代を切ないメロディーで描くこの曲が映画のエンディングで流れます。幕末の武士も、現代の学生も同じようなもの。決められたことに従い、生きていくしかないという現実と、本当にそれで良いのか?良かったのか?という問いかけがこの曲には込められています。ルールを守らなくても良いと言っているのではありません。何事も、受け身であってはならない。自らの意志で能動的に生きるべきではないのか?と歌っているのです。「決められたリズム」ではなく、「自分で決めたリズム」で生きなくてはならないと言っているのではないでしょうか?
  みなさんも、今一度、自分の毎日は本当にこれで良いのか?勉強に自ら取り組めているのか?という問いかけをし、それぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける今年度後半になることを期待し、本日の式辞とします。

平成29年8月28日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成29年度 1学期終業式


 梅雨も明け、真夏の太陽が容赦なく照りつける季節となりました。
平成29年度1学期終業式を迎えるにあたり、一言挨拶を述べます。
新たな学年・新たなクラス・新たな担任のもとスタートした新学年の三分の一が過ぎました。
  笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける1年間となることを期待していると4月の始業式でお話ししましたが、どうでしたか?
  1年生は、高校という新たな環境に慣れましたか?中学と高校の違いがなにかが分かってきましたか?2年生は、後輩をもつ立場となり、先輩らしい自覚と自信ができましたか?3年生は、体育大会に燃え、次は文化祭だ!という気持ちと、自分の進路目標達成のための努力との両立に忙しくしていることでしょうね。それぞれの立場で、この夏全力を尽くしましょう!
さて、振り返ってみると、今年度の1学期には、いろいろなことがありました。中でも、注目をされたのが、中学生棋士藤井聡太4段がプロ棋士としてデビューし、いきなり29連勝をしたというニュースでした。将棋には関心もなく、ルールすら知らない人も多いとは思いますが、少しこの話題に触れます。そもそもあなたたちより年下の中学生がプロ棋士になること自体、まれにみる出来事です。ましてや、いきなり29連勝するなど天才にしかなし得ない偉業であることは間違いありません。しかし、まだ中学生に過ぎない藤井4段がなぜあれほどまでに強いのか?ベテラン棋士が予想もできない一手で不利な形勢を一気に逆転する驚きの発想が強さの原因のようなのですが、一体この力を彼はどのようにしてみにつけたのでしょうか?生まれつきの才能だけでこんなに強くはなりません。そのキーワードは詰将棋にあるそうです。幼いころから取り組んできた一万を超える詰将棋で培ったあらゆるケースに対応する創造的な力、それが彼の強さの秘密なのです。詰将棋とは、ある終盤の局面をいきなり与えられ、持ち駒も指定されています。この局面をいかにして要領よく勝ち抜けるかという修羅場を潜り抜ける鍛錬をつねに繰り返してきたのです。40歳を過ぎてもなおメジャーリーグで現役を続けるイチロー選手が幼いころから近所のバッティングセンターに通い詰めていたことを思い出しました。バッティングマシーンが投げるボールを相手に来る日も来る日も練習して培った力に匹敵するのではないでしょうか?毎日毎日何年も何年もあきらめずにひとつのことに取り組むことこそ信じられないような偉業を達成する力をみにつける唯一無比の秘訣なのではないでしょうか?そして、この秘訣は、野球や将棋だけでなく、勉強にもあてはまるのではないでしょうか?
 私は、大学1年生のある日のできごとを思い出しました。私はある大学の文学部英文学科に進学しました。大学入学後、せっかく勉強してきた英語の力をさらに伸ばしたいと思い立った私は、アメリカ版のTIMEという雑誌を定期購読し、読んでみることにしました。アメリカでもっとも権威のあるインテリが読んでいる雑誌です。一応大学受験のための英語の勉強はし、それなりに英語には自信があった私でしたが、TIMEという雑誌にその根拠のない自信を根底から覆されました。最初の1ページを読み、意味をほぼ理解するまでに3日を要してしまったのです。見たこともないような単語がたった1ページの中に100語以上あり、言い回しも複雑で、そもそも内容自体が極めて難しい話題だからです。教科書や参考書では見たこともない本物の英文に私は圧倒されました。さて私は、この日より、毎日毎日このTIMEとの格闘の日々が4年間続きました。大学の一般教養、専門教養たいていの授業の単位はわりと簡単に取れましたが、TIMEだけはなかなか攻略できませんでした。しかし、大学4年の終わりころ、ようやくこの雑誌TIMEを私は気楽に手に取りななめ読みをしてもほぼ意味を取ることができるようになったのです。もちろん私が賢いからではありません。凡人であるがゆえに、4年もかかってしまったのです。しかし私のこのことで、一つのことに没頭し、継続さえすればたいていのことは克服できると、勉強の秘訣を大学入試が終わって4年もしてからようやく気付いたのです。みなさん、物事を上達させる唯一の方法は、あくなき繰り返しの努力しかないということではないでしょうか?この夏休みに、何か一つに没頭してみませんか?できたらバイトやゲームではなく。
「命は宝、言葉は宝石、家族は生き甲斐、仕事は生きるすべ、友は道しるべ、読書は灯台」
生きていることに感謝し自分を大事にしてください。長い夏休み期間は、多くの誘惑と危険が待っている期間でもあります。ここにいるみんなが元気な顔で2学期の始業式に集まってくれることを祈ります。事故にはくれぐれも気を付けてください。思い出の夏、人生最高の夏休みとなる人が一人でも多くいることを祈りつつ、一学期終業式の式辞とします。

平成29年7月20日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成29年度 1学期始業式


 桜の花が満開となり、木々の新緑が目立つ季節となりました。
 本日は、平成29年度1学期始業式を迎える佳き日です。
 2年生3年生の皆さん進級おめでとうございます。
 新たな学年・新たなクラス・新たな担任のもと新学年スタートの日です。
 笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける1年間となることを期待します。
 私は、一昨年度4月から校長という立場で皆さんの成長を見てきました。今日よりは、先輩であった6期生の皆さんは、もういません。7期生のみなさんが最上級生となりました。8期生のみなさんが中核である2年生となりました。午後には、9期生が下級生として入学してきます。それぞれの立場で、心機一転新たなスタートを切る一日としてください。
 さて、生徒の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。
 まず、3年生の皆さんは、最上級生として2年生、新入生の模範となる先輩となってください。
 進路目標に向けて、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって、努力する充実した学校生活を送ってください。目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。7期生の皆さんは、そんな憧れの先輩になれる力や可能性をもっています。頑張ってください。今年一年間、私はさまざまな場面のあなた達を見に行きます。頑張っているか、へこたれているか、悩んでいるか、充実しているか、どんな顔をしているか楽しみにしています。
 次に、2年生のみなさん。素直で嫌みのないみなさんの元気な姿をいつも見ています。授業・クラブ活動・行事すべての場面において、一番中核となる2年生がしっかりしている学校は盤石です。しっかりした3年生とともに、懐風館高校を支えてください。1年生は、まだまだ学校に慣れるのに時間がかかります。1年生の世話もしてあげてください。クラブ活動に誘ってあげてください。生徒同士が仲良く縦につながり学校を支えてほしいのです。自分の夢、自分の希望、自分の目標をしっかり探し、意志のある日々を過ごしてください。
 本日進級した生徒の皆さん、懐風館はまだまだ新しい学校です。しかし、この8年間で作り上げてきた生徒指導方針のもと基本的な生活習慣のきっちりした高校生を育成し、その土台の上に、自らの適性と進路希望に応じた科目やエリア・コースを選択し、選択科目による効果的な学習スタイルを用いそれぞれの進路目標を実現するという本校のコンセプトはゆるぎないものです。普通科総合選択制の7期生、専門コース併設の普通科一期生である8期生、それぞれの特性を生かして実績を残してください。
 私はそれに加え、昨年度からの3年間計画の目標として、生徒会活動の発展とリーダーの育成、その結果としての校外学習を含めた総合学習・行事内容の充実と活性化、クラブ活動の活発化をあげています。そして、懐風館に来て良かった、後輩も懐風館に来させたい、そう皆さんが思えるそんな学校にすることが、私が校長としてなすべき第一の責務であると確信しています。そのために先生方の力を結集して皆さんの教育活動にあたっていきます。あなた達も、積極的、能動的に学校生活を中心にこの一年間頑張ってください。
 これで、平成29年度幕開けの始業式式辞とします。ともに頑張りましょう!

平成29年4月10日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成29年度 入学式


 まばゆいばかりの桜花爛漫の季節となり、山々の新緑が目立ち始める季節となりました。まさしく新芽のように若々しく、無限の可能性に満ちた新入生の皆さんを迎える日がやってきました。
 大阪府立懐風館高等学校第9期生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 本校を選択し、入学してくれたこと、本当に心から感謝し、最大の祝福をもって歓迎します。ここにいる240名の9期生全員が、懐風館という学び舎で多くの友と出会い、多くの師から学び、3年後に成長した姿で巣立っていってくれることを期待しています。
 保護者の皆さま、誕生の瞬間から今日までの長きに渡る子育ての一区切りとして、今日の佳き日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。式辞の始めにあたり、お祝い申しあげます。保護者にとってかけがえのない「宝物」であるお子さん方をお預かりしました上は、「懐風館生」としてしっかりお育てしますことをここにお誓い申しあげます。
 申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校入学生をお祝いくださるために、大阪府教育庁ご代表をはじめ、懐風館高校を支えていただいております皆さま方のご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。まことにありがとうございます。
 さて、入学生の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。そして、私もあなたたちのために努力し約束することをお話しします。
 まず「入学生の皆さんは、自分がなんのために生まれてきたのか考えたことがありますか?」言い換えると、「何を目的として、何をするために生き、勉強しているのか考えたことはありますか?」「目的のない人生は空しく、なすべきことのない日々は無駄」です。中国の思想家であり儒教の創始者でもある孔子は、「朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」つまり「朝に自分の生きる目的が分かれば、夕方に死んでもいい」という意味の言葉を残しています。世界を代表する思想家である孔子が追い求めていたのが「人生の目的」であり「なぜ生まれてきたのか?」だったのです。それほどまでに「生きる目的」を明確に把握することは、困難であり、重要であるのです。
 もう少し身近な人を例に出してみましょう。中島みゆきという歌手をみなさんは知っていますね?自ら作詞・作曲した曲を歌い多くのヒット曲を世に出しています。彼女の代表曲の一つである「糸」という歌は、本人をはじめ多くの歌手がカバーをしている名曲です。別々に生まれ育った男女が不思議な縁によって結ばれることをイメージさせる歌詞なので、結婚式の披露宴でもよく歌われます。その曲の中で、彼女は、「人はなぜ生まれ、生きているのか」という永遠のテーマを次のように表現しています。

    
『縦の糸はあなた 横の糸は私

織りなす布は  いつか誰かを

暖めうるかもしれない


縦の糸はあなた 横の糸は私

織りなす布は  いつか誰かの

傷をかばうかもしれない


逢うべき糸に  出逢えることを

人は仕合わせと呼びます』


 私は、若いころ、この曲は単なる恋愛を描いた歌だと思って聞いていました。しかし、人生経験を経るに伴い、この曲が最も強調しているのは、「不思議な縁で出会った二人が、その後二人で生きる人生において何をなすべきか」を歌っている曲なのではないかと思うようになりました。つまり、「織りなす布は、いつか誰かを暖めうるかもしれない、いつか誰かの傷をかばうかもしれない」という件が最も大事なのではないかと思うようになったのです。人は一人では生きていけない、だから誰かと結ばれる、しかし人生はそこから始まるのではないでしょうか?逢うべき糸に出逢い、仕合わせを感じ、そしてその二人が織りなす布で人を暖め、傷を癒すのではないでしょうか?これは、男女の仲だけではなく、人生において出会うすべての人に置き換えられると思います。親・兄弟・友達、さらに学校で出会う先生や同級生、先輩、後輩、出会う人すべてと、私たちは日々糸を絡ませつつ、協働して人のためになにかを行うことによって、人生の目的を感じることができるのではないでしょうか?
 私の経験からも、充実した日々を送るには、人生の目的、目標をもつことが必要です。特に高校時代は、将来のための準備の時です。その時代をいかに過ごすかはとても大切です。まずは、目的をもちましょう!なければ探しましょう!そして、自分の可能性を信じ、高い目標を掲げ、あきらめずにそれにチャレンジしましょう!人の命は、地球よりも重く、すべての人には同じだけの可能性があるのです!
 もう一つ、皆さんに求めること、約束してほしいことがあります。
 あなたたちは、懐風館の生徒になったのだということをしっかり自覚してほしいということです。高校には、共通のルールや決まりもありますが、懐風館にしかないものもあります。ルールや慣習は、文化となり風俗となりみんなの常識となり、伝統となっていきます。懐風館には、まだ伝統と言えるものはないのかもしれません。これまで8年間、ルールを作り、それを浸透させ、学校の土台を作ってきました。9期生のみなさんが2年生になったときが、ちょうど懐風館高等学校創立10周年記念の年なのです。懐風館の伝統を一緒に作っていきませんか!10周年記念を一緒にお祝いしましょう!
 次に、私があなたたちに約束することをここにあげておきます。私自身が常に心がけ、生徒や保護者と対応する際に先生方に求めていることです。教育の秘訣は、子育ての鉄則と同じです。

 @生徒をほめること
 A生徒を信じること
 B愛情をもって、生徒に接すること
 C忍耐力をもって、生徒と接すること
 D生徒との約束を守ること
 Eしっかりとした意志をもって、生徒と接すること
 F生徒に尽くしていこうという心をもつこと
 G家庭と学校が、よく協力すること

 以上8つの約束をここに誓い、私から入学生への言葉とします。
 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、縁あってお子さまにご入学いただきましたうえは、積極的に本校の教育に関わっていただき、今後ご協力・ご支援頂きますことを切にお願い申しあげます。
 本日入学した若人が、懐風館での日々を幸多く有意義なものとすること、また、ご参加いただきました保護者や地域の方々にとっても今日という日が発展と喜びの再出発の日となりますことを祈念し、本日の式辞といたします。

平成29年4月10日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 3学期終業式


少しずつ少しずつ春が近づいて来ました。今年度最後の日、三学期終業式となりました。夜明けも早くなり、私が六時前に自宅を出る時点でもかなり明るくなってきました。
 今年度はみなさんにとってどうでしたか?区切りの日である今日、一年間を振り返ってみてください。私は、一学期の始業式において、「笑顔で、明るく、一人ひとりがそれぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける1年間となることを期待します。」とお話ししました。2年生には、「授業・クラブ活動・行事すべての場面において、一番中核となる」ようにお願いしました。そして、「1年生を支えてあげて」ほしいともお願いしました。1年生は、学校には慣れたとは思いますが、下級生であるのは今日が最後です。明後日には下級生が合格発表を見に来ます。みなさんのさらなる成長を期待します。
 さて、今日は年度末に当たり、「人が成長する節目」について少しお話しをします。皆さんは、人はどんな時に、どんなことをきっかけに成長すると思いますか?困難にぶつかり、その困難を乗り越えたとき、その経験は糧となり、自信をつけさらなる成長を促します。つまり、困難なき所に成長はないということになります。「苦労は買ってでもしろ。」という言葉がありますが、その通りです。気ままでお気楽な生活の中に成長は生まれないでしょう。もし、厳しい現実にぶつかってしまっている人がいるなら、自らの成長の糧となる機会だと受け止め、真正面からその困難にぶつかってみましょう。
 そしてもう一つ先日の6期生卒業式でもお話しした「教育は何のために必要か?」「真実を見極める力を養うために教育は必要である」ということについてここでも少しふれておきます。今日は、その力が皆さんについてきているかを試すために一つ例題を出します。
 皆さんは、「進化」の反対である「退化」という言葉を知っていますね?では、その「退化」はどのようなシステムで起きるのか知っていますか?次の問いに対する答えを考えてみてください。

問い:
「深海などの暗黒の世界に生活する生物には、目など光を感知する視覚を備えていないものが多いが、その理由および経緯を説明せよ。」

難しいですか?それとも、そんな当たり前のことを質問するなと思いましたか?一般的な答えの例は、このようなものです:

「暗黒世界に生活する生物にとっては、光を感知する視覚は必要ではない。よって、自然に視覚は不用なものとなっていった。つまり、使わないものは衰える。そのようなことが代々にわたり継続し、ついには完全に視覚が退化した。」

この答えの例はあくまでも例であって正解ではありません。答えは、自分で探してください。答えは先生に教えてもらうものではなく、自分で調べ探すべきだからです。え?なんで?と疑問に思い、調べてみる、考えてみる、質問してみるという過程で人は頭を使うことになります。そうです、そうすることによって、人の脳は退化せず、進化してきたのですから。答えのわかった人は、私に言いに来てください。楽しみにしています。
 では、以上で本日のお話を終わります。来年度、始業式において3年生2年生となった皆さんに会うことを楽しみにしています。

平成29年3月15日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



第6回卒業証書授与式 式辞


 朝晩まだまだ厳しい寒さが続いていますが、春一番も吹き、日差しに春の訪れを実感できる季節となりました。
 三年前、若々しく無限の可能性に満ちた新入生としてお迎えした皆さんの旅立ちをお祝いする日となりました。大阪府立懐風館高等学校第六期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 晴れの日も雨の日も、暑い日も寒い日も本校に通い続け、友とともに学び、友とともに育ち、友とともに泣き、友とともに笑った日々は、すべてが皆さんにとってかけがえのない宝物となり、236冊の「こころのアルバム」に綴じられました。 本日そのアルバムの最後のページが埋められます。 皆さんのこれまでの努力を讃え、その門出を心から祝福したいと思います。
 また、保護者の皆さまにおかれましても、長きに渡る子育ての一区切りとなる今日の佳き日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。 式辞の始めにあたりお祝い申しあげます。
 申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校卒業生の門出をお祝いくださるために、大阪府教育委員会ご代表をはじめ、様々な方面から懐風館高等学校を支えていただいております皆さま方にご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚く御礼申しあげます。 まことにありがとうございます。
 さて、卒業生の皆さん、私は本年度1学期始業式において、「3年生の皆さんは、最上級生として2年生、新入生の模範となる先輩となってください。 進路目標に向けて、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって、努力する充実した学校生活を送ってください。 目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。 授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。 そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。 6期生の皆さんは、そんな憧れの先輩になれる力や可能性をもっています。 今年一年間、私はさまざまな場面のあなた達を見に行きます。 頑張っているか、へこたれているか、悩んでいるか、充実しているか、どんな顔をしているか楽しみにしています。」とお話ししました。 皆さんは私の言葉に答えてくれました。 体育大会でのはつらつとしたリーダーシップ、文化祭での個の力と集団の力の両面を結集し取り組む姿、先輩や後輩と苦楽を共にしたクラブ活動、そして自らの進むべき道を探し求め努力した進路実現への取り組みなどすべてにおいて皆さんは大いに頑張り、成果を出しました。 その皆さんの頑張りを讃えるとともに、私からの最後のメッセージを伝えたいと思います。
 皆さんは、教育は何のために必要だと思いますか? この答えは案外簡単です。 「何が真実で何が嘘であるかを判断できる力を養うために教育は必要なのです。」 では、次に「何が真実で何が嘘であるか、さらに何が真偽の判断ができないものなのか」考えてみてください。 アメリカ合衆国第45代大統領に就任したドナルド・トランプ氏の側近が「オルタナティブ・ファクトという言葉(もう一つの事実、つまり違う面から見たもう一つの事実が存在するという意味)」を使用し、現在もマスコミと対立しています。 彼女の主張が正しいかどうかはさておき、「何が正しいのか?」という命題は、私がこれまで生きてきた中で最も難しい命題です。 証言の食い違いなどから、真相が不分明になることを称して「藪の中」といいますが、これは芥川龍之介が一つの殺人事件の4人の目撃者と三人の当事者の証言がことごとく食い違い真相がわからなくなるという短編小説が語源となっています。 このような小説ができるほど「事の真相というのはわかりにくく多元的である」ということです。 途中経過はすべて省略しますが、私の結論は、「自分が正しいと判断したことが正しい」と考えるしかないということです。 私がこれまでに見てきたもの、聴いてきたもの、読んできたもの、教えられてきたもの、それらすべてが私のビッグデータであり、それに基づいて判断するしかないからです。 つまり、私が生まれ育った家庭や地域や学校や職場において、学んできたもの、身につけてきたこと、学習してきたこと、習得してきたこと、それらが私の「真実」なのです。 私のビッグデータを構成するものは教育の賜物なのです。そこから私は事の是非を判断し生きています。 ところが、世にいうビッグデータとは、インターネットで検索できる世界を意味します。 皆さんが生まれる3年前に公開されたあるSFアニメの女性主人公は、ネットとつながり、次のように同僚に語ります。 「それにしてもネットは広大だわ。もうすでに、私たちの知らない次の社会が生まれ始めている。」と。 彼女の語った通り、現在では、ありとあらゆることに関するビッグデータが存在し、まるでこれが唯一の答えだと言わんばかりに回答を示してくれます。 しかし、インターネットによって得たものが、本当の真実でしょうか? オルタナティブ・ファクトがあるのではないでしょうか? これではきりがありません。 自分が判断するのです。 何が正しいのか、よって自分はどう行動するべきなのかを判断するのは自分しかないのです。 その判断の基準が自分のもっているビッグデータなのです。 そのデータの精度をできるだけ高めるために必須なのが教育なのです。 教育の現場は、学校だけではありません。 365日24時間すべての瞬間が学びの場であり学びの瞬間なのです。 見聞を広め、いっぱい経験をし、考え、判断し、行動してください。  さて、最後にもう一つ皆さんにお願いがあります。 秋元康氏があるアイドルグループのデビュー曲として作詞した「サイレントマジョリティー」という曲が話題になっていますが、その歌詞の中にこういうフレーズがあります。

『君は君らしく生きていく自由があるんだ

大人たちに支配されるな

初めからそう諦めてしまったら

僕らは何のために生まれたのか


どこかの国の大統領が言っていた

声をあげない者たちは賛成していると

選べることが大事なんだ人に任せるな

行動をしなければNOと伝わらない』


 「どこかの国の大統領」とはアメリカ合衆国第37代大統領リチャード・ニクソンのことで、当時ベトナム戦争反対の運動が起きていましたが、それに参加しない大多数の物言わぬ国民は戦争に賛成しているグレートサイレントマジョリティーだと表現したのです。 しかし黙っている人はYESだとは限らず、NOだということも多くあります。 支配されることに抗うことを諦めずにNOと表現し、判断を人に任せることなく自分自身で選択できる人になれと秋元氏は訴えていると思います。 しかし、NOと言うためには、自ら選択するためには、教育が必要なのです。 「あなたはどうしたいの?」との問いに、根拠をしっかり持った上ではっきり答えられる人になってください。 これは、意外に難しいことです。 これを皆さんに贈る最後のメッセージとします。
 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、お子様のご卒業まことにおめでとうございました。 成長し懐から少しずつ巣立っていこうとするお子様の今後の成功をお祈りいたします。 また、これまで本校の教育活動に対し、物心ともにご協力・ご支援いただきましたこと深く感謝申しあげます。 本当にありがとうございました。
 本日卒業していく若人が、懐風館での日々を懐かしみながら、無限の広がりをもつ世界に翼をひろげ、はばたいていかんとすることを祈念し、本日の式辞といたします。

平成29年2月25日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 3学期始業式


 平成29年あけましておめでとうございます。 本活的な寒さや雪のない冬が続いています。 年度を結ぶ三学期始業式をみなさんとともに迎えることができたことをまずは喜びたいと思います。
 さて、この冬休みはどうでしたか?私が終業式で提案したことを実行した人はいるでしょうか?受験勉強が忙しくそれどころではなかったという人もいるかもしれませんが、それはみんなが通ってきた道、しなければならないことのある人こそ幸せなのだと自分に言い聞かせ、最後まで努力してください。現在も挑戦し続けている人は最後まであきらめずに自分の力と可能性を信じ頑張ってください。あきらめずに動き続けた人だけに可能性は拓けるのです。
 さて、私が終業式で提案したことって何?と思っている人が多いでしょうから、復習しておきます。私は、かつて勤めていた学校の教え子が立派な大人になっている、そんな教え子たちに偶然出会う機会が最近多く、この仕事に就いた喜びを感じている。この冬休み中にも教え子やかつての同僚の先生方と会う、また自分の母親やお世話になった人に会って話すのを楽しみにしている。お正月は特別な時期なので、ふだん会えない祖父祖母や親戚の人たちと会ってみてはどうですか?と提案をしました。久しぶりに会えた親族や友人と楽しく懐かしく話ができた人は、人が一番大事にするべきものは、家族であり、友人であるということをもう一度確認できたことと思います。自分の顔を見ただけで誰であるかを認知できる人を大切に生きていってください。人類が70億人いるとして、あなたのことを知っている人がそのうち何人いるか想像してみればその希少性は言うまでもありません。
 私は人生で初めて元旦から高熱を出してしまったのですが、以前からの約束もあり、年末年始に懐かしい人たちと会い、語り、楽しい時を過ごしました。私がどのような人間であったのか、どのような先生であったのかを確認したい、思い出したいという思いもありました。高校生の時は勉強している姿を見たことがなかったある教え子は、今や高校生・中学生の親となり、勉強しない自分の子供の教育について悩んでいました。「先生、うちの子どもどうやったら勉強するようになるん?資格や学歴がなくて苦労してきたから、うちの子にはそんな思いをさせたくない、選択肢が増えるように学歴をつけてほしいねん。」と大人びたことを言う教え子に、私は教員として、また親としての経験を交えて、こう答えました。「本人が勉強したいと思わん限り勉強なんかせんよ。少なくともその教科の内容に関心を持ち、面白いと思わない限り勉強はしない。子供が興味をもつかもしれないおもしろそうなことにいろいろ触れる機会を与えてあげればいいんちゃう?」と話しました。さらに、「その子の性格もある。頭のいい子ほど、授業聴いてても考えてても納得いかへんねんとか言ってくるかもしれんけど、そんなタイプの子には、職人の修行の番組でも見せたらいいんちゃうか?職人はなー、まず目で見る。師匠や先輩のやってることを目で見て真似する。ほんで、見よう見まねでやってるうちに、気が付いたら自分もできるようになる。」そして私が苦手だった英語をどのような工夫をして克服したかのエピソードを紹介し安心させるようにしました。説教も勉強も、理屈から入ってはダメであると言いたかったのです。
 また、かつて同僚の教員として働いていたある先生とは、こんな話をしました。「先生に聞いてほしいことがあるんです。私が間違ってるんでしょうか?」と切り出したその先生の話を聞き終わり、私はこう言いました。「あってるよ。あんたがぜんぶあってる。でも、私にはそれがわかるけど、わからない先生には理解してもらえないかもしれない。そんなことより、その生徒や親がどう感じているかだけでいい。あなたのことを信頼して、なんでも話してくれるようになってるのなら、それでいい。」と。その先生は、笑みをみせこう言いました。「良かった!先生に聞いてもらって。先生がそう言ってくれることはわかってたんですけど、確認したかったんです。今の学校の先生方にはなかなかわかってもらえなくて。今も先生ならどうするかなって思い出しながら仕事してます。」と。にこやかな表情になったその先生と久しぶりに会っていろいろ話すうちに、私のこころもなごやかな安心感に包まれていました。私は、誰かと話すときはいつも、この人はなんて言ってもらいたいのか?どういってあげたら安心するのか?と考えています。しかし、その相手の期待に答えられない時があります。否定したり、消極的な回答をせざるを得ないときがあるのです。こんな時、私のストレスは増加します。元旦から高熱を出すという人生初の経験をした理由は、このようなストレスの蓄積だったのかもしれません。今日みなさんに伝えたいのは、私がどのような冬休みをすごしたかということではなく、人は、人と会って話すこと、本を読んで過去の人と会話すること、この二つが人を成長させ、原点に戻してくれるのだということなのです。みなさんも人と会い、語り、読書を通じて過去の人と語り合ってみてください。
 みなさん、卒業・進級に向け大事な3学期が始まりました。全員が卒業・進級を決め、終業式で再びこの場で会えることを祈っています。これで3学期始業式の式辞を終わります。

平成29年1月10日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 2学期終業式


 例年になく暖かな二学期終業式となりました。 冬至も過ぎ、少しずつ太陽の照り時間が長くなり春が近づいてくる気配がします。 今朝の朝焼けをみた人はいますか?7時過ぎに駒ヶ谷駅に降り立つと二上山の背景が見事に朝焼けしており、思わず写真に収めました。
 さて、二学期最後の日となりましたが、皆さんにとって二学期はどうでしたか? もっとも長い学期である二学期を振り返ってみましょう。
 まだまだ暑かった9月には文化祭がありました。 楽しかったですか?力を発揮できましたか? 各学年、各クラス、各クラブそれぞれ頑張ってくれたおかげで充実した文化祭ができました。 10月には、宮古島への修学旅行がありました。 私にとっても宮古島ははじめてであり、あの空、あの海の青さ、サンゴや砂浜そして名物の塩の白さは今でも目に焼き付いています。 民泊先での思い出とともに一生忘れることのない風景に出会えましたね。 3年生は自分の進路先を獲得する期間でもありました。希望通りの進路希望先に合格できた人は新たな世界で頑張ってください。 まだ現在も挑戦し続けている人は最後まであきらめずに自分の力と可能性を信じ頑張ってください。 あきらめずに動き続けた人だけに可能性は拓けるのです。
 さて、私にとって今年の2学期はとても長く感じられました。 年齢を重ねるとともに、時間の経過は速くなり、「あれからもう5年かー」とよく感じたりします。 しかし、今年の二学期は長かったです。悩ましいこと、解決できないこと、困難なこと、迷うこと、そんなことがたくさんあると時間は容易に過ぎ去ってくれません。 そんな日々を過ごしている私にも、心の底からほっとする瞬間があります。 行く先々で教え子や職場の元同僚であった先生に出会うことです。 幼馴染にあった時のように一瞬で何十年前に戻ります。 昨日もあるスポーツ店の人が校長にどうしても会いたいというので、会いに行くと、30年近く前に担任をしていた生徒でした。 「野球部やったよな?坊主やったもんなー、出席番号4番やったやろ?」一瞬で当時の顔が浮かびました。 彼も、「先生、阪神ファンでしたよね?」「そんなこと、おぼえてんのか?!卒業してからなにやってたんや?」そんな他愛もない会話はとても楽しく、時間はすぐに過ぎていきます。 そしてなにより当時の先生と生徒という関係に戻れるから楽しいのです。 何十年たっても生徒は生徒、先生は先生。 これと同じなのが、親子関係です。 何歳になっても、親は親、子供は子供なのです。 私事ですが、私の母は85歳になり、神奈川県で兄と住んでいます。 先日その兄からメールがあり、「おかあちゃんが要介護5になった。 もう寝たきりでベッドから出れなくなった。 半年で急速に弱ってる。 誰がだれかわからなくなる前に、会っといてくれないか?」そんな内容でした。 私は、明日から娘と孫を連れて母に会いに行きます。 みなさんも明日から冬休みです、帰省する予定があるかないかわかりませんが、ぜひご健在であるなら、いなかのおじいちゃん、あばあちゃんに会いに行ってあげてください。 無理なら、せめて電話ででも声を聴かせてあげてください。

平成28年12月22日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 2学期始業式


 西日本は猛暑の夏。東日本は台風と豪雨の夏。 せめて朝晩だけでもヒヤッとした空気が恋しい季節となりました。 本日より全学年がそろい2学期の始業式を迎えました。 久しぶりに皆さんの元気そうな顔を見ることができてほっとしています。
 まずは、私が終業式で皆さんにお話ししたことを振り返ってみましょう。
 私は、7月の終業式で「命は宝、言葉は宝石、家族は生き甲斐、仕事は生きるすべ、友は道しるべ、読書は灯台」という言葉を引用し、自らの命を大事にし、言葉を磨き、家族と友人を大事にし、読書するようにお願いしました。
人のために何かをすることが仕事なのです。 だから、人のためにできる何かを身に付けなければならないのです。
 過ぎ去った日々は二度と戻る事はなく、変えることはできません。 しかし、未来は創ることができる。これまでの自分と違う毎日にすることができます。 この夏休みの生活に満足できなかった人は、新たな自分を生き始めてください。 今この瞬間から人は変わることができます。
 3年生は、文化祭の成功と進路実現に向けた受験という試練を乗り超えなければならない正念場です。 夢は叶うもの。 努力すれば叶えられることを夢といいます。 叶えられると信じ努力し続けた人だけが夢を叶えられます。 あきらめないでください。 きっと大丈夫です。 あきらめた瞬間に人は言い訳を言います。 言い訳しない人になりましょう。
 2年生は、修学旅行があります。 宮古島は、私も行ったことのない場所なので、楽しみにしています。 南の島のまばゆい日差しときらめく海の美しさに純粋に感動することでしょう。 また、離島に住む人たちのゆったりした暮らしぶりも経験してみてください。
 1年生は、高校生活の一巡目、初めての2学期を経験することになります。 しっかり、高校生活の基盤を固める時期です。 浮足立たず、安定した生活を心掛け、先輩たちの様子を観察し、学んでいきましょう。
 さて、私は、この夏南米で初めて開催されたリオオリンピックの様子をテレビ観戦しましたが、改めて日本の選手の挨拶・お辞儀に代表される礼儀を重んじる美と感謝の心に深く感動し、最後まであきらめない強い意志の力に圧倒されました。 さらに、私は時代の急速な変容とその後の未来に思いをはせ、人間の限界と可能性というものについても考え続けていました。 国を挙げたジュニア育成、選手育成のシステム作り、東京ではさらに日本は強くなるであろうと期待を込めて熱く語る解説者やアナウンサー。 中国選手が異次元的に強すぎると言われてきた卓球においても、現在のランキング上位者のメンバーを見れば、年齢構成や人数から4年後には日本は中国を超える勢いがあります。 また前回のロンドンオリンピックに向けて選手育成に取り組んだイギリスは、今回のリオオリンピックにおいてもその成果を継続的に発揮し、今やスポーツ大国と言える存在になっています。 日本も東京オリンピックに向けて取り組んできた選手育成の成果が若い世代を中心に大いに現れ、史上最高のメダル数!日本選手史上初!数十年ぶりの金メダル・メダル・入賞!といった文字が毎日マスコミを賑わわせました。 特にスーパー高校生という言葉に表れているようにあなた方と同世代の選手たちは史上最強世代と言われています。 きっと2020年には、あなたたちの同世代の選手たちが活躍してくれることになるでしょう。
 しかし、夢を叶えるのはそう簡単なものではありません。 「すべてを犠牲にしてきました」という金メダリストの言葉には重みがあり、我々には想像もできないほどの努力をしてきた選手に対し、最大の賛辞を与えたいと思います。 夢は叶うを実践した人たちです。夢を諦めず自分を信じ、努力を継続した人たちだけが夢を叶えることができるのです。 才能や運で叶えたのではありません。
 最後に、陸上のウサイン・ボルト選手が日本の400Mリレーの選手たちに送った言葉を引用します。 「日本はチームワークがいいこの数年、彼らを見てきたが、彼らはいつもバトンの扱いが素晴らしい。 我々よりはるかにたくさん練習していて、チームメートを信頼しているのもわかる。」と。 パソコン・インターネットの発展した世界においては、もはや人間は知識を丸暗記したり記録する必要はない、現在世界に存在する職業の大部分はロボットや機械にとってかわられる。 ビッグデータを取り込んでいる機械に判断を委ねれば株式投資から病気の手術までほとんどすべての事が失敗することなくおこなわれるという時代に既になっています。 飛行機や新幹線がほとんど自動運転になっていることをみればわかります。 チームワークの意味は、「目標を達成するためにチームメンバーと役割分担して協働すること」です。 みんなと一緒に協力しながら目標を達成することです。 ボルト選手の言う「お互いを信じあい、すばらしいチームワークで働く」このことが、21世紀後半に生きるあなたたちが身に付けなければ生きていけない能力なのです。 私は、今回のオリンピックにおいて、人間がいなくても何ら支障のない世界になったとしても、やはり人間が必要で、人間でなければできないことがあるはずだという事を確認をすることができました。
 「夢は叶えるもの」「仕事は、人のために何かをする事」この言葉を繰り返し、2学期始業式の式辞とします。

平成28年8月25日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 1学期終業式


 梅雨も明け、真夏の太陽が容赦なく照りつける季節となりました。 平成28年度1学期終業式を迎えるにあたり、一言挨拶を述べます。  新たな学年・新たなクラス・新たな担任のもとスタートした新学年の三分の一が過ぎました。 笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける1年間となることを期待していると4月の始業式でお話ししましたが、どうでしたか?  1年生は、高校という新たな環境に慣れましたか?中学と高校の違いがなにかが分かってきましたか?2年生は、後輩をもつ立場となり、先輩らしい自覚と自信ができましたか?3年生は、体育大会に燃え、次は文化祭だ!という気持ちと、自分の進路目標達成のための努力との両立に忙しくしていることでしょうね。 それぞれの立場で、この夏全力を尽くしましょう! さて、振り返ってみると、今年度の1学期には、歴史に残るような大きな出来事がありましたね。 なんのことかわかりますか? 高校3年生の一部の生徒が初めて選挙権をもち、7月10日の参議院選挙の有権者となったことです。 初めて国政選挙の投票に参加した人はどんな気持ちでしたか? 実は、私も投票に関して今回初めての経験をしました。 いつものように家族と投票所に向かい、投票を済ませてから、会場の出口でNHKによるいわゆる出口調査に回答しました。 私が出口調査で回答したのは初めてでした。 開票が始まるやいなや当選確実が出るしくみがよくわかりました。 選挙権が18歳に認められたということは、これまで以上に18歳が一人前の大人としての自覚をもつように促されているような気がします。 私の18歳の時を思うと、十分に判断能力もあり、人生で最も読書をし、受験勉強と読書のどちらに時間を割くかを日々迷っていたことを覚えています。 私がこれまでの人生で読んだ本の大部分は高校3年間で読んだものです。 今となっては、もうあんな分厚い文学書など、手に取ってみようという気にさえなりません。 「命は宝、言葉は宝石、家族は生き甲斐、仕事は生きるすべ、友は道しるべ、読書は灯台」。 勉強・恋愛・友情すべてが順調な時に日々の生活は光り輝き、つまずいた時にはお先真っ暗になってしまう。 それが青春時代です。 私は、今回の選挙をきっかけに高校時代を思い出し青春の日々を思い起こし感傷に浸りました。 それともう一つ、選挙権拡大の報道でほとんど触れられていなかったことについても考え込んでしまいました。 個人的なことで恐縮ですが、私の妻は日本国籍をもっていません。 何歳になっても、何十年この日本で生活し、どれだけ税金を納めても選挙権を与えられない人の事を思いました。 国籍を取得しなければ、選挙権は与えられないからです。 かつては、納税額や性別など、今では考えられないような制限条件のあった選挙権が18歳19歳の人全員に新たに与えられました。 その一方いつまでたっても国政選挙権が与えられない人がたくさんいることも覚えておいてください。 最後になりますが、今年は命の大切さを改めて痛感しました。 熊本・大分の震災は、多くの人命を奪い、平和な生活と地域社会を奪いました。 また、国際貢献のため、その国やその国民のために外国に赴き、現地でテロに遭遇し日本人であることを理由に命を奪われた人たちがいました。 多くのこどもを含む観光客の命を無差別に奪うテロもありました。 私はかつて自分の授業に日本在住のイスラム教徒の方々に来ていただき、平和こそ大事であるという本当のイスラムの教えについて説明してもらいました。 イスラムについて誤解のないようにしなければなりません。 生きていることに感謝し自分を大事にしてください。 長い夏休み期間は、多くの誘惑と危険が待っている期間でもあります。 ここにいるみんなが元気な顔で2学期の始業式に集まってくれることを祈ります。 事故にはくれぐれも気を付けてください。 思い出の夏、人生最高の夏休みとなる人が一人でも多くいることを祈りつつ、一学期終業式の式辞とします。

平成28年7月20日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 8期生入学式


  まばゆいばかりの桜花爛漫の季節が過ぎ、山々の新緑が目立ち始める季節となりました。まさしく新芽のように若々しく、無限の可能性に満ちた新入生の皆さんを迎える日がやってきました。  大阪府立懐風館高等学校第八期生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
  本校を選択し、入学してくれたこと、本当に心から感謝し、最大の祝福をもって歓迎します。ここにいる240名の八期生全員が、懐風館という学び舎で多くの友と出会い、多くの師から学び、3年後に成長した姿で巣立っていってくれることを期待しています。
  保護者の皆さま、誕生の瞬間から今日までの長きに渡る子育ての一区切りとして、今日の佳き日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。式辞の始めにあたり、お祝い申しあげます。保護者にとってかけがえのない「宝物」であるお子さん方をお預かりしました上は、「懐風館生」としてしっかりお育てしますことをここにお誓い申しあげます。
 申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校入学生をお祝いくださるために、大阪府教育庁ご代表をはじめ、懐風館高校を支えていただいております皆さま方のご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。まことにありがとうございます。
 さて、入学生の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。そして、私もあなたたちのために努力し約束することをお話しします。
 まず「入学生の皆さんは、自分がなんのために生きているのか考えたことがありますか?」 言い換えると、「何を目的として、何をするために生き、勉強しているのか考えたことはありますか?」「目的のない人生は空しく、なすべきことのない日々は無駄」です。しかし、ロシアの作家であり思想家でもある文豪トルストイが、西洋哲学のあらゆる文献をその地位と財力で集めるだけ集めて、それを約10年の歳月をかけて調べつくした挙句「人生は無意味である」 との結論にしかたどり着けなかったという逸話も残っているほど、人生の目的を見つけることは困難なのです。また、中国の思想家であり儒教の創始者でもある孔子は、「朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」つまり「朝に自分の生きる目的が分かれば、夕方に死んでもいい」という意味の言葉を残しています。孔子やトルストイのような世界を代表する思想家たちの一大テーマが「人生の目的」 「なぜ生きているのか?」なのです。私も、高校時代あらゆる哲学書や文学書を読みまくり、その答えを見出そうとしていました。
 そんなもんもんとした日々の中、私は、ある哲学者のエッセイの中に、「人々のために尽くし、行動する。これほど尊い人生はない」という簡単明瞭な一節に触れ、迷いが解けました。なんだ!自分のためではなく、人に尽くすために生きればいいんだ!なんだ、そんな簡単なことだったんだ!とこれまでの迷いが一瞬にしてなくなりました。ほとんど生まれながらに貧乏な環境で育ち、 米びつの底が常に見えている家庭に育った私には、経済苦の切なさが分かる。勉強が、とくに英語ができなかった私には、あのわからない不安感と取り残されていく悲しさが分かる。学校の先生に何度も差別をされたりいやな思いをさせられてきた私には、学校が嫌いで教師を信じられない生徒の気持ちがいやというほどわかる。こんな私が学校の先生になったらいいのでは? いや、私のような人こそ先生になってあげるべきなんだ!と、私は勝手に思い込み、迷うことなく先生になろうと決めたのです。その日から、私は目的をもった人間らしい生活をし、高校の英語の先生をめざし、英語の勉強を真剣に始めたのでした。今思えば、ずいぶん無責任な決め方で冷や汗ものではありますが、振り返ってみれば、先生ほどおもしろい仕事はない!しんどいこともあったけどこんな幸せな職業はない!と、私は今現在確信しているのですから、この選択はあながち間違ってはいなかったようです。 今では、私の教え子たちの子どもが高校に進学したというような報告を受け、あんな教師を目の敵にし、悪態ばかりついていたギャルギャルした生徒が妻になり、母になり、仕事でも家庭でも苦労しながら子育てに奔走し、苦しんだり喜んだりしている様子を見、ほほえましく思う日々を過ごしています。
 私の経験からも、充実した日々を送るには、人生の目的、目標をもつことが必要なのです。特に高校時代は、将来のための準備の時です。その時代をいかに過ごすかはとても大切です。まずは、目的をもちましょう!なければ探しましょう!そして、自分の可能性を信じ、高い目標を掲げ、あきらめずにそれにチャレンジしましょう!人の命は、地球よりも重く、すべての人には同じだけの可能性があるのです!
 もう一つ、皆さんに求めること、約束してほしいことがあります。 あなたたちは、懐風館の生徒になったのだということをしっかり自覚してほしいということです。高校には、共通のルールや決まりもありますが、懐風館にしかないものもあります。ルールや慣習は、文化となり風俗となりみんなの常識となり、伝統となっていきます。懐風館には、まだ伝統と言えるものはないのかもしれません。これまで七年間、ルールを作り、それを浸透させ、学校の土台を作ってきました。 8期生のみなさんが3年生になったときが、ちょうど懐風館高等学校創立10周年記念の年なのです。懐風館の伝統を一緒に作っていきませんか!10周年記念を一緒にお祝いしましょう!
 次に、私があなたたちに約束することをここにあげておきます。私自身が常に心がけ、生徒や保護者と対応する際に先生方に求めていることです。教育の秘訣は、子育ての鉄則と同じです。
 @生徒をほめること
 A生徒を信じること
 B愛情をもって、生徒に接すること
 C忍耐力をもって、生徒と接すること
 D生徒との約束を守ること
 Eしっかりとした意志をもって、生徒と接すること
 F生徒に尽くしていこうという心をもつこと
 G家庭と学校が、よく協力すること
以上8つの約束をここに誓い、私から入学生への言葉とします。

 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、縁あってお子さまにご入学いただきましたうえは、積極的に本校の教育に関わっていただき、今後ご協力・ご支援頂きますことを切にお願い申しあげます。  本日入学した若人が、懐風館での日々を幸多く有意義なものとすること、また、ご参加いただきました保護者や地域の方々にとっても今日という日が発展と喜びの再出発の日となりますことを祈念し、本日の式辞といたします。

平成28年4月8日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成28年度 1学期始業式


 桜吹雪が舞い、木々の新緑が目立つ季節となりました。本日は、平成28年度1学期始業式を迎える佳き日です。2年生3年生の皆さん進級おめでとうございます。
 新たな学年・新たなクラス・新たな担任のもと新学年スタートの日です。 笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって継続的な努力を続ける1年間となることを期待します。
  私は、昨年度4月から校長という立場で皆さんの成長を見てきました。終業式でも話しましたが、6期生の皆さんは、全員が3年生に進級することができました。 とてもうれしく、立派なことであると思いますが、みなさんの目標は卒業することではないはずです。7期生のみなさんは、多くの級友が進級できず、新たな環境での学びの道に進路を変えざるを得ませんでした。進級できたみなさんは、その頑張りを自負し、油断することなく今年度も頑張ってください。  さて、生徒の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。
 まず、3年生の皆さんは、最上級生として2年生、新入生の模範となる先輩となってください。 進路目標に向けて、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって、努力する充実した学校生活を送ってください。目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。 そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。6期生の皆さんは、そんな憧れの先輩になれる力や可能性をもっています。頑張ってください。今年一年間、私はさまざまな場面のあなた達を見に行きます。頑張っているか、へこたれているか、悩んでいるか、充実しているか、どんな顔をしているか楽しみにしています。
  次に、2年生のみなさん。素直で嫌みのないみなさんの元気な姿をいつも見ています。授業・クラブ活動・行事すべての場面において、一番中核となる2年生がしっかりしている学校は盤石です。しっかりした3年生とともに、懐風館高校を支えてください。1年生は、まだまだ学校に慣れるのに時間がかかります。1年生の世話もしてあげてください。 クラブ活動に誘ってあげてください。生徒同士が仲良く縦につながり学校を支えてほしいのです。自分の夢、自分の希望、自分の目標をしっかり探し、意志のある日々を過ごしてください。
  本日進級した生徒の皆さん、懐風館はまだまだ新しい学校です。しかし、この7年間で作り上げてきた生徒指導方針のもと基本的な生活習慣のきっちりした高校生を育成し、その土台の上に、自らの適性と進路希望に応じたエリアを選択し、選択科目による効果的な学習スタイルを用いそれぞれの進路目標を実現するという本校のコンセプトはゆるぎないものです。 普通科総合選択制の学年は、7期生までです。最後の二年間に実績を残してください。
 私はそれに加え、今年度からの3年間計画の目標として、生徒会活動の発展とリーダーの育成、その結果としての校外学習を含めた総合学習・行事内容の充実と活性化、クラブ活動の活発化をあげています。 そして、懐風館に来て良かった、後輩も懐風館に来させたい、そう皆さんが思えるそんな学校にすることが、私が校長としてなすべき第一の責務であると確信しています。そのために先生方の力を結集して皆さんの教育活動にあたっていきます。あなた達も、積極的、能動的に学校生活を中心にこの一年間頑張ってください。
 これで、平成28年度幕開けの始業式式辞とします。ともに頑張りましょう!

平成28年4月8日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 3学期終業式


 
 春分間近となった本日、1年間の学業を終えた証しとしての区切りである終業式を迎えました。まずは、2年生3年生への進級おめでとう!何の努力もなしに、何の頑張りもなしに進級はできません。あなたたちの頑張りに敬意を表します。
 去る2月27日第5期生232人が見事に卒業しました。在校生代表として式に参加してくれた生徒もいますが、実にすばらしい卒業式であったと多くの参加者、来賓の方々にお褒めをいただきました。ある中学校の校長先生は、うちの卒業式でも採用したい演出があった。 うちでもやりたい。とおっしゃっていました。5期生の諸君には、後輩から憧れてもらえる先輩になってと何度もお願いしてきましたのですが、行事においても、勉強の面においても模範となる結果を残してくれました。 卒業後も進路目標に向かって頑張りを見せ、関西大学をはじめ、難関大学や難関学部に合格したといううれしい知らせが届いています。あきらめない強い気持ちと頑張りに敬意を表します。
 6期生の皆さんは、最上級生となります。すべての面において5期生の先輩を見習い、また追い越すぞという意気込みで来年度頑張ってください。
 7期生の皆さんは、進級に至らなかった同級生がたくさんいるなと思っているでしょう。しかし、あなたたちにはどの学年にも負けないすばらしい面をもっている生徒がたくさんいると私は感じています。 勉強や進路の面でもそうなんです。あきらめずに大きな目標をもって頑張ってください。先日8期生の入学者選抜が行われ、18日には合格発表です。その日から、1年生にも後輩が生まれます。学校生活において、特にクラブ活動等においてよき先輩として後輩たちを引っ張ってあげてください。
 1年間私があなたたちにお願いしてきたことは、目標を持ってほしいということでした。ジョンレノンという人を知っていますか?ビートルズの主要メンバーで、平和運動にも活躍した人です。彼は、生前このような言葉を残しています。「こんなことを言ったら、こんなことをしたら、どう思われるだろうか? そんなつまらないことを気にして、どれだけの人がこれまで、やりたいことをせず、言いたいことを言わず、夢をあきらめてきたことだろう?」時の権力者や大人、常識、偏見、固定概念そのようなものにとらわれず、自分の気持ちに素直に純粋に夢に向かって突き進むべきだというかれの生きざまを表わす言葉です。 デビュー当時、ビートルズは、音楽、ファッション、言動すべてが非常識で礼儀知らずだと言われていましたが、現在そのようなことをいう人はいません。曲に至っては、音楽の教科書に載っています。やりたいこと、やりたい勉強、やりたい仕事、なってみたい職業をあきらめないでください。 そうすれば、おのずから学校に来る目的や勉強する理由がはっきりします。生き甲斐となるはずです。つまらないことが気にならなくなります。
 今日もう一つお話ししておきたいことがあります。去る3月11日に東北の大震災から5年となりました。当日は、学校には先生しかいませんでしたが、一分間の黙とうを行い亡くなった方々の冥福と東北地域の復興を祈りました。 震災当時高校生、大学生だった人たちが、続々と医師、看護師、福祉関係、そして地震研究者になっているという記事を読み、感動しました。目的のある人は強いな、理由のある生き方は強いなと思いました。彼らの迷いのない生き方に強さを感じました。 悔やんでも仕方がない、悲しんでいてもどうにもならない、人のせいにしても何も変わらない、そんな潔さを感じました。
 さあ、みなさん、20日は春分の日です。暦からも春がやってきます。英語で「春」は、springといいますが、この言葉には、「泉」「飛躍」「ばね」という意味もあります。何もないところから、泉が湧きだし、新芽が顔をだし、虫が跳ねだす季節です。 そのことから、人間の人生に例えて「青春」というもう一つの意味もあります。「青春」という言葉はあなた方のためにある言葉です。今後のさらなる飛躍に向けて、思いっきり羽根を伸ばし羽ばたいてください。悔いのない来年度を過ごすために今から準備を怠らず、気合を入れてください。今日よりは、3年生であり2年生です。 私は、あなたたちの力を信じ、期待しています。
 私からの言葉は以上です。     

平成28年3月15日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 卒業式


 
 朝晩まだまだ厳しい寒さが続いていますが、日中の日差しに春の訪れを実感できる季節となりました。三年前、若々しく無限の可能性に満ちた新入生としてお迎えした皆さんの旅立ちをお祝いする日となりました。 大阪府立懐風館高等学校第五期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
  晴れの日も雨の日も、暑い日も寒い日も本校に通い続け、友とともに学び、友とともに育ち、友とともに泣き、友とともに笑った日々は、すべてが皆さんにとってかけがえのない宝物となり、232冊の「こころのアルバム」に綴じられました。本日そのアルバムの最後のページが埋められます。皆さんのこれまでの努力を讃え、その門出を心から祝福したいと思います。
 また、保護者の皆さまにおかれましても、長きに渡る子育ての一区切りとなる今日の佳き日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。式辞の始めにあたりお祝い申しあげます。
  申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校卒業生の門出をお祝いくださるために、大阪府教育委員会ご代表をはじめ、様々な方面から懐風館高等学校を支えていただいております皆さま方にご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚く御礼申しあげます。まことにありがとうございます。
  さて、卒業生の皆さん、私は本年度1学期から何度かメッセージを伝えてきました。「顔をあげて、笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって邁進して行くことを期待します。」また、「3年生の皆さんには、最上級生として2年生、1年生の憧れの先輩となってください。 進路目標に向かって、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって努力する充実した学校生活を送ってもらいたい。目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。」 とお話ししてきました。皆さんは私の言葉に応えてくれました。雨の中、最後までやりぬいた体育大会、個の力と集団の力の両面を結集し取り組んだ文化祭、先輩や後輩と苦楽を共にしたクラブ活動、そして自らの進むべき道を探し求め努力した進路実現への取り組みなどすべてにおいて皆さんは大いに頑張り、成果を出しました。その皆さんの頑張りを讃えるとともに、 私からの最後のメッセージを伝えたいと思います。
  皆さんは、何を目的として、何をするために生き、勉強しているのか考えたことはありますか?目的のない人生は空しく、なすべきことのない日々は無駄です。かく言う私も高校生の時、「私は、なぜ生まれてきたのか?何のために生きているのか?何を目的に生きていけばいいのか?」と、そのようなことを自問する日々を過ごしていました。 そんなある日、私はある哲学者のエッセイにこのようなくだりを発見したのです。そのエッセイで著者は、「わが人生を、よりよく生きぬくためには何が必要か。それは目的である。何のために生きるのか。自分の人生は、どこに向かっていくのか。そのいちばん大事なことを、教育は教えてくれない。いや、それがわからないから、大人は、子どもたちに教えられないのだ」と。 さらにその哲学者は、人生の目的を決めかねていた私にヒントを与えてくれました。「人々のために尽くす。行動する。これほど尊い人生はない」と。
 私は、何十回もその文を読み返し、大人も人生の目的をもっていないのか?だから子どもに教えられないのか?と何度も何度も自問しました。そしてようやく、自分の学びたいことを決め、行きたい進路を決め、なりたい仕事を見つけ、目的をもった充実した日々を送ることができるようになったのです。 そうです、私は、学校の先生になろうと決めたのです。充実した日々を送るには、人生の目的、目標をもつことが必要なのです。大学・短大・専門学校・就職など様々な進路に分かれる皆さんですが、人生はまだまだ始まったばかりです。これからの人生を充実したものにするため、改めて自分はこれから何のために生きていくのかを模索し続けてください。 私は、学校の先生になってよかった!あんなにかわいい教え子たちに囲まれて過ごせた日々は本当に幸せだった!そう思える人生を過ごせています。皆さんも後悔しない人生を過ごせるようにしっかり考え、努力し、全力で生きてください。
 もう一つどうしても今日皆さんに伝えておきたいエピソードがあります。私から紹介する最後のエピソードなので、皆さんになじみのある人についてのお話をしたいと思います。先日、グラミー賞の表彰式において、テイラー・スイフトさんが語った言葉を引用させてもらいます。彼女は年間最優秀アルバム賞を2度受賞した初めての女性となったのです。 彼女はその受賞スピーチでこのように語りました。「グラミー賞で最優秀アルバム賞を2度受賞した初めての女性として、若い女性の皆さんに伝えたいことがあります。成功への途中であなたを引きずり落とそうとしたり、あなたの業績や名声を自分の手柄にしようとする人に絶対出会うことでしょう。でも、あなたがそのような人たちに邪魔をされないように仕事に集中していれば、 ある日、自分の進むべき道が見えたときに、周りを見渡して、そう、ここまで来れたのは私自身が頑張ってきたからなんだ!そして私を愛する人々のおかげなのだとわかるはずです。そのときが、その一瞬がこの世で最高の瞬間なのです。」私はこのスピーチに感動し何度も聞きなおしました。これまで彼女が自分の目的や夢に向かって、どれだけ努力をし、成功し、失敗し、ねたまれ、邪魔をされてきたんだろう? しかも一切そのようなものに振り回されることなく、やりたいことに集中し、自分の力を信じ頑張ってきたことだろう?と。またそのような彼女を愛し、支えてきた周囲の人たちに感謝する謙虚なこころももっている。これまで、彼女を単なるヒットメイカーのかわいいミュージシャンとしてしか知らなかった自分を恥ずかしくさえ思いました。人生の目的を持つこと、 そして自分の力を信じその夢に向かって集中すること、周りから言われることされることに負けず頑張り続けてきたものだけが味わえる高見がある、そう彼女は語っていました。
 彼女は若い女性の代表としてスピーチしましたが、これは若い女性だけに当てはまるものではありません。性別も国籍も年齢も関係ありません。私の父親は仕事で悩んでいた私によくこんな話をしてくれました。「ええか、正しいもの、努力するもの、成功するものは必ずねたまれ邪魔されるもんや。しかし、お前自身がそれに振り回されることなく信念を曲げず誠実に頑張り続ければ、 いつの間にか、自分の足を引っ張る邪悪なものはいなくなる。汚れた水でも生きていける魚はわざわざ清流には棲まない。なんでかわかるか?清流にはえさが少ないからや。だから、清流には清らかな水でしか生きられない魚だけが生息することになるんや。お前のこころが清らかであり続けるなら、ふと気が付いたとき、お前の周りにはお前を支えてくれる味方しかいなくなるんや。 いつかそうなると信じて迷わずに生きろ。」私には、亡くなった父と、この若い女性アーティストのスピーチが言おうとしていることは同じだと感じました。迷ったり悩んだりした時に、私が必要とするこころの支えであり、原点を改めて思い出させてくれるものでした。皆さんはこれから厳しい世の中に出ていきます。しかし、怖がる必要はありません。自分の目的に向かって突き進めばいいのです。 道に迷ったら、戻ってみればいいのです。人生は長いようで短いですが、短いようで長くもあります。考える時間ややり直す時間はあります。これからの皆さんの人生が、誠実に頑張った者だけが味わえる高みを経験し、最高の瞬間を感じられる人生であることを祈念し、私からの最後のメッセージとします。自分を信じて集中していれば、最高の瞬間があなたを待っています。
 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、お子様のご卒業まことにおめでとうございました。成長し懐から少しずつ巣立っていこうとするお子様の今後の成功をお祈りいたします。また、これまで本校の教育活動に対し、物心ともにご協力・ご支援いただきましたこと深く感謝申しあげます。本当にありがとうございました。
 本日卒業していく若人が、懐風館での日々を懐かしみながら、無限の広がりをもつ世界に翼をひろげ、はばたいていかんとすることを祈念し、本日の式辞といたします。
    

平成28年2月27日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 3期始業式


 
  あいかわらずの暖冬のまま新春を迎え、本日より3学期が始まります。1年の始まりにあたって私からの挨拶をします。

 「一日の計は朝にあり、一年の計は元旦にあり」という諺があります。「計」とは、企てる、はかりごと、計画、計略を表わします。 つまり、一日の計画は朝に、一年の計画は元旦にしっかり決めて無駄のない有効な一日、一年を過ごすべきだという意味のことわざです。私が入学式、一学期の始業式からくりかえしてきたことは、目標設定の重要性と目標をもたずに暮らすことのむなしさです。おぼえていますね? もう繰り返しませんが、一年の始まりにあたって、再度自分の目標設定をしてください。

 さて本年度途中に報道されたので知っている人も多いと思いますが、選挙権の年齢が引下げられ、18歳から選挙権が与えられることになりました。この3年生から本校においても「政治的教養をはぐくむ教育」に取り組んでもらうことになりました。3学期中に社会科の先生からの授業があると思いますので、しっかり選挙の仕組みを学んでから投票に参加してください。 私からは、政治や選挙に関することに始まりありとあらゆる情報にとりまかれた現代社会を生きていくうえで必要な力とは何かを少し話しさせてください。みなさんは「朝飯前」という言い回しを知っていますね?「朝ごはんを食べる前の短い空腹な時間でもできるような簡単なこと、楽にできること」といった意味でつかわれているようですが、本来の意味は違うと聞いたことがあります。 日本では江戸時代の中期頃まで一日二食制でした。人々は、夜明け前に起き、簡単に身支度を整え、畑仕事などに出かけます。一仕事終えるころには周囲は明るく、夏なら熱くさえ感じる時刻になっています。家に帰り、簡単な朝食を食べます。さて、そのあとは何をすると思いますか?昼寝です。哺乳類は食物を摂取すると眠くなるようになっています。 食べたものを消化するために体内のエネルギーを集中させるためです。消化を始め、筋肉や脳細胞を休ませ、体全体をリフレッシュさせるために睡眠をとるのです。学校でも、昼休みにお弁当を食べた後の5時間目は特に眠いですよね?さて、昼寝から目覚め、日が傾きかけた夕方に人々は再び働き始めます。水汲み、薪ひろい、魚釣り、森に入り木の実を拾います。軽作業ですね。さて、そのあとは?辺りは急激に暗くなります。 電気?街灯?照明?蛍光灯?すべてありません。夕ご飯を用意し食べます。そのあとは、せいぜい火をくべた囲炉裏の周りでわらじや蓑を編むなどの作業しかできません。そして、眠るのです。そのような一日のサイクルをわかったうえでも、「朝飯前」の本当の意味は「簡単なこと」だとまだ思いますか?「朝飯前」は、十分休息した後のフレッシュな肉体と脳細胞を使って、一日で最も充実した仕事ができる時間帯のことだとは思いませんか? ところが、ネットでいくら調べても「朝飯前」の意味は、すべて「簡単なこと」としか出ていません。本当の意味はどちらなんでしょう? 江戸中期以降のたった数百年の生活とそれまでの数千年にわたる生活のどちらが正しいのでしょう?

 もう一つの例を上げます。少し前まで、「朝ごはんを食べよう!運動」ってありましたよね。「勉強のできる子どもは家で朝ごはんを食べてから登校している」「勉強のできない子はほとんど朝ごはんを食べていない」と調査によって判明しました!といった記事をよく目にしました。 だから、みなさん朝ごはんを食べましょう!これは科学的にも理にかなっているのです!と。しかし、私は、その説にはまったく根拠がないというある科学者の記事を読んだことがあります。つまり、「勉強のできる子どもの家庭は、たいてい親が朝ごはんを作り子どもに食べさせてから学校に送り出すような家庭」であるから、結果的に勉強のできる子どもは朝ごはんを食べてきているだけであり、勉強のできない子どもの家庭は、その逆が多いだけだという解釈です。 これもどちらが正しいのでしょう?いや、どちらも正しくないのかもしれませんね。ものの見方は、このように視点を変えるとまったく違う解釈が生まれてきます。
 長々とつまらない話をしてしまいましたが、私が言いたいことは、「通説、常に正しからず」ということです。この話は本当か?本当に正しいのか?という視点を常にもった人になってほしいのです。自分の力でものの真偽をはかれる人間になることが生きていく力の基本だと考えています。物事の真偽をはかる物差しを身に付けることが教育であり、学習だと思います。テレビやインターネットやウイキペディアに書かれていることをうのみにすることのない目を養ってください。 私の今日の話も疑ってください。そして、自分で調べてみてください。書籍で調べてみてください

 学校生活に無駄なことはありません。授業も行事も部活動も、通学でさえ無駄ではありません。生きている人間が日々実体験すること、その実体験で経験したことから多くを学ぶのです。学生時代は、その多くを学校で過ごします。みなさんが実体験するのは、この学校においてなのです。残りの時間を無駄にすることのないよう毎日を一生懸命生きてください。卒業、進級に向けて最後まであきらめずに頑張ってください。それでは、これで3学期の始業式の式辞とします。

平成28年1月8日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 2学期終業式


 
 暖冬とはいえさすがに朝晩はコートが必要な季節となりました。高校生活においてもっとも長く大切な学期は2学期です。その2学期の終業式を本日迎える事となりました。みなさんにとって、どんな2学期だったでしょうか?
 懐風館高校にとって、今年度は、特別な年度です。普通科総合選択制の高校として七年間やってきた本校は、本年度の入学生を最後に普通科総合選択制の学校を卒業します。今、ここにいる生徒はすべてほぼ同じ教育課程のもと学習に取り組んでいます。 5つのエリアに分かれ、それぞれの目ざす進路目標に向かって個性的な時間割のもと日々の学習生活に励んでいる事と思います。3年生はその3年間の取り組みの成果を試し、2年生はまさにその努力の途上にあり、1年生はエリアの選択と言う名の進路設計を迫られています。 普通科総合選択制ならではの利点を活かし、全員が希望の進路目標に向かって頑張ってくれるものと期待しています。
 さて、2学期を振り返ってみましょう。まだまだ夏真っ盛りの酷暑の中、3年2年は8月21日から、1年は25日から授業が始まりましたね。あの暑さまぶしさを覚えていますか?人の記憶と言うものは、はかなくもろいもので遠い昔のような気がしませんか?
 9月12日に文化祭が開催されました。3年生を中心に素晴らしい演劇やパネルなどの作品を見せてもらいました。おもしろいけれどもまじめに書かれた台本、熱意がありながら肩ひじ張らない演技、大仰ではないがセンスのある演出、そのすべてにおいて今年度の3年生のいくつかの演劇は本校の文化祭でもっとも評価に値する出来栄えでした。 生徒の熱意、担任の思いが感じられ、私はこの学校に残ってこの姿を見ることができて良かったと思いました。現在3年生は、進路先の決定した人、現在発表を待っている人、これからも挑戦を続ける人、進路先にいまだ迷っている人など様々でしょう。来年度入学する8期生のキャッチフレーズは自分の力と可能性を信じ挑戦し続けるという意味から 「めざせビリーバー!」と決めています。信じる事です。あきらめないことです。私は、人を信じられない人は嫌いです。自分を信じない人はもっと嫌いです。最後まで頑張ってください。5期生はすばらしい力を持った生徒の集まりです。私はあなた達を最後まで信じています。
 2年生にとっては、何と言っても修学旅行ですね。10月14日から17日まで楽しい旅を経験しました。14日早朝、新大阪駅に集合した6期生のみなさんは、私服ではありましたが、華美な服装や不必要な装飾もない高校生らしいいでたちでした。待機している間も一般の利用者に迷惑をかけることもなく好感をもてるマナーでした。 この集合の姿は、新幹線の中、ホテルの中、バスの中など旅行の間すべての機会において継続されました。自由時間を過ごした熊本においても。ラフティングやマリンスポーツに興じ、集団で泳ぐイルカの姿に癒され、まるで本当の孫を見るような目であたたかく迎えていただいた民泊先の方々の控えめな笑顔を忘れることはないでしょう。 あの東シナ海に沈む夕日はいまだに目に焼き付いていますね。それと、私が今回の修学旅行でもっとも注目していたのは、最後の夜のレクでした。学年の生徒のまとまり、前に出ることのできる生徒の存在、普段は目立たないけれども意外な表現力のある生徒、生徒を支え見守る先生たちの姿、そのすべてが一度に分かるからです。今回の評価は、とても高いものでした。 3年生の劇とともにこれまでで一番良かったです。さあ、半年後には進路目標の獲得に向けた具体の活動が待っています。2年生での頑張りが重要です。6期生は成績優秀ですが、本当の成果は進路結果です。来年を楽しみにしています。
 1年生は、懐風館に慣れましたか?あっという間にあと三か月になりましたよ。自分の進むべき方向は見つかりましたか?エリアは決めましたか?選択科目がありますが、選べますか?後悔することのない選択をしてください。関西福祉科学大学の学生さんを見て何を感じましたか?1年生には、欠席が多い、欠点が多い、成績が振るわない、進級が危ぶまれる生徒が多くいると聞いています。 私は、教諭時代に21回クラス担任をしましたが、その中で、進級できなかったり卒業できなかったり、または途中で退学・転学した生徒は、6人です。もちろん全員の事を覚えています。その中でも私が初めて担任をしたクラスにいたT君のことは今も私の胸から頭から心から離れることはありません。1年生の夏休み中にバイクの事故で亡くなったT君。 その屈託のない笑顔とその明るさに周りにいる生徒は自然と笑顔になったものでした。そんな人柄に加えて勉強もできたT君はご両親の自慢でした。事故の夜、自宅の畳のうえに敷かれた布団に寝かされた彼の姿。部屋の片隅でむせび泣くお母さんの姿を私は一生忘れることはありません。彼の死を悼んで校内に植えた白いむくげの木は、今も毎年花を咲かせています。 「生きていることは、それだけで苦しいものである」とある詩人は言いました。「生まれてきてすみません」と書いた作家もいます。しかし、「この世に人として生まれてくる確率は、全世界の海岸にある砂粒を人の手に上から落し、爪の上に残る砂粒の確率に等しい」と科学者は言います。「学校がおもしろくないのですか?他に何かそれに代わるものがあるんですか?本当にもう限界なんですか? できることはもうないのですか?自分であきらめていないですか?頑張るなら先生も一緒に頑張るよ!」私は、いつも担任をした生徒に呼びかけ励まし続けました。人間はみんな同じです。サイボーグも宇宙人もこの学校にはいません。最後まであきらめずに頑張りましょう!  今、懐風館は変わろうとしています。おそらく十年後になれば、あの時が大きな転換点だったなと言われる時になります。生徒のみなさん一人ひとりの頑張りが学校を作ります。先生一人ひとりの頑張りが生徒を育てます。先日道明寺に住むある女性に落し物を届けた女子生徒がいると聞きました。 その女性はあきらめていたものを届けてくれたその生徒に感謝していると伝えてほしいとおっしゃっていました。この中にいるのでしょうね。そんな美しい誠実な心をもった生徒がいるこの学校が私は好きです。模試の結果を校長室に知らせに来てくれた生徒もいます。頑張った人は頑張ったからその結果を嬉しく思うのです。この場所に今いっしょにいることの縁を感じ、これからもともに学びともに頑張っていきましょう。 3学期になって、また校長室に生徒が戻ってこれるようになればいいな、そんなことを考えています。
 最後に、「スヌーピー」からチャーリーの言葉の引用をし、2学期の終業式の式辞とします。           
 言わないからって 
  なやんでないわけじゃないし 
  だいじょうぶなわけじゃないし 
  おこってないわけじゃないし 
  よろこんでないわけじゃないし 
  考えていないわけじゃない 
   
  言葉にしなくても 
  気持ちに気付いてくれる人 
  見てくれてる人がいたらいいな
 
   
  そしてそんな人にぼくもなりたい  』

平成27年12月24日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 2学期始業式


 猛暑続きの夏にも少し陰りが見え、朝晩はヒヤッとした空気が感じられる季節となりました。いよいよ本日より全学年がそろい2学期の始業式を迎えました。  まずは、私が終業式で皆さんにお願いをしたことを振り返ってみましょう。
 充実した人生には、目標が必要であり。現状分析 → 目標設定 → 具体的な計画の作成 → その計画の実践 → 振り返り → そして新たな目標設定という永遠に終わることのないサイクルが必要であることを確認しました。そして「あなたは何をすることが好きか?あなたの夢は何か?その夢は実現できそうか?その夢の実現のためにあなたは何をしているか?また、その夢の実現のためにあなたは学校に何をしてほしいか?」と問いかけました。さらに、 この4つの質問に対する答えを私にかえしてくれることをお願いしました。この機会に、再度心と頭を使い、自分の考えを整理してみてください。
 さて、2学期は、文化祭があります。3年生を中心に、クラスごとにその総力を結集し、充実した内容になり、全体として盛り上がりのある文化祭になることを期待しています。3年生になったら、あんな劇をやってみたいな、と下級生に思わせるような劇があったり、日頃の部活動での成果を発揮してくれるクラブがあったり、模擬店等で楽しそうな笑顔を見たりしてみたいです。中でも演劇は総合芸術と呼ばれ、脚本・演出・音響・衣装・小道具・大道具・宣伝パネルなど、それぞれに適性をもった生徒が、クラス担任のアドバイスやリーダーシップを発揮する生徒を中心にクラス全員の力を集めて一つのパフォーマンスをやり遂げる達成感のある取組みです。教育的効果がありしかも楽しい行事である文化祭でのみなさんの充実した笑顔を心待ちにしています
 また、2年生は10月に修学旅行に行きます。受け身ではなく積極的に参加する修学旅行とし、一生忘れることのない楽しい思い出を作ってください。 1年生は、エリアについて学び、みずからの進路について考え始める学期でもあります。高校生として、とてもとても大事な時期であることを意識し、毎日を無駄にしないで過ごしてください。
 最後に、どうしても今日みなさんに話しておきたいことがあります。私は、1学期の終業式の式辞を、「みなさんが、自分の心と体、そして命を大事にし、誰も傷つくことなく全員が元気な姿で2学期の始業式を迎えることができることを祈念し、1学期終業式の式辞とします。」という言葉で締めくくりました。 本校の在校生については、大きな事件事故に巻き込まれることなく、みな元気で本日登校してくれていると聞いています。まずは、そのことをうれしく思い、感謝したいと思います。 二人の若い命が理不尽にしかも無残に奪われてしまった寝屋川の事件のことは、みなさんも連日の報道により知っていますね?奇しくも二人の遺体の発見現場のすぐ近くにはそれぞれ府立高校があります。私は、あの事件の報道に触れてから、あの事件の背景にいったいなにがあるのか?どうすれば再発は防げるのか?大人は、社会は、学校は、いったい何をなすべきなのかと自問し続けています。防犯カメラは犯人の捜査には有効でも、予防にはなりません。10年前に発生した寝屋川小学校での殺傷事件をきっかけに、数千万円をかけて駅前や商店街に設置された防犯カメラは、二人の犠牲者が姿を消したであろう一角だけが死角となり容疑者と犠牲者の接点を映すことすらできませんでした。様子を不審に思い、二人に声をかけた何人かの大人は彼らの命を救えなかったことを後悔しています。日本各地の地域見守り隊は高齢化が進み運営がままならず、若い人たちの協力を必要としています。そして子どもや未成年者にとって、保護者の役割とはいったいなんなのかということを改めて考えさせられる事件でもあります。
 みなさんにお願いがあります。自分の体や生命は自分自身で守るものです。しかし、保護者・家族・学校を含む地域住民が力を合わせてお互いの安全と安心を守るのが「社会」ではないのでしょうか?「懐風館高校は、地域のリーダーを育成する学校」です。本校には、地元にしっかり腰を据えて地域に貢献する卒業生がたくさんいます。皆さんも自らの安全を守れる大人に、そして地域の安全を守れる大人になってください。 私は、学校に行く目的は、勉強すること、社会性をみにつけることであり、社会に貢献できる人間になるためだと確信しています。日本のため、大阪のため、地域のために自分は何を学び、何をもって社会に貢献していくのかを考え、自らの進路を決め、その目標達成のために日々あきらめずにチャレンジし続ける皆さんでいてくれることを期待し、2学期始業式の式辞とします。

平成27年8月25日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 1学期終業式


 じめじめとした梅雨はまだ明けていませんが、時折夏のまばゆい日差しと蝉の声に本格的な夏の到来を感じることができる季節となりました。いよいよ夏休みだというこの季節に台風が水を差し、終業式が予定通り行えるか危ぶまれましたが、本日、平成27年度1学期終業式を迎えることができました。
 今日は、1学期の復習をしてみたいと思います。  私は、4月の入学式・始業式の式辞において、生徒のみなさんにいくつかお願いをしましたが、おぼえていますか?
 始業式では、「顔をあげて、笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって邁進し行く1年間となることを期待します。」という言葉に始まり、「3年生の皆さんには、最上級生として2年生、1年生の憧れの先輩となってください。進路目標に向かって、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって努力する充実した学校生活を送ってもらいたい。目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。」とお話ししました。雨の中、最後までやりぬいた体育大会において、3年生は、リーダーシップを発揮し、ルールを守りながらもできる限りの自己表現とパフォーマンスを成し遂げました。競技中、団席において声を限りに応援を続け、ありったけの笑顔で踊る3年生の姿に、私は感動しさわやかな青春を感じました。そして、ようやく懐風館の体育大会も完成しつつあるのかな?と、充実した心持になりました。かっこいい3年生、あこがれの先輩の片りんを垣間見ることができました。2学期には、それぞれの進路目標の達成、文化祭という大きなイベントが待ち構えています。次なるステップに踏み出すために、この夏休みを有効に過ごしてください。
 次に、2年生のみなさんには、「欠席数、遅刻数がこれまでのどの学年よりも少なく、240名全員が進級することができた」ことを讃え、「授業・クラブ活動・行事すべての場面において、一番中核となる2年生がしっかりしている学校は盤石である」とお話ししました。今年度も、遅刻の少なさは維持され、もっとも揺れると言われる2年をまずまず順調にはじめられたのではないかと思います。2学期には、文化祭だけではなく、修学旅行という大きなイベントも控えています。しっかり、足元を固め、目標をしっかりその手につかむための努力を今一度スタートする気持ちでこの夏休みを活用してください。もう一度、自分は今のままでいいのか、この目標でいいのかと?立ち止まり、再スタートを切るための夏休みだという気持ちで過ごしてください。
 最後に、1年生には、入学式において、「目的のない人生はむなしく、なすべきことのない日々は、無駄であり、人々のために尽くす。行動する。これほど尊い人生はない。」というある哲学者の言葉を紹介し、「目的をもちましょう!なければ探しましょう!」と呼びかけました。学校を休みがちな生徒がいる一方で、遅刻も欠席もせずに毎朝登校し、気持ちよく挨拶してくれる1年生がたくさんいます。大丈夫かな?勉強についていけてるかな?友達たくさんできたかな?そんなことを思いながら、私は朝、正門に立っています。1年生は、懐風館で過ごした1学期を思い出し、足りなかった部分を分析し、2学期からさらに成長した姿で登校できるようにしっかりこの夏休みを有意義なものにしてください。目的探しを継続してください!
さあみなさん、最後にもう一度おさらいをします。私のお話ししたいことは、いつも同じです。100回あれば100回同じ話をします。真理は一つだからです。 充実した人生には、目標が必要です。現状分析 → 目標設定 → 具体的な計画作成 → 計画の実践 → 振り返り → 新たな目標設定という永遠に終わることのないサイクルが必要です。  「あなたは何をすることが好きですか?あなたの夢はなんですか?その夢は実現できそうですか?その夢の実現のためにあなたは何をしていますか?また、その夢の実現のためにあなたは学校に何をしてほしいですか?」  この4つの質問に対する答えを私にかえしてください。私は、ずっとみなさんを見ています。 みなさんが、自分の心と体、そして命を大事にし、誰も傷つくことなく全員が元気な姿で2学期の始業式を迎えることができることを祈念し、1学期終業式の式辞とします。

平成27年7月17日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 7期生入学式


 桜花爛漫の季節が過ぎ、木々に芽吹く緑が目立ち始める季節となりました。まさしく、その新芽のように若々しく無限の可能性に満ちた新入生の皆さんを迎える日がやってきました。
 大阪府立懐風館高等学校第七期生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 本校を選択し、入学してくれたこと、本当に心から感謝し、最大の祝福をもって歓迎します。ここにいる240名の七期生全員が、懐風館という学び舎で多くの友と出会い、多くの師から学び、3年後に成長した姿で巣立っていってくれることを期待しています。
 保護者の皆さま、誕生の瞬間から今日までの長きに渡る子育ての一区切りとして、今日の佳き日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。式辞の始めにあたり、お祝い申しあげます。保護者にとってかけがえのない「宝物」であるお子さん方をお預かりしました上は、「懐風館生」としてしっかりお育てしますことここにお誓い申しあげます。
 申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校入学生をお祝いくださるために、大阪府教育委員会ご代表をはじめ、懐風館高校を支えていただいております皆さま方のご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。まことにありがとうございます。

  さて、入学生の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。そして、私もあなたたちのために努力し約束することをお話しします。
 まず「入学生の皆さんは、自分がなんのために生きているのか考えたことがありますか?」 言い換えると、「何を目的として、何をするために生き、勉強しているのか考えたことはありますか?」「目的のない人生は空しく、なすべきことのない日々は無駄」です。その一例として、少し私自身の経験をお話しさせて下さい。目の前にいる人の体験談が一番聞いている人の記憶に残るだろうと思うからです。私は、高校時代三年間、書物の中に真理があると信じ、古今東西の文学書や哲学書を何百冊と読み漁り、生きる目的を探し続けていました。しかし、これだ!と思える目的を発見できないまま無為に日々が過ぎ去っていきました。思春期にありがちな感傷と絶望と虚無感に浸り、ただただ救いを求める日々が続いていました。こうして、私の高校時代は暗い思索のトンネルから抜け出ることのないまま終わりました。クラブ活動もせず、したことと言えば「少しの勉強と読書だけでした」。しかし、我が家は経済的に苦しく、進学することは贅沢なことであると思いながらも、大好きな文学を学んでみたいという思いだけはあったので、親に大学進学を許してもらいました。もちろん学生時代の4年間、親からの仕送りは一銭もありません。安アパートに下宿し、奨学金とアルバイトで暮らす貧乏生活をしながら、あいかわらず読書三昧の日々を過ごしていたある日、私は、ある哲学者のエッセイにこのようなくだりを発見したのです。そのエッセイで著者は、
「わが人生を、よりよく生きぬくためには何が必要か。それは目的である。何のために生きるのか。自分の人生は、どこに向かっていくのか。そのいちばん大事なことを、教育は教えていない。いや、それがわからないから、大人は、子どもたちに教えられないのだ」と。
さらにその哲学者は、まさしくその人生の目的を決めかねていた私にヒントを与えてくれました。
「人々のために尽くす。行動する。これほど尊い人生はない」と。
私は、何十回もその文を読み返し、大人も人生の目的をもっていないのか?だから子どもに教えられないのか?と何度も何度も自問しました。そしてようやく次のように自分の考えをまとめました。私が好きなのは、文学、特に好きなのは英文学。どうせなら好きなことに関わる仕事がしたい。しかし、それを生かしながら人のために尽くすためにはどうすればいいのか?そうだ、私は、最初英語は好きでも得意でもなかった。嫌いで不得意だった英語を自分なりの工夫で克服した経験を私はもっている。それを生徒に教えてあげよう!そうすれば英語が苦手な生徒のためになる。さらに、物心ついたころから貧乏生活続きだった私なら、経済的にしんどい思いをしている生徒の気持ちがわかる。さらに、そもそも私は、幼稚園の頃から学校や先生からひどい目に何度もあわされてきた経験がある。こんな「学校嫌い」「先生嫌い」の私が先生になったら逆に同じような生徒の気持ちがわかるのでは?これまで生きてきた自分の経験がどれも無駄ではなく、それを生かすことができる仕事がある!これだ!学校の先生になろう!と決意したのです。そしてその日から、私は目的をもった人間らしい生活をし、高校の英語の先生をめざし、英語の勉強を真剣に始めたのでした。今思えば、ずいぶん無責任な決め方で冷や汗ものではありますが、振り返ってみれば、先生ほどおもしろい仕事はない!しんどいこともあったけどこんな幸せな職業はない!と、私は今現在確信しているのですから、この選択はあながち間違っていなかったようです。
 以上のような私の経験からも、充実した日々を送るには、人生の目的、目標をもつことが必要なのです。特に高校時代は、将来のための準備の時です。その時代をいかに過ごすかはとても大切です。まずは、目的をもちましょう!なければ探しましょう!そして、自分の可能性を信じ、高い目標を掲げ、あきらめずにそれにチャレンジしましょう!人の命は、地球よりも重く、すべての人には同じだけの可能性があるのです!


 もう一つ、皆さんに求めること、約束してほしいことがあります。 あなたたちは、懐風館生になったのだということをしっかり自覚してほしいということです。高校には、共通のルールや決まりもありますが、懐風館にしかないものもあります。ルールや慣習は、文化となり風俗となりみんなの常識となり、伝統となっていきます。懐風館には、まだ伝統と言えるものはないのかもしれません。ルールを作り、それを浸透させ、学校の土台を作り、「懐風館流」が少しずつ出来上がりつつあるのです。皆さんは、その「懐風館流」を理解し、従い、慣れ、立派な懐風館生となってください。他とは違う懐風館の伝統を一緒に作っていきましょう!


  次に、私があなたたちに約束することをここにあげておきます。私自身が常に心がけ、生徒や保護者と対応する際に先生方に求めていくことです。教育の秘訣は、子育ての鉄則と同じなのです。
@生徒をほめること
A生徒を信じること
B愛情をもって、生徒に接すること
C忍耐力をもって、生徒と接すること
D生徒との約束を守ること
Eしっかりとした意志をもって、生徒と接すること
F生徒に尽くしていこうという心をもつこと
G家庭と学校が、よく協力すること
以上8つの約束をここに誓い、私から入学生への言葉とします。


 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、縁あってお子さまにご入学いただきましたうえは、積極的に本校の教育に関わっていただき、今後ご協力・ご支援頂きますことを切にお願い申しあげます。
 本日入学した若人が、懐風館での日々を幸多く有意義なものとすること、また、ご参加いただきました保護者や地域の方々にとっても今日という日が発展と喜びの再出発の日となりますことを祈念し、本日の式辞といたします。

平成27年4月8日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



平成27年度 1学期始業式


桜花爛漫の季節から木々に芽吹く新芽が目立ち始める季節となりました。
本日は、平成27年度1学期始業式を迎える佳き日です。
 2年生3年生の皆さん進級おめでとうございます。
新たな学年・新たなクラス・新たな担任のもと新学年スタートの日です。
 顔をあげて、笑顔で、明るく、一人ひとりが、それぞれの目標に向かって邁進し行く1年間となることを期待します。
 私は、この4月から本校の校長になった羽田真といいます。昨年度まで教頭として6年間この学校で勤めてきたので、顔は知ってくれていることでしょう。これからは、私が、あなた達の授業や担任をしてくれる先生方の代表です。よく覚えておいてください。 さて、生徒の皆さん、私があなたたちに求めること、期待すること、約束してほしいことをこれからお話しします。
まず、3年生の皆さんは、最上級生として2年生、新入生の憧れの先輩となってください。 進路目標に向けて、自分のなりたいものに向かって、自分の行きたいところに向かって、努力する充実した学校生活を送ってもらいたいものです。目標ももたず、だらだらと過ごす若者は美しくありません。授業・クラブ活動・行事に全力でチャレンジする生き生きとした先輩になってください。そして、自分の可能性を信じ自分の限界に挑戦するかっこいい先輩になってください。私は、中学校の時陸上部に在籍し、毎日練習に汗する先輩の姿をかっこいいなと思い自分が疲れても頑張り続けたことを覚えています。部活で活躍する先輩は、成績もよく後輩にも優しくしてくれました。5期生の皆さんは、そんな憧れの先輩になれる力や可能性をもっています。頑張ってください。今年一年間、私はさまざまな場面のあなた達を見に行きます。頑張っているか、へこたれているか、悩んでいるか、充実しているか、どんな顔をしているか楽しみにしています。
 次に、2年生のみなさん。あなたたちは、昨年度懐風館高校史上1番の記録を作りました。欠席数、遅刻数ともに、その少なさにおいてこれまでどの学年も達成できなかった記録を打ち立てました。そして240名全員が進級することができました。私は、教頭としてあなた達の頑張りを誇りに思いうれしい思いでいっぱいでした。授業だけでなく、ホームルーム活動においても活発であるとも聞きました。昨年度末に実施した学校教育自己診断に皆さんが記入してくれた意見はすべて読ませてもらいました。そのまま生かせることばかりではありませんが、先生方にはいろんな形ですでにお願いをしています。これからも生徒や保護者の要望を可能な限り学校運営に取り入れていくつもりです。授業・クラブ活動・行事すべての場面において、一番中核となる2年生がしっかりしている学校は盤石です。明るく積極的な3年生を、しっかりした2年生が支えてください。1年生は、まだまだ学校に慣れるのに時間がかかります。1年生の世話もしてあげてください。クラブ活動に誘ってあげてください。生徒同士が仲良く縦につながり学校を支えてほしいのです。
 本日進級した生徒の皆さん、懐風館はまだまだ新しい学校です。しかし、この6年間で作り上げてきた生徒指導方針のもと基本的な生活習慣のきっちりした高校生を育成し、その土台の上に、自らの適性と進路希望に応じたエリアを選択し、選択科目による効果的な学習スタイルを用いそれぞれの進路目標を実現するという本校のコンセプトはゆるぎないものです。私はそれに加え、今年度からの3年間計画の目標として、生徒会活動の発展とリーダーの育成、その結果としての校外学習を含めた総合学習・行事内容の充実と活性化、クラブ活動の活発化をあげています。そして、懐風館に来て良かった、後輩も懐風館に来させたい、そう皆さんが思えるそんな学校にすることが、私が校長としてなすべき第一の責務であると確信しています。そのために先生方の力を結集して皆さんの教育活動にあたっていきます。あなた達も、積極的、能動的に学校生活を中心にこの一年間頑張ってください。

これで、平成27年度幕開けの始業式式辞とします。ともに頑張りましょう!

平成27年4月8日

大阪府立懐風館高等学校長  羽田 真



  平成26年度 1学期終業式


 みなさんおはようございます。
ついこの前新学期を迎えたかと思っていたのに、あっという間に終業式を迎えました。みなさんにとって1学期の学校生活はどうだったでしょうか?
遅刻数をみると、あるクラスは遅刻者が0であると聞いています。これはなかなか難しいことで称賛に値することだと思っています。6月末現在、全体を合わせた数は190と、昨年に比べ大きく減少しています。よく頑張りました。みなさんの努力をほめたいと思います。2学期以降もこのペースでやってくれることを願っています。
さて、昨日の授業アンケートのお願いの際にも言いましたが、節目での振り返りは大切です。1学期を振り返りながら、しばらく私の話しを聞いてください。
 さて、先日サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会が終了しました。残念ながら日本は良い結果を残せませんでしたが、その代わり、現地で応援していたサポーターの行動が話題になりました。それは、日本代表の試合後に日本人サポーターが観客席のごみ拾いをしたことです。応援にも使った青いゴミ袋を使って、試合後にゴミを拾い集める日本人観戦客の姿が世界に報じられました。「礼儀正しさで高得点を挙げた」「市民の模範」というように海外から高く評価され、日本のよさについて世界中が改めて認識を深めることになりました。
 この日本人の行動に対して、先日リオデジャネイロ州政府は、サポーター代表として駐リオ日本総領事や地元日系団体代表を表彰しました。その際、「言葉が通じなくても動作だけで素晴らしさが伝わってきた。日本人の行動は文化的な遺産だ」と、その行動を讃えたそうです。
 近年は盛んにグローバル社会で生き抜くための知識や技能が求められるようになってきていますが、この日本人の行動は人種や民族の枠を超えて称賛されています。まさにグローバル社会で通用する態度・行動であると思います。日本人には挨拶やマナーなど日々の社会生活で培ったものが、しっかりと身についていることを示しています。
 本校でも先日60人近い生徒がサービス接遇検定を受験し、6割近くの生徒が合格しました。相手が快適であると感じるような世話、相手が感じがよいと思うような言葉遣いで接することを測る検定ですが、「サービス精神」「接遇の態度」は世界にも誇れるもので、グローバル社会の中で生きていくために欠かすことのできない重要な要素だと思います。2学期も実施しますので多くの生徒がチャレンジし、グローバル社会で通用する力を磨いていってくれることを願っています。
 この話と関連して今日皆さんに伝えたいことは「気づき」です。
先ほどのブラジルでの日本人の行動が世界のメディアで伝えられ、その反響の大きさから初めてわかったように、自分自身のよいところになかなか気づきにくいものです。逆に自分には良いところがないと思ったりしていませんか。自信をなくしていませんか。もしそのように思っている人がいるなら、それは気づいていないだけです。
みなさん一人ひとりよいところがあります。長所と呼べるものがあります。長い休暇はそれに気づき、その良さを伸ばすチャンスです。
 そこで、君たちに私から夏休みの宿題を出します。内容は「この夏季休業中に自分自身のよいところに気づいてください。そしてそのよいところをさらに伸ばすことを実践してください」です。得意な教科の学習でも、特技でも、あるいは部活動、ボランティア活動等、もし苦手なことを克服し、長所とするために力を入れたいのであれば、それでも構いません。8月の終わりに、「夏休みの間に私はこのことに頑張った」ことがあればぜひ報告してください。皆さんのチャレンジと頑張りを期待しています。
 明日から夏休みに入ります。今年は耐震工事の関係で皆さんに、とりわけ、部活動や講習、文化祭の準備などで登校する人に不便をかけることもあると思いますが、安全に気をつけてしっかり活動してください。
最後に、猛暑が続いていますが、体調に気をつけて、事故やけがのないように夏休みを過ごし、8月25日3学年が揃いますので、その時に元気な顔をみせてください。
これで1学期の終業式のあいさつとします。

    平成26年7月18日(金)       

    校 長   木 谷 秀 次


平成26年度 6期生入学式


 今年もまた、歴史遺産が数多く点在し、豊かな自然に恵まれた、ここ近つ飛鳥(ちかつあすか)の地に、暖かな春の日射しが降り注ぎ、皆さんを迎えてくれました。
 ただいま、大阪府立懐風館高等学校第六期生として、入学を許可いたしました二百四十名の皆さん、そして保護者の皆さま方、ご入学おめでとうございます。
在校生、教職員を代表いたしまして、心より歓迎いたします。
 また、本日、入学式を挙行いたしましたところ、大阪府教育委員会ご代表、後援会、PTAをはじめとする来賓の皆様方、そして、多数の保護者の皆様方には、何かとご多用の中、ご臨席賜りましたことに、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。ありがとうございました。
 新入生の皆さん、あらためてご入学おめでとうございます。そしてようこそ懐風館高校へ
これから皆さんは、先輩や友だち、先生方など、多くの人とともに、懐風館高校で学校生活を送っていくことになります。三年間といえば、八十年ともいえる人生の中では短い期間であるかもしれません。しかし、皆さんが人生という自分なりの物語を編むなかで、これからの三年間はその基礎を築いていく大切な時期です。私たちはその皆さんの学校生活をしっかり支えていきたいと思います。どんなに冷たい風が吹いても、どんなに厳しい状況におかれたとしても、今日のような暖かい「陽だまり」のある学校でありたい。その暖かさの中で、みなさんの夢を育み、夢を叶えるような学校でありたいと私たちは願っています。
 今、皆さんは、新しい環境に入っていく緊張感とともに、これから始まる高校生活に対して、大きな夢や希望を抱いていることでしょう。その夢を実現するために皆さんにお願いしておきたいことが二つあります。
 一つ目は、「温かい心」をもってほしい。皆さんの心の中に今日のような温かさを常に持ってほしいのです。学生である以上、しっかり学ぶのは当たり前ではあるのですが、学ぶことの前提として、他者に対する優しさや思いやり、愛情が必要だと思っています。
 皆さんは、中学校を卒業し、義務教育を修了しましたが、高校でさらに学び続けることのできる環境が与えられました。今の日本では、中学校を卒業した人のほとんどが高等学校に進学していますから、高校へ進学することは当たり前のことと思っているかも知れません。しかし、世界では、戦争、災害や貧困などのために学校に通いたくても通えない子どもたちが多くいます。そのようなことを考えた時に、こうして学び続けることのできる環境を与えられたということは、大きな幸せであるといえます。また、保護者や中学校の先生をはじめ多くの人が君たちの高校進学を願い支えてくれました。皆さんの学びを支えてくれるすべての人たちに対し、感謝の気持ちを忘れないでください。これからともに学ぶ人たちに対しても、思いやりと優しさを持ち続けてください。そして、ともに支えあい、励ましあいながら自らを高めていってほしいと思っています。
 二つ目は、将来に生きて働く「知識と技能」を身につけてほしい。おそらく皆さんは様々な夢や希望をもって、高校の門をくぐったことでしょう。将来はこうなりたい、こんな仕事に就きたいと思っている人も多いことでしょう。自分の夢をかなえるためにしっかり学んでください。皆さんが夢を実現することは、皆さん自身の喜びになります。そしてその喜びは、あなた自身のためだけではなく、人のため、社会のためにもなるものだと信じています。「温かい心」を持ち続けながら、この学び舎でしっかり学んで、様々な知識や技能を獲得し、冷静に物事を判断する力を高め、夢をかなえてほしいと思います。
 高校生活は、楽しいことばかりではないかも知れません。上手くいかないことや辛いこと、苦しいこともきっとあるでしょう。でも、学び続けることのできる幸せを理解していれば、必ず乗り越えていけるものだと考えています。
 そうした日々を過ごす中で、様々なことを体験し、そこから何かを吸収することにより、人は人として大いに成長していくのだと信じています。
 「はだたけ! 懐風館で」 新入生の皆さんの活躍を期待しています。

 さて、新入生の保護者の皆さまにもお願いがあります。
 子どもたちが成長していくには、ご家庭の協力が欠かせません。学校は、挨拶をすることや時間やルールを守ることをきちんと指導していきたいと考えています。ご家庭にあっても、挨拶やルールを守ることなど、「当たり前」のことがしっかりできるよう、子どもたちに対し、時には厳しく、時には寄り添いながら、見守り、支援していってください。ご協力をお願いいたします。

    最後に、新入生の皆さん、いよいよ懐風館高校での生活が始まります。高校の三年間は、長いようでいて、本当に短いものです。
一日一日を大切にして、卒業式を迎えたその時に「この学校よかった」と笑顔で言えるような、充実した三年間を送ってくれることを願っています。
 そのために、皆さんを全力で支援することを、すべての先生方とともにお約束して、第六回入学式の式辞といたします。

    平成26年4月8日       

    大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成26年度 1学期始業式



 みなさんおはようございます。
 いよいよ新しい学年が始まりました。3年生は当たり前のことですが、最後の一年です。進路という大きなものがすぐに君たちの前に広がります。自らの進路実現に向けて全力を尽くしてください。2年生は高校生活の中で一番楽しいと思える学年になりました。思い出となる修学旅行や部活動にしっかり取り組んでください。 さて、新年度の初めに当たって、「言葉の力」について話したいと思います。  「はじめに言葉があった。言葉は神と共にあった。言葉は神であった。」 これは聖書(ヨハネによる福音書)に出てくる一節です。何千年も前から言葉に不思議な力が宿っていることを多くの人は知っていたのです。わが国でも古事記や日本書紀の古代から「言霊」(ことだま)と言って、言葉にはそれ自体に一種の力があることを伝えています。昔から言ったことが現実に起こると思われ、「悪い言葉は悪いことを引き寄せ、良い言葉は良いことを引き寄せる」と考えられていたようです。
また、言葉には人を活かす力、立ちなおさせる力、元気にさせる力があります。一方、人を傷つけたり時には人の命を奪ってしまうこともあります。悲しいかな社会の様々な組織の中で、「いじめ」があり、その行為には必ずと言っていいほど、人格を傷つけてしまう言葉が発せられています。言葉のもつ力、そのプラスの力もマイナスの力も自覚したうえで、「決して悪い言葉、マイナスの言葉は使わず、常にプラスの言葉を使いたいものです」
 言葉について考えているときに、春休みにうれしいニュースがありました。今の3年生の人たちが昨年の「国語表現」の授業の課題で書いた文章が何度か新聞に掲載されました。みなさんの中にも読んだ人もいるかもしれません。
時間の関係ですべてを紹介できませんが、タイトルだけ紹介します。
 「ペットを飼う際は最後まで責任を」 読売新聞 4月1日付
 「笑顔はみんなを笑顔にする」    毎日新聞 4月5日付
 「『ながらスマホ』をやめよう」      毎日新聞 4月6日付
 「周りに目を向け席を譲ろう」     毎日新聞 4月7日付
どれも「なるほどそうだ」、「私もそう思う」と多くの人の共感や同意を得る内容で、自分の意見や提案をしっかりとした文章で述べていることに感心しました。まさにGood Practice(グッド・プラクティス)です。皆さんもぜひ良い取組みを実践してください。
 これに関して2つのことを話して終わりにしたいと思います。
一つは、自分の気持ちや思い、考えをうまく、しかもしっかりと伝えるようにしてほしいということです。2学期の終業式の時に、「プレゼンテーションは聴き手への贈り物なのです。人と話すときは、心をこめて贈り物を送るつもりで言葉を紡いでください」と話ししました。自分の思いや意見をうまく伝えるのは難しいものですが、日々の学習で語彙(言葉の数や使い方)を増やしたり、発表の“経験”を積んでいくことが一番です。うまくいかないときもあるでしょうが、心をこめて伝えるという原点を忘れずにチャレンジしつづけてください。  2つめは、自分の言葉に責任を持つということです。よく売り言葉に買い言葉といって、言い合いになった時など、勢い余って相手にひどい言葉を浴びせてしまうことがあります。「相手が悪いからだ」と相手を非難しても問題は解決しません。その言葉を発したのはあなた自身なのですから、そのことで起こる問題の責任はあなた自身が負わなければなりません。カッとなってしまいがちな人は、そのようなことにならないためにも、一度深呼吸でもして冷静になって対応することが必要かもしれません。
 皆さんにお願いしたいことは、「良い言葉はよいことを引き寄せる」という言葉の力を信じ、それを日々実践してほしいということです。新しい学年が皆さんにとって良いものとなることを願って1学期の始業式の式辞といたします。

    平成26年4月8日       

    大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 3学期終業式  


 おはようございます。  
 はじめに、進級おめでとう!
 今日は、学年の締めくくりとなる日です。節目となるときには、振り返りが大切だと思いますので、みなさんもこの一年をふりかえってみてください。  
 今年一年皆さんは振り返ってどうでしたか?よく頑張って目標を達成した人、頑張ったけど、目標には及ばなかった人、もっと頑張れたのではと少し後悔している人、さまざまでしょう。もちろん、結果は重要ですし、良い結果を残すことは望ましいことです。それにもまして、何を、どう取り組んだかが大切です。
 よく頑張って結果が良かった人は、より高い目標を定めてさらに頑張ってください。
 頑張ったのに結果が伴わなかったと感じる人は、その原因が何なのか。やり方に改善すべき点があるのか、よく考えてみてください。先生や周りの人からのアドバイスも受けて、よりよい方法が見つかれば、その努力はきっと実をむすぶはずです。
 もっと頑張れたのではと後悔している人は、自らを変える何かを始めてみてください。2学期の始業式でも話しましたが、「ちょっとプラスアルファで頑張ろう」とする行動を始めください。学習習慣が身についていないと感じる人は、まずは毎日30分でも構いませんので、家で勉強をすることを始めてみてください。きっと良い結果として君たち自身に返ってくるはずです。
 さて、卒業式でも話しましたが、この一年皆さんをみて良かったとほめたいことが2つあります。
 1つは、挨拶です。挨拶の大切さはこれまでも集会等でも話しましたし、先生方も毎朝皆さんに声かけしてきましたが、「おはよう。こんにちは。さようなら。」と声をかけてくれたり、会釈をしてくれる生徒が多く大変うれしく思います。外部からお見えになる人たちからも、「懐風館の生徒は礼儀正しく挨拶をきちんとしてくれて気持がいい」とお褒めの言葉を多く頂戴するようになっています。
 2つめは、時間を守れることです。ここ数年遅刻が大きく減少しました。一人ひとりが遅刻をしないという意識をもって行動してくれた結果だと思います。時には厳しい指導もしてきました。それに反発する気持ちを持った人もいることは承知しています。しかし、時間を守ることは大切です。時間を守らずして、人から信用を得ることはできません。挨拶と同様、時間を守ることを意識し実践してくれたことを褒めたいと思います。「ええもんはええ、あかんもんはあかん」と言い続けてきましたが、挨拶も時間を守ることも、間違いなく「ええもん」です。今後も続けていってください。
 新年度に向けて、みなさんにお願いしたいことがあります。
それは、あなたを支えてくれる人、身近な人を大切にしてほしいということです。今年の卒業式の式歌はレミオロメンの「3月9日」でした。この歌の中に、「瞳を閉じればあなたが、まぶたの裏にいることで、どれほど強くなれたでしょう。あなたにとって、私もそうでありたい」とあります。あまり意識しないかもしれませんが、誰かが傍にいることであなたが支えられたように、あなたがいることは誰かに勇気を与えています。私たちはともに生き、互いに支えあう関係にあります。このことを忘れないでください。
 家族はもちろんのこと、学校では、友だち、クラスメイト、先生、他にもあなたが生きていく中で多くの人があなたを支えてくれています。その人たちを大切に思っていますか?大切にしていますか?あなたの思いは発する言葉や行動・ふるまいに表れます。もう一度あなた自身の日ごろの言動を振り返り、支えてくれている人への感謝の思いをこめて、日々の学校生活を送ってほしいものです。

 ひと月近い春休みとなりますが、生活・学習両面で次の学年への準備もしっかり整えながら、有意義に過ごしてください。それでは、4月8日の始業式に全員元気でお会いしましょう。

 


    平成26年3月14日       

    校長  木谷 秀次




  平成25年度 卒業証書授与式  


   式  辞
 例年になく寒さの厳しかった今年の冬もようやく終わりを告げようとしています。柔らかな日差しに春の訪れが感じられるようになり、皆さんの旅立ちをお祝いする日がやってきました。
 大阪府立懐風館高等学校第三期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 楽しい時、苦しい時、嬉しい時、辛い時・・・ さまざまなことがあったであろう三年間を本校で過ごし、今日晴れて本校での学びを終えて巣立っていく二〇四名の皆さんの、これまでの努力を讃えますとともに、その門出を心から祝福したいと思います。
 また、保護者の皆さまにおかれましても、長きに渡る子育ての一区切りとして、今日のよき日を迎えられ、そのお慶びはいかばかりかと存じます。式辞の始めにあたり、お祝い申しあげます。
 申し遅れましたが、本日はご多用の折にもかかわらず、本校卒業生の門出をお祝いくださるために、大阪府教育委員会ご代表をはじめ、様々な方面から懐風館高校を支えていただいております皆さま方のご臨席を賜り、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。まことにありがとうございます。
 さて、卒業生の皆さん、今お渡しした、高等学校の課程を修了した証となる卒業証書はわずか十二gしかありません。しかし、そこに詰まっている思いには計り知れないほどの重さがあると思います。それはまさに、この三年間、様々な不安や期待の中で、自らの努力や仲間との協力を、縦糸、横糸にして織り続け、完成させた高校時代という一枚の織物、そのものだと思います。さまざまな思いや努力が詰まったその卒業証書を胸に、これからの人生の始まりとして、この卒業をとらえ、力強い一歩を踏み出していってください。
 これからの皆さんの歩みの中で、大切なものは何でしょうか。おそらく様々な答えが返ってくると思いますが、その一つは、“意欲”だと思います。激しく変化している現代社会の中では、今日獲得した知識が将来にわたって有効であるという保証はありません。もちろん、知識だけあっても社会を生き抜くことはできません。絶えず、“学ぶ”ことが必要になってきます。社会に出てからの毎日が本当の勉強で、それは一生続きます。何を学ぶかは人により違いますが、私たちは生涯にわたって、学び続けなくてはなりません。何事においても、学ぶことなくして、成長はありません。そして、学ぶにはみなさん自身が学ぼうとする意欲を持つこと、そして意欲を持ち続けること、が求められるのです。意欲は人から強制されて生まれるものではありません。自らの内面から湧きあがる“こうなりたい”“こうしたい”という気持ちや意志から生まれてくるものです。
 四月からの新しい環境で、皆さんの前途を「明るく、希望に満ちたもの」にするために、どうか自らが意欲を持って取り組めるものを見出し、夢を持ちながら、その実現に向けて日々努力を続けてください。
 皆さんなら、それができると信じています。なぜなら、この懐風館での三年間の学びの中で、人として大切なものを知り、頑張り通したからです。一つは、挨拶です。挨拶の大切さはこれまでも話し、先生方も毎朝皆さんに声かけしてきましたが、「おはよう。こんにちは。さようなら。」と声をかけてくれたり、会釈をしてくれる生徒が多く大変うれしく思います。外部からお見えになる人たちからも、「懐風館の生徒は礼儀正しく挨拶をきちんとしてくれて気持がいい」とお褒めの言葉を多く頂戴するようになっています。二つめは、時間を守れることです。ここ数年遅刻が大きく減少しました。一人ひとりが遅刻をしないという意識をもって行動してくれた結果だと思います。入学した瞬間から、五分前集合と言い続け、時には厳しい指導もしてきました。それに反発する気持ちを持った人もいることは承知しています。しかし、時間を守ることは大切です。時間を守らずして、人から信用を得ることはないでしょう。挨拶と同様、時間を守ることを意識し実践してくれたことを褒めたいと思います。「ええもんはええ、あかんもんはあかん」と言い続けてきましたが、挨拶も時間を守ることも、間違いなく「ええもん」です。今後も続けていってください。
今ここに懐風館高校での学びを終え、まさに社会へ飛び出そうとしている皆さんに、話ができる最後の機会としてメッセージを贈りたいと思います。
 今日の卒業の日をあなた自身の記念日として、心に刻み、何年経っても思い起こしてください。 今年の式歌「3月9日」の歌詞に「瞳を閉じればあなたが、まぶたのうらにいることで、どれほど強くなれたでしょう。あなたにとって私もそうでありたい」とあります。誰かが傍にいることであなたが支えられたように、あなたがいることは誰かに勇気を与えています。私たちは互いに支えあう関係にあります。
 さあ、瞳を閉じてみてください。まぶたの裏に浮かぶ人は誰でしょうか?思い浮かぶ出来事は何でしょうか?入学から卒業に至る日々を、できる限りたくさん思いめぐらし、それを心に深く刻んでください。この三年間、悩んだとき、苦しい時、辛い時もあったかもしれません。しかし思い起こせば、そのような時でも多くの人に支えられ、数々の“恩”を受けてきたことに気づくことでしょう。
 心に刻むとは、あなたの記憶にしっかりととどめることです。その記憶はまた、あなたたち一人一人の「未来を切り開く力」になっていきます。私はそう信じています。心に刻むことが多ければ多いほど、人は優しくなれます。感謝の念を持ち続け、感謝をもって人に接することができます。夢や希望を持ち続け、困難な場面に直面しても、前向きに立ち向かうことができます。
 あなたは誰かに支えられ、また時には誰かを支えながら生きています。このことを今日から始まるあなたの新しい人生において、忘れずにいてください。卒業の日を深く心に刻むことで、君たちに豊かな道が開かれていくものだと信じています。
 最後になりましたが、改めまして、保護者の皆さま、お子さまのご卒業 誠におめでとうございます。自分の世界を持ち、自立し始めたお子さまの成長に、少しの寂しさと不安を覚えつつも、思わず目を細めていらっしゃるのではないでしょうか。心からお喜び申しあげますとともに、これまで本校の教育活動に対し、物心両面からご協力・ご支援頂きましたことに深く感謝申しあげます。本当にありがとうございました。
 さて、卒業生の皆さん、いよいよお別れをする時がやってきました。
 名残は尽きませんが、いつまでもここに留まっているわけにはまいりません。       
 皆さんの目の前には、無限の可能性を秘めた新しい世界が広がっているからです。       
 さあ羽ばたきの時です。       
 懐風館高校で出会い、わずかでも同じ場所で、同じ時間を過ごした者の一人として、そんな皆さんの新しい世界が、健やかで、幸多いものとなることをお祈りして、式辞といたします。       


    平成26年2月28日       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次

     



  平成25年度 3学期・始業式  


 おはようございます。そして、新年おめでとうございます。皆さんは、よい年を迎えることができましたでしょうか?  
 今日から3学期がスタートします。3学年が揃うのもこれが最後となります。
 ところで、「今の学年」で登校する日数は、あと何日ぐらいあると思いますか?3年生は今日と学年末テスト、卒業式を含めて、20日。1、2年生は40日もありません。1、2年生には耐寒行事や学年行事もありますし、学年末考査もありますから、実際に授業を受けるのは30日ほどではないでしょうか。本当に短いこの3学期。各学年の最後を飾るにふさわしい行動をとってほしいと思います。  
 日本には、“終わり良ければ全て良し”とか“有終の美を飾る”という言葉があります。
 いままで色々怒られた人もいるでしょうし、よくやったと褒めてもらえた人もいるでしょう。皆さんを見てきたこの1年、様々な場面で本当に頑張っている姿をたくさん見ましたし、感動を与えてもくれました。
 皆さんは素晴らしい「力」を持っています。良いところを持っています。どうか出し惜しみすることなく、そして後悔しないように“全力”で3学期に臨むことを期待します。
 全員で“有終の美を飾ってください”
 さて、“全力”と関連する話しを少ししたいと思います。年末、映像会社を営みながら、アジアを中心に海外ボランティア活動を20年以上続けている池間哲郎さん(アジア支援機構)の講演を聞く機会がありました。
 池間さんの話の中で印象に残ったことが二つあります。
 一つはショックを受けたことです。
 物質的に恵まれている日本の若者の「先生や親を尊敬する」が世界最下位であるということでした。身近な人を尊敬するという人が少ないのは大変悲しいことです。私たちは毎日多くの人から“恩”を受けています。その“恩”に対しては感謝で応えたいものです。また、誰かのため、特に身近な人のために、学び、働き、生きています。“人のため”に活動するとき、その人に対する尊敬の念がなく、上から目線で行えば相手はわかりますし、反発されます。いつも相手を尊敬する気持ちをもちたいものです。
二つめは、“人のために”何かをしようと考えたとき、まずは、自分自身が一生懸命生きることが大切だと思ったことです。池間さんは、アジア途上国の貧困地域に生きる人々の姿を通して、モノはないかもしれないけれど、自分にできることはあると、自信をもって自分の得意なことをやり続けることで、周りを元気にする途上国の人たちをみて、一生懸命に生きることの大切さを強く感じたそうです。
 そこで、みなさんに今年の目標とする漢字を提示したいと思います。それは、“尊”です。
 尊敬や“尊” 。相手とくに身近な人を尊敬・尊重する気持ちを忘れないでほしい。
 自分の「自」と、尊重の「尊」とを併せて、自己評価の感情である“自尊感情”という言葉があります。自尊感情は高くもってください。自分には良いところがある、価値があると肯定的に捉え、自信をもって生きていってほしいものです。
 繰り返しになりますが、本当に短い3学期です。この短期決戦に自信をもって、一生懸命のぞんでください。そして、みんなが笑顔で卒業式・終業式を迎えられるようにと強く願っています。

 以上で、3学期始業式の式辞とします。


    平成26年1月8日(水)       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 2学期・終業式  


 みなさんおはようございます。
 2学期の始業式では、毎日少しずつ「昨日より今日」は頑張ったといえるよう、小さな努力を積み重ねてほしいこと、常に「一歩前」を意識して行動してほしいということを話しました。
覚えていますか?
少しでも実践できましたでしょうか?       
 この2学期は、文化祭、また3年生は進路に向けての取組み、2年生は修学旅行、1年生は職場体験など大きな行事もありました。2学期の終わりに当たって、君たち自身もどうだったか、今学期を振り返ってほしいと思います。
 さて、この年末年始、クリスマスやお正月などがあり、何かとプレゼントをもらったり送ったりすることも多い時期です。
 そこで、今日は「贈り物」について話したいと思います。今年のニュースの中で、2020年のオリンピックの開催地が東京に決まりました。その招致を決める最終プレゼンテーションの映像は、何度も放送されたので覚えている人も多いでしょう。滝川クリステルさんの「おもてなし」は流行語大賞にも選ばれました。
 「プレゼンテーション」略して「プレゼン」、今まで日本人が苦手とするところでしたが、心に残るプレゼンとはこういうものだ、ということを示してくれたように思います。
 実は、プレゼンテーションの語源はプレゼントです。これは結構有名な話です。たとえば、あなたが大切な人に何かプレゼントするとき、きっと相手の状況や性格、趣味や嗜好を考えるでしょう。相手が欲しい物を選び、内容を吟味します。きれいにラップし、洒落たリボンをかけます。そして、プレゼントを渡す場所を選び、言葉のメッセージを添えてプレゼントします。プレゼントですから、相手に喜ばれるものを贈りたいと考えます。それはプレゼンテーションそのものです。プレゼンが贈り物であるならば、自分がしたい話をするのではなく、相手が聞きたい話をしようと考えます。つまり、プレゼンテーションは聴き手への贈り物なのです。人と話すときは、心をこめて贈り物を送るつもりで言葉を紡いでください。それは教室の中での会話やSNSでのやり取りの時でもそうです。心を込めた“会話”を心がけてください。
プレゼンでもう一つ考えてほしいことは、これは聞いてくれる人がいて初めて成立するということです。プレゼンが終わったとき、プレゼンを行った人が「「本日はプレゼンの時間をいただき、ありがとうございます」と言っています。これは、話す側が聞いている人の時間をもらっているということを示しています。ですから、「プレゼンテーションはお返し」でもあるわけです。相手の貴重な時間をもらっているのですから、それに対する“恩”に応える意味で、一生懸命お返しをする。その気持ちでプレゼンをすれば、その場は暖かいものになるのではないでしょうか。
自分はプレゼンをすることはあまりないから関係ないと思う人がいるかもしれませんが、自分の思いや考えを私たちは毎日のように発表しています。その時に、今日話した「プレゼン」の2つの点、相手への「贈り物」、聞いてくれた人への「お返し」の心をもって、心をこめて言葉を語ることを心がけてほしいものです。言葉によって、人を喜ばせる、心和む時や空間を作り出すことができたらどんなに素晴らしいことでしょうか。
それでは、明日からの冬休み、今年は特に寒いので体調に気をつけて、全員元気に1月8日の始業式にお会いしましょう。
以上で、2学期終業式の式辞とします。


    平成25年12月24日(火)       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 2学期・始業式  


みなさんおはようございます。
約1カ月ぶりにみんなの元気な顔を見ることができ、うれしく思います。
今日から実質的に2学期の授業が始まります。その前に私から一言話をしますので、聴いてください。
2学期は、みなさんにとって大変重要な時期です。
3年生にとっては、進学や就職などの試験があり、自らの将来の進路先が決まる、踏ん張りどころとなる学期です。
2年生にとっては、高校生活最大の行事ともいえる修学旅行があります。楽しく充実したものとなり、よりよい思い出とするには、十分な準備が必要になります。
1年生は高校生活にも慣れ、授業だけでなく、職業体験などの経験を通して、これからの高校生活をどう充実させるか、大きなポイントとなる学期です。
また、9月14日には、文化祭という大きな行事があります。「おもてなしの心」を大切に、仲間と協力しながら、自分たちだけが楽しむのでなく、多くの人たちを楽しませるために、しっかりと準備をすすめていってください。
さて、2学期は中だるみの傾向になることがありますので、みなさんに一つお願いがあります。
それは、常に「一歩前」、「昨日より今日」を意識して行動してほしいということです。
ここでひとつ問題を出します。
1の1%はいくつですか?百分の1ですから、0.01ですね。
ですから、1の1%増というのは、1.01と表すことができます。
次に2×2は、4ですね。2×2×2は、8ですね。これは同じ数字を何度もかけているので、2×2は2の2乗、2×2×2は2の3乗と表すことができます。
では、先ほどの1.01の100乗、つまり1.01を100かけるとどれくらいになると思いますか?
関数電卓で計算してみました。
すると2.7 (2.70481382942)となります。元の1.01の2倍以上になります。       
それでは0.99を100乗したらどうなるでしょうか? 
1.01と0.99たった0.02の違いですから、あまり差はないと思うかもしれませんが、
0.366(0.36603234127)となり、もとの0.99より大きく減っています。
両者の差は約7.4倍にもなります。
何を言いたいかと言えば、
少しの違いが積み重なれば大きな違いになるということです。
1.01をかけるということは、「ちょっとプラスアルファで頑張ろう」とする行動を、       
0.99をかけるということは、「ちょっと残してまあいいか」という行動を、数値化したものと考えてください。
最初は0.02の差であったものが、積み重なれば、結果として大きな差が生じることになります。
2学期の授業日数は84ですが、休日を含めれば100日を超えてしまいます。
毎日少しでも頑張ろう。昨日よりは「少しでも前進させよう」という心構えと
「まあいいだろう」というのでは大きな差が生じます。
みなさんには、「少しでも前進させよう」という気持ちで学校生活を送ってほしいものです。
例えば、毎日遅刻ぎりぎりに登校した人なら、少し早く登校して、登校時間をすこしずつ早くして今より5分前には早くいつも登校している状態にする。
会釈しかできなかった人は大きな声であいさつできるようにするとか、挨拶する人の数を(近隣の人を含め)少しずつ増やす。
朝の小テストの平均点を1〜2点アップさせる。       
毎日の家での学習時間を少しでも増やすなど、学校や家庭での生活の中で、少し頑張れるものを自分自身でみつけ、是非、実行してください。
「昨日よりも少し成長したなあ」「今日はここを頑張ったなあ」この小さな積み重ねが君たちを大きく成長させると思います。
今年は酷暑ともいえる日々が多く、まだまだ暑い日々が続いています。体調管理に努めながら、より良い学校を送ってくれることを願っています。
以上で2学期初めの挨拶とします。


    平成25年8月22日(木)       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 1学期・終業式  


みなさんおはようございます。
1学期の始業式では挨拶について話しをしましたが、日々実践してくれているのはうれしい限りです。今日はさらにみなさんのコミュニケーション力がレベルアップすることを願って話したいと思います。
先日、今年8月に世界で初めて宇宙へと旅立つ人型ロボットが完成し、紹介されました。名前は「KIROBO(キロボ)」と言います。頭から足までの長さは34センチメートルと、「人形」のようなサイズながら、軽快な口調で話す人型ロボットです。この秋には宇宙飛行士の若田さんとの会話実験も行われるそうです。
これまでロボット言えば、プログラムされたことしか話せないことが多かったようですが、このロボットは話しかけられた言葉を認識し、意味や使い方を学習するようプログラムされており、人との会話が可能な最先端ロボットです。蓄積された記憶をもとに会話の内容を類推して、幾通りもの返事をしたり、画像認識技術により、人の顔を記憶して判別したりすることもできるそうです。つまり、キロボには、相手の受け答えやしぐさや表情を判断して会話することができるという特徴があります。
このニュースを見て2つのことを感じました。
一つは、人は分かち合える相手が必要だということです。宇宙空間で一人ならば話し相手がいません。それが毎日続くことは人間にとっては耐えがたいことでしょう。うれしいことつらいこと、相談したいことなど、人には話しができる相手が必要です。キロボ君が人間の代わりをどこまでできるのかわかりませんが、私たちには家族や友達などそばにいてくれる人がいます。それは大変幸せなことで、それを大切にしたいものです。
もう一つは、直接顔をあわせて話すことの大切さです。コミュニケーションは相手との関係性の中で育まれるものです。相手の表情やちょっとしたしぐさや反応に応じて、語る言葉も変わります。心ない言葉や無視されることはだれにとっても嫌なものです。相手の表情やしぐさ、反応などから、相手の気持ちに想いを巡らし、相手を尊重する気持ちで、言葉を交わしたいものです。
先日、携帯の利用のアンケートを各学年1クラスずつお願いしましたが、ほとんど人がスマートフォンを利用し、LINEを使っていることが分かりました。便利なツールではありますが、人権侵害や犯罪に絡むようなことも報道されていています。お互い顔の見えないなかで、言葉だけをやりとりするとき、誤解や思い違いが生じることもあります。メールなどでは自分の想いをうまく言葉できず、もどかしく感じることは私自身よくあります。だからこそ、直接顔をあわせることは大切なことだと思っています。
さて、明日から夏休みに入ります。部活動や講習、文化祭の準備で登校する人も多いと思います。また、自分の進路のために、見学や実習や体験活動を予定している人もいるでしょう。自らを成長させる“体験”をぜひ実践してほしいと思います。どうぞたくさんのよい体験をしてください。
最後に、猛暑が続いていますが、体調に気をつけて、事故やけがのないように夏休みを過ごし、全員元気に8月22日に会いましょう。
これで挨拶を終わります


    平成25年7月19日(金)       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 入学式 式辞  


 昨日までの春の嵐もやみ、今年もまた、ここ近つ飛鳥(ちかつあすか)の地に、暖かな春の日射しが降り注ぎ、正門横の八重桜や美しい草花が、皆さんを迎えてくれました。
ただいま、大阪府立懐風館高等学校第5期生として、入学を許可いたしました240名の皆さん、そして保護者の皆さま方、ご入学おめでとうございます。 在校生、教職員を代表いたしまして、心より歓迎いたします。
また、本日、入学式を挙行いたしましたところ、大阪府教育委員会ご代表、後援会、PTAをはじめ、来賓の皆様方、そして、多数の保護者の皆様方には、何かとご多用の折、ご臨席賜りましたことに、高壇からではございますが、厚くお礼申しあげます。ありがとうございました。
新入生の皆さん、あらためてご入学おめでとうございます。これから皆さんは、今日のような春のやわらかな光、夏の焼け付く日差し、秋の穏やかな木漏れ日、冬の光の透明な輝きの中で、先輩や友だち、先生方など、多くの人とともに、懐風館高校で学校生活を送っていくことになります。
今、皆さんは、新しい環境に入っていく緊張感とともに、これから始まる高校生活に対して、大きな夢や希望を抱いていることでしょう。今日、晴れの入学式を迎えた240名の皆さんには、お互いの出会いが必然であったと感じることのできるような、素晴らしい集団を皆で力を合わせて作り上げていってほしいと願っています。
さて、懐風館高校で学校生活を送るにあたって、皆さんにお願いしておきたいことがあります。
それは、「温かい心」と「明晰な頭脳」をこの学び舎で育んでほしいということです。
イギリスの経済学者にアルフレッド・マーシャルという人がいます。彼はケンブリッジ大学に就任した際、人々の暮らしをよくすることを考える経済学を志す学生たちに対し「冷静な頭脳(cool head)と温かい心 (warm heart)」が必要であると語りました。学問をこころざす以上、冷静な頭脳が必要なことは言うまでもありませんが、彼はその前に「温かい心」の必要性を説き、生徒たちに社会的に弱い立場にある人たちのことにも十分に心を配るように促したといわれています。学校という場で、しっかり学ぶことは当たり前ではあるのですが、学ぶことの前提として、他者に対する優しさや思いやり、愛情が必要だということです。
おそらく皆さんは様々な夢や希望をもって、高校の門をくぐったことでしょう。将来はこうなりたい、こんな仕事に就きたいと思っている人も多いことでしょう。自分の夢をかなえるためにしっかり学んでください。皆さんが夢を実現することは、皆さん自身の喜びになります。そしてその喜びは、あなた自身のためだけではなく、人のため、社会のためにもなるものだと信じています。「温かい心」を持ち続けながら、この学び舎でしっかり学んで、様々な知識や技能を獲得し、冷静に物事を判断する力を高め、夢をかなえてほしいと思います。
皆さんは、中学校を卒業し、義務教育を修了しましたが、高校でさらに学び続けることのできる環境が与えられました。今の日本では、中学校を卒業した人のほとんどが高等学校に進学していますから、高校へ進学することは当たり前のことと思っているかも知れません。しかし、世界では、戦争や貧困などのために学校に通いたくても通えない子どもたちが多くいます。そのようなことを考えた時に、こうして学び続けることのできる環境を与えられたということは、大きな幸せであるといえます。皆さんの学びを支えてくれるすべての人たちに対し、感謝の気持ちを忘れないでください。ともに学ぶ人たちに対し、思いやりと優しさを持ち続けてください。そして、ともに支えあい、励ましあいながら自らを高めていってほしいと思っています。
高校生活は、楽しいことばかりではないかも知れません。上手くいかないことや辛いこと、苦しいこともきっとあるでしょう。でも、学び続けることのできる幸せを理解していれば、必ず乗り越えていけるものだと考えています。
そうした日々を過ごす中で、様々なことを体験し、そこから何かを吸収することにより、人は人として大いに成長していくのだと思います。
「はだたけ! 懐風館で」 新入生の皆さんの活躍を期待しています。

 さて、新入生の保護者の皆さまにもお願いがあります。
子どもたちが成長していくには、ご家庭の協力が欠かせません。学校は、挨拶をすることや時間やルールを守ることをきちんと指導していきたいと考えています。ご家庭にあっても、挨拶やルールを守ることなど、「当たり前」のことがしっかりできるよう、子どもたちに対し、時には厳しく、時には寄り添いながら、見守り、支援していってください。ご協力をお願いいたします。

 最後に、新入生の皆さん、いよいよ懐風館高校での生活が始まります。高校の3年間は、長いようでいて、本当に短いものです。
一日一日を大切にして、卒業式を迎えたその時に「この学校でよかった」と笑顔で言えるような、充実した3年間を送ってくれることを願っています。
そのために、皆さんを全力で支援することを、すべての先生方とともにお約束して、第5回入学式の式辞といたします。

      

    平成25年4月8日       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次




  平成25年度 1学期・始業式  


 皆さん、おはようございます。この4月に懐風館高校の校長として着任しました木谷秀次です。どうぞよろしくお願いいたします。

 懐風館高校は平成21年に西浦高校と羽曳野高校が一つになってできた学校ですが、私は平成8年から6年間、羽曳野高校に勤務したことがあり、この体育館も、校舎も、グラウンドも当時とあまり変わっていません。懐かしい思いと再びこの地で勤務できることを嬉しく思います。

 さて、今日は、新年度のスタートの日ですから、スタートにあたって、今年1年間でこれだけはしてほしいということを述べたいと思います。
昨年度もあいさつ運動を行っていたと聞いていますが、今年も元気に「挨拶」をしてほしいという願いを込めて、「挨拶」について話をします。
「こんにちは」という言葉について、NHKのWebの中の「アナウンスルーム」に「トクする日本語」というページがあり、そこで調べてみました。

では、「こんにちは」について2つ質問をします。
@「こんにちは」は、ひらがなで書くとどうなりますか?  
「わ」と書く人がいるかもしれませんが、「は」です。
A「おはよう」には「ございます」という丁寧語がつくのに、「こんにちは」にはなぜつかないのでしょうか。
確かに「こんにちは」「こんばんは」「さようなら」「ただいま」などは「ございます」など丁寧にするための言葉がつきませんね。「こんにちはです」や「こんばんはでございます」「さようならです」とは言いませんね。この理由には“あいさつはそもそも省略されたことば”ということが大きく関わってくるのです。
例えば、以下のように省略されています。
「おはよう=今朝はあなた様は大変お早いですね」
「こんにちは(こんばんは)=今日は(今晩は)ご機嫌いかがですか」
「さようなら=左様ならば、これにて失礼します」
「ただいま=ただ今帰りました」。
では、文の中で省略されて残った部分(文の最初か最後か)に注目してみましょう。「おはよう」だけが文の最後。それ以外は文の最初です。そもそも丁寧語は文の最後につくもの。「おはよう」のように文の最後が残ると、敬語になるのですね。「こんにちは」や「さようなら」などは、最初の方が残っているので、丁寧な表現にならないということです。
では、なぜあいさつというのは省略されて使われているのでしょうか。あいさつは本来、文の意味を伝えるというより、気持ちを伝えるもの。つまり、「今日は天気が良い」ということより「私はあなたを気にかけていますよ」という気持ちを伝えるものなのです。大事なのは内容ではないから、途中で省略されるのです。今日紹介したもの以外の「挨拶」について一度調べてみてはいかがですか。言葉は省略されていても、その中に相手への思いやりや気遣いの気持ちが込められていることがわかるはずです。言葉は省略されても、あいさつの本来伝えようとしている「気持ち」は省略せず、心を込めてあいさつしたいものですね。

今はデジタル優位の時代で、何でもメールで簡単にやり取りすることができるようになりました。でもメールでは相手の微妙な心の動きや体調などはわかりません。顔をあわせて「挨拶」を交わせば、「今日も元気そうだ」「元気がなさそう。何かあるのかなあ」…、と相手の様子がよくわかります。
挨拶は元気のバロメーターです。お互いが元気に「おはよう」と言い合うことで、その日、一日が楽しいものとなります。もし、今日は元気がでないなあと思える時でも、大きな声であいさつしてみましょう。君の挨拶に相手が応えてくれたなら、きっと元気がでるはずです
挨拶は相手を思いやることからはじまります。
今年一年お互い元気に挨拶を交わしましょう!

以上、1学期始業式の式辞とします。

      

    平成25年4月8日       

大阪府立懐風館高等学校長  木谷 秀次





学校生活の様子