41期生入学式式辞

 みなさん、ご入学おめでとうございます。

 みなさんは大阪府立金剛高等学校第41期生です。教職員、在校生一同、みなさんの入学を心より歓迎いたします。

 本校は、「みんなが仲間と共に通える学校を」という地元の熱い思いを受けて、昭和55年(1980)に誕生しました。平成16年(2005年)には、それまでの特色ある学校づくりを発展させる中で普通科総合選択制に改編し、今日まで着実にその教育実践を積み重ね、平成30年度(2018年)からは普通科専門コース制として、新たな一歩を踏み出しました。

 平成27年(2015年)からは、本校にたまがわ高等支援学校の共生推進教室が本校に設置され、今年度が6年目になります。障がいのある生徒もない生徒も互いにその個性を尊重し合い、発揮しながら「自分らしく」生きることが「ともに学び、ともに育つ」意義です。みなさん一人一人が、かけがえのない存在として、この金剛高校で自分らしさを輝かせ、学び、育つことを願っています。

 金剛高校の特長は「地域性」と「多様性」です。金剛高校は地域の願いで設立され、地域により支えられ、地域に貢献する人材づくりを使命とする学校です。本校一期生の生徒会長でもあった富田林市吉村善美市長をはじめ、多くの金剛高校卒業生が富田林をはじめとする南河内地域の中で生活し、様々な分野で地域社会に貢献しています。

 次に「多様性」です。本校には共生推進教室があり、障がいのある生徒と共に学んでいます。また、外国にルーツを持つ生徒や社会的な立場のある生徒、心や体に配慮が必要な生徒など、様々な違いのある生徒が本校で学んでいます。金剛高校は、この違いを個性として尊重し、違いを豊かさにして、自分らしさを輝かせることを大切にする学校です。みんなが同じになるのではなく、違いを認め合い、尊重しつつ、つながり、関わる、これが「多様性」の尊重です。よって金剛高校では、「違い」を笑いの対象にしたり、排除する「いじめ」は決して許しません。

 みなさんにまず確認して欲しいのは、金剛高校が「地域性」と「多様性」を特長とする学校だということです。

 みなさんは、金剛高校が、どんな学校をめざし、どんな生徒になって欲しいと望んでいるかをしっかりと理解して、これからの高校生活を送ってください。

 その上で、この41期生に何が望まれているのかを申し述べます。3/19の合格者説明会での松永学年主任の挨拶のKey wordを覚えていますか。それは「全力」という言葉です。学年主任は私たち教職員は「全力」でみなさんに関わるので、みなさんも「全力」で応えて欲しい、そして3年後の卒業式には、「全力」で喜べるよう、学校生活を送って欲しいと、語っていました。

 みなさん、この学年の思いを、いついかなる時も忘れず、学校生活を送って下さい。再度、繰り返します。「全力」があなた方41期生のKey wordです。

 では、何のために「全力」を尽くすのでしょうか。

 ここで、みなさんに、先人の言葉を贈ります。

 みなさんは、「徒然草」を知っていますか。中学校で習った人もいるでしょう。

 鎌倉時代末から南北朝時代の動乱期を生きた吉田兼好の随筆です。冒頭の「つれづれなるままにも日暮し硯に向かひて」は、あまりにも有名です。この兼好法師の人間やものごとに対する認識は、あまりに鋭く、兼好法師は人間やものごとが見えすぎて、困ったとさえ言われます。その第五九段の冒頭で彼は次のように書きます。

「大事を思ひ立たん人は、去りがたく、心にかからんことの本意を遂げずして、

さながら捨つべきなり。」

 現代語訳は、人生の大事を思い立とうと願う人は、捨て去りにくく、気に掛かっている様々なことに対して、望みを遂げようとはせず、きっぱり捨ててしまうべきだ、です。

 人生の大事とは、その人間にとって人生をかける値打ちのあるものごとのことです。彼は自分の人生の大事を追及しよう思い立ったなら、それ以外のことはきっぱりと捨てなさい、というのです。

 彼は、これが極端な言い方で、現実には、なかなかそうはならないことを百も承知しています。だからこそ、彼は極端に言い切るのです。これが彼の鋭さです。

 さて、みなさんにとって人生をかける値打ちのあるものとは、何ですか。この中で、今、答えが見つかった人はいないはずです。いまだ、成長の過程にあるみなさんに、今すぐに大事が見つかるはずもありません。

 しかし、この人生の大事は、誰かが決めてくれるものではありません。一人ひとりが自分らしい人生を生きるために、自分自身で見つけるものなのです。

何のための「全力」を尽くすのか。それは人生の大事を見つけるためなのです。

「まあまあ、そこそこ、無難に」では、大事を見つけることはできません。

 また、今の自分の好きなことだけして、他のことを一切せず、自らの可能性を自らで閉ざしてしまっても大事には至りません。

 「全力」で様々なことを学び、打ち込むからこそ、自らの個性や特長、得手不得手、好き嫌いなど、他の人とは違う「自分らしさ」がくっきりしてくるのです。

 自らの経験の総体こそが大事を形づくるのです。

 その過程は決して、楽なものではありません。壁にぶつかり、悩んだり、苦しんだりすることもあるでしょう。「悩み」を恐れてはなりません。成長途上であるみなさんが悩まない方がおかしいのです。「悩み」にぶつかり、その解決の手助けのために、私たち教職員、保護者、地域の方々などの大人がいるのです。

 どうか、みなさんは、この金剛高校の一員として、「全力」で学び、ものごとに打ち込み、人生の大事を見つけ、自分らしい人生を歩めるよう、充実した学校生活を送って下さい。

 最後になりましたが、現在、新型コロナウィルスにより、全世界は大きな危機にさらされています。入学式が今日になったのも、感染のリスクを避けるための止むを得ない措置です。

 こうして登校が可能になったとはいえ、まだまだ危機が去ったのではありません。

 これからも、様々な制限や制約を課すことになりますが、あなた方の命と安全を守るためのものですので、しっかりと守って下さい。

 また、心身の不調や、心配事や悩み事があれば、一人で抱え込むことなく、担任や教科担当、部活の顧問など、身近の話しやすい人に、いつでも相談して下さい。

 金剛高校は、みなさん一人ひとりの心と体の健康を守りつつ、授業や行事、部活動等、様々な教育活動を通じて、あなた方の人間的な成長を支え続けます。

 「全力」で新たな一歩を刻むことを願っています。

 これを私からの式辞とします。

令和2年6月15日 

校長 

上本 雅也

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