第72回入学式 式辞

令和3年4月8日 280名の生徒を迎えました。おめでとうございます。

 1年前の4月7日、全国で緊急事態宣言が発令されました。すでに3月から休業していた学校が再開されたのは6月中旬、入学式は6月15日でした。今年は桜の残る4月に入学式ができて嬉しく思います。先ほど、入学を許可された280名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

 本日は、残念ながら、ご来賓の方々にはお越しいただけず、保護者の皆様にもお一人に限定させていただいての入学式となります。完全な形でないのが心苦しく、本日も録画を取らせていただき、ダイジェスト版をホームページに上げたいと思いますので、ご理解をよろしくお願いいたします。

 さて、皆さん、受験勉強は大変でしたか?おかげさまで登美丘高校は、当日の受験倍率は下がりましたが、2月時点で1.69倍、大阪府の高校で7番目の倍率でした。多くの方が行きたいと思ってくれたと喜んでいます。ありがとうございました。試験の結果について話します。試験は900点満点で、合格と不合格の差は本当にごくわずかでした。

 3年後の次のステップへの挑戦でも、合否の分かれ目は必ず出てきます。受験勉強の時は、今のことを思い出して、最後の最後まで頑張ってほしいと思います。

 そしてもう一つよく知っていただきたいことがあります。自己申告についてです。今回の入試では、ボーダーの生徒に対して、自己申告書を読んで、アドミッションポリシーに沿った生徒を選抜することになっています。それが何人だったか、誰だったかは公表しないのですが、自己申告書もまた、受験合否の大切な要素です。高校入試では合否ライン当落上の1割の生徒の自己申告書を見るにとどまっていますが、これが、例えば大学入試では、総合型選抜といって、国公立を含む500を超える大学が自己申告書を吟味する入試制度を取り入れていますし、企業に就職する就職試験に至っては、自己申告書の内容と面接の結果が9割ほどの割合になります。それはなぜか、いい人に入学してほしいからだし、いい人と働きたいからです。テストの点数よりも人間の内容を知りたいからです。

 例えばみなさん、皆さんが知っている大人、中学校の先生を考えてみましょう。先生は教員資格がいりますのでみんな大学を出ていて、その大学の偏差値は様々です。だけどみなさんにとって「いい先生とそうでない先生」、「力のある先生とない先生」は、大学の偏差値とは違いますよね、偏差値の高い大学を出ている先生は、いい先生で、偏差値の低い大学の先生は先生として力がない・・・訳ではないということを、皆さんは肌で感じていると思います。逆にいうと同じ学校を出ていても、一緒にいたい素敵な人もいれば、なんだこの人、という人もいる。世の中の人もそうか?と家に帰ってお父さんやお母さんに聞いてみてください。笑って頷いてくれると思います。そしてその「いい人」というのはどうしたらわかるのか。どうしたらその差がわかるのが、それが自己申告書だと言われています。だから皆さんは、「社会で活躍するいい人」になるために、これからの3年間、学業と並行して、自己申告の中身を磨き上げる必要があります。高校では令和4年度から始まる新学習指導要領のポイントに「人生を切り拓いていくために求められる力を明確化し、育んでいく」という文言があります。まさに自己申告の中に、その力が現れます。

 今回280人の新入生の皆さんの自己申告書をじっくりと拝見しました。中学の経験で得たこと、高校で頑張りたいこと、将来の夢、みな一生懸命に書いてくれていました。

 中学の経験で得た事。行事や部活動のことを書いてくれている生徒が多かったです。

水泳・テニス・美術・サッカー・野球・陸上競技・吹奏楽・コーラス・音楽・バスケットボール・バレーボール・クラッシックバレー・家庭科・剣道・放送・書道・空手・園芸・ソフトボール・新体操・囲碁将棋・ダンス・合唱・ハンドボール・柔道・競技かるた・生徒会執行部など。 そこでの経験で、最後まであきらめないこと、コツコツ努力する事・相手の視点に立つこと・人の役に立つこと、達成感を得ることなどを経験したと書いてくれています。ただ、今年は、コロナ禍のために、十分にやりきれなかったと書いている生徒も多くいました。

 新入生の皆さん、ぜひ部活動に入ってください。登美丘高校には32の部活動があります。そこで頑張ったら、さらに大切なことを得ることができます。人生を切り開く力を得るためにも、部活動入部をお薦めします。

 また、部活動以外でも経験を書いてくれていました。短気な性格ですぐにあきらめていたのに友達や先生に支えてもらってミュージカルの主役になって成長感を得た。とか、風紀委員長の仕事で、コロナで挨拶の声が出せなくなった時、マスクを二重にして、離れて大きな声を出して、工夫することの大事さに気づいた。とか、転校して寂しくて不登校になりかけたのを、友達に救われたとか、トイレ当番になった時はペーパーを三角折にし、最後まで隅の汚れを取ることにこだわった。とか、自分が病気になって、学校に行くことの楽しさや友だちの優しさや、そして自分の弱さを体感した。とか。いろいろな経験から学んだんだなと思いました。

 皆さん 登美丘高校で様々なことに挑戦して、一生の友達を見つけてください。素敵な人がこの中にはたくさんいます。

 将来の夢も書かれていました。これから見つける!というのもたくさんありましたが、アニメや漫画に関する仕事、保育園、幼稚園、学校の先生、ゲーム会社、調理師、看護師さん、栄養士さん、水族館スタッフ、警察官、理学療法士、メイクアップアーチスト、ファッションデザイナー、動物看護士、ネイリスト、トリマー、一級建築士、そして、働きながら楽団に入り、誰かの心を動かせるようになりたい、など。

 わくわくしました。

 それらの夢を実現するために求められる力を、登美丘高校では育成する生徒像として明文化しています。

Challenge and Hospitality」  登美高生は強いから優しい」です。

 挑戦する強さと人を包み込む優しさを併せ持つことができれば、皆さんが自己申告で書かれた夢を実現しやすくなり、人生を切り開くことができると考えています。

 私にも夢があります。 登美高生は「強いから優しい」と世の中から言ってもらえることです。まず「挑戦する強さ」そして、「人を包む優しさ」を持っていただきたいと思います。

 保護者の皆様 本日は本当におめでとうございます。今、72期生の皆さんに、まず挑戦する強さを持ってほしいと申しました。挑戦する強さを持つためには、失敗しても逃げ帰れる、心を癒せる、安心できる家庭、そして学校が必要だと思っております。私どもも努力致します、どうぞ、保護者の皆様も、これからも今まで同様、お子さんにとっての安全基地でいただけますようよろしくお願いいたします。

 冒頭に申しました、1年前の4月7日。緊急事態宣言が発令された日のコロナウイルスの感染者数は53人でした。昨日は878名。今年度も緊迫する1年間となります。だけど皆さん、人間は弱くない、挑戦する強さと人を包み込む優しさを併せ持ち、戦って戦ってコロナを乗り越えた皆さんが3年生になるとき、登美丘高校は100周年を迎えます。

 胸をはってその日を迎えられるように、「強いから優しい」登美高生になるように、ともに挑戦していきましょう。本日はおめでとうございました。

令和3年4月8日

大阪府立登美丘高等学校長 山本哲哉