前回、読書力の基準として、「文庫100冊、新書50冊」の読破を述べておられるのを紹介しました。文庫本は皆知っていると思いますが、「新書」って知っていますか?
文庫も新書も、本のサイズから名付けられています。新書版の本は、173×105㎜、文庫本より少し縦長です。新書は、主に、ノンフィクションや論説が収められていますが、ソフトカバーで、単行本より廉価で手軽に読めます。岩波新書、中公新書、講談社現代新書、...というように出版社の名前が冠せられています。
手軽に...と言いましたが、内容は学術的なものが主流で、間違えて選ぶと難しすぎることも。
その点、安心なのが「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」など、中学生や新書初心者を対象にしたシリーズです。
えっ?「また子どもの本か」って?
いえいえ、これらの新書は中学生から読めると銘打ってますが、内容はしっかりしていて、自分の興味のある分野の入門として最適です。一冊の新書を読むと、次に読むべき本が指し示されていることも多いです。ぜひ新書を読んで知の世界を広げてください。
せっかくなので、オススメの一冊を紹介すると...
講談社ブルーバックス(自然科学の分野に限った新書です)
鎌田浩毅 『地学ノススメ「日本列島のいま」を知るために』
化学・物理・生物は、1年生の授業で学ぶので、地学の入門書を取り上げました。
私自身は30年前に、高校の地学の授業で「紀元前240年頃、世界で初めて地球の大きさを測ったエラトステネスの方法」のあたりですでに挫折してしまったのですが、この本を読んではたと理解できました。わかりやすくてためになる。21世紀に入ってからの新しい知見も豊富です。
読後は、しばらく地学のスケールでものを見るので、周りのことが小さく見えます。
鎌田先生がどうして研究者を志したのか、のコラムも皆さんには読んでほしいです。
もう一冊、私は新書だと思い込んでいたのですが、文庫でした―
ちくま文庫
外山滋比古 『思考の整理学』
40年近く前に出版された本ですが、じわじわ売れ続け、近年では「東大・京大で一番読まれた本」のキャッチコピーが付されています。語り口は平易なので、高校時代に読んでおいてほしいです。
冒頭の「グライダー」という文章をかいつまんで言うと...
「人間には、グライダー能力と飛行機能力がある。グライダーと飛行機は一見似ているが、グライダーは自力で飛ぶことができない。学校はグライダー人間の訓練所である。グライダーとして優秀でも、自ら考えることができない生徒を社会に送り出す...」
耳に痛い話ですね。この本では、飛行機人間になるためのヒントがたくさん示されています。
筆者の専攻は英文学ですが、理系の人にもぜひ読んでほしいです。
国語科 志田