令和元年度 第42回卒業式 式辞

ただいま卒業証書を授与いたしました、第四十二期生・一七三名の皆さん、卒業おめでとうございます。

そして、ご列席いただきました保護者の皆様、立派に成長されたお子様のご卒業、本当におめでとうございます(一礼)。これまでお子様の成長を見守ってこられたなかで、時にはご心配やご苦労もあったかと存じます。本日、「高等学校の卒業」を迎えたお子様の姿をご覧になり、喜びもひとしおかと拝察いたします。

私たち野崎高校の教職員にとりましても、お預かりしておりました大切なお子さまを、このようにお返しすることができ、これに勝る喜びはございません。改めまして、これまで本校の教育活動に対して、深いご理解とたくさんのご支援ご協力をいただきましたことへ、厚く御礼を申しあげます。

また、本日、ご多用中にも関わらず、ご臨席を賜りましたご来賓の皆さま、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、本校教職員を代表いたしまして、深く御礼を申しあげます(一礼)。

今まで卒業生たちを見守ってくださり、さまざまなご支援を賜りましたことに、感謝を申しあげると共に、どうか今後も引き続き暖かなご支援を賜りますよう、重ねてお願い申しあげます。

今日ここに、野崎高校を旅立ち、それぞれの道を歩んで行かれる卒業生の皆さんへ、卒業を祝福し、さらに今後の人生において幸せが訪れることを願い、私から一つのお話をさせていただきます。

昨年の九月十三日、この体育館で行った「根木慎志さんの人権講演会」を覚えていますか。講師にお迎えした根木さんは、二〇〇〇年シドニー・パラリンピック・車いすバスケットボール日本代表チームのキャプテンを務められ、現在は東京オリンピック・パラリンピックの成功と、バリアフリー社会の実現に向けて日本各地でさまざまな活動をされています。講演会の最初は、根木さんに車いすバスケのデモンストレーションを見せていただき、次は皆さんと教員の代表が実際に車いすバスケの試合を体験し、そして根木さんのお話を伺いました。私にとって、四十二期生の皆さんと一緒の時間を過ごすことのできた、とても思い出深い行事でした。

根木さんは、高校を卒業する直前に交通事故に遭い、車いすで生活することになりました。その根木さんが講演会でお話しされた、「その人の気持ちになれる人が友だち」との言葉は、今日卒業する皆さんにこそ、もう一度思い出してもらいたいメッセージです。

人の気持ちは、うれしい・悲しい・楽しい・つらいなどの一言で表すことができない時が、とても多いのではないでしょうか。卒業生の皆さんの今の心の中でも、これからの期待や不安、また同級生や先生方とのお別れなどにまつわる、いろいろな感情が微妙に混ざりあっているのではないでしょうか。自分の気持ちも、そして他人の気持ちも、実はよくわからなくても、不思議ではありません。では、「その人の気持ちになれる」にはどうすればいいでしょうか。

私は、他人の気持ちを知ることは、自分の気持ちを感じる自分の「心」を通してしかできないと思っています。人は本当にいろいろな気持ちになります。しかし、自分の人生の中で一度も経験したことのない、そして感じたことのない、想像もしたことのない気持ちを、自分以外の人から感じ取ることはできないと思います。皆さんのこれからの人生で、大切にしてほしいと私が願うのは、いろいろな気持ちを受け止めることができるように、自分の心を成長させる努力を続けることです。

人間の体の成長にとって、自分の好きなものしか食べなければ、栄養が偏り健康に良くないことがあります。心の成長も同じことです。一人の人間が生活する中で、経験できる、感じることができる気持ちには限りがあります。四十二期生の皆さんは、この野崎高校で、たくさんの授業、行事、部活動などに、一生懸命に全力で取り組んできました。時には、「こんなことをして何の役に立つのか?」と思ったかも知れません。しかし、今日の卒業にたどり着いた皆さんにとって、野崎高校で経験したすべてのことは、皆さんが「その人の気持ち」を知り、大切な友だちを増やすことにつながったと、私は信じています。

これからは、皆さん一人一人で、自分自身の心がバランスよく成長するように、心の手入れを続けてください。今までにつくった仲間を大切にしながら、少しずつでいいから、勇気を出して今まで自分が知らなかった新しい世界を、のぞいてみてください。

結びにあたり、第四十二期卒業生と、そのご家族の皆様方の、今後の人生におけるご幸運を、心からお祈りいたします。

皆さん、どうか、いつも笑顔を忘れずに。ご卒業、本当におめでとうございます。

 

令和二年二月二十八日

大阪府立野崎高等学校

校 長  石井 研吉