校長より

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平成28年度入学式式辞  

本日、ここに平成28年度大阪府立高津高等学校「入学式」を挙行するに当たり、同窓会長 佐伯 剛様をはじめ、多数のご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席をいただき、このように盛大に新入生の皆さんを祝福できますことは、私ども職員、並びに在校生にとりまして、この上ない喜びであり、ご参席いただきました皆様に対しまして、高い所からではございますが、心からお礼申しあげます。

 

さて、ただいま入学を許可しました360人の新入生の皆さん、おめでとう。

皆さんは、おそらく人生最初の試練とも言える「高校入試」にみごと合格。本日、晴れて高津高校の生徒として入学を認められました。

これは、皆さん一人ひとりの努力の成果であることは勿論ですが、同時に、保護者やご家族、先生方など、多くの方々の温情とご声援に支えられて、始めて得ることのできた栄冠でもあります。深い愛情を注いでくれた方々への感謝と、本日の感激を忘れることなく精進することが、皆さんにとって何よりの恩返しであることを、まずは、改めて肝に銘じていただきたいと思います。

 

皆さんが憧れて入学した本校は、大正7年、旧制第十一中学校として創設されました。厳しい社会状況に翻弄された時期もありましたが、充実発展の歴史を積み重ね、皆さんが3年生の時、大きな節目となる創立100周年を迎える、大阪を代表する伝統校です。

この間、高津高校を「学び舎」として巣立ってゆかれた皆さんの先輩は、常に高い次元で「自由と創造」「日進日新」を体現し、現在の清新溌剌とした校風を創りあげるとともに、多くの卒業生が社会の第一線で活躍しておられます。

皆さんには、目標とし得る先輩たちを誇りに感じるとともに、「理想さえも超えていく」という気概を持ち、新たな歴史を築きあげて欲しいと思います。

 

 そのためには、現在を広く正しく理解し、将来を冷静に予測することが不可欠です。

今、皆さんはどのような事柄や事象に興味・関心を持っていますか。そして、どんな未来が皆さんを待っていると思いますか。

「社会が大きく変わりつつある」とは、しばらく前から言われていることですが、そのスピードと変化の大きさは、まさに加速度的です。例えば、今、私が期待と不安混じりで見つめているのは、「コンピューターとソフトウェアを使って言葉を理解したり、膨大なデータを分析して答えを導き出す」システム、「Artificial-Intelligence/AI」です。

囲碁のAI「アルファ碁」が、予想を覆して、韓国のトップ棋士に勝利したことや、人の助けを受けたとはいえ、AIの書いた小説が、日本を代表するSF作家星新一氏にちなんだコンテストの一次審査を通過したことなどは、皆さんも知っていると思います。科学技術が、すさまじいスピードで進化している一つの証といえるでしょう。

また、能登半島の先端にある石川県珠州市では、高齢化率が45%を超え、公共交通機関が不足して、住民らが移動に困っている状況を改善するために、昨年2月から市街地の公道で自動運転車の実証実験を進め、すでに約1万キロ走っており、4年後にも実際の交通網として定着させたいと考えているそうです。

このように人々の困難が解決され、便利になるという面がある一方で、野村総合研究所の試算では、日本の労働者の約半数が就いている仕事は1020年以内に、AIやロボットで代替が可能だと言います。代替により、仕事を失う人たちはどうなるのでしょう。

さらに、コンピューター技術が、今のペースで発達し続けると、ある時点で、人類を超える究極の人工知能が誕生する。その人工知能が、更に自分より優秀なAIを開発し、更にそのAIが、次のもっと優秀なAIを開発し…という具合にAIがAIを連鎖的に作り続け、爆発的なスピードでテクノロジーを自己進化させ、人間の頭脳レベルではもはや予測不可能な未来が訪れるという「2045年問題」と呼ばれている懸念もあります。

わずか30年後の話です。

 

さて、少し話は変わりますが、今年度、入試の形が変わり、皆さんが提出してくれた自己申告書を読ませてもらう機会がありました。そこには皆さん一人ひとりがこれまで学んできたことや、大切にしてきたことが、率直に書かれていたわけですが、共通していたことは、大きく3つあったように思います。

それは、まず「学ぶ心」であり、「真摯な努力」、そして一時の活動にとどまらない強い意志による「継続」です。これらは何かをなす時には、すべて不可欠かつ重要な要素です。

そして、そんな素晴らしい資質を持っている皆さんだからこそ、今日から始まる高校時代をより充実したものにしてもらえるよう、次の3つのことを、ぜひ実行していただきたいと思います。

 

1つは、「学ぶ心」を、「さらに熟成する」ということです。学校での学びの基本は、何と言っても授業ですが、漫然と授業を受けているだけでは不十分です。何事にも問題意識を持って、積極的に問いかけていくことが大切です。受身で授業を受けるのではなく、なぜそうなのか、常に自問自答しながら、学ぶ心をさらに熟成していってほしいと思います。 

情熱を持って語りかける教師と、誠実に学ぼうとする皆さん生徒たちが共鳴し合うことで、最高の授業・学びの場を創造していただくことを期待します。

 

2つには、皆さんが積み重ねてきた「努力」の源である「規律ある行動」を高校でも、しっかりと続けてください。規律を守ることは、集団生活を営む人間社会において、私たち一人ひとりの自由や幸せを維持するため、人類が作り出した知恵です。

自由と放縦は似て非なるものであり、規律に裏付けられてこそ、真の自由があります。

本校の校風・校是である「自由と創造」とは、外部からの制御から脱して、自から設けた規範に従って行動し、新しいものやことを創造することを言います。その規範が一人よがり、独善的なものでは放縦と変わりません。高津における「自由と創造」の真ん中にある「と」は、単なる「&」ではなく、「for」であることを忘れないでください。

規律ある高校生活を過ごすことで、集団生活における役割の自覚と責任を体得するとともに、思いやりのある、温かく逞しい人間として、成長してくれることを期待します。

 

3つに、「可能性への挑戦」です。

高校生活の3年間は、長い人生の中では、わずかな時間に過ぎませんが、最も多感で、生命力に溢れ、人生を左右するような貴重な時期です。

「道、近しといえども、行かざれば至らず。事、小なりといえども、為さざれば成らず」とは、中国戦国時代の思想家 荀子の言葉ですが、まず行動しなければ、決して物事は成就しません。

皆さんには、将来、社会において果たすべき使命を自覚し、志を高く掲げ、小さなことからでよいので、明確な目標を持ち、計画的な日々を送ってください。個々の可能性に全力で挑戦し、その優れた能力を大きく開花してくれることを期待します。

 

さて、保護者の皆様に一言ご挨拶申しあげます。

本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。高校の3年間は、人生の方向に大きな影響を及ぼす大事な時期であり、悩み苦しみの最も大きい時期でもあります。

私達教職員は、お子様が、自らの生きる道を、自ら切り開いていけるよう、全力を尽くして参りますが、少子化や、行き過ぎと言われるほど社会全体のサービス化が進んでいく中で、今の高校生は、驚くほどの幼さ、未熟さを内包している事が少なくありません。

あとしばらくは大人がきっちりと見守り、しっかりと導くことが必要です。「手は離しても、目は離さない」姿勢をあらためてお願いします。

そのうえで、お子様の健全な成長と、豊かな個性を育てていけるよう、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要と存じます。どうか、学校の方針をご理解いただき、ご支援とご協力をいただきますとともに、

お気づきの点やご意見・ご要望などがございましたら、お気軽にご相談いただければ幸いです。

 

最後になりましたが、本日、ご多用中にも関わりませずご臨席を賜りましたご来賓の皆様におかれましては、本校が社会的存在としてその役割を全うし、今後さらに発展充実が叶いますよう、一層のご指導、ご支援をお願い申しあげ、式辞といたします。

 

平成28年4月8日

大阪府立高津高等学校 校長 村田 徹