JUMP金剛84号 雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ

 

  39期生のみなさん、卒業、おめでとうございます。あなた方39期生は、金剛高校始まって以来の快挙を成し遂げた学年です。何度も言いますが、修学旅行の無遅刻・無欠席。コロナ禍による進路や学校行事が全て同時並行の「キツイ」日々を乗り越え成功させた9月末の体育祭・文化祭。みなさんは一人ひとり、全力を尽くしてやりきりました。まずそのことを一生の誇りとして、胸に刻み込んでください。

 「SOZO 39」があなた方39期生のメインテーマでした。他者の痛みや思いを想像すること。既存の枠組みに捕われずに新たなものごとを創造すること。そしてそうした努力を可能にしてくれた多くの人たちや環境に感謝すること。この「SOZO 39」を大事にして、今後の人生を切り拓いて下さい。

 今後、あなた方は様々な困難に直面するでしょう。しかし、この「SOZO 39」の姿勢があれば、乗り越えられます。

 卒業に際して、あなた方に「言葉」を贈ります。宮沢賢治の「詩」です。この「詩」は手帳に書きつけられ、彼の没後、発見されたものです

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫なからだを持ち

欲はなく

決して怒らず

いつも静かに笑っている

一日に玄米四合と

味噌と少しの野菜を食べ

あらゆることを

自分を勘定に入れずに

よく見聞きしわかり

そして忘れず

野原の松の林の蔭の

小さなかやぶきの小屋にいて

東に病気の子供あれば

行って看病してやり

西に疲れた母あれば

行ってその稲の束を負い

南に死にそうな人あれば

行って怖がらなくてもいいといい

北に喧嘩や訴訟があれば

つまらないからやめろといい

日照りのときは涙を流し

寒さの夏はおろおろ歩き

みんなにデクノボーと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず

そういうものに

わたしはなりたい

「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」とだけ聞けば、肉体的にも精神的にも強く逞しいことが人間にとって大切なことだ、と理解されがちですが、賢治はそんなことを言っているのではありません。

私はこの「詩」を次のように読みます。

「雨に負けたって、風にも負けたっていいんだよ。」

「人間はそんなに強い生き物ではないんだよ。」

「争いや諍いに勝とうとしなくてもいいんだよ。」

「ただ生きて在ることが重く、尊いことなのですよ。」

「私は現実的には何の役にも立たない人間かもしれません。」

「私にできることは、自らのできることで人に寄り添うことだけです。」

「周りからの評価を気にせず、ただただ人を大切にする」

「そんな強さを持った人間でありたいと願っています。」

 自らの資質・能力を発揮して、社会に役立つことは大切なことです。あなた方には今後の社会の担い手として活躍して欲しいと願っています。

 しかし、人間が万能ではなく、「自然」の前に「謙虚」に、ただただ「生きとし生けるもの」の「苦しみ」に寄り添い、その「救い」を願って行動しようとする、生きざまもあるのだということを忘れないで下さい。

 「イ」(にんべん)に「憂」(うれう)と書いて「優」(やさしい)と読みます。人の苦しみを憂い、寄り添い行動することが「優しい」という意味です。宮沢賢治の生きざまは限りなく人に「優しい」生きざまです。同時にこの「優しい」は「優れる」(すぐれる)とも読みます。人に「優しい」ことが「優れた」生きざまなのです。

 たとえこの先どんな苦難があろうと、「SOZO 39」の学年として、本当の「優しさ」「強さ」を持って生きることを心の底から願い、卒業に当たっての私からの言葉とします。

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