平成三十年度 第41回卒業式 式辞

 ただいま卒業証書を授与いたしました、第41期生・184名の皆さん、卒業おめでとうございます。

 そして、ご列席いただきました保護者の皆様、立派に成長されたお子様のご卒業、本当におめでとうございます。これまでお子様の成長を見守ってこられたなかで、時にはご心配やご苦労もあったかと存じます。本日、「高等学校の卒業」を迎えたお子様の姿をご覧になり、喜びもひとしおかと拝察いたします。私たち野崎高校の教職員にとりましても、お預かりしておりました大切なお子さまを、このようにお返しすることができ、これに勝る喜びはございません。改めまして、これまで本校の教育活動に対して、深いご理解とたくさんのご支援ご協力をいただきましたことへ、厚く御礼を申しあげます。

 また、本日、ご多用中にも関わらず、ご臨席を賜りましたご来賓の皆さま、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、本校教職員を代表いたしまして、深く御礼を申しあげます。今まで卒業生たちを見守ってくださり、さまざまなご支援を賜りましたことに、感謝を申しあげると共に、どうか今後も引き続き暖かなご支援を賜りますよう、重ねてお願い申しあげます。

 今日ここに、野崎高校を旅立ち、それぞれの道を歩んで行かれる卒業生の皆さんへ、卒業を祝福し、さらに今後の人生において幸せが訪れることを願い、私から一つのお話をさせていただきます。

 皆さんと同じ高校三年生で、女子競泳選手の池江璃花子さんをご存知と思います。昨年のアジア競技大会で6個の金メダルを獲得し、来年開催される東京オリンピックでの活躍を期待されていました。その池江選手が、今年の2月12日に自らの病気を公表し、治療して復帰する決意を示しました。その後、彼女の勇気に対してとても多くの人々から励ましのメッセージが贈られていることは、大きな社会的話題になっています。

 その池江選手へのメッセージのうちから、私が最も印象に残ったものを紹介します。それは、自らもかつて池江選手と同じ病気にかかりながら、半年間の闘病生活の末に克服した方からのもので、次のような内容です。

 「毎日を一人ぼっちの病室で過ごすことは、世界の舞台で活躍し、どんなに強い精神力を持つ池江選手だって、きっと孤独や焦りを感じるに違いありません。でも、それも彼女の人生だから、受け止めなければならないのです。そして私たちは、長い目でみたとき、闘病生活が少しでも今後の彼女の人生の糧になることを願うしかありません。 私が入院中に、大きな心の支えにしていたのは、こんな祈りの言葉でした。『変えることができないものは受け入れる落ち着きを、変えることができるものは変えていく勇気を、そして、その二つのものを見分ける賢さを、どうか私に与えてください』」

 これが、メッセージの内容です。私は、この祈りの言葉に心を打たれました。そして、私自身が、そこに込められた、落ち着きと、勇気と、賢さを、何とか身につけたいと強く思いました。

 皆さんは野崎高校における、平成最後の卒業生です。平成の時代の日本は、経済的な不況や自然災害、さらには大きな事故に何度も襲われました。しかしその中から、災害復旧のボランティア活動が広まり、社会的に弱い立場にある人々やハンディキャップを持った人々を支援する法律や社会制度が生まれた時代でもあると、私は思っています。様々な厳しい現実から逃げないで正面から受け止め、苦しむ人々に共感し、寄り添い、自分ができることを見つけて地道に続けていく、そんな努力を積み重ねる人々が集まってこそ、新しい時代が生まれるのだと思います。

 どうか皆さん、これからの人生で、自分の周りにいるそんな人々を見つけて、大切にしてください。仕事や、勉強や、人間関係や、そのほかの様々なことで、自分ひとりの力ではどうにもできないと思うような壁に出会った時に、自分の置かれた状況から逃げないで、しっかりと受け止める覚悟を持つことができるのは、そんな人たちの支えがあるからだと思います。そして、病気と闘う池江選手のように、「変えられないものを受け入れる落ち着き、変えられるものを変える勇気、その二つを見分ける賢さ」を、皆さんの努力で手にされることを願っています。

  結びにあたり、第四十一期卒業生と、そのご家族の皆様方の、今後の人生におけるご幸運を、心からお祈りいたします。皆さん、どうか、いつも素直な笑顔を忘れずに。ご卒業、本当におめでとうございます。

  平成31年2月28日

  大阪府立野崎高等学校  校長 石井 研吉