最後のスポーツ大会。快晴。
歓声と笑い声が空へ溶けていく中で、それぞれの時間を惜しむように走り、声を張り上げた。
勝ち負けを超えた先にあるのは、もう戻らない日々への微かな哀しみだった。
結果発表がおわり、夕暮れが校舎を染めるころ、
ふと風が吹き抜けた。
その瞬間、香りがふわりと漂ってきた。
花言葉は「謙虚」。
笑い合い、ぶつかり、励まし合いながら過ごした日々が、
この香りとともに静かに心に刻まれていく。
「本日は、定時一斉退庁日です。」校舎内に毎週お決まりの放送が鳴り響く。帰り際、振り返った校庭にはもう人影はなく、
強い香りとは裏腹に、つつましい印象のその花の香りが、秋の空に優しく残っていた。



